「よいしょ…っと」
意外と重い卒アルを、年代順に並べ直していく。そこそこ分厚いし、他の学校に比べてイベントも多い気がするからその分写真も増えるんだろう。
(2005年、2006年、2007年…)
並べながら、1冊だけ無いことに気づいた。
「先生、2010年のだけなんか無いんですけど」
「え?…あらほんとね、卒業アルバムは持ち出し禁止なのに…それにあの年のを持ってくなんて…」
「2010年になにかあったんですか?」
「少しね…そう言えば鶴川さん、ここの高校の七不思議の話って、もう聞かない?」
「七不思議…ですか?」
七不思議と言えば学校によくあるお決まりの怪談…だった気がする。確かトイレの花子さんとか、そういうやつ。
「私は聞いたことないです、中学校とか小学校は聞いてたけど…」
「…そう、やっぱりなのね。この学校では
「ご法度?」
「そう、それが決まったのが2010年なの。名目上は『下らない怪談で生徒達を怖がらせるな』という感じだったのだけれどね」
少しだけ興味が湧いてしまった、怖い話は平気な方だ。それにまだ帰るには早い。
「先生、私にその話、教えてくれませんか?」
「…そうね、他の子もいないし。でもひとつだけ約束してくれる?…周りの子に無闇に言いふらさないって」
「言いふらすような友達、居ませんよ」
「…それじゃあ、先生の昔話に付き合ってもらいましょうか」
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だいぶ前になるかしらね。この学校にも勿論怪談話はあったの。
1つ目は、音楽室のピアノがひとりでに演奏を始める。
2つ目は、夜中に北校舎の階段が1段増えて13段になる。
3つ目は、視聴覚室に呪いのビデオがある。
4つ目は、理科準備室の人体模型が徘徊する。
5つ目は、2階階段の踊り場にある鏡は、将来の相手を見せてくれる。
6つ目は、夏以外にプールで泳ぐと、何者かに足を引っ張られる。
というものよ。七不思議ではなく六不思議だったの。
夏頃になると怪談話が出るから、みんな7番目を予想しあってた。講堂の裏に隠し部屋があるとか、朝の体育館には何故か片付けたはずのボールが転がっているとか、そういうものだったわ。
私も夏に生徒からその話を聞くのが楽しみだったの。
…あ、ご法度になった理由を話さないとね。
実はちょうど10年前に事故が起きたの、なんでも旧校舎の4階…屋上ね。で男の子同士が喧嘩になってその流れで押されて落ちて…亡くなってしまった、って聞いたわ。
その後から、7つ目の七不思議が出るようになったらしいの。
…これが私の知ってる七不思議の話よ。
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話終えると、鶴川さんはぽかんとした顔をしていた。
「…え?先生は七不思議の内容を知らないんですか?」
「残念なことに会ったことがないのよ」
間を置かず続ける。
「聞いたことも?」
「出たのは聞いたけど、内容を聞く前に七不思議が禁止されてしまったから」
だってこの子は関係ないはずだから。
「そうですか…」
「むしろ、これが七不思議なのかもしれないわね」
「え?」
「6つだった怪談話がひとつ増えて七不思議になった…っていうのがね」
「…そう考えると、少し怖いですね」
「そうだ、鶴川さん。もし2010年のアルバムを発見したら持って来て欲しいの、一応欠けてたら困るから…私も探してみるけど」
「分かりました…あ、そろそろ私、帰りますね」
「ええ、さよなら」
「さようなら!」
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鶴川さんを見送った私は、職員室から自分の傘を持って屋上に向かった。
「…居るんでしょう」
誰も居ない屋上に声をかけると、黒髪の少年が姿を現した。
「先生、なんでいんの」
不機嫌そうな顔で私を睨む。
「卒業アルバムを返してもらいに来たのよ」
「…俺は知らないけど」
「怒らないから、返してちょうだい」
「…」
彼は無言で私に背を向けた。
「…どこに置いたの?」
「俺がやったんじゃない」
「ずっと隠してはおけないのよ、いつか話さないといけないのは_
「分かってるよ!!」
振り向いた彼の目には涙が溜まっていた。
「
「…日を重ねれば重なるほど、辛くなるのは_
「…俺の方だよ。死んでない先生に分かるもんか、
「………」
「卒業アルバムは多分、元の俺のクラスに置いてあると思う。好きにしてよ」
「…あなたは、あの子になんて名乗っているの?」
「零だよ。ゼロと書いて零って南海には言ってる。
「…また誰かを連れていく気なの?…まさか…」
「その通りだよ。
「…後は鶴川さん自身ってことなのね」
「…そうだよ…」
「…」
今の教え子と、前の教え子を救うにはどうしたらいいのだろう。
雨の振り続ける屋上は、