オーガスタスの後についていくと、騎士団のメンバーが二人一組で模擬戦をしていた。
実際に騎士団が相手にするのは、なにもドラゴンだけではない。故にこうした対人線の訓練もやっているとのこと。
にしても、ヨハンさんとドミニクさんマジで兵士の育成方法が正反対。まさに飴と鞭。
ドミニクさんの方法ははたで見てて、ベリタスが思わず『うわぁ……』とか言っちゃうくらいに厳しいものだ。
ところで俺は何すればいいの?
「……いやだから誰かと一体一で模擬戦を…」
「誰と?」
「………ワシとやるか?」
「………くははッ!良いね、面白そうだ」
そんな感じでオーガスタスと試合をする事になった。
さっきまで模擬戦をしていた騎士は全員手を止め俺とオーガスタスの模擬戦を見ている。ヨハンは元からそれを注意したりはしないだろうが、ドミニクですら手を止めていた。
オーガスタスが赤い大きな両手剣を構える。対する俺は騎士団で普通に使われている大きめの剣を肩に担いだまま。
俺は、あまり大きな武器は好んでは使わない。ドラゴンなど元から大きな体の相手も、ダークマタ―でいくらでも刀身の長さを調整して一刀両断にできる。まあ、だから今までそういう武器を使った事がそもそも無い。ちなみに槍とか斧とか鎌とかは例外だ、柄の長いものは基本的に全部使う。
それに、肩に担いだ状態からでも別に攻撃できるしね。
『チートだからな』
いつまでも剣を肩に担いだ状態の討也に、オーガスタスが少しずつ距離を縮めてくる。両者の距離はおよそ7メートル、やろうと思えば、二人ともにこの程度の距離は一瞬で詰める事が出来る。そもそも討也は百メートルくらい間合いが有ってもどうという事は無い。
が、オーガスタスはこの距離になっても一向に剣を構えようとしない討也から余裕を感じたのか、警戒して踏み込んでこない。それが思わず周りの騎士が手を止めて見てしまう緊張状態を生む一因にもなっている。少しずつ縮まった距離はもはや5メートル。
そこで、オーガスタスは動いた。
雄たけびと共に剣を振り上げ、距離を詰める。そしてそれをおそらく並みの騎士なら視る事すらできないほどの速度で振り下ろす。
「王威」を持たない人間が出せるものとしては恐らくは最高クラス。限界までの力を持った実力者の一撃。
が、討也は並みでも無ければ、人間が出せる限界の力などもはや最初から超えている。
刃が討也に当たる直前、今まで突っ立ったままだった討也の姿がその場から消えた。
否、消えたようにその場にいた人間の目には映った。恐らくこの状況を傍観者で唯一理解していたのはベリタスだけだろう。ある意味ベリタスもチートである。
オーガスタスの放った一撃が空気を鋭く裂く音を立てる。それが同時に攻撃が外れた事を示していた。では討也はどうしたか。
地面を軽く蹴って上空へ跳び上がっていた。そのまま空中で一回てんし、勢いをつけオーガスタスに向け攻撃を放つ。剣を使った攻撃ではなく、ただの踵落としだ。
直前で気付いたオーガスタスが、後ろに下がって躱す。
先程までオーガスタスが立っていた地面が轟音と共にえぐられる。
さらに討也は攻撃を放った姿勢から一瞬で地面を蹴ってオーガスタスに追撃をかける。
後ろに下がったままの勢いが残るオーガスタスには、その攻撃に対応することはできなかった。
再びオーガスタスが剣を構えた時には、オーガスタスの背後に回った討也が首元に剣の切っ先を笑顔で突き付けていた。
オガ「少し規格外すぎるのではないか?」
討也「え?普通だろ?」
一同「「「それは無い」」」
べり『もうとっくに慣れた』