どうやら、私は主人公の兄にして、【踏み台悪役貴族】らしい   作:ポピィ

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今回魔法に関する設定と主人公の容姿に関する描写がでます。
尚、主人公は精神面が人外レベルなだけで、能力的には『才能だけある凡人』です。『基礎能力が低い代わりに伸び代の限界に果てがない』的なサムシング。
それを踏まえた上でご覧下さい。


第3話

◻️

 

 

魔法。

この世界、【アムネジア】には【魔素】と呼ばれる物が存在する。

魔素は生物、非生物問わず全ての存在の根幹を成すとされていて、何かが存在する場所には必ず空気中に魔素が存在する。

その空気中の魔素を用いた技術を私たちは総じて魔法と呼び、魔法はアムネジアに住む人々の生活になくてはならない物となっている。

 

魔素及び魔法には『火、水、風、地、闇、光、無』の全部で『7種類』の属性が存在する。

その中で、大多数の人間が適性を持つ『地水火風』の基本四属性と、小数の人間しか適性を持たない『光闇』の特殊二属性の分類がされていて、人々は各々がそれぞれの魔法に対する適正をある程度持っている。

そして『基本四属性』と『特殊二属性』のどちらにも属さない『無属性』は、適性の有無に関わらず全ての人間が生きていく上で大なり小なり無意識のうちに消費している『存在の基礎となる魔素』の事を指す。

 

魔素の起源にはいくつかの神話や多数の俗説が存在するが、そのどれもに信ぴょう性があり、そのどれもが確証に及ばない。『確かに存在するが何故存在するか分からない物質』が魔素であり、その不確定な物を根幹とする技術が魔法なのである。

 

 

「『魔素の扱いを鍛えるためには魔素に対する知識を深めるのが近道』などと父上は言っていたが、こんな知識が魔素の扱いとなんの関係があるんだ?」

 

屋敷の中庭で『魔法教練初級』と表紙に書かれた本を開いて、書かれた内容を見ながら首を捻る。

1年前、適正検査で全属性に適性があると判定された後で、父上から「魔法は早いうちから鍛えればその分苦労せずに済む」と言われ、入学までの自習用としてこの教本を渡された。

最初の頃は自分を天才だなどと浮かれもしたが、実際に教本を読みながら魔法の訓練をしていると、魔素の操作やら属性毎の魔素の扱いなど学ばなければならない事が多く、本来1つか多くても2つ程度しかない適性を全て持ってるせいで普通ならやらないような技術まで学ばなければならない。

そんな私が魔素の扱いもままならない中で下手に魔法を使えば、良くて不発、最悪魔法が暴走して命に関わる事態になりかねない。

 

私はページを少し進め、初級魔法の発動方法を実践しようと思い、手をかざし空間の魔素を操作して術式を組む。

 

「水の魔素は火の魔素と打ち消し合うから選り分けて、風の魔素は逆に火の魔素を増幅するからあまり混ざらないように気を付けて…あ」

 

手元に火の玉を浮かせるだけの火の初級魔法『ランプ』を使おうとして、風の魔素が想定より多く混入したため、術式がパシンッと甲高い音を立てて崩れ去った。

 

「ええい、またか!私は火の魔法を使いたいのだ!他の魔素はお呼びで無いわ!」

 

訓練を始めてから何度目かの失敗に、思わず地団駄を踏んで叫ぶ。

本来なら、火の魔法を使う時は火の魔素以外が動くことは無いため、今のように他の魔素が干渉して不発することは無いのだが、私の場合は全属性適性持ちという体質が邪魔をする。

 

人は魔法を使う際、自身の適性と同種の魔素を無意識下で操り魔法を使う。

そのため、魔法を使う時にいちいち魔法に合った魔素を選んで使う必要はほとんど無い。

だが、私が意識せず魔法を使おうとすると、その空間に存在する全ての魔素が一気に術式に流れ込み、術式の持つ魔素許容量を大幅に超過してしまう。

そうした場合、ほとんどの術式は崩壊するか不発に終わるが、稀に大量の魔素を取り込んだ術式自体が暴走する危険があるため、私が魔法を使う時にはまず使用する魔素の選別と術式に注ぐ魔素の調整を行わなければならないため通常の何倍も手間がかかるのだ。

それを考えれば、『知識の中の私』は性格はともかく、魔法の腕だけは増長するだけの事はあったらしい。ゲームの進行上の都合だろうが、中級までとはいえ全属性の魔法を一定水準使えていたというのは尊敬に足る技量だろう。

 

「たしか、クルスに倒された時点での私は学院高等部の3期生だったか。あと7年足らずで高水準での魔素の操作と選別、魔法発動の安定化を習得せねばならない、と。かなり厳しいが、出来なくはない…か?」

 

これでも最初の頃は魔素毎の種類を認識することすらできなかったのを、1年の自主練を経て術式に魔素を選んで注ぐことが出来るまでになったのだ。今後しっかりとした環境で学ぶことが出来れば、今より遥かに技量を上げることができるだろう。

 

「あと1年後には学院に入学するんだ。それまでに最低でも初級魔法くらい使えるようにならなければ…」

 

私は気を取り直して再度術式を組み直す。

今度はより慎重に使う魔素を選別しよう。あの愚か者の極みである『知識の中の私』に劣るなど、許されることではないからな。

 

「私はストライア公爵家の長子、ログルス・ストライア。この程度の苦難、乗り越えられない筈がない」

 

 

自室の窓から見える中庭に、本を片手に真剣な表情で訓練に臨むお兄様の姿を見つけ、その精悍なお姿にトクンと心が跳ねる。

 

「ハァ…やっぱりいつ見てもお兄様はかっこいい。ねぇエミ、貴女もそう思わない?」

「はい。ログルス様は当家の次期当主として、よく励んでおられると思います」

 

お母様譲りの濡れ羽色の毛先を指で弄びながら侍女のエミに会話を振ると、当たり障りのない返事を返してくる。

自室で紅茶を嗜んでいる最中に、部屋の中の魔素が大きく動いた感覚があったので中庭を見てみたら、案の定お兄様が訓練用の衣装で中庭にいるのを見つけた。

お兄様は私と同じ、お母様譲りの艶のある黒髪を後頭部で一つにまとめ、お父様譲りの鋭い眦のルビー色の瞳を持っていて、線の細さと相まって一見すると女性的な印象を受ける美男子だ。

その上昨年の適性検査というので、王国史上初の全属性魔素への適正有りという伝説を生み出したらしい。

以前から誰よりも格好よくて、誰よりも優しい自慢の兄ではあったが、最近ではいっそう素敵になった気がする。おまけに、普段から自分を高めることを忘れない真面目でひたむきなお姿は、実の妹である私ですら胸のトキメキが抑えられなくなってしまうほどでーー。

 

「なんで、私はストライアの家に産まれてしまったのかしら」

「その言葉は胸の内に控えた方が良いかと…」

「冗談よ、冗談。半分くらいは」

「半分は本気なんですね…」

 

エミがやれやれとため息を吐く。あら不敬、お父様に言いつけてやろうかしら。

まぁエミは私が物心つく前からずっと侍女として、私に仕えてくれている姉のような存在だ。この程度のじゃれあいはよくあること。今更目くじらをたてるものでもない。

 

「レイチェル様、紅茶をおつぎします」

「ええ、お願い」

 

いつの間にか空になっていたカップをエミに渡して紅茶を注ぎ直してもらう。

カチャカチャと茶器の擦れ合う音が静かな部屋に響く。そうして穏やかな気持ちに浸っていると、また魔素が大きく動く感覚と共に、お兄様の手のひらに浮かんでいた円形の紋章のようなものが溶けるようにして消えていくのが見えた。どうやら魔法の発動に失敗したらしい。

 

「ねぇエミ。魔法って、そんなに難しいものなのかしら」

「そうですね、難しいといえば難しいと思います。特にログルス様のようにいくつかの魔法に適正がある方は、普通より大変だと聞いた覚えがありますね」

「ふぅん、そうなんだ」

 

紅茶をカップに注ぎながら話すエミの返事に、私は何も無い空間に指をくるりと回す。

そうすると指先が通った空間に『赤青緑茶』の4色の光の軌跡が走り、空中に溶け込むように消えていく。

 

「今から来年の検査が楽しみだわ。お兄様と一緒に魔法のお勉強がしたいもの」

 

中庭でお兄様と肩を並べて魔法を使う自分の姿を思い浮かべ、ウキウキとした気持ちになるのであった。




妹様登場です。
妹様はクルスと双子です。そして天才。
クルスが剣の天才ならレイチェルは魔法の天才です。

読んでて分かりづらいかもしれませんが、ログルスがやってるのは『砂漠の流砂の中から砂金だけ選んで箸で摘んで選別する』レベルのやべぇことを努力だけでやってのけてます。常人だったらまず間違いなく適性があるだけの『無能』の仲間入りです。しゅげぇ。

感想、ご指摘あればゴリゴリ頂けると執筆意欲がブリュブリュ湧いてきます。
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