クトゥールは、何が起きたのか理解することすらできなかった。それは、討也が使った技、「ソウルハント」の効果が分からなかったというだけではない。
何も感じ取る事が出来なくなったのだ。自分の体から、乗っ取った器から感覚が失われたのだ。
死んだのだろうか?と思ったクトゥールは、しかし自分の勘違いにすぐに気付く。
感覚が失われるのも当然だった。
自分の魂が、「自分自身」が、器から切り離されていたのだから。
クトゥールの魂をファウストから抜き取ったのは良かった。だが、二つばかり問題があった。
一つはクトゥールをどうするかという事。もう一つは、ファウストの魂のほとんどは、クトゥールに食われ、その命があとわずかな事である。
まずはクトゥール、このままにしておくと、こいつは割とすぐに復活してしまう。本来は、メリルとの戦闘でもっと魂が削られ疲弊した状態になっていなければならない。
となると、こいつの魂を自分で削るしかないのだが、厄介なことに、分散した魂もクトゥールとして単体で自立することができるのだ。
わかりやすく言えば2つに切られても、切られた両方が再生して2匹になるプラナリアみたいなもんである。
「どうするか」
『俺がクトゥールの魂を一部接収しちまうのはどうだ?』
「大丈夫なのか?お前がクトゥール化したりしない?」
『全盛期のクトゥール相手なら分からないけど、生まれたてに負けはしねえよ』
「(全盛期なら分からないのか)」
そっちの方は俺に任せろ、と言ってベリタスはふわりとクトゥールの魂の方に飛んで行った。
ふとファウストがいたところを見れば、メリルが駆け寄って何かを話している。おそらくファウストはもう長くないだろう。
ところで、この状況で俺は何をすればいいんだろう?と思いつつ、討也はとりあえずこれからの事を考えることにした。
その後、ファウストを修道院まで連れて帰り、修道女たちには、メリルが説明してくれた。クトゥールに滅ぼされた町や村には、他の町などから兵士を呼んだりしていたようである。
クトゥールの被害にあい、人の居なくなった町の調査や片づけをしている間に、俺とベリタスはニコラの研究室に来ていた。
ちなみに、メリルとファウストは修道院に残っている。ほかの修道女は何人か作業に加わっているらしい。
お前は手伝わないのかよ?と思うかもしれないけど………ほら、俺は一番厄介なの片付けたじゃん?クトゥールとか。
「ていうかよ、なんでお前はそこで何もしないで浮いてるわけ?」
『仕方ねえだろ、俺は体がねえんだからそもそもページがめくれない』
そもそも目がついてるのか自体謎だもんなあ。
『おい?聞こえるようにつぶやくのやめてくれる?』
ニコラの研究した記録を見ているが、器についての記述は少ない。
『そりゃあ、ニコラが研究してたのは器じゃなくて魂の方だからだろうな。器について聞くんなら……バベルにいるロキとかは詳しいだろうけど…』
「いや、そいつ神じゃねえか」
『そうなんだよなあ』
仕方ない。いくつか参考になりそうなのを適当に持っていこう。
『お前…良いのかよソレ?』
「大丈夫だろ」
そういいつつ、俺は適当に本を持ち出して、その町を後にした。
「さて、いよいよ……神との戦いが近づいてきたな」
『ヴェルブラッド家か?未だにわかんねえんだよな』
わからないならそれで良いさ。
「とりあえず、ヴェルブラッド家を探すぞ」
『了解、もっとも有名だからすぐ見つかると思うけどな』
というわけで、俺たちは、次の目的地をヴェルブラッド家に定めた。