戦闘描写は難しいですが、精一杯頑張ります。
クラスメイト全員がこの場から遠ざかるのを見届け、ゆっくりと息を吐く。所謂深呼吸。集中したい時は決まって深呼吸をする。相手は妖怪、父上のように手加減などしてくれない。敗北すれば死ぬ。
いつものように得物はないが、無手でも時間稼ぎ程度にはなるだろう。
腰を落とし、ゆっくりと構えを取った。
「まだ成人もしていない人間がようやるではないか。どうやら覚悟は決まったようだな…。こちらからいかせて貰おうぞ!!」
人とは絶対的に異なった体躯をした妖怪が一直線に突っ込んでくる。速い…が、対応できる速さだ。落ち着いて躱すと、すぐさま2発目が迫ってきた。鋭く尖った腕を伸ばしてきた。反応することはできたが躱すことが出来なかった。槍のような腕が右肩に突き刺さり、勢いのまま吹き飛ばされ何度か地面でバウンドする。
「なんだ?貴様大口を叩いておいてその程度か?」
「まぁ焦るなよ。勝負はこれからだ。」
「ふん…手負いの子犬風情がよく言うではないか。」
もう一度力に任せて突っ込んできた。紙一重で躱すと先程と同じように腕を伸ばしてきた。が、これは先程の1発で見切った。この技は妖怪なだけあって人にはできない動きから繰り出される。だが、両腕を攻撃に使ったことで大きな隙が生じるはずだ。それを狙って渾身の力を込めた正拳突きをお見舞いし、間髪入れずに回し蹴りをしてから一旦距離を取る。
正直、見切ることが出来ても攻撃が加えられない。妖怪だけあって外皮が異様に硬いせいだ。だからと言って諦めてしまえばこちらの勝ち目は本当に無くなってしまう。自分に言い聞かせるように虚勢を張る。
「お前の程度にも底が見えそうだぜ?」
「この私に攻撃を当てるとはな…しかし、当たっても効果がなければ意味は無いぞ?」
「それでも見切るのは簡単だ。避け続けて時間を稼いでやるよ」
「やれるものならな。」
今度は俺の方から相手に踏み込む。狙うは眼球だ。外皮がどれだけ硬くても眼球なら攻撃が通るはず。1度左に重心を逸らしてフェイントを入れてから一気に右腕を眼球に向かって突き出す。奴の腕が右脇腹を掠め、肉が削がれるがそれでも止まらない。ここで止まれば攻撃するチャンスは二度と来ないだろう。
残り数センチ。あと少しだ。歯を食いしばる。
「惜しかったな」
奴の首が90度以上折れ曲がり、俺の渾身の一撃は空を切る。
「なっ…」
腕と頭を捕まれ、身動きが取れない。そのまま圧倒的な力で右腕を折られ、蹴り飛ばされた。大木にぶつかり、なんとか止まることができた。目が霞み、貫かれた肩から流れる血が止まらない。
大量の出血からか、目の前が霞む。微かにこちらにゆっくりと歩いてくる奴の姿が見える。奴の姿が近付く度に、心は絶望と恐怖に征服されてゆく。自分の意志とは関係なく、体は生きることを諦め始める。
ふざけるな。輝夜と約束したじゃないか。
無常にも奴は俺の目の前まで迫っていた。
ふと、自分が1度死んだことを思い出す。あの時はもう、自分の愛した家族は周りにはいなくて、お世辞にも順風満帆とは言えなかった。しかし、今はどうだ?俺にはいる。守るべき人が、大切な家族が。
「絶対に死ぬんじゃないわよ!」
頭の中に輝夜の声が響く。あぁ、そうか。俺は死にたくないんだ。
ならしよう。精一杯の抵抗を。
体に力が漲る。霞んでいたはずの視界が澄み渡り、景色はクリアに映った。
体が燃えるように熱い。それなのに、かつて無いほどの力の高まりを感じた。
満身創痍の体を起こす。相手を倒して生き残ることだけ考えて。
漲る力に任せ、かつてないほどの速さで相手に迫る。そのまま連続で正拳突きを繰り出し、続けて渾身の踵落としをする。
先程とはまるで立場が逆転したかのような一方的な展開になる。
吹き飛ばされた相手に追いつき空中に打ち上げ、ボレーシュートの要領で再度蹴り飛ばす。樹木を何本も薙ぎ倒しながら、数十本先の大木でようやく止まった。この時点で妖怪は修復不可能な程の傷を負っていて、ほとんど意識がなかった。首を掴んで持ち上げる。奴の視線がこちらへ向き、微かに口が開いた。
「貴様…本当に…人間なのか……?」
「あぁ。間違いなく俺は人間だ。」
正拳突きが胴体を貫通し、妖怪は息絶えた。
俺は無言で妖怪に背を向けて歩くと、近くにあった木にもたれ掛かり倒れるように座り込んだ。どうやら、俺はここまでようだ。もう、体のどの部分にも力が入らない。先程まで遠ざかっていたように感じていた死はすぐそこまで迫ってきていた。瞼が刻一刻と閉じていく。意識が無くなる瞬間、微かに輝夜と大勢の人の姿が見えた。
主人公の初妖怪退治です!
やっぱり思いました。戦闘描写ってむずかしいですね。
ここまで読んでいただきありがとうございます〜