ガスタール火山の山頂。今ここで、数百の騎士と、無数のドラゴンとの戦いが始まろうとしていた。
そんな中神無討也は。
「なんかわらわら集まってきたけどさぁ、動物は種族ごとにそれぞれ自分たちだけのコミニュケーション方があるっていうし、やっぱドラゴンにもあるのかねぇ?」
なんていう場違いな事をあくびをしながら言っていた。
「いやお主、さすがにそれは緊張感なさ過ぎだろ」
肩に担いでいた赤い剣を構えたオーガスタスがそんな討也の態度に突っ込みを入れるがもはや咎めはしない。
「ところで、渡しておいた剣はどうした?」
討也がこれだけのドラゴンの大軍を前にいまだに素手でいるのを見て隣にいるドミニクが聞いてきた。
『今さらかよ?』
「ああ、それなら置いてきたよ?」
「「「…………………」」」
何気なく答えた討也の返事に、それを聞いていた騎士たちの動きが固まる。元々これだけのドラゴンの数を前に剣を構えつつも足を震わせていた騎士も、唖然としている。オーガスタスやドミニクとヨハンが絶句しているが、この場の全員が討也を見る目は一様に「コイツ何言ってんの?」である。
「……どこに?」
「詰所」
「マジで?」
「本気と書いてマジ」
「何しに来たんだよお前」
「え?ドラゴン退治だろ?」
「「「分かってて置いてきたの!?」」」
騎士団の面々の質問にいつも通りの笑みを浮かべつつ淡々と討也は答えた。
「大丈夫だよ、素手ででもドラゴンは倒せるから」
「あーそれもそうだな」
「ならまあ、いいか」
「よし、では行こうか」
「「「いやそれはおかしい」」」
討也の言葉にあっさりと納得したオーガスタス、ドミニク、ヨハンに残りの部下たちが突っ込む。
常識的に考えたら人間が素手でドラゴンを倒すのは、到底不可能だという程度の事は三人にだってもちろん分かっているのだが、ここ何日か訓練を共にしたリ、町の近くに現れたドラゴンを討伐したりしたので、討也の規格外さや、常識はずれな強さは理解しているので、ああ、コイツならやるかもなと思ったのだ。
ついでに言うなら、騎士団のメンバーは誰も知らないが、いざとなればダークマタ―で武器などいくらでも製造できるのだ。
「さて、それじゃあ…暴れるとしますかぁ……」
こちらに飛んでくる飛竜の一匹を見つつ討也は不敵に笑う。次の瞬間には地面を蹴って竜の目前に迫っていた。さらにそこで空気を蹴って跳び上がる。飛竜はいきなり現れて姿を消した討也の動きに混乱しゆらゆらと、その長い首であたりを見渡す。
そこに、上空から討也の踵落としが竜の頭蓋にたたきこまれた。
すさまじい速度で地面にたたきつけられた竜は、口から血を大量に吐き出してそのまま動かなくなる。
と、その竜の体の上に着地した討也が、完全に動きを固めたオーガスタスたちに向かって邪悪な笑みを浮かべると。
「くはははッ、ざっとこんなものさ」
と、特に何でも無い事のように言った。
「「「…………………」」」
本当にやりやがった、と誰もが思いつつも、その光景には誰も言葉を出せずに唖然とするしかなかった。
この200年間、討也とベリタスは旅をしながらも常に戦い続けていた。元々身体能力的には素手でドラゴンと戦う事は討也にとっては割と余裕である。あとはこのハイスペックな体の使い方に慣れるだけ。この200年間で討也はさらにチート化していた。
オーガスタス「なあ、あの踵落としって……もしかしてワシとの訓練でやらなかったか?」
討也「ああうん。やったねそういや」
オーガスタス「(゚ロ゚;)エェッ!?」