オーガスタス達、騎士団組のまえに「朱竜」が姿を現したころ、討也はこの戦場を観察しているものの存在に気付いた。
さほど遠くは無い、さすがに見える位置にはいないが気配で分かる。
討也は、近くに飛んできた飛竜をドラゴンタイプのエネミーを拘束するスキル「ドラゴンバインド」を使用して動けなくした直後に、敵を攻撃するオーソッドクスなスキル「ダークネスカノン」を打ち込んでたちまち撃破すると、その気配の方へと空中を蹴って向かって行った。
ちなみに、実際にロード・トゥ・ドラゴンのゲームをやっている人は疑問に思うかもしれない。
これらのスキルは、ゲーム中では「アクティブスキル」と呼ばれ使用時にそれぞれスキルごとに「ソウル」を消費する。「魂」を消費しなければ当然この世界でも使用することはできないし、使い過ぎれば当然魂を使いきって死に至る。
では、討也が何故そうならないか。
一つ目に挙げられる理由は、既に討也には魂が存在していないから。正確には手違いで壊されている。
二つ目の理由は討也が自分の「器」つまり体に蓄積できるソウル量が膨大だから。ついでに言うなば、三番目の「ロードラの世界で使えるすべての技を覚える才能」の特典は、当然「アクティブスキル」で無くとも習得することができる。イザナギの料理の腕すら習得できるほどだ。亜人が持つ「パネルスキル」。相手を倒すたび得られるソウル量が上昇する「ソウル・インヘイル」やソウルを奪い取る「ソウル・ハント」など、習得するだけで効果のある「パーティースキル」だって例外ではない。
つまり、神無討也はどれだけこの世界のスキルをスキルを使いまくったところで、死ぬことはほぼあり得ない。
そもそも、一つ目と二つ目の特典の時点で十分すぎるほどにチートなのだ。
が、今回討也は、真っ先に気配のする方へと向かったものの、同時にその気配の主を警戒していた。というのも、その気配の持ち主が、単純な能力だけなら討也に匹敵するものを持っていたからだ。
もしかすると、「神」またはそれに準ずる何かだと思っていたのだが。
はたしてその予想は的中した。
向かった先、ここガスタールの火口の付近の上空に浮かんでいたのは、青い髪、髪色と同じ鎧、盾、槍を持った人物だった。
使徒のひとり「ヴァルザーク」で間違いない。
「くははははッ。やっと「神」に関連する手っ取り早い奴を見つけられたぜ」
ゆらり、と、コートの裾からダークマタ―があふれ、それは討也がいつも使う死神が持つような大鎌へと姿を変える。
さすがに討也も素手で挑む気はないようだ。
「捕まえるか、それとも倒すか……。いや、神様のいる「バベル」っていうところの場所教えてもらうのもいいか」
そう言いつつ大鎌をつかんだのだが、ふと討也は首を傾げた。
こちらはヴァルザークを目視できる位置にいるのに全くヴァルザークがこちらに気がつく様子は無いのだ。が、少し考えたらすぐに理由は分かった。討也が今、「王威」の圧倒的な気配を殺しているからだ。そもそも「王威」を全開にしてたら「朱竜」は逃げないまでもここにいる飛竜は一匹残らずここには近寄らなかったかもしれない。この200年間で、「王威」を外側に向ければ並みの人間には息が詰まるくらいにはパワーアップしている。ドラゴンが本能的に近寄るのをためらうほどには、生き物にとって危険な気配を発している。
「こっちに向けよ」
そう言いつつ、討也は、消していた気配を、「王威」を青い使徒に向けて「解放」した。