蒼閃の軌跡   作:衝動エンジョイ勢

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ジェイル・アーライト(17)
ARCUS:4Line
 属性固定枠:風、幻、時

クラフト
 結:威力???、CP消費70。SPDで勝っている相手(魔獣)に90%の確率で即死。SPDで劣っていた場合CPのみ消費し不発となる。相手が人間であった場合80%の確率で即死、SPDで劣っていた場合カウンターが確定でクリティカル。

 深呼吸:使用後1ターン行動不可。発動後SPDが100%、AGLが80%上昇。DEFが50%低下。一定確率でHPを99%消費し、10ターン悪夢状態になる。

Sクラフト
 未取得







縁 氷の乙女

 

 

 

 初めての実習が終わり二週間と少しが過ぎた。来週の終わりには五月の自由行動日が待っている。俺たちはと言うとみんながつつがなく、俺とエリオットが皆の介護を受けて悠々と生活していた。…いや、それはもう終わったのか…

 

 脚のヒビがほぼ治りきり歩くのも問題無くなっていた俺は、放課後になり学院を出て、トリスタの町を散歩していた。その真っ最中にまたも突然時が飛んだのだ。と言っても今回は一時間ほど飛んだだけ、気にするだけ無駄だとこれまで通りスルーしようとしていたのだが。

 今回ばかりはそうもいかなかった。理由は簡単。公園で座っていたこと?まさか。そんなのこの前もだ。それは、女物の帽子を右手に持っていたこと。まず最初に誰の帽子だと驚いた。急いで右腕を持ち上げ、手を離そうとして、気づく。激しい痛みを伴いながらも俺の思い通りすぐに腕は上がり、何となく握っていた手がゆっくりと開く、開けた。

 要するにだ。俺の腕の治りが加速し肩はもはや治りかけという所まで来ていたのだ。あの日、肘より下はゆらゆらと揺れクレアさんには一部が複雑骨折してしまっていると言われた腕と拳が自分で触って形を確かめられる。ベアトリクス教官に二ヶ月かかると言われたこの腕が、あともう少しで動かせるようになるのだ。これほど嬉しいことは無かった。

 そして、落とした帽子を拾い上げる時に気づいた。何かが落ちた気がしてそこを見てみるとちょっと黄色寄りの錠剤が複数入った小袋があったのだ。しかもそこには二人で分けてね、というメモ書き付き。さすがに怪しく思い、この怪我のうちに仲良くなった教会の手伝いをしているロジーヌの元に。

 

「お邪魔するよ、ロジーヌ。今日はちょっと気になる薬があるから調べて欲しいんだ」

 

「どうぞ〜。右手に持ってるのがその薬ですか?…ん?右手…でも…あれ…?…そ、それより薬でしたね。今司教に確認しますので中でお待ちください」

 

 それから少し待って分かったことだが、あの薬は元となる薬草が非常に希少なためあまり出回らない、かなり高価な回復加速作用のあるものであることが分かった。どこで手に入れたかは知らないが安全でかつ有用なものなので利用して構わないという司教のお墨付きだ。

 

 

 そうして今に至る。あの薬を飲み始めて少しで俺たちの骨折はみるみると回復して行った。ただの骨折だけだったエリオットはもちろん、あの謎の骨の修復も合わせ本来二ヶ月かかるはずだった俺も共にあと一週間、最低でも次の実習には間に合うという言葉を頂いた。

 あの介護だらけだった幸せな日々は終わるものの、それと同時に戻ってくる日常が待ち遠しくなった。あの手が痛くなるだけだった板書を写す作業、これが治ってからなら少しは楽しく感じられるだろうか。あぁ、一週間後が楽しみだ。

 そうやって少し前のことを思い出しているうちに時間は流れていた。いつも通り食卓に集まり皆で夕飯を食べ終える。俺やリィンは利き手に怪我を負っている者同士、腕をプルプルと震わせて食事を取っていた。周りから笑われるのがちょっとくすぐったかった。

 

「そういえば、アンタあの氷の乙女様といつ知り合ったのよ?何度か聞いたけど、B班はどうだったんですか?とか、もっと早く来れなかったんですか?とか言ってはぐらかされてたじゃない。そろそろ教えなさいよ」

 

 実習を終えた頃から夕食の場でも酒を飲むようになり始めたサラが声をかける。何度かエリオット達にも聞かれていたが何とか振り切ってたけどこうも正面から聞かれれば逃げ場はない。メンバーからの好奇の目が突き刺さる。

 

「はぁ…、別に大した話じゃないよ。俺、三年前はまだ帝都にいたんだ。俺が旅に出る直前、公園に散歩しに来てた時ベンチに綺麗な女の人がいるなーって。あの頃は立派なガキだったから、なにか起きないようにってずっと隣に座ってた」

 

「それで!?どうなったの!?」

 

「目を覚まして、そんでちょっと話して終わり。ほら、面白くなかった」

 

「ふーん…へぇ?ふーん…」

 

「…何だよ。言えよ。そんなに同世代の女性にガキだったとしても出会いがあったのが羨ましいならアンタも頑張れよ」

 

「違うわよ!三年前ってまだ十四でしょ!?そんなの恋愛対象じゃないですぅー。別に、絶対にそれで終わってはなさそうだなぁ…とか思ってないし!」

 

「あのなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 いつも通りの業務を終え、緊急出動もないため深夜巡回まで書類作業しか残らなくなった鉄道憲兵隊の隊員たちは小休止を取っていた。

 先日のケルディック出動の際に同行していた新人の隊員がそういえば、と言って話を切り出した。

 

「クレア大尉ってあの時の学生さんといつ出会ったんですか?彼らってトールズの第一学年だから…十七くらいですよね?接点全然なさそうですけど」

 

「あ、君は新人だからあの話知らないのか。聞いちゃう?クレア大尉と年下のラブストーリー!」

 

「ちょっとドミニク少尉!?そんな話はしてませんよ!…別に、三年前、私がマーテル公園で昼寝をしていた時、たまたま彼が隣で付き添っていた。それだけです。…な、なんですか?別に私だって昼寝くらいしますよ…?」

 

「ふふ、新人くん。まさかこれだけでクレア大尉があんなに楽しそうに話すわけないよね?絶対あるはずなんだけどなぁ…話の続き」

 

「ドミニクさん!」

 

 

 

 

 そうだ。認めるとも。私と彼の出会いには話せないことがあると。あれはただ二人だけの秘密。そして約束。

 だって恥ずかしいじゃないですか。初対面の人に滅多に出さない泣き顔を見られて、しかも七歳年下に恐怖しただなんて。

 恋だなんて甘い関係は─少なくとも自覚している限り─一切ない。あれは確か─────

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 あれは確か、帝都の綺麗な公園の片隅、二人が腰をかければあともう一人座らせるのに無理があるだろう微妙に小さいベンチであったなんてことの無い、俺と彼女の出会いのことだ。

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

──三年前七月 マーテル公園───

 

 

 入口を入ってずっと左奥。木陰になるような場所で私服姿のクレアは寝ていた。頭を支える首の力は抜け、下に俯き僅かに体を左に傾かせていた。

 

 

「お姉ちゃん…痛いよ…苦しいよ…。こんなにも辛いのに…どうしてお姉ちゃんは上手くいってるの?どうしてお姉ちゃんは───生きてるの?」

 

「ごめんなさい…エミル…あぁ…!ごめんなさい…!」

 

 リーヴェルト一家を襲った事故。その真相を暴いて長らく見ていなかった夢を、久しぶりに見た。閣下に見初められ、命令通りトールズに入り、卒業後すぐに鉄道憲兵隊に入隊した。自分でも思う、上手く行きすぎている。その認識がこの夢を呼び起こしたことをクレア自身気づくことは決してない。

 ごめんなさい、ごめんなさいとただひたすら言い続ける。それが夢の中のエミルの言葉を加速させる。ゆっくりと心が押しつぶされて行き、耐えきれず息苦しさから逃れようとして大きく息を吸ったその時、クレアは夢から覚めた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ、っ、…ふぅーっ……」

 

 

 

「おはよう、いや、もうこんにちはか。ご機嫌いかが?お姉さん」

 

 

「!?」

 

 ビクゥッと、憲兵隊内で氷のようだと言われる冷静さが感じられないほど身体を揺らし声にならない悲鳴をあげた。

 

「あぁごめん。でもさすがに驚かせないように声をかけるって難しいから許してくれよ。…体調はどう?酷くうなされてたみたいだし、泣いていたようだけど」

 

「…貴方は?」

 

「名前なんていいよ。それより、ちょっと落ち着いたなら、何があったか教えてくれない?」

 

 少年のぐいぐいと押し入ってくる感じに何となく、クレアは嫌悪感を覚えた。

 

「…どうして初対面である貴方に言わなきゃいけないのですか?」

 

「辛辣だなぁ…言わなきゃいけない訳じゃあないけど。身内だったり、仲良い人には話せないけれど、初対面に話せることってあると思うんだ。あと、出会う先々でそんな正論で殴り掛かってこられたら仲良くなれるものもなれないよ、気をつけな」

 

 実際、トールズで仲良くなれた友人に今悩んでいることを相談しようとは思えなかった。素直に話して信じて貰えるとは思えないし。私の家族は全員殺されたけど、その事件を解決したのは私で首謀者は極刑に処されましたなんて言われたら引くだろう、そもそももって。憲兵隊に入って久しぶりに顔を合わせたミハイルに相談するというのも無理な話だった。

 それはそれとして、何故この男の子にここまで言われなきゃならないのか。

 

「…別に出会う方全てにこうしている訳ではありません。貴方の方こそ、初対面の人にそんなこと言うなんて、ご友人が少ないのでは無いですか?」

 

「ほら、人が良さそうなお姉さんも初対面ってだけでそれだけ悪態つけるんだ。別に俺に気を遣わなくていいんだし。どうせ俺もうちょっとでここ出るし、再会する可能性だってめちゃくちゃ低いだろう?一生その悩みを抱えるより、今後会わないやつに弱み握られてる方が心持ちは楽だと思うけどね」

 

 何となく、言う通りだと認める訳では無いけれど、話してやってもいいかもしれないと思った。どうせこれで終わりだ。ちょっとくらい、話していいだろう。

 

 

 

 

「なるほどね。一家が丸々消え去って、それは計画されている事だった。それが、最近恨み言を言いながら夢に出るようになった、か。ふーん…」

 

「ほら、やっぱり。どうしようもないでしょう?」

 

「違うさ。俺は別にお姉さんと仲良しじゃない。だから慰めるわけじゃない、言いたいことを言うだけだ。今のは言いたいことを纏めてただけ」

 

 慰めるわけじゃないと聞くと少し身が強ばった。そうだ、私はただ話しただけ。その後どう飲み込み、吐き出すかは彼自身の問題だ。私にはただ飛んでくる言葉にびくつくことしか出来ない。

 

「まずそもそも、それはお姉さんが抱えなきゃいけないものなのかというのが一つ。それにお姉さんがそいつらに何か言われて悩むっていうのもおかしい話っていうのも一つ。あとはなんというか、俺と似てると思ったかな」

 

 前の二つも気になったが、どうしても似てるということが引っかかった。こんな地獄のような状態の私と、公園で気になったからと気ままに声をかける男の子の何が似ていると言うんだ。

 

「俺はもうその事件もよく覚えてないけど、だいたい三年前俺が住んでた村は消え去った。確か…家族はそれ以前にいなかった気はするけど覚えてないからなぁ…。保護されてここに来て、それ以降毎日夢を見た。最初はノイズだらけだったけど時が経つにつれてちょっとずつ聞こえてきてる、気がする」

 

「それは、どんな夢ですか?」

 

「はは、分かんないよ。まだ叫び声銃声しか聞こえないんだ。言葉なんて聞き取れやしない」

 

「──────それを、まいにち?」

 

「ん?そう、毎日」

 

 唖然とした。今度は逆に、毎日そんな夢を見る彼と最近また見始めただけでおかしくなっている私と何が似ているのだろうか。それはいいとして、そう彼は続けた。

 

「お姉さんは本来なら事故で終わるはずだったのを、証拠を集めて事件として立証してしかも仇討ちまで成功したわけだ。感謝される理由こそあれ恨まれる理由はない」

 

「私があの日あの車に乗っていなければ、家族が集まっていなかったら事故は起きてなかったかもしれない」

 

「家族が多く犠牲になる方を選ぶと思うよ。残るのが行動力のないガキなら万々歳さ。それに、そこでやらなくてもきっと次の機会はすぐ来ただろうよ。まぁ、実際に残ったのは行動力の塊だったようだけど」

 

「だけど───────!」

 

 生きていた未来があったかもしれない。あの悲劇を回避出来たかもしれない。だって夢に出てくる彼はあんなにも──…あんなにも、生きたがっているのに。

 

「その日たまたま皆が集まってしまったことそれだけがただ、間が悪かった。それをやった人に、ただ、魔が差しただけ。それで受け容れられないほどお姉さんの心は皆でいっぱいなの?」

 

 無理だ。そんな都合の良過ぎる逃げは私には、出来ない。私たちが狙われる理由を知ってしまった。私たちを殺して代わりに実権を握る彼の元に入っていく利益を理解してしまった。綿密な計画、多大な金に目が眩んだ亡者、全部が繋がっていることを知ってなお、それをたまたまだったと受け入れることは、不可能だ。

 

「………そろそろ準備のために戻らないと。最後に思ってたこと。お姉さんは夢で見た人のことを悩んでるようだけど。それは無駄だから辞めた方がいい」

 

「なに、を」

 

「その人たちが生きている訳じゃないんだろう?─────もう彼らは終わったんだ。死という結末を迎えた人々が再び生という始まりを迎えるわけが無い。彼らは死んで空の果てで救われる、ただそれだけ」

 

「そんなの、あまりにも」

 

 あまりにも、ひどすぎる。もう死んだから、それ以上の未来に思いを馳せる意味は無いと?そんなの、薄情すぎる。彼は、私と同じように、大切な人々を喪ったはず。それなのに、どうしてこんな─────

 

「もし蘇ったとして、それはその人じゃない何かだよ。終わった死骸を貪るただの何か。お姉さんの夢に出てくる彼らはお姉さんの被害妄想だ。もしどこかで蘇ってお姉さんの夢に出てきているというのなら、それは彼らじゃない何かしらだよ。そんな奴らのことを悩むのなら、それはお姉さんが間違ってるだけ、筋違いってやつだ」

 

─────────────訳が分からない。だけど、彼の言葉に乗った実感が私の心臓が跳ね上がるのを手助けする。

 

「────うん。もう時間だ。これでお姉さんの心が晴れるか曇るかは知らないけど、いつか、乗り越えられるといいね。それじゃあ───」

 

「名前」

 

「ん?」

 

「名前を教えてください。こんなに散々言われたんです。乗り越えた時、貴方より先に越えたよって言わないと、割に合いません」

 

「──────────再会しようとでも?…よし分かった、良いよ。俺の名前は」

 

 聞いて、後悔した。私は何て子と話してしまったんだろう。この後悔はエミルの夢を越えるまでに無くなっているだろうか…いて欲しいな。そうじゃないと、申し訳なくて、顔もまともに合わせられない。

 

「俺の名前はジェイル・アーライト。そこらを探せば何人かはいるちょっと不幸な十四歳だ。お姉さんは?」

 

 私の名前を聞く時顔を正面から合わせた。最初で最後、初めて面と向かって話した日。

 

「クレア、クレア・リーヴェルトです。覚えないと、恨みますからね」

 

 私は座っていたから、立ってこっちを覗いてくる彼の顔がよく見えた。彼の背に映る真っ青な青空と対になるような虹彩の紅が今でもよく覚えている。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 あれを除いて、ケルディックであったのはこれで二回目。顔を全然合わせて話してくれないのは、旅から帰って帝都で再開した時、初対面の体で話したのをまだ怒ってるからなのだろうか。何にせよ、懐かしい話を思い出したものだ。今日はゆっくり休めそうだ。今日はもう寝てしまおうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────クソッタレ!!()()()()()()め!こんな小さい村を焼き討ち!?何のために!どうして!!

 

 

 

─────今はここまでです。また、私を取り戻した時、少しだけ見せてあげましょう。だから今はゆっくりと、おやすみなさい─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ッ、ゲホッゲホッッ────」

 

 

 

 二年前、大体のノイズが消え去ってから一切の変化が見られない、決まったところでノイズが走る、気味の悪い夢に───────ようやく来たんだ。

 なんてことの無い五月十四日、いつも通りじゃない朝が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在だいたい6000字半ばになるようにしていますが皆さんはどれくらいが好みですか?

  • もうちょい少なめ(3000~5000)
  • 今くらい(5000~7000)
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