討也が、地面の自分の影から、ダークマターで大鎌を作り出す。
神もそれを見ていたし、避けようと思えば一瞬で躱せるはずだった。
だが、武器を放して距離をとるか、無理やりにでも斧を抜き取り攻撃に転じるか。
そんな一瞬の迷いが、思考が―――その神の運命を決めた。
神無討也はとにかく早く、そして速い。作り出した大鎌を握った討也は、ためらうことなく、それを目にもとまらぬ速さで神に切り付ける。
鮮血と共に、鎧の肩のパーツごと、神たる者の右腕が宙を舞った。
だが、それは神が斧の柄をつかんでいた方の手。
だからこそ、神は腕を切り裂かれた激痛に顔をゆがめながらも、今度こそ迷うことなく退くことを選んだ。
だがやはり、それでも―――決められた運命は変わらない。
地面を蹴って神が後ろに後退したように。神無討也もまた、地面を蹴ってその距離を殺す。
距離をとった神は、その次の瞬間には、神無討也がその距離を詰めてきた事に、驚き、恐怖し…そして、すでに振りかざされた真っ黒な大鎌の刃に―――それが示す滅びの運命に―――死に―――絶望した。
だが、討也はそんな神の絶望など気にすることなく、まるで当然の結果を示すように、勝利を見せつけるかのように、手にした武器で、神をも殺せる武器で、敗者たる神の体を両断した。
炎を使う神らしく、最後には燃えながら消えていく神には目もくれずに、討也は神が残した赤い斧を拾い上げる。
もしあの神が、討也のスピードの事をもっと知っていたら。いや、神が討也程でないにせよスピードも兼ね備えていたら、何より、「3番目の特典」がなかったら?もしかしたら負けたのは自分だったかもしれないと討也は思った。なぜなら今自分の足元で消えていく神は、「討也に初めてダメージを与えた」化け物だからである。
最後に神が放った斧の一撃。あれは討也に命中しなかったわけでも、討也に効かなかったわけでもない。
防御も間に合わなかったし、回復している間に次の一撃で本来ならばやられていた。
時間を制するアクティブスキル「タイム・オブ・ゼロ」を使わなかったら。
いや、正確には、一撃を浴びてやばいと思ったからこそ時間を無理やりとめ、回復してからそれを解除したのである。
つまり、「3番目の特典」に助けられた。
負けたとはいえ、十分化け物である討也にやばいと思わせたのはさすが神といったところだろう。
「水の時代ではもう少し鍛えておくか」
ぽつりとそんなことを呟きながらも、この世界チートでもなければ生き残れなくね?とか思っていたりはするのだが。
「………王威………神殺し…だと?」
神を殺されてか、呆然とアヌビスが呟く。
「あ?王威?神殺し?……ああ、[神殺王]ってか?うーん、悪くはねえなそれ」
そういいながら、討也は赤い斧をアヌビスがいる方へと投げ捨てるとくるりと彼女に背を向け。
「じゃ、用も済んだし俺は行くから」
そういいながらひらひらと手を振る。黙ってベリタスもその隣に飛んできた。
「ッ!?待てッ!!」
我に返ったアヌビスが手にした「幽葬の槍」を構えるが、討也は構えず、それどころか武器すら手に取らず、ただ振り返って言った。その顔には楽しげな笑みが浮かべられている。
「神様の敵討ち?やめとけよ」
そこで一度間を開け、そして笑みを消し。
「お前じゃ俺には届かねぇ」
「ッ!?」
悔しげに顔を歪めたアヌビス。が、間違いなくそれは事実だ。
「けど………どうしてもって言うなら……1000年経ったら出直せよ」
その時お前が強けりゃあ殺してやるよ。
そう言って、再び楽しげな笑みを浮かべた討也は、今度こそ、地面を蹴って跳び上がるとその場を後にした。
その少しあと、火の時代は終わり、この世界は水の時代を迎えた。
名前すらないモブ神が神無さんに初ダメージの快挙を!