ロードトゥドラゴン(ロードラ)の世界に転生   作:錯也

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800年の成果

 

 一瞬で分かった。

 今目の前にいる赤い鎧を纏った者は、おそらく自分が今まで戦ったことがあるどの敵よりも強いと。

 そう思ったのは、討也だけではなく、討也と対峙する者もまた同様だった。

『あれはたぶん神だな』

 隣にいつの間にかいたベリタスが討也だけに聞こえるようにぼそりと言った。

「へぇ……神が出てこなくて残念とかおもたっけど……」

『ああ、ラッキーだな』

「他にこの辺りにこいつと同じくらいの力を持った奴はいるか?」

 討也がベリタスにこんな質問をするのは、ベリタスのほうが討也より索敵範囲がかなり広いからである。

『アヌビスくらいの力を持ってるのならいそうだな。おそらく使徒だろう』

 それを聞いた討也は、にやりと楽しげな笑みを浮かべる。

「だったらこいつだけでも倒しておくか……」

『油断するなよ?あれはフェンリスや「朱竜」なんかとはわけが違うぞ』

「分かってるっつーの!」

 その言葉とほぼ同時に討也は地面を蹴って「神」への距離を殺す。

 が、「神」もまた手にした斧を空中で薙いだ。

 

 轟音と共に、炎が討也に向かって放たれた。討也はそれを大鎌を振って風を生み出し振り払うと、さらにまとわせていた炎を「神」向け叩きつける。

 だが、「神」はそれを避けようともせず、そのまま炎が直撃する。炎が通過した後の地面は、草が燃え尽き灰と化すが、炎の中から姿を現した「神」には焦げ跡ひとつ残っていない。

「あ?火は効かないのかよ?」

『さあ?どうなんだろうな』

 効果が見られないので、討也は攻撃手段を変更した。

「アクア・バースト」

 自分の治癒能力に応じて相手に水属性のダメージを与えるスキルを使用する。

『ほう?二つの属性を操れるのか?これはなかなか珍しい』

 降りかかった水圧弾を軽く斧を振って消し飛ばしながら、「神」はどことなく馬鹿にした口調で言う。

「残念。二つじゃないぜ?」

 その言葉と同時に、討也は「カオス・パニッシュ」を使用する。

『!?』

 初めて顔色を変えた「神」が、慌ててそれを躱すと、反撃とばかりに斧を振り、熱風を纏う衝撃波を放つ。

 どうでもいいけど斧振るだけで攻撃できるのってズルくないか?

『スキル使いたい放題のお前のほうがどう考えたってズルいわ』

「あー、ね」

 そういえば先ほどからアヌビスが何もしかけてこないな、と思って彼女のほうを見ると、アヌビスは槍を構えたままで立ち尽くしていた。

 討也は「王威」を全力で振り撒いているし、神が放つ威圧感とて半端なものではない。普通に考えたらこの中に割り込んでいきたいとはだれも思わないだろう。

 まあ、討也しても今それはありがたい。

 アヌビスと「神」に連携されるのは、さすがに討也でも厄介だと思うのだ。

 

「さて、そろそろ本気で行きますかねえ?」

『え?今までのなんだったの?』

 もちろんこれが神無討也の本気なわけがない。800年も修行した成果が、神と戦える程度のものであるはずがない。

 神にダメージを与えるのではだめなのだ、神を倒せる力が無ければいけない。ガスタールで、ヴァルザークと互角だった討也は、自分が神を倒すには力不足だと理解していた。だからこその800年もの長い時を修行にあてたのだ。

「くはははははッ!行くぜぇッ!」

 ドンッ!と、すさまじい轟音と共に討也の姿が掻き消えた。

 どうということはない、空中を蹴って移動しただけの話。その移動速度が単に瞬間移動並みのものであるというたったそれだけの事だ。

 空中へと跳び上がっていた討也は、自分の姿を見失い慌てて周囲を見回していた神の頭上に、光を纏わせたダークマター製の大鎌を振り下ろす。

 一瞬早く気づいた神がそれを斧で受け止めた。神の立つ地面に大きなヒビが入る。それでもアヌビスのように吹き飛ばされることなく、衝撃を地面に受け流したのはさすが神と褒めるべきだろうか。

 が、受け止められることすら討也にとっては計算のうちだった。叩きつけた大鎌を再び振り上げた討也に神は再度攻撃が来ると思って身構えた。

 攻撃が再び放たれると予想できたのはいい。

 問題は攻撃手段。

「うぉらぁッ!」 

 討也は、大鎌を振り上げたまま、神の赤い鎧の胴にドラゴンすら沈める蹴りを叩き込んだ。

『ッ!?』

 すさまじい衝撃が神の肉体に伝わる。衝撃で相手を揺さぶる蹴りは、神を吹っ飛ばすことはなかったが、確実に威力を蓄積する。

 それでも、神とてそう簡単に倒れはしない。呻いたのは一瞬、すぐに斧を握りなおした彼は、討也に向けて赤い斧を叩きつける。

 轟音と共に土煙が上がり、おそらくそれが討也に命中しなかったであろうことを彼に知らせた。

 次の攻撃を予想し、斧を引き一度退こうとした彼は、いくら引いても斧が動かないことに気づいた。

 やがて、土煙が晴れたとき、彼の目に映ったのは、地面に刃が刺さった自分の斧を右足で踏みつけ、楽しげな笑みをうかべた、神無討也の姿だった。

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