焔眼(ひのめ)から発せられた赤い光が空間を焼く。
デウスは、慌ててその場から飛び退き炎から逃れた。
さらにデウスは空中を蹴り、討也へと迫る。討也もそれに答えるように空中を蹴りこちらに高速で接近した。
二人がすれ違うその瞬間、両者は神速で攻撃を繰り出す。
「滅びよ!」
「焔牙の炎刃(ひのがのえんじん)!」
槍と、炎の刃が一瞬だけぶつかり合う。
討也は、再度空中を蹴りデウスへと追撃を繰り出す。
それに気づいたデウスは、討也から離れるように空中を蹴り距離を開ける。
デウスが距離をあけ、討也がその距離を殺しては、致命傷になりうる一撃を互いが放ち、互いに防ぐ。
パワーもスピードもほぼ互角だからこそ、両者の戦いは拮抗している。
戦闘を見ているヴィーラとベリタスは、その速度を辛うじてとらえるのが精々である。
同じ神でも、ヴィーラとデウスにはそれほどの格の差がある。
そしてそれと互角に戦う討也は、ヴィーラを倒すのにさしたる苦労はしないだろう。
ヴィーラは戦いを見ながら考えていた。神無討也とは、いったいどんな存在なのだろうかと。
自分に身体「器」が有ったらあれに参戦できるか?ベリタスはおそらく否と答えるだろう。
気配でとらえることはできるは、実際にその動きを自分が捉えられるとは到底思えない。
何をしているか分かる。というのと、それに対応する。というのでは、天と地ほどの差がある。
それにしても、とベリタスは思う。
『討也もデウスも、気配から予測できる能力の倍近い力出してんだよなぁ……』
戦いを続ける両者の「神の力」と「王の力」は確実に強まっていた。
互いに高速で攻撃を繰り出した直後、討也は焔眼の火玉(ひのめのかぎょく)を放つと同時、空中を蹴って後退する。
同じく後退したデウスをその炎に巻き込むことは出来なかったが、デウスはここでこの状況の危険に気付いた。
討也の放つ火炎弾は、ある程度の射程距離があるし、連射も利くうえ弾速も速い。
対する自分は、近中距離でしか戦えない。本来ならば、遠距離から攻撃を行ってくるような敵には持ち前の速度を活かして距離を詰め、自分の距離に持ち込めばいい。
が、討也相手にはその持ち前のスピードは活かせない。討也も自分と同等のスピードを持っているからだ。
討也が火炎弾を放つ遠距離戦に徹した場合、自分が攻撃するチャンスを失うということだ。
そして、討也が自分だけが攻撃できる状況でこちらを捉えられないはずがない。
デウスが攻撃できないのならば、討也はそもそも行われない攻撃に対すする回避、防御行動をする必要はなくなる。それはすなわち、攻撃に徹することができる分攻撃の手数が増えることも意味している。
それに気づいたデウスは、慌てて討也との距離を詰める。
狙い通り。
討也が想定していた通りに。
わざと火炎弾をばらまいて見せたのも、さらに後退して見せたのも、デウスに逆に距離を詰めさせるためである。
しかも今のデウスは慌てている。慌てていてもさすがは神、その速度にもパワーにもブレは無い。
だが、討也は無意識の焦りによって、デウスの技が精彩を欠いていることを見切っていた。
距離を取られると危険だという意識は、討也が退こうとする動きに集中している。
こちらの動きに集中し、自分の動きに集中しきれていない。
逆にそれはこちらも技を出しにくい事にもつながるが、それでも相手の動きが精彩を欠いているならば、こちらの動きでも動揺を与えればいい。
繰り出される槍の突きを、全て焔眼の武器で叩き落とす。
そして討也の攻撃手段は得物だけではない。
「ッらあァッ!」
鈍い音を立て、「朱竜」をも沈めた蹴りがデウスへと叩き込まれる。
デウスは防ぐことが出来ずにまともにそれを食らった。
「がァッ!」
後方へとデウスは吹き飛ばされる、だがすぐに空中に踏みとどまった。
が、今の討也にはそれだけの時間があれば十分だった。
―――焔尾の終焔(ひのびのしゅうえん)
手にした武器が焔を纏う。
討也はデウスが空中に踏みとどまる前に跳び出した。
炎を纏った武器を、神速でデウスへと振り下ろす。
踏みとどまったデウスがハッと顔を上げる。
もう遅い。
討也の振り下ろす刃が、デウスの命を刈り取る直前、二人は空から降る光を見た。