ロードトゥドラゴン(ロードラ)の世界に転生   作:錯也

49 / 57
龍化(竜化)

 

 神が、神殺が、互いが互いに向け繰り出した刃が、目標に突き刺さったのはほぼ同時だった。

 そして、お互いがやろうとしていたこともほぼ同じ。

「ドラゴン・インジェクション」

「メタモル・フォーゼ」

 神は、討也を竜へ。

 討也は、神を変質させようとした。

 スキルを使ったのもほぼ同時、そして、その効果が発動したのも、ほぼ同時だった。

 槍が突き刺さった討也の右肩から、その身が竜の物へと変わっていく。

 ナイフが突き刺さったデウスの脇腹から、その肉が金属のように変質した。

「うがぁああッ!!」

 体を金属へと作り替えられたデウスは、あまりの激痛に顔を歪め、槍を討也から引き抜き蹴り飛ばす。

 それは竜の腕に受け止められたが、そのまま受け止めた腕ごと吹っ飛ばした。

 吹っ飛ばされた討也は、水面を蹴って地面へと着地した。

「!?」

『おいッ!?』

 様子を見ていたヴィーラとベリタスが、同時に慌てた。

 が、それは討也には、いや、もともと討也だったソレには届かなかった。

 

 ゆらりと地面に立ち上がったその黒い影は、完全にドラゴンの物だった。

 

 人間の物とは比べ物にならない太さの両腕、二本足で立ちつつも、前傾姿勢をとるその背には、黒い剣のような物がせり出していて、普通の竜にはある翼は無かった。頭部や手からは、背に生えているものと同質の爪や牙や角が並んでいる。

 竜のような咆哮を上げたソレからは、討也が完全に竜へと変わったことが覗えた。

 

 デウスは、腹の激痛に顔を歪めながらも、やはり歪に笑みを浮かべる。

 彼は勝利を確信していた。

 まさか自分にスピードで追いつき、さらにダメージまで与えてくるとは思いもよらなかったが、討也が放った技は、自分の身体の一部を変質させただけである。対して、自分が放ったスキルは、相手を完全に竜へと作り替えた。

 魂だけの存在と処分すべき神から動揺の気配を感じ取りつつ、デウスはゆっくりと黒い竜へと近づく。大きさは、2メートル前後。竜としてはかなり小さいが、その形は完全にドラゴンの物であった。

「無様だな」

 ゆらりと槍を構える。

 これで終わりだと、これで最期だと。

 

 槍をその黒き竜に、神速で突き出す。

 

 それは、黒き竜の鎧のごとき鱗をいとも簡単に砕き、その肉を抉り、そして敗者たる少年が変貌した竜の命を散らす―――はずだった。

 

「!?」

 神速で突き出した槍、それはいつの間にか、黒い竜の左の爪でガチリと受け止められていた。

 槍を引こうとする。が、動かない。ならばとばかりに押してやる。だが、やはりびくともしない。

「なんだと!?」

 ―――何故?

 自分の攻撃は、確実に相手を貫いたはずだ。

 なのになぜ受け止められている!?

 ―――違う。

 何故?何故、総ての龍を支配できるこの自分に、この竜は抵抗できるのだ?

 ゆらりと、目の前の黒い竜の眼に、攻撃色がともった。

 それとともに、明確な敵意がデウスへと向けられる。

 考えるまでもない。確認するまでもない。目の前のこの竜から向けられている。

 攻撃色の竜の眼が、嗤うようにゆらりと光る。

 なんだ?

 なんなんだコイツは?

「誰だ、お前は!?」

 何故そんなことを自分は聞いたのだ?

 聞いたデウス当人にも、自分が何故竜にそんなことを聞いたのかは分からなかった。

 

 だが、竜は答えた。

 応えた。

 言語でそれを示す代わりに、ただ単純に行動で。

 

 自分の影に右手の爪を突き立てたその竜は、次の瞬間には大きな、死神が持つかのような大鎌が握られていた。

「!?」

 ―――くたばれ

 そんな声が、デウスには聞こえた気がした。そして同時に、黒い凶刃がデウスへと振り下ろされた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。