闇の時代の事である。
闇の時代の勇者エイゼルは「朱竜」と同じ「四竜」の一角である「邪竜」を打倒し、その眼球を自分に移植した。これがのちに「邪竜の魔眼」と呼ばれるものである。
そして現在、火の時代で同じく「四竜」そ一角「朱竜」を倒した討也は、その眼球を回収していた。ちなみに移植はしない。
「名前をつけるなら「朱竜の焔眼」てところかな?」
『………なあ、お前…それ回収したのは良いけどどうするの?使うの?』
「は?お前三行上ちゃんと見た?」
『そうゆう事言うのやめろ。そうかコレクションか』
討也は眼球をコートにしまうと今まで座っていた窓辺の椅子から立ち上がった。
「朱竜」を倒した後、討也は騎士団を抜けている。オーガス達は引き留めたが、討也はこれからやる事が有るからと結局抜けたのだ。
騎士団を抜けてから2日は王都内を適当に見て回ったのだが、今日王都を出発することにしたのだ。ちなみに今まで居たのは宿屋である。
『そう言えば、オーガスタスってあの戦いで本来死んで、結局「朱竜」を倒すのはヨハンとドミニクのはずだったんだよな?』
「ああ、本来はな」
『なんで助けたんだ?』
「ん?まあ何となくかな」
『(何となくねぇ)』
王都を出る入口に向かいながらそんな取りとめのない話をしていたのだが。
「あ」
急に討也が足を止めた。
『?どうかしたのか』
「いや、オーガスタスにかけといた技……解くの忘れてた…」
オーガスタスにかけた技、と言うのは結局今回はその効果を発動すること無かった、一度死んでも甦るスキル「リザレクション」である。ちなみにアルテミスという神が使うスキルだ。
「まあ、良いか」
『えー。良いのかよ……』
再び歩き出す気まぐれな相棒について行きながら、ベリタスはふと何者かの気配を感じた。
『?』
ベリタスには目が有るわけではないのだが、周りの状態を把握することができる。だが、辺りをいくら探っても気配を感じるだけで姿をとらえることはできない。
やがて王都の入口に二人がたどり着いた時、急にその気配が強くなり、討也もそれに気付いた。
「!?」
気配がする方を見た討也も、やはりその姿を捉えることはできなかった。
『討也、なんだか知らねえけどこれはヤバい感じがするぞ』
「まあ、普通じゃあ無いな、面白い」
いつの間にか討也はコートの袖からダークマタ―でナイフを作り出しいつでも戦闘できる状態になっていた。討也にしては珍しくというか、この世界に来てからは初めて「構え」を取っていることから二人が感じている気配が普通で無い事がうかがえる。
『やあ、驚かせて悪かったね。君達に敵対する意思は無いんだ』
そんな声が二人に届く。が、決してこの場にいるのは二人だけではない。なのに誰も声に反応する様子を見せないという事は、おそらく声が届いているのは二人にだけという事だろう。
「だったら姿を現せよ?」
恐らく聞こえているだろうと思い、討也は呟くようにそう言った。
『本来ならそうするのが礼儀なんだろうけど、ごめんね、僕は姿も魂も無いんだ』
つまり存在としてだけそこにあるという事。索敵範囲が討也よりも広く正確なベリタスが、いくら探っても姿を見つける事が出来なかったのは、それに器も魂も無かったからだ。
『(成程、どことなく討也と気配が似てたのはそういう事かよ)』
ちなみにベリタスは、討也の事も今感じている気配と同じような感覚でとらえている。討也と質が同じ気配ならば、彼がヤバい感じと言うくらいただならぬ気配を感じ取ったのは当然である。実際討也からも同質のただならぬ気配をベリタスは感じているのだ。
「………まあ、それなら仕方ない。で?何の用だ?」
一応構えを解いて討也は気配がする方に向かって言う。
『うん。こっちに来てくれ、そう、もう後2,3歩前に』
「?」
首をかしげつつも討也は言われた通り足を踏み出して……。
瞬間今まで街中だった景色が一変した。
「………へぇ………これは…「禁書館」か」
見渡す限り本棚ばかりの景色。だが、その本棚にはまだ数冊しか本が入っていない。
『マジかよ…』
どうやらベリタスもこちらに来たらしく、横で茫然としていた。
「でもここって「書王」の許可が無いと入れないはずだろ?」
『ここがどこなのか分かっただけでなく、彼女の事まで知っているんだね…やっぱり君達は…特に君はイレギュラーだね』
そいつが面白がるような口調で言う。
「イレギュラーね…で?ここに連れてきたのは良いけど何かあるの?」
『え?いや特に何も』
『じゃあなんで連れてきたよ』
ベリタスがあきれた口調で突っ込む。
『いや、ほら。一応君達には僕の事を知っておいてもらおうかなぁ……って』
「ふうん」
討也は興味が無いというふうにから返事をすると、いくつかの本の中から見つけた「グリムドア」の書を引っ張り出した。
『あ、それ君の知り合いの「書」だよね。まあ、それは良いんだけど…。君達、僕の目的に協力してくれないか?』
「お前の目的?」
気配のある方を目だけ向けながら討也は尋ねる。
『この世界を滅びの運命から救う事さ』
……………それって本来この世界の4人の主人公か、ゲームのプレイヤーがする事だろ?それに俺は主人公には向いてないからなぁ。どちらかと言うと悪役っぽい気がする。
と、討也は思ったのだが。
「悪いな、俺には俺の目的が有るからそれはたぶん無理かもしれない」
さすがに思った事を言うわけにもいかないのでそうごまかした。
『別に君の目的は勝手にやってくれていいよ。ついでに協力と言っても今すぐってわけじゃあ無い』
「……ま、気が向いたら協力してやるよ」
『そうか、それは良かったまた好きな時にここに来てくれ。君は王都内からならいつでもここに入れるようにしておいてあげるよ』
「……そりゃどうも」
『じゃあね』
「ああ、………また、……7度目の世界で」
「グリムドアの」「書」を本棚に戻し、討也とベリタスは「禁書館」を後にした。
もう少しで火の時代も終わりだ…