「……できた」
端っこを結んで余った糸を鋏でパチンと切る。零に渡す用のミサンガが完成した。赤と黒と、白の3色。ミサンガ用だから栞に使ってる用のより少し長めに作ったけど、大丈夫かな。明日渡して駄目だったらまた新しく作り直そう。
「…奈桜にも作ろうかな」
メッセージアプリを開いて、奈桜に『すっごい唐突なんだけど、何色が好き?』と送った。すぐ返信が来た。
『唐突だねえ、緑系統の色が好きだよ、黄緑とかかな!』
『ん、さんきゅー』
『それで?何に使うの?』
『明日分かるよ』
刺繍糸から黄緑、深緑は無かったので緑の糸、出しっぱなしだった白の糸を手に取り、編み始める。友達のために自分から動くなんて久しぶりだ。なんだか友達のことを考えて楽しくなるなんてのも久しぶりな気がする。
「…明日、2人とも喜んでくれるといいな」
出来上がった2つのミサンガを見ると、頬が緩むのを抑えられない。
小さい袋にひとつずつ分けて、鞄にしまっておいた。
明日が楽しみで眠るなんて、久々だ。
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
「…あ、雨だ」
通学路を歩いていると、ポツリと頬に何かが当たった。空はどことなくどんよりとしているし、雨が降ってきたのだろうか。
(予報は曇りって言ってたのにな)
鞄から折り畳み傘を出して開く。紺色で星が散っているこの傘は私のお気に入りだ。長傘よりよく使っている気がする。
もうそろそろ梅雨に入るのだろうか、早く終わって欲しいなんて思いながら水たまりを避ける。替えの靴下が無いから踏んだらスニーカーとかが大惨事だ。
それに2人にミサンガを渡す重大ミッションがある。
人にろくにプレゼントしたことがないので、ちょっぴり緊張している。おまけに自分の作った物とか初めてだし。
慣れた坂道を登って、校門を通り、下駄箱にスニーカーを入れる。
代わりに上履きを取り出して、履いてからつま先を床にとんとん、とつついてきちんと履く。
教室に着くと、人は結構まばらだった、奈桜もまだ見えない。
「んー…仕方ないか」
本を取り出して何気なく外を眺めると、雨はさっきよりも強くなってきていた。屋上…これは行けないかもしれないな…
「…雨、止まないかなぁ」
「なんで?南海雨嫌いだっけ?」
「んっ!?!?」
「おはよー」
頭にタオルを被った奈桜がそこに居た、いつの間に来たのだろうか。
「いきなり声かけないでよ…びっくりした…」
「珍しく独り言言ってるからつい…傘忘れたからびしょ濡れよー…」
「あーあ…いつも持ち歩いた方がいいよ?」
「うー…めんどくさいんだもん」
「また濡れても知らないからねー?」
「南海傘あるんでしょ?帰り入れてー?」
「……良いけど、折り畳みだよ?」
「全身びしょ濡れはもうやだー!お願いっ!」
「良いよ、とりあえず着替えておいで?」
「わーい!着替えてくるー!」
ぱたぱたと教室を出ていった彼女を見送って、鞄からミサンガをだしておく、うん、こっちの袋が緑色の方だね。
零の分は…今日屋上寄れないし、仕方ないかな。
梅雨の時期は、零とあんま会えないのかも知れないって思うとなんか少し物足りなく感じるのは、彼が何処と無く太陽に似てるからだろうか。
「今年は梅雨明け、早いといいなぁ」
しとしとと降り続く雨を見て、ぽつりと呟いた。