青い魔道服を着た青年が、杖を振りかざす。
感覚的に、直感的に何か危険なものを感じ取った討也は、その場を蹴って後ろに下がった。
下がった直後。そこにすさまじい量の水が叩きつけられる。
かけられたのではなく、文字通り叩きつけられた。
地面が衝撃で歪んでいることからも、その威力の高さがうかがい知れる。
「ベリタスー?やっぱ火使っていいよね?」
『だめに決まってんだろ!』
「っち、仕方ねぇなぁ……」
再び青年が杖を振りかざそうとする。
が、それが再び討也に水流を叩きつける前に、すさまじい轟音と共に青年の手から杖が吹き飛ばされた。ついでに衝撃が吹き付けられ、青年はよろめきながらもその場に踏みとどまる。
轟音の原因はもちろん討也である。
討也は、空気を蹴って空中に跳び上がるという真似ができるが、それのやり方を少し変えると、空気を蹴りつけて衝撃を飛ばすことができるのだ。
もちろんこんな真似は1番目の特典で肉体が強化されているか、もしくは神であったり王の力を持っていたりしなければ絶対にできない。
もっとも討也はディアブロやアヌビス曰く「王威」を持っているようなのだが。
青年は衝撃に先ほどまでの笑みを苦痛にゆがんだ表情に変えながらも、討也のいる場所を探す。
実をいうと、水流を叩きつける技は、「アクア・バースト」という自分の治癒能力に応じて相手に水属性のダメージを与えるスキルである。
別にこれは、杖が無くても使う事が出来るのだ。
だからこそ、今度こそはそれを叩きつけてやろうと、衝撃がおさまった瞬間に青年は動いた。
が、今までそこにいたはずの討也は既にそこにはいない。いや、目の前にいたのに消えたのである。
「!?」
慌てて周囲を見回す青年の背後から。
「悪いけどお前じゃ俺には勝てねえよ」
と、余裕たっぷりの声がする。
振り向く青年。だがその一瞬後には討也は既に地面蹴って彼の背後に。
「まあ面倒だから殺さないでやるよ」
青年の首筋に手刀を叩き込む。
何が起きたかもわからないまま倒れる青年は、意識が消える直前、「くはははははははッ!」という笑い声と、「100年経ったらまた来いよ!」という声を聴いた。
『で?そいつどーするの?』
倒れた青年を見ながらベリタスは討也に尋ねる。
「ほーち」
討也は既に興味がないとばかりに町の入口目指して歩き出していた。
『放置かよ……まあいいけどよ』
それにしても……こいつ誰かに似てんなーとベリタスは思ったのだが、討也がとっとと歩いて行ってしまうので、考えるのをやめ後についていくとした。
討也が青年を殺さなかったのは、必然か、或いは討也は実は青年の正体に何となく感づいていたか。
ここで討也が青年の命を、正確には、青年の器をのっとった「ソレ」の命を奪わなかったことは、若干時間の変化はありつつも、水の時代の悲劇が変わらずこの街を始点に始まることを示していた。