「何が聞きたい?」という討也の質問に、ヴィーラはまず正体を聞かせろと言った。
討也は、自分が「咎人」と似た存在であることなどを教えた。転生がどうとかいう話はまだする気はない。
「成程、それで1000年以上前から生きているのね。……でも何故そんな貴方がヴェルブラッド家に?」
「えーと、まあ、過去に色々やって有名になってたらしくて、それで誘いを受けたんだよ」
「………………色々って?」
「まあ、朱竜を倒したり」
そう言いながら、討也は「焔眼の武器(ひのめのぶき)」を見せてやった。
だが、それを見たヴィーラの表情が驚きに変わる。
「使徒を追い払ったっていう人間って…もしかして貴方の事なの?」
何故そんなことをヴィーラが知っているんだろうと、討也は思ったが、考えてみれば彼女は神である、当然使徒の報告は受けているだろうし、例えヴァルザーク本人から聞かなかったとしても、そういう話くらいは聞いたことがあるのかもしれない。
「まあ、そうだけど、あの時ヴァルザーク君何してたの?」
「…私は詳しくは知らないけれど……強力な「王威」が確認されたとかそんな理由だったはずよ」
「………別にガスタールの時だけ「王威」を出してたわけじゃないと思うんだけど……」
「理由は知らないわ。私は後で使徒が人間に殺されかけたという話を聞いただけよ、でも…ガスタールと言えば高い火山よね?空に近いのは理由の一つかもしれないわ」
「成程」
確かバベルは西と東の大地を分割する大きな壁の上にあるはずだ。
「…ところで、使徒を追い払ったってことは、それなりの強さを持っているはずよね?」
「まあ、火の時代の終わりには名前とか聞かなかったけど、神っての倒してるしね。赤い鎧を着た斧を持った奴なんだけど……知ってる?」
ヴィーラは、完全に固まっていた。絶句したままフリーズしている。
少しして、我に返ったヴィーラは、まだ驚いた表情を浮かべたままで。
「それは……多分「イグニス」ね、冥王の報告に有ったっていう「神殺王」てあなただったのね…ちなみに、なんで神と戦ったりしたの?」
ヴィーラの討也を見る目は警戒に満ちていた。なんせ討也は神を理由はどうあれ倒しているのだ。
「なんでっていうか……俺は神様を倒すためにここに居るんだけどね?」
ここというのはこの世界という意味か?それともヴェルブラッド家という意味か?もし後者なら、討也はこの場にヴィーラが現れることを知っていたことになる。
実際のところ討也は知っていたし、だからヴェルブラッド家を探したのだ。
「それは……私を殺すという事?」
ヴィーラは身構えた。だが、傷の癒え切っていないいない自分に勝てるだろうか?
だが討也がここに来たのは、ヴィーラを倒すためでは無い。討也が倒すべき相手はまた別の神なのだ。
「…………人間ってあんたにとってはどんな存在なんだ?」
「…………え?」
神は自分の敵だという意味の事を言っておきながら、武器も出さずに、討也は、ヴィーラにとって意味の分からない質問をした。
「……人間というのは「けがれた存在」「薄い命」なんて言われて、神からは忌み嫌われているわ、私だってここに来るまではそう思っていた」
戸惑いつつも答え始めたヴィーラは、ゆっくりと湖畔を見渡す。
「でも、彼女たちと会ってから、それは違うのかもしれないと思うようになったわ」
「……………………………そうか」
黙って聞いていた討也は短く返事を返す。
恐らくそれが…。
「そう考えたことが、あんたが奴に罰を与えられる理由って事か」
「罰………奴というのは?」
ヴィーラにも自分の考えが神に非ざるものだという自覚はあった。
「あんたが知ってるかどうかは知らないけど、或る神だよ」
「……………」
「俺が倒しておきたいのはそっちの神だ、あんたじゃあ無い。けど………そのためにはあんたにはしばらくここに居てもらうぜ?」
楽しげに言ったものの、討也のその顔に笑みは浮かべられていなかった。