美しい歌声が、とある湖畔で響いていた。
何も知らない者が見れば、それが最後の唄だとは思いはしないし、歌声が奏でられるこの場所で、先ほどまで神と神殺が人智を超えた戦いを繰り広げていたなどとは思いはしないだろう。
だがこの場に観客は居ない。
否、たった一人の少年の姿をしたものと、それに従う魂だけの存在。
その二つだけが、二人の少女の歌声を、楽器が奏でる音色を、ただ静かに聞いていた。
歌が終わる。音がやむ。
やがてゆっくりとこちらに歩いてきたその女神に、討也は対象を竜に変えるスキル「ドラゴン・インジェクション」を使用した。先ほど歌を聴いている間にサラッと覚えたのである。
それはデウスがやろうとしたこと同じ。
やがて水神は、蒼い鱗を持つ美しい竜へと姿を変えた。
『で?これからどうする?とりあえず水の時代に現れる神はもう居ないと思うけど?』
そうだなぁ、と、討也は考えながらすぐにそれまで自分たちがしていたことを思い出した。
「お前の器を探さないとだ」
「器?」
竜の姿となっても人語を喋ることのできるヴィーラが不思議そうに聞いてくる。
双子の姉妹もキョトンとしていた。
「ベリタスさんが生きていたころの身体を探すってことですか?」
『そもそも俺は人間として生きていたことは無いんだが?』
「「え」」
「……………」
姉妹はそろって驚いた声を上げ、ヴィーラは黙り込んだ。
「どうかしたのか?」
ヴィーラが黙り込んだことを不思議に思ったのか、討也が不思議そうに尋ねてくる。
「いえ…なんでもないわ」
と、ヴィーラは返したものの、その視線はジッとベリタスと討也に向けられていた。
どう見てもベリタスの魂の器は討也なのだが………どうやら二人とも気づいていないらしい。
伝えるべきなのだろうか?
「ていうわけだから、また俺たち色々あちこち行ってみないとだ」
『どこから行くか?やっぱニコラの研究所戻る?あれからもう半年くらいたってるけど』
「そうだな、やっぱ手っ取り早いのはニコラの研究をよく調べてみる事かなぁ」
ベリタスの提案に討也も同意する。
「え?ちょっと待ってください、もう行くの決定なんですか?」
「その……討也さんが居なくなるとドラゴン討伐とか……」
姉妹が結構深刻そうに討也を引き留めようとする。
討也はしばらく考えてから、ダークマターでスマートフォンを作り出し姉妹に渡した。使い方を教えてからドラゴンを討伐するときに呼ぶように言った。
「行くぞベリタス、今回のデウス戦で余計お前が戦えるようになる必要性があることが分かったしな」
『分かったよ、あ、歩きで行けよ?空かっ跳んでくんじゃねえ。着いてくの大変だし現在地が分からなくなるからな』
そんな会話をしながら、一人と一つはニコラの研究所に向かった。