これだけにします
今回のメニュー
水晶鶏
リディアンと特異災害対策機動部二課で
働き始めてから、初めての日曜だ
普通に仕込みを始めようとしたら
弦十郎さんがやってきて
「日曜くらい休め休め。若い内に色々しておかないと、もったいないぞ!」
といっても何するかなぁ
とりあえず本とかゲームでも見に行くか
いかに俺でも四六時中料理漬けではない
普通に読書やゲームだってやるさ
某有名デパートへ到着し
ぶらぶらと歩いていくと
ツヴァイウイングライブ開催決定記念!
♪ピックアップ♪
逆光のフリューゲル
ORBITAL BEAT
へぇ…買ってみるか
袋片手に本屋へ向かうと
緒川さんと偶然会った
「藤井さんこんにちは。買い物ですか?」
「突然、弦十郎さんに休みにされてね。ふらっと来たんだ」
緒川さんが俺の持っている
袋と壁のポスターを見て
「あぁ、翼さんと奏さんのツインボーカルユニット、ツヴァイウイングですね?私がマネージャーをしているんですよ」
「あ~緒川さんも大変ですね」
「いえいえ、頑張る彼女達を支えるのが、我々の仕事ですからね…色々と」
「なるほど。あ、この辺りでゲーム屋、知りませんか?」
緒川さんの態度からあまり触れられたくないのだと
考えて無理矢理話を方向転換すると
緒川さんは安心したようにゲーム屋を教えてくれた
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side 風鳴翼
昨日は奏から杏仁豆腐を貰った
何でも食堂のお兄さんから頂いたらしい
今まで防人として剣の腕を磨き続け
食事などと軽んじた事もあった
だけど奏と仲良くなってからは
少しだけ普通の女の子の様な事を
奏に引っ張られながら経験している
そして今日は少しだけ変装して
1人で買い物に来てみたの
キョロキョロしながら歩いていたら
誰かにぶつかってしまい
「あっ!す、すいません」
「おっと。大丈夫?怪我はないかな?」
男性の方は袋を落としながらも
私を受け止めてくれた
「あ、あの…私、よそ見をしてしまい…あっ!?」
「ん?全然大丈夫だよ…あ…CD」
袋から出てきたのは
私達のCDだった
「流行ってるらしいね彼女達。俺もさっき聴いてファンになってしまったよ。なんというか心に響いた様な気がしてね…流行りなんかは知らないけど、不思議と良いなぁって」
「あ…そ、そうなんですね!えっと…あの」
「あぁ、大丈夫大丈夫。気にすることないよ」
彼から出た言葉はあくまで私を気遣うもの
このままでは防人の立場がない
「それじゃ。気を付けてな」
手を振り、去ろうとした彼の手を
気が付くと私は彼の手を取っていた
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ニット帽と黒サングラスの女の子に
近くの公園に連れ込まれた俺
細腕の割に強い力に驚いていると
女の子が帽子とサングラスを取った
「ふぅ…改めまして先程はありがとう。風鳴翼です」
「あぁ、君が翼ちゃんか、弦十郎さんから聞いていた。まさか歌手をやっているなんてなぁ」
青く長い髪をポニーテールにしている
すらりとしたスタイルの良い女性
着物を着せれば大和撫子と言っても良い程だ
「そうそう、赤い髪の子から杏仁豆腐は貰ったか?」
「あ…はい!凄く美味でした」
「そっか。それは良かった…あ、座ろうか」
公園内のベンチに翼さんと座る
ツヴァイウイングのファンなら垂涎物だ
最初こそ、緊張していたが
軽い雑談をするまでには打ち解けられた
「そうか…奏ちゃんて言うんだ。あの子」
「えぇ。最近は毎日通っているみたい」
特徴的な髪の色と雰囲気から
色濃く印象に残っていたんだ
そしてあのたべっぷりで
「翼ちゃんも来てよ♪サービスするからさ」
「はい!是非伺います」
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結局、翼ちゃんはCDにサインをくれた
今日は中々、有意義な休日になった
部屋に戻ろうとすると
「なんてことだ!誰も料理が出来ないだとぉ!?」
「私は天才研究者だしぃ…」
「私はあったかいもの係だし」
「俺はインスタント派だ」
どうやら朝昼で買い置きがなくなったらしい
これは仕方ないな
「なんか作りましょうか?」
「!!」
その場に居た全員が救世主を見たような
表情を浮かべ、弦十郎さんなんて叫んでいる
というわけで緊急事態だ。
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今回作るのは水晶鶏だ
名前に反して高級な料理ではないし
簡単な上に量が作れる
まずは鶏肉。叩いて柔らかくし、削ぎ切りにする
ビニール袋に入れ、塩胡椒と日本酒と鶏肉を入れ
丁寧に揉みこむ。これを10分程度漬けておく
その間にタレを用意する
これは市販の物をベースに五種類
ポン酢、梅肉、オーロラソース、中華ダレ、ピリ辛
種を取り除いた梅肉に鰹だしを加え、水で調整する
かなり酸っぱいがこれが合うのだ
オーロラソースはケチャップとマヨネーズを合わせたもの
中華ダレはネギ、しょうが、にんにくを少量ずつ全て微塵切りにする。本当はしょうが、にんにくは1欠片使うが女性も居るので控えめに。醤油、砂糖、酢、ごま油を混ぜ合わせ、先ほど微塵切りにしたネギなどを全て加え混ぜ合わせる
続いてピリ辛
ボウルにコチュジャン、しょうゆ、酢、ごま油、砂糖、ラー油、おろしにんにく、白いりゴマを入れ混ぜ合わせる
タレはこれで大丈夫だ。沸騰したお湯の中に先ほど漬け込んでおいた鶏肉に片栗粉を塗し鍋の中にいれる
茹で上がり浮いてきた鶏肉を穴空きお玉で掬い、氷水で〆る
ぷるぷるとした透明な衣を纏っているのを見て、良い仕上がりだと納得する
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大皿に盛り付けた山盛りの水晶鶏と五種類のタレ
そして丼に入れた飯と中華卵スープを出す
我慢し切れなかったのか弦十郎さんが水晶鶏を
ポン酢につけて口に入れた
「むぅっ!!う、旨い…旨いぞォ!!」
「あら…私はこのピリ辛が好みねぇ」
「梅肉…すっぱいけど良いわね♪」
「中華ダレ…飯が進むぜ!」
鬼気迫るとはこの事か
凄まじい速度で減っていく水晶鶏
これは追加を考えた方が良さそうだ
こうして初めての休日は過ぎていく