ニコラの研究所は討也たちが以前立ち寄った時のままだった。とはいっても数年間放置されていたせいか部屋はほこりが充満している。
『いくつか抜けがあるな』
「ん?無くなってる資料があるって事か?」
ベリタスがふわふわと漂いながら本棚や机上を確認していく。
討也もベリタスの言葉に反応しながら辺りを見回した。成程、確かに本棚にぎっしりと詰められていた本や資料の中にところどころ抜き取られている所があった。
誰かが持って行ったのか?
まあ、ここも街が管理してたみたいだから、当然自分とベリタス以外にも誰かが立ち寄っているだろう。ニコラがどのような研究をしていたのかを調べようとする者もいたのかもしれない。
そんなことを考えながら、討也は右手に持った鍵を見た。もちろんニコラの研究所の鍵である。研究所のドアに鍵が掛かっていることを確認した時点で、討也は迷わず扉を破壊しようと思ったのだが、ベリタスが後々面倒になるということで、ここの鍵を管理しているところにわざわざ取りに行ったのである。
そんなことしなくてもドア蹴り破ればいいと思うのだが……と思いながらも、討也はとりあえず本棚を探る。適当な本を取り出して流し見てみるが、どうやら魂に関連することが掛かれていても、「依り代」、つまり「器」となるものに関しての記述はなかった。
「無いな……どうしようかねぇ」
約7時間ほどかけほぼすべての研究成果を流し読みした討也だったが、残念ながら知りたい情報はニコラの研究の中にはなかった。
別の方法を考えるしかない。
最終的に、ベリタスも討也も同じ結論に至った。
が、二人共出した代案は違った。
『禁書館ならそうゆう情報あったりしないか?』
ベリタスはようは禁書館に行ってみようという案。
対する討也は。
「クトゥールにどうやってファウストの身体に乗り移ったのか聞いてみるか」
とんでもない提案をした。
『…………マジで言ってのかよお前?』
ベリタスは呆れた様子で討也を見た。
すると件のチートはいつも通りの楽しげな笑みを浮かべている。いや、いつも通りと言うかいつも以上に悪戯たくらんでいるガキのような表情で笑みを浮かべていた。
非常に楽しそうである。
「よし、クトゥールを封印したところに行くぞベリタス、そこで手がかりがつかめなかったら禁書館だ」
『………分かったよ』
もはやクトゥールに話を聞きに行くのは決定らしい。ベリタスは呆れたように答えた後、研究所後にする討也にふわふわと付いていった。
『ハァ!?クトゥールの魂がなくなってるぞ………どうゆう事だ?』
ベリタスは自分がクトゥールの魂を封印した場所に来て、目的の魂がない事に気づいた。
そこはもともとは村だったのだが、ファウスト=クトゥールに村人全員が「食われて」しまったために打ち棄てられていた。
「魂がなくなってる?クトゥールはどこかに行きやがったって事か?」
『そうだろうな、自分で動けるとは思えないんだが……』
ベリタスがそう答え何かの間違いかもしれないと辺りを探ろうとしたとき、後ろから女性の声がかけられた。
「あの……もしかして……神無さん……ではありませんか?」
「あ?」
自分の名前が呼ばれたために討也が反応する。そこには、メリルと同じ修道院の修道女が立っていた。