「まぁ…こんな沖にある無人島に、こんなところがあるなんて普通思わねぇよな」
『確かに、無人島を外から見たら分かんない様になってるし、これは誰も気づかねえだろ』
そんな話をしながら、俺たちは今、巨大な門を持つ要塞と表現するのがふさわしい建物を見上げていた。ちなみに俺とベリタスがいるのは門の前。
近づきすぎじゃないかと思うかもしれないが、誰も出てくる感じは無いので大丈夫だろ。
別に出てこられても何か問題があるようには感じないんだけど。
『もっとも、気付いた奴は全員始末されてる可能性はあるよな?どうなんだ?』
「お前……誰に聞いてんの?」
『……………』
俺がそう尋ねても、ベリタスは黙ったままだった。ベリタスは、魂だけの存在である。この世界ではクトゥールみたいなものである。だからもちろんベリタスには体は無い、なのに何となくベリタスが見てるっぽい方向が分かった。俺たちの後ろだ。
後ろを見るとそこには、赤い、軍服と海賊服を合わせたようなデザインの服を着た女がいた。
ていうか、そこにいたのは監獄王本人だった。
「マジかよ、トップが真っ先に出てくるとかこの世界どうなってんの?」
『いや、なんでお前はそんなに呑気なの?これ結構ヤバい状況だよ?分かってんの?』
「そうか?ところでなんでお前気づけたの?」
『オレは魂だけの存在だからな、他の魂の気配とかである程度分かるんだよ』
うわぁ、これ多分コイツに体があったら今のセリフどや顔で言ってんだろうなあ。
『オイ!?お前の質問に答えただけでその反応はヒドいよね!?』
「そろそろ良いかな?」
今まで俺とベリタスのやり取りを聞いているだけだった監獄王ヴェルが若干ひきつった笑みを浮かべ話しかけてきた。
「あ、ハイ。すいませんね。うちの連れがご迷惑を…」
『オレかよ!?』
「ベリタスうるさい」
『(泣)』
とりあえず、状況はどうあれベリタスが黙ったのでオレは再びヴェルトギリアムの方を見て言った。
「で?何の御用件でしょうか?」
「いや、私がそれを聞きたいのだけれど?」
………………………もしかして俺が「咎人」だからか?正確には「咎人」に限りなく近い「咎人」とは別物なのだが。
「貴方達は、なぜこんなところまで来たの?それにあなたもそっちの子も普通じゃないわよね?」
笑顔がこわいですヴェルギリアムさん。まる。ところでベリタスはともかくなんで俺が普通じゃないってわかるんだろうね?王威の気配は完全に消せてるはずなんだけど。
「ああ……俺たちは……観光?」
『いや、それは無理があるだろ?』
「……………………成程、少なくともここが何なのかは知っているようね」
俺たちの後ろにある要塞みたいな牢獄を眺めながら、ヴェルトギリアムが言う。
いつの間にかその手はバズーカのようなものをつかんでいた。
俺の方は手ぶら。やろうと思えばいつでもそこら辺にある影からダークマタ―の武器を作れる。
「いいわ……話す気が無いのなら、無理やり聞くことにするわ」
素早い動きで銃口をこちらに向けるヴェルトギリアム。次の瞬間にはその銃口が弾丸を吐きだした。
「…ッ!?」
が、それは俺に当たった瞬間に弾き飛ばされる。何をしたかと言えば簡単である。服の中は当然光が当たらない。だからそこからダークマタ―を作ってコートの内側にはりつけるようにしておいたのだ。おそらくだが、フェンリスの大剣すら軽くはじけるほどの防御力を持つ。
ヴェルトギリアムの攻撃は、神無討也には届かない。
「くははッ!面白いな……けど、面白いけど、お前じゃ俺には勝てねえよ!」
地面蹴る。影からダークマタ―を作り死神が持つ大鎌の形に。
そして、一瞬の早さについてこれなかったヴェルトギリアムに俺は黒い刃を振りおろす。