蒼閃の軌跡   作:衝動エンジョイ勢

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あげようとして寝落ちしたのでこの時間になりました()


オルディス2

 

 

 

 

 

 商業区画の入口にソワソワしながら周りを右へ左へ見渡している不自然な男性がいた。…うん、聞いていた服装の特徴に合致する。あの人が依頼人だ。

 

「貴方がグランツさんですか?」

 

「あっ!君たちが依頼を受けてくれる方々かい?」

 

「それは申し訳ありませんが内容を聞いてから判断させてもらいます」

 

「それで構わないよ。それじゃあ依頼のことなんだけど…宝石を探して欲しいんだ」

 

 …宝石?おいおいおい今から街道に出て採掘とか絶対嫌だぞ。女子は知らんが俺が知る綺麗な石なんてセピスぐらいなもんだし…

 

「私がこの街に来たのは四年ほど前のことなんだけども、その時この商業区画の宝石店で見つけた宝石があまりに綺麗だったんだ。通常時は綺麗なオレンジなんだが、光を通すと鮮やかな黄色になる…不思議な宝石だった…」

 

「それを探してこい、ということでしょうか?この区画の宝石店…まぁまぁあるぞ。…残念ですが─────」

 

「その宝石って、トパーズ、じゃないかしら…色が変わるなんてのは聞いたことがないけど、いくつか宝石の種類を絞れば探せないこともないんじゃない?」

 

 アリサが発した言葉で他のメンバーをどうすれば効率よく探せるかを考え始める。こいつらに断るって言うのは無いのか。

 

「はぁ…時間を決めよう。探し始めたら際限がない。現在四時半…なら、二時間後の六時半までに見つからなければ宝石探しは中止、その時点で今日の実習を終了とする。いいな?」

 

 メンバーがこちらを見て頷き返す。それから俺たちは商業区画中を回って探した。特徴を伝え、店内を見回りそれでも見つからないまま一時間半を過ぎたその時、ARCUSが鳴り出す。

 

『み、見つけました!駅の裏路地の小さな宝石店です!』

 

 

 

 

 グランツさんを連れて急いでその店に行くと皆が興奮してその宝石を囲んでいた。グランツさんも宝石を見てはしきりにこれだ!これを探していたんだ!と喜んでいた。店主のご老人に問いかける。

 

「結局これってトパーズなんですか?色が変わるってあまり聞いたことはないんですけど」

 

「あぁ、列記としたトパーズだとも。君たちは宝石はあまり興味ない感じかね?実は、この大陸でできる宝石の中には七耀脈、という力の道筋が地中を走っているらしい…噂程度しか聞いたことは無いんだがね」

 

「それと宝石になんの関係が?」

 

「それがだね…ふふ、その流れの近くにできる宝石の中には突然変異を起こすものがあるんだ。本来は突然変異は価値が上がる要因なんだが…このトパーズは元々価値が最も高いとされる赤よりのオレンジから一般的な色になってしまうせいで、人気が出なかったんだ。それからは倉庫の中でもちょっと目立つところで倉庫番をして貰っていた。こうして探してもらえて、こいつも喜んでいるよ」

 

 七耀脈…旅の中で何度か聞いたことがあるけれど、意外とこういうところにも影響は出てるのか。七耀脈が流れているところの力の溜まり場にとんでもなくでかいセピスの結晶ができているというのも本当なのかもな。

 グランツさんはその宝石を購入し、嬉しそうにしながら駅前の広場まで出てきた。

 

「君たちのおかげだ!本当にありがとう!こんなに探してもらったから当然なんだが、夕食はこれからだろう?私のおすすめのお店があるからそこで奢らせて貰えないか?」

 

「いえそんな…悪いですよ」 

 

「なら、これが依頼の報酬だ。報酬を受け取って貰えないと依頼主として困ってしまうんだが、それでもダメかな?」

 

 

 

 結局連れていかれてしまった。港の目の前にある海鮮をメインに扱うレストランだ。かなり高級そうで少し萎縮してしまったが食事が出てこれば俺たちは直ぐに夢中になった。昼飯から半日、ずっと動き続けてのようやくの食事というのがさらに幸福感を加速させた。

 食事を終え俺たちがここに来た理由や学園の話をしていた。聞き上手でどんどん話してしまっていたので、少しこちらも返させてもらおう。

 

「そういえばグランツさんはなぜ宝石を探したんですか?最初は思い出したからかと思いましたけど、あの必死さと喜び様からして自分のためじゃあないなと感じたんですが…」

 

「あぁ、そういえば伝えてなかったね。────私の自慢の姉が結婚するんだ」

 

 空白

 

「私の家は両親が早死しちゃってね…唯一の家族としてプレゼントを贈らせて貰おうと思ったんだ。さっき買った宝石はこっちに越してきた時姉が見蕩れていたものだったから覚えていたんだよ」

 

 マキアスの様子がおかしい。

 

「そ、うです、か。それはお姉さんも、その、お喜びになるでしょうね」

 

「そうだといいなぁ。でも旦那さんにも良くして貰ってるって聞いてるから、さすがに貴族のおもてなしにはかなわないかもなぁ…身内のプレゼントだしちゃんと喜んで欲しいけど…きっと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「────────」

 

「おい」

 

 

 

「───その結婚、取り下げた方がいい。奴らが人を幸せにすることなどない。お姉様のことを思うなら今すぐにでも止めるべきだ」

 

「やめろマキアス」

 

「そ、そんなに心配しなくても、姉と旦那さんは恋愛結婚だし向こうの家族は貴族には珍しく血筋を気にしないと言ってくれている。大丈夫さ」

 

「奴らはそうやって甘言をかけて騙してくる!いいのか!?貴方がこのまま見過ごせばお姉様は必ず不幸になる!救えるのは貴方だけなんだぞ!?」

 

「マキアスッ!!」

 

「────さっきから何なんだ!僕は何も間違ったことは言っていないッ!君に僕を止める権利は─────ガッ……!」

 

「もういいよ黙れ」

 

 マキアスがまくし立てるせいでこっちもカッとなってしまった。少し騒がしくなってしまったせいで周りがガヤガヤしてしまっていた。首を絞めて無理やり黙らせたのを離す。

 

「グッ…はぁ、はぁ…僕は……何も、何も間違ってッ!」

 

「────────」

 

 

 

 

 

「やめてジェイル」

 

 

 

 

「今ジェイルが怒ってもこの場はどうにもならない。貴方なら分かるでしょ…?」

 

 マキアスの頸に当てたナイフが薄皮を破り僅かに血を垂らす。周りでは昼間に見かけた気がする船乗りがそこまでにしろ、これ以上は、などと言っていたが、今の俺にはアリサの声が最も、そして酷く刺さった。

 

「マキアス」

 

「────ヒッ

 

「着いてこいよ。ここで話す訳には行かねえだろうが」

 

 マキアスを連れて外に出る。目の前が港なのが本当にちょうど良かった。

 

「何だあれ。お前頭おかしいのかよ。お前に昔何があったかなんて知らんがお前のあれはただの押しつけだ。何の得も生まない、誰も幸せにならない。自己満足に勝手に俺たちを巻き込むな」

 

「き、君に…君に僕の何が分かる!それに僕はグランツさんとそのお姉さんのことを思って言ったんだ…ッ!このままでは彼らは崩壊の道を進む!」

 

「発作持ちの上に妄想癖か、救えんな。お前のその貴族に対する偏見はもはや病気だよ。結局人の善悪に身分なんて関係ない。それを分かるんだよ、マキアス」

 

「フン!まさか君まで貴族に絆されるなんてな。この街の毒に侵されていないのは僕だけか!貴族の間違いを正せるのは僕だけなんだな!」

 

 全く噛み合わない。ひたすらに意見の食い違うところを怒鳴るだけの言い合いが熱量を増していく。

 

「毒だと?この街の可笑しさにはメンバーの全員が気づいていた。だけどこれは修正すべき歪みじゃない、これがオルディスの在り方だ。俺たち余所者はここの道理に従うのみだ」

 

「間違っているのを正せと言ってやることこそ正しい行いだ!ならば君は!意図的に生み出された格差をあるべき姿と受け入れろとでも言うのか?仲間であるはずの商人同士がいがみ合い、他の優遇された職を僻むこんな歪みだらけの貴族が仕組んだゲーム盤の上で踊れと!?」

 

「彼らはそれを受け入れている。実際優遇されていた者たちは一重に評価されるべき実績を得ていた。貴族に庇護されているかどうかじゃない、自分以上の実績を出しその結果貴族の援助を得られた者を羨み、躍進の機会を伺う。その軋轢をひっくるめてこの街だ」

 

「そんなのは詭弁だ!帝都ならばそんな歪みは是正される。貴族の食い物にされている彼らを見過ごすことは出来ない!」

 

 俺には理解できない。そんなのはただ自分の気に入らないことを自身の望む形に歪めるだけなのがなぜ分からない。こんなやつと真正面から話し合っているのがどんどんと馬鹿らしく思える。現状を理解すると頭が冷めていく。呆れた、ガキの駄々に付き合ってられるか。

 

「───────大人になれ、マキアス。お前の思い通りにしたところで出来上がるのは誰も幸せを享受することの出来ない平等なだけの世界だ」

 

「…平等なことの何が悪い。僕たちは皆等しく同じ人間だ。ならば対等であるのが正しい在り方だ」

 

 マキアスが俺に吊られるようにゆっくりと静かになっていくが、顔は強ばったままだ。受け入れられないものを排除してるだけというのがお前は分からないんだな。

 

「ならお前と俺は同じ存在なのか?今も尚父親が生きているお前と全てがない俺と、等しくあるべきか?そうあるべきだったとして俺に父親を与えることは出来ない。ならお前から親を奪えばこれでようやく対等だな」

 

「そんなのは暴論だ!」

 

「平等とはそういうもんだ。生まれた時より差がある以上、人と人の間に隔たりが無くなってしまえばそこに残るのは無秩序な暴力だ」

 

「何が言いたい…!僕に理解できるように言ってくれ…」

 

「人にはそれぞれ在り方がある。受け入れられない在り方は絶対にある。それを認めないと言って変化を強要するのは異常だっつってんだよクソガキ。受け入れる必要は無い、けれど受け流すことが出来ないと大人にはなれねえぞ」

 

「なっ…今僕のことをバカにしたな!?」

 

「あー…散々言って満足した。…まだ居んのか?もう夜の八時だぞ。優等生なんだからレポートさっさと書けよ」

 

「そういう君はどうなんだ!」

 

「俺もう書いてるから。優秀生は違うんだよ、分かったらさっさと戻っとけ」

 

 あんなガキに持論を垂れ流すような大人気ないやつになった気は無いんだけどなぁ。

 実際俺とマキアスは真逆なタイプだ、到底そりの合うようなもんじゃない。理性的な見た目に反して肝心なところで激情に身を任せるマキアスとどれだけ適当なことを言っててもその実絶対にその在り方と道理を守り抜きたい俺と。でもきっと、そういう在り方もあるのだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

「すみませんグランツさん…ご迷惑をおかけしました」

 

 あの後私たちはグランツさんと共にホテルに戻った。正直少し空気は暗くなってしまっていた。当たり前よ、さっきまで温厚だった男子が突然怒鳴り始めたと思ったらさらにもう一人の男子がナイフで首を刺しそうになったとなったら…だけどグランツさんは慌てるどころか少し落ち着いていた。

 

「いや、きっと彼にも色々あるんだろう。それより…マキアス…どこかで聞いたことがあるような…?もしかして都知事の息子さんか?」

 

「え?ご存知なんですか?」

 

「いや、ここに来る前は元々帝都に居たんだ。何となく聞き覚えがあると思ったけど、道理で」

 

 合点がいったというような声音だ。朝さわやかに私たちを撫でて行ったあの潮風は冷えて寒いくらいだった。今日の昼間に感じたこの街の二面性を想起させてくる。

 

「…あれ?グランツさん、あの石像って何の石像なんですか?」

 

「あぁ、あれはずっと昔に信仰されていたと言われる碧のオンディーヌという海の精霊さ。こっちに来てから何か逸話があったと聞くが、私は覚えてないなぁ」

 

 精霊信仰…おばあちゃんが言っていたし、私も調べたから分かっていたけれどかなり広範囲に様々な信仰があるのね…。この学校の実習で今後向かう先にもそういったものがあるのかしら。そう思うと少し楽しみに思えた。でもオンディーヌ…どこかで聞いたような気がするけれど…なんだったかしら。

 

「へぇ…─────ここまで送っていただいてありがとうございます。あっあと、これ出会った方々に聞いてるんですけど…グランツさんにとって貴族ってどんな存在ですか?」

 

 

───────貴族か、面白いことを聞くじゃないか。革新派(奴ら)に潰された僕たちを貴族派(あの方々)は拾い上げてくれた。僕らの汚い欲望(お願い)を受け入れ、力を与えてくれた素晴らしい人達だよ

 

 

「…ぇ?奴ら?あの方々…?それにお願いって…?あの、グランツさん?」

 

「今日はありがとう。この宝石は姉もきっと喜んでくれるよ。それでは実習、頑張ってね!」

 

 夜の風の寒さに別のものが混ざる。グランツさんの酷く透き通った笑顔が、私たちの心を凍らせていった。

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 よし、A班の方は順調に進んでるみたいね、ハイアームズ侯とも上手くいってるみたい。あとはB班の方だけど…明日の午前中にオルディスに向かって合流かしらね。…ん?通信…B班のチャネルからだ。

 

「はい、もしもし。誰かしら?」

 

『俺だ、ジェイル。マキアスことなんだが』

 

「あぁ、どうだった…?」

 

『悪い、夕食ん時に爆発した。お説教、というか言い合いもしてそのあとはちょっと落ち着いてくれたけど…やっぱ俺にこういう世話を見る仕事はできなかったわ。すまん』

 

「!…そう、いえ、ジェイルが謝ることではないわ。そこに貴方たちを送った時から懸念していたことではあるしそれをあなたに押付けたのも私なんだから」

 

 落ち着けてくれただけでマシというものだ。あの子の癇癪はきっと続けば騒ぎになっていただろうに…。カールさんもあの時息子を信じ切ろうとしていた。苦々しい声でオルディス、と告げた時私たちも後ろめたい気持ちになったし…。

 

『一応、こっちに着いた時に貰ったカイエン公のお付の人に連絡して明日のマキアスの監視と、やばそうになったらのフォローをお願いしといた。俺達も頑張るけどもしこっちで貴族の不感を買った時大変そうだから、念の為な』

 

「えぇ、わかったわ。私も明日の午前にはそっちに行く予定だからその時にまた連絡するわ」

 

『頼むから早く合流してアイツの面倒見てくれ。…痛ッ、なんでこんなところに瓶の破片なんてあんだよ…結構血出てるじゃんか…はぁ。ん、それじゃあ俺もそろそろ』

 

ガッコンッ…

 

「……ねぇなんの音?」

 

『…さぁ。最近港でコンテナが崩れる事件が多発してるらしいし、それなんじゃないか?とりあえず今は首突っ込んでもろくなことないだろうし、もう戻るよ。それじゃあおやすみ』

 

「えぇ、おやす『ガシャン』…全くもう」

 

 恐らく通信を切らないでARCUSを閉じたのだろう。通信を続いてしまうのはマニュアルに書いてあったのだし覚えて欲しいんだけどなぁ。というかそもそも返事くらい待って欲しい。

 

ガッ…ガッゴゴ…ガッコン…

 

「あぁもう!おやすみ!じゃあね!」

 

 めちゃくちゃうるさいじゃない!…勢いで通信切っちゃったけど、今の音ってかなり近くなかったかしら。…妙なことに首突っ込んでないといいけど…。明日は予定より早めに行かないとダメそうね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだこいつら…!」

 

 

ウフフ…アハハ…フフ…おいで…おいで!おいで!

 

     こっちにおいで!もっと寄って!ほらこっち!

 

おいで!

 

 

 

 

 ようこそ、紺碧の海都オルディスへ。海が綺麗だろう?でもね、昔から船乗りの間では有名な話なんだが、『海で聞こえた声について行ってはならないよ』。なんで…?さぁ?精霊が何か悪さでもするんじゃあないかい?

 

 

 

 

 

 

 

 






姉が亡くなってから時が止まったマキアスとうちの主人公くん大して精神年齢に(数えでは)差はありません。見解の違いは経験の差。自分の方が大人だと決めつけているジェイルくんは「周りのヤツらがガキばっかで困ってる」と言ってる近所の小学校高学年のちびっ子くらいに思ってくれれば。

現在だいたい6000字半ばになるようにしていますが皆さんはどれくらいが好みですか?

  • もうちょい少なめ(3000~5000)
  • 今くらい(5000~7000)
  • もうちょい多め(7000~9000)
  • 一章三話ペースで進めろ(9000~)
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