誰かが湖畔に近づいてくる気配を感じ、神と姉妹は歌を止めた。
神、ヴィーラは近づいてくるその気配の圧倒的な強さを感じ、警戒し、姉妹は知っている気配であることに気づいてほっとする。
ほどなくして、黒いコートを着た少年が姿を現した。
もちろん神無討也である。傍らには、ふわふわと魂だけの存在、ベリタスが浮かんでいる。
「良く、ここが分かりましたね討也さん」
姉が歩いてくる討也に話しかける。
「まあ、気配を探れば簡単に分かるんだよ、俺じゃなくてベリタスが」
「ああ、ベリタスさんでしたか」
妹がふわふわと浮かぶベリタスに歩み寄りなでるようなしぐさをした。
まあ、実際ベリタスには触れないので仕方ない。
「二人ともこの………人……は?」
ヴィーラは姉妹が警戒する様子が無いので、少し警戒の度合いを下げたが、討也の事を何と表現していいか分からず途中で言葉に迷った。
見た目は完全に人間だが、その気配は明らかに人間のものでは無い。気配を隠してはいるようだが、隠しても隠しきれない「王威」が神であるヴィーラには感じ取れた。
「私たちの家の専属の騎士の方です。名前は神無討也さん」
姉の方がヴィーラに紹介した。
「神無討也……ワノクニ出身なの?」
「「ワノクニ?」」
姉妹にはワノクニというのがどこかの国の名だとは分かっても、どこの国かは分からない。
「いや、まあ、和名だけど別に出身じゃあないよ」
「ええと、討也さんは1000年以上前から生きてるんですよね?」
妹の発言にヴィーラは、は?と口を開けた。というか、1000年も生きる人間なんていない。つまり、討也は人間でないことも姉妹に伝えていることになる。
「あのさ、ソレ、あんまり他の人に教えちゃダメだよ?」
「「分かってます」」
実際には、討也が教えたのではなく、姉妹が見破ったので仕方なく教えてあげたのだ。
『それは、そうとそっちの人は?』
「ヴィーラよ」
姉妹が言う前に、ベリタスの質問にヴィーラが答えた。
『神かよ……(討也の言ってたことマジだった)』
「………………!?何故分かったの?」
「まあ、神様とは色々関わりがあってね」
『いや、使徒二人と神一人としか関わりねえだろ?』
「……………………」
ヴィーラが何かを問いたげな、疑るような視線を討也に向けている。
その視線に気づいた討也は、困ったように苦笑すると。
「もう暗いから戻った方が良いと思うよ?」
「お母様に呼んでくるように言われたのですね?」
「まあ、……そうだけど」
と、姉妹に帰宅を促す。姉妹はおとなしくそれに従い、自然にベリタスがそれに続いた。
それを見送ってから討也は。
「さて、何が聞きたい?」
もちろん、お前が知ってることも聞くかもしれないが、と号外に言いながら、楽しげな笑みを浮かべヴィーラの方に身体を向けた。