私達の屋上   作:: 渚 :

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少しだけなら

「……ねむ」

 

いつものように通学路を歩きながらそう呟いた。私は朝が得意ではないから正直辛い。昨日はゲームも読書もせずにご飯とお風呂をすませてすぐ寝てしまったから、スッキリ起きれるかと思ったんだけど…案外そうでも無いらしい。学校の登校時間10時とかにしてくれないかなぁ。

 

「あ、そうだ」

 

制服の上に着ているパーカーのポケットからスマホを取り出して、コードを繋げてヘッドフォンを装着。軽快なメロディが流れ出すと、なんだかちょっと元気になった気がする。心なしか少し目も覚めた気がするし、やっぱり音楽っていいよね。

 

いつもの角を曲がって、もうすぐ学校だ。あ、でも今日はお昼と朝ごはん買わないといけないんだった、なんて考えながら前を向くと_

 

「それでね、__がさー」

「なにそれー」

 

咲良(さら)が居た。

 

「…っ」

 

ズキズキと胸の当たりに刺すような痛みを感じながら、音楽に耳を傾ける、大丈夫。

 

「うん、何してんのって思ってねー」

 

「………」

 

無言で横を通り抜けた、彼女と話すことなんか何も無い。そう、もう何も無いんだ。私たちの間には。何気ない風を装って、歩き続ける。

 

「………あ」

 

学校の校門を見て思い出した。私、ご飯買うの普通に忘れた。

 

「…はぁ、購買行かなきゃ」

 

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 

「おはよー」

 

「あ、南海ー!おはよー!」

 

「おはよ、元気だね。奈桜(なお)

 

奈桜はこのクラス_2年4組で初めて一緒になったけど、気さくで明るい笑顔が素敵な子だ。私がおはようって言うと、必ずおはようって返してくれる。私からすると、奈桜がこのクラスで1番仲がいい子だ。

 

「あれ、南海、購買寄ったの?」

 

「うん、コンビニ寄るの忘れた」

 

さっき買った鮭おにぎりとお茶を取り出しながら答える。

 

「珍しいね」

 

「まあね、考え事してるとよくある」

 

「おにぎりか、中身は?」

 

「鮭、王道」

 

「えー?あたしツナマヨがいいー」

 

「鮭のが美味しいもん」

 

「なんだとー?」

 

やっぱりたわいも無い話をしてる時が1番楽しい、そう思いながらおにぎりの最後のひとかけらを口に放り込んだ。そういえば、零は今日も学校に来ているのだろうか。

 

「ネクタイしてなかったから学年も分かんなかったな」

 

「え?南海、なんか言った?」

 

「んーん、なんでもない」

 

今日の放課後、聞いてみようかな。学年を聞くくらいなら別に迷惑にもならないはずだよね。

 

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 

ガチャ、と壊れたドアを開ける。

 

「………」

 

なんとなく急いで来てしまった、けど私は昨日どうも変な勘違いをされてしまったわけだし…普通に話しかけるのもおかしい気がする。せっかく借りてきた本もあることだし、読んで時間を潰そう。向こうから声をかけてくるのを待とうかな、よく昼寝するって言ってたよね、寝てたら迷惑だし、うん、そうしよう。

 

「………」ペラッ

 

「………」パタン

 

………だめだ全く内容が頭に入ってこない、こんなんじゃ読んでも意味ない。

 

「………ねぇ」

 

気になって声をかけてみる。やっぱり寝てるんだろうか。返事がない。

 

「ねぇ」

 

もういっかい声をかけてみる、返事がない、ただの屍のようだ…なんちゃって。

 

「…ってほんとに大丈夫なの?零?」

 

待ってここまで返事がないと流石に怖い、なんちゃってで自分で屍とか言っちゃったよほんとにぐったりしてたらどうしよう、梯子を登って上を覗いてみると…誰もいなかった。なんだ、まだ来てないだけか。

 

ガチャ

 

「「あ」」

 

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 

私は梯子から降りて零に場所を譲る。さんきゅ、という短いお礼の言葉を言って彼はのぼっていった。と思いきやいきなり顔を出した。

 

「!?」

 

「ん?俺になんか用でもあったのか?」

 

「いや別にないけど」

 

「今日は南海のが早かったんだな」

 

「…まあね」

 

「悩みを話す気にでもなったか?」

 

「…ぐいぐいくるんじゃん結局…」

 

昨日今日で知り合った人に悩みを話す気には悪いけどならない、てか自分が話されて困ることを他人にするわけないじゃないか。

 

「え?だってあのままじゃ絶対話してくれないと思ったから、引いて帰ったんだけど」

 

「そのまま引いたままでいいでしょ別に、君と私には基本関係ないんだから」

 

そうだ、偶然屋上で会っただけ。部活や委員会も違うだろうし、クラスも違うんだから。零が私に構う必要なんかどこにも無いはず。意地なんか貼ってない、そうだよね、私。

 

「押してダメなら引いてみろって言うじゃん?」

 

「…まあそうだけど」

 

それは恋愛の駆け引きだけどね、という言葉は飲み込んでおくか。

 

「あ、人に話したりなんかしないぞ。俺別に友達居ないし、いても話すつもりないから」

 

「…意外、零は友達いっぱい居そうじゃん」

 

少しだけ、彼の顔に影が差した。

 

「…前は、な」

 

「…そっか」

 

そのちょっと悲しそうな笑顔を見て、もしかして零もそういうことがあったのかな、なんて思った。

 

少しだけなら、話しても大丈夫なのかもしれない。

 

一人でいたつもりだったあの時みたいに、ただの独り言みたいに。

 

「…今から独り言、言うかも。少しだけ」

 

「…おう」




南海のことに関して、少し触れてみました。
友達とこじれちゃうことって、結構ありますよね。
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