デウスに止めを刺そうとしたその直前、視界を塗りつぶした白い光を、討也はダークマターで遮った。
空から落ちてきた光は、正確には光ではない。
直撃したダークマターの表面で、バチリと音がし、スパークが散る。
『電撃!?』
光が直撃するさまを見ていたベリタスとヴィーラは上空を見上げた。
『あれは……神の雷………』
呆然と見ていたヴィーラが、ハッとして討也を見る。
幸い、咄嗟に展開したダークマターは、上空から直撃した雷を完全に遮断している。
「余計なことを!」
デウスが忌々しげに呟き、討也と雷の間に割って入った。
降り注いでいた電撃が瞬く間に姿を消す。
「へぇ……今のは……くはははッ!成程…」
討也は楽しげに笑っていた。
そんな討也へ、デウスは向き直る。
「先ほどの貴様の一撃…我には躱すことは出来なかった。貴様の勝ちだ[神殺王]」
「そうだな……それじゃあ……」
討也がそう言うと、デウスは力を抜いた無防備な姿勢になる。
あの雷が、何者かの邪魔が無ければ、デウスは先ほど討也に切られている。
「強くなって出直してきてもらおうか?」
楽しげな笑みのまま、討也は焔眼の武器をしまった。
『はぁ!?』
それを聞いたベリタスが間抜けな声を上げる。
このチャンスを逃すのか?と言いたげだ。
「……………良いだろう」
静かに言ってから、デウスは視線をヴィーラに向けた。
「[神殺王]に免じて我が貴様を裁くことは取りやめる……が、貴様は「神」を捨てよ。これは我個人ではなく、総ての神々の総意だ」
そう言ったデウスの視線には、有無を言わせぬ鋭さがあった。
「……分かりました」
ヴィーラもあっさりとそれに従う。
それからデウスは視線をベリタスに向け、その後討也へと向け。
「次に会うときは必ず貴様を超えてみせるぞ、ここで殺さなかったことを後悔させてやろう」
「くッはははははははッ!!そりゃ楽しみだ……期待してるぜ、[龍神]」
その言葉を聞いたデウスは、満足げな笑みを浮かべると、水面を蹴って空中へ跳び上がり、そのままその場を後にした。
邪魔をされたことには文句を言わないと気が済まない。
天を睨み付けながら、デウスはふと考えた。
[神殺王]とは一体何者なのだろうか?と。
神である自分と同等の力。
彼の器には、「魂」が無く、代わりに割れたガラスをつなぎ合わせたような、破損したその「器」の魂だけが自我を持った存在として、ヴィーラの傍らにいたのを思い出す。
何故魂の「器」である身体と、「魂」が別々に存在できるかは謎だが、あの圧倒的な強さと関係があるのだろうか……?
結局、いくら考えても分からないことを理解したデウスは、雷を討也に浴びせた者がいる場所へと向かった。
『良かったのかよ?』
「ああ、どうせなら敵は強い方が楽しいからな。それに……あの雷を放ってきた奴…」
『ヴィーラさんよ、あんたさっき「神の雷」とか言ってなかったか?』
ベリタスがヴィーラへと質問するのを聞いて、討也は楽しげな笑みを浮かべた。
「やっぱり…ジ・オースか」
『』
ベリタスが絶句する。
「まあ、今の俺じゃあ、統べし三神クラスの神を複数相手にすんのはキツイからな。こりゃあまだまだ鍛えがいがあるんじゃねえの?」
『おとなしくスキル使って戦えよ……』
ベリタスが呆れたようにつぶやくが、討也の興味は既に別のところに移っていた。
「そういやヴィーラ、デウスが神を捨てろ、って言ってたけどどうするんだ?」
「………そうね……私には命を捨てるくらいしか思い浮かばないけど……」
『………………』
「だったらデウスがやろうとしたことを俺がやるならどうだ?」
疑問の表情を浮かべて、ヴィーラが聞き返す。
「何をしようとしていたの?」
「あんたをドラゴンに変えようとしてたんじゃねえの?」
「成程……」
納得したというようにうなずくヴィーラ。そこで何かに気づいたベリタスが慌てて討也に質問した。
『そういえば討也、お前どうやってドラゴンからその元の姿に戻ったんだ?』
「メタモル・フォーゼ」
自分の肉体を変化させるスキルである。
「この能力は他人にも使用できるから、ヴィーラ、あんたをドラゴンに変えても後でその姿に戻すこともできる」
『便利だなほんとに……ありがたみの無い』
ベリタスの言葉を、討也もヴィーラも無視し、ヴィーラはムム…と何かを考えていた。
「ドラゴンになっても人間の言葉を話せるかしら」
そのヴィーラの質問に、討也とベリタスは顔を見合わせた。
ストーリーの中には、シグムントというキャラがドラゴンになっても言葉を話せているような記述があるが、さすがに確信は持てない。
「どうだろうな、分からない」
「そう…………じゃあ、ほんの少しだけ時間を頂戴」
そう言ったヴィーラが森の方へと視線を向ける。
戦いが終わったのを察してか、姉妹がちょうど森の中から出てくるところだった。
恐らく、彼女たちと言葉を交わす時間が欲しいのだろう。
「別に急ぐことでもない。構わないぜ」
そう討也が言うと、ヴィーラは姉妹の方へ優しい笑みを浮かべながら歩み寄っていった。
『なあ、これからどうすんだ?』
「どうしようかなぁ……とりあえず今以上に強くなる必要があるのは確かだな。最低でもデウスとジ・オース同時に相手にできるくらいには」
ヴィーラが姉妹たちの方へと向かったのを眺めながら、討也とベリタスはそんな会話をしていた。
『成程……デウス以上に強い相手となると……さすがに居ないだろな』
「いきなりラスボスクラスだもんなぁ。よく俺生き残れたよ」
『そう思うんだったらもう少し後先考えて行動しろよ、いくらお前が強くてもこの世界の奴らは非常識な強さ持ってるのは火の時代で学習してんだろうが』
「まあ、そうなんだけどさぁ……あれだ、必ず勝てる相手と戦っても面白くないからな」
そう言って、討也は楽しげな笑みを浮かべた。