ディアブロが言っていた「王威」というのは、王の力のことである。
ベリタスの話によるとディアブロはもちろん、どうやら俺自身も持っているらしい。
まあ、俺の場合ここに来るときにもらった特典の一つだろう。
アドレナク自身、力が足りなければ調整しておくとか言ってたし。
『あれじゃあねえの?三つ目の特典…「すべての技を覚えられる才能」ってのが要は王威だったんじゃねえの?』
と、これはベリタスの意見。まあその可能性はあるよね。
とりあえずディアブロに王威の気配の隠し方を教えてもらったのでそれについては無事解決した。
のだが。
ディアブロに教えてもらったグリムドアの生まれた場所らしい村に向かっている時であった。
いや、正確にはほとんど廃墟化した木造の建築物をちらほらと見かけたりしており村自体には入っている。廃墟だけど。
と、まあ、村跡地にたどり着いたのはいいのだが、しばらく村の中心に向かって歩いていたら、いきなり襲撃を受けたのである。
ちなみにしっかり王威の気配も消していたし、俺自身も周りの気配に意識を向けていたのだが全く気付けなかった。
むしろ真っ先に気付いたのはベリタスだった。
『何かいるな』
「は?」
いきなりのベリタスの言葉に俺は思わず足を止めて周りを見た。同時に気配も探って、視界と気配両方で索敵を行う。
先に敵をとらえたのは視界の方、横から何かが俺に向かって高速で飛んできたのを感じて、取り出したナイフを反射的に投げつける。
向かってきた者は、手にした武器を振り上げ投げナイフを弾き飛ばすと、そのまま突撃してくる。
仕方なしに、俺は自分の影から「暗黒物質」を生み出して敵の武器の軌道をそらした。
地面を蹴ってそいつが大きく間合いを取る。
俺とそいつは10メートルくらいの距離を置いて対峙した。
が、相手の姿を見て隣のベリタスが驚いた声を上げる。
『おい討也、あいつって…』
無論俺だって攻撃を仕掛けてきた人物の正体に若干驚いていた。が、俺の場合はそれだけではない。
「まさか、そっちから出てきてくれるとは思わなかったけど…」
赤い髪に胸部から腹部、腕や膝から下を覆う銀色の鎧。さらに手には赤いバスターソード。
「まあ…いいか、探す手間が省けったてことでよぉ」
襲撃をしてきたのは、探していた二人の片方、【獣王】フェンリスだった。
「にしても、なんでいきなり攻撃なの?普通警告からするだろ?」
俺が、いきなり攻撃されたことに不満を漏らすと。
『獣の縄張りっての知ってるかぁ?』
ベリタスが横で、ある意味ありそうなことを言い始めた。
「……………………………マジ?」
『ンなわけねェだろ……大方、あれは「彼」のほうのフェンリスで、自分とグリムドアしかいないここに俺たちが来たんで襲いかかってきたんだろ?』
「あー。成程、まあその辺のことも踏まえて後で話を聞けば良いか」
『話し合いって雰囲気じゃねえけど?』
「後でって言ったろ?」
ベリタスの言葉に答えつつ、俺は残り5本になったナイフを取り出す。
………後でさっき投げたの回収しないとな。
ナイフを取り出したのを見てフェンリスが姿勢を低くしていつでも突撃できる態勢に入った。
さっきの殺り取りで、相手のスピードが相当なものは分かっている。
ならば、と、俺は地面を蹴り、軽く音速を超える速度でフェンリスに接近した。
やっとグリムドア出せそう。