ロードトゥドラゴン(ロードラ)の世界に転生   作:錯也

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赤い狩人と黒い狩人

 

 はっきり言うと、戦いはほぼ一方的だった。

 無論圧倒しているのはチートキャラである神無討也ことこの俺。

 俺の、「暗黒物質」を作り出す能力は、自分の影か体が別の物質の影や闇に触れている場合、自分の影以外からだって作ることができる。だからコートの内側から、なんてこともできるのだ。

 今俺がダークマタ―を製造する媒介にしているのは、自分の影である。

 そこから生み出したダークマタ―を鉤爪のように捻じ曲げ、回避行動を続けるフェンリスに延々と放ち続けているのだ。

 俺はその場を一歩も動いておらず、フェンリスのほうはダークマタ―の攻撃をかいくぐり、俺に接近しようとして再び放たれた無数の刃に仕方なく距離を取るというのを繰り返している。

 ………て、いうかさ。もうこれ戦いじゃ無くね?一方的な嬲りだよね?まあ面白いから良いけど。

 

 はっきり言うとこちらとしては相手の消耗を待つだけである。が、フェンリスの方もいまだに動きが衰えるような気配は見えていない。

 この戦いは少し長引くかな?と、俺が内心で思い始めた頃、突如として均衡が破られた。…いや、正確には戦闘自体が終了したのである。

 

 俺の放った数本のダークマタ―を躱したフェンリスは、地面を蹴って大きく俺との距離をあけた。

 もちろん今までと違う動きを見せたフェンリスの行動に、俺は少しだけ警戒していたのだが。

 フェンリスは、そのまま踵を返して森の中へと消えていった。

 

 ……………………………………………………は?

 

『逃げたな』

「ああ、なんだ逃げたのか…………………って、いやいやなんで逃げたんだよ!?」

『知るかよ…とりあえずあれを追いかけるのはあきらめて村の中に行ってみようぜ?』

「一応もう村自体には入ってるはずなんだがな。まあ、この荒れ具合をみると、ここに人が住んでる可能性は0だろうな。でも…なんか見つかるかも分からんし、とりあえず見て回るか………」

 地面に落ちているナイフを回収しつつ俺は答える。

『ああ、そうだ、一応またフェンリスが近づいて来たら教えてやるよ』

「よろしく、まあもうすぐ夕方になるしあんまり長くは探せないけどな」

 そんな感じで俺とベリタスは、おそらくなにもないこの村を散策することにしたのだが………。

 

「まさか、雨が降ってくるなんて予想外だな…」

『ああ、全くだ。俺にとっては関係ないがな。でも屋根がある建物が無事でよかったな?雨宿りくらいには使ええんだろ』

 いきなり雨が降ってきたので慌てて今いるこの家に駆け込んできたのだ。雨は嫌いだな俺は。

 ていうか、雨が降るかもしれない事くらいベリタスは分からなかったのか?フェンリスの気配には俺より早く気付く癖に。

 などと、声には出さず相棒への不満を心の中で垂れ流しながら雨宿りに使わせてもらってるこの家を見て、俺は何となく違和感を覚えた。

 

「?」

 

 なんだろう?確実に何かがおかしいのだが、何がおかしいか分からない。だがおかしいことだけは分かる。

 その理由を探ろうとして家の奥へ行ってみようと足を踏み出し…。

 ジャキリッという音とともに、

「クク、…そこのお兄さん。こんなとこで何をしてるんだい?」

 という、迂闊にも開けっぱなしだったドアの方から聞こえた声にすぐに足を止め、その声のする方向へゆっくりと首と視線を向ける。

 

 「赤ずきん」という童話をご存じだろうか?

 まあ、ほぼ確実に知っているとは思うが、そこにいたのはその登場人物そのものだった。もちろんあの話では主人公である赤ずきんである。

 ただし持っているのは果物の入ったフルーツバスケットではない。ファンシーなデザインの長いぬいぐるみ、その先端からは黒く鈍い色を放つ銃口が飛び出している。

 そして、いまそれはまっすぐに俺を照準していた。

 このファンシーなデザインの銃を俺に向けている赤ずきん娘が【狩王】グリムドアである。

 にしてもなんでこの世界の奴らは一言目か二言目には敵意向けてくんの?

 

『オイ…マクスウェルさん違っただろ。友好的だったろ』

「ああ、そうだったね」

 

 なんていうこの場の雰囲気に合わない、緊張感のかけらもない会話をベリタスとしてから、無視するのはかわいそうなので、俺はグリムドアに反応してやる

 

「お嬢ちゃんこそこんなとこで何してんの?ここ、おっかない獣がいるから早く家に帰った方がいいと思うよ?」

 が、グリムドアはクククと含み笑いを漏らして、

「獣って…」

『お前のことか?』

 続きお前が言うんかいベリタス。最後まで言わせてやれよ。なんかグリムドアちゃんお前のこと睨んでるよ?

 て言うかさ。

「あ?誰が何だってぇベリタス君?存在ごと「暗黒物質」でたたき切ってやろうかぁ?」

『冗談だよ、しまえよその手に持ってる物騒なもの』

「………………………」

『………………………』

「………………………あー、悪いな?コイツ空気読まないところがあってさ」

 沈黙よりもこの気まずさに耐えきれなくて仕方なく俺はグリムドアに話を切り出す。

 ちなみに、銃口はもうこちらには向けられていない。一応警戒のレベルは下げてくれたようだ。

 まあ、俺の体、「咎人」と同じくらいの強度持ってるらしいから、クロノさんのストーリーから察するに銃弾撃ち込まれても傷一つ付かないんだろうが。

「まあ、いいけど」

「ああ、すまんな。ところでマジでここで何してんの?」

 グリムドアがとりあえず納得してくれたのでさっさと話を進めることした。

「何してんの?は僕のセリフだよ」

 僕?ああグリムドアって僕っ娘だったな。

「ん?まあ、色々と旅して歩いてんだが急に雨に降られてここで雨宿りしてんだよ」

「こんな所をかい?それにさっき獣とか言ってたけど?」

「ああ、人狼のことだけどね?」

 おれのその言葉にグリムドアがピクリと反応した。

「あれを見たの?」

 あれ、というのは間違いなくフェンリスだろう。

「さっきそこで襲われた」

「………は?なんで生きてるの?」

 なんで生きてるの?と来たか。そりゃあまあ。

「チートだからかな?」

「意味分かんない」

 そうだろうな。

「あれと戦ったの?」

「うん戦ったよ~」

 不審げに聞いてくるグリムドアに俺は軽く答える。まあこの世界じゃあフェンリスもこのグリムドアも相当強い部類に入るのだろう。

 それこそ「神」と戦えるくらいには。そのくらい王の力というのは強力なものなんだろう。実際にこの世界の、「亜人」て呼ばれてるやつらが「神」に対抗するのに使ったくらいだし。

「どうやって生き残ったの?」

 何やら興味津々で聞いてるグリムドア。まあそれもそうか。

「どうって…。まあしばらく戦ってたら向こうから逃げちゃってゆうか…」

「…て、事は…お兄さん見た目弱そうだけど相当強いんだね」

 見た目弱そうって………まあ良いか。たぶんグリムドアちゃんまだ俺より年下だろうし大目に見よう。

「まあ、それなりにな」

 実際は相当なのだが。

「ふぅん………ところでさ、お兄さん」

「ん?」

「これからどうするの?」

「これから?」

 言われて外を見るともう夜だった。しかも雨まで降ってる始末。

「……………どうしようね?」

 まあとりあえずここで一晩明かすしかないのだろうが…。

「………」

 そうするとコイツはどうするんだろう。

 と、俺は赤い頭巾から飛び出した茶髪のアホ毛をピコピコさせてる少女を見た。

「ちなみに僕は今日はここで休むよ」

 ですよねぇ。

『オレ達もここで今夜は休もうぜ?』

「お前が休息を必要とする存在なのか甚だ疑問だがな」

『うるせえな』

 そう言えば、やっと違和感の正体に気付いた。

「お嬢ちゃんさ、もしかしてここ最近ここに来たことある?」

「うん。前に雨が降った時ここで泊ったからね」

 やっぱり。俺が感じた違和感は、ごく最近まで人がいたかのような感覚だったのだ。

「俺も今日ここで泊ってって良い?」

「もともとぼくの家ってわけじゃあないしね。いいよ」

「そうなんだ、まとりあえずこれで今夜の寝床は何とかなる。後は…」

 食料か。これは俺がここに来る前に少し調達しといた材料を使えば何とかなる。

 問題は二人分あるかだな…。

「え?僕の分も作ってくれんの?」

「ああ、台所適当に使うぜ」

 そう言って俺は荷物の中から材料を取り出しつつ少し埃かぶった台所へと移動する。調理する前に台所掃除すっか。そんな事を考えているとフードのような頭巾を外し、ついでに武器も家にある机の上に置いたグリムドアがついてきた。

「ねえ、お兄さん」

「ん?なに?」

 適当にその辺の戸棚から布を引っ張り出してゆすいで掃除を始めようとした時、思い出したようにグリムドアが話しかけてきた。

「名前。まだ聞いてなかったよね?僕はグリムドアっていうんだ。お兄さんの名前は?」

「俺は、神無討也だ」

「ふぅん。なんだか変わった名前だね」

「まあこの辺じゃ聞かないだろうな」

 いや、ワノクニにもこんな名前の奴いないか。

 とりあえずお互い自己紹介を終え、俺は作業に戻った。

 

『器があると食事なんて必要なんだな。魂だけって便利だな』

 なんかベリタスが言ってるのは無視しました。




グリムドア…何度行っても落ちないんだよなぁ………。
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