蒼閃の軌跡 作:衝動エンジョイ勢
場所の変更もなくグダグダなケルディック、始まります。
21:00 あの技が牙突のイメージになってしまっていたため訂正しました。恥ずかしい…
今日は事前に予告されていた実技テスト、皆がグラウンドに集まっている。教官が無駄にいい音で指を鳴らすと、黒…いや紫?なんとも言えないトーテムのような
「あぁ待って!大丈夫よ。危険じゃない…とは言いきれないけど、これはとある筋から押し付けられた結構便利な機械なの。とりあえずは安心して。コイツの名前は戦術殼、今回の実技テストの相手をしてくれるわ。遠慮はいらないから思いっきりぶっ叩いてね♪」
教官がそう説明を終える頃には身体の強ばりは解けていた。リィン、エリオット、ガイウスの旧校舎組が呼ばれテストが開始される。自由行動日の探索の成果か戦術リンクを上手く利用し、かなりの速さで機能停止まで持っていった。
不思議なことに戦術殼は次のマキアス、ユーシス、ラウラ、エマの四人が呼ばれ教官が指を鳴らすと、また即座に現れたのだ。機能を停止した同一個体なのかどうか分からないが、一定のテンポで左右にふよふよと揺れているのは見ていて不安になる。
………苦戦はしたもののとりあえずは倒せたみたいだ。剣の扱いに慣れているラウラとユーシスがいたのにも関わらずこれだけ時間がかかったってことは、あの二人の間に深い溝があるのがはっきりしたってことだな。オリエンデーリングの時はどうやら協力出来ていたようだけど…何か条件でもあるのかな?
「最後はジェイル、フィー、アリサよ。前に出て!」
「戦術リンクは…どうしようかしら?」
「アリサはフィーと繋いでくれ。フィーの速度で前衛を荒らされるといつ射るか分かんなくなるだろ?だからだ。多分便利だと思うんだが」
「…ふーん」
「フィー…?な、なんだよ…」
「べつに…あのガーゴイルを壊した時の速さが私の全力より普通に速くてちょっと悔しかったとかさも私の方が速いみたいな言い方でウザイとか、そんなんじゃないよ?」
「あー…」
「い、いいからほら!行くぞ!二人とも!」
なんだかんだ言ってもテストはすぐに終わった。敵正面でぴょんぴょんと動き回ることで注意を引き寄せるフィー、その隙間、まるで針の穴に糸を通すような正確な射撃を行うアリサ、ともかく力いっぱい殴る俺…バランスは相当良かったんではないか。
教官から大まかな評価を下された。おおよそ高評価だったし初回の実技テストにしてはよしとしよう。実技テストの終了に続いてⅦ組の専用カリキュラム、特別実習の説明に入った。俺たちⅦ組は座学の授業を他クラスよりかなり早めに進めてきた。その理由はこの特別実習のためだったということだ。特別実習前日の授業短縮、実技授業の増加とそれに合わせた他科目の減少、特別実習での純粋な授業頻度の低下。こう考えてみるとあの授業の密度も納得か…。
特別実習そのものの説明も受けた。実習期間は二日間で決められた範囲に課せられた課題をこなす。実にシンプルだ。そして初の特別実習は俺、リィン、エリオット、アリサ、ラウラがA班としてケルディックに。他のメンバーがB班としてパルムに向かうこととなった。B班は言うまでもなく地獄、A班も触れてはならない爆弾がひとつ…両方とも大変そうだな、これは…。
───特別実習当日の朝───
……よし。シャワーも借りて身支度も済ませ、荷物も確認をし終わった。集合時間にはちょっと早いけどもう出るか、先に待ってても文句は言われまい。実習は二日間、現地で調達できるものを省き、シャツと下着を念の為二セット。男なんてこんなもんだ。さて、ちょっと町を回るかな。早くに開けてくれている店もあるから忘れ物の最終確認にちょうどい
─────────────────い?
「おいジェイル!どうした?公園なんかで何してたんだ?今日は実習なんだから寝ぼけるのは勘弁してくれよ」
「────ハハ、冗談。お前らの方が心配だがな」
「…っ…ふふ…っ……ハハハ!」
「な、なんだよ…気でも狂ったか…?」
「ジェイル、リィンとアリサの問題はついさっき解決したよ。だから今心配なのはジェイルの眠気だけだね!」
エリオットって案外毒舌なんだな…。……確か、俺は学生寮を出たばかり。今から町を回ろうとしていた。それなのに気づけばだいたい二十分ほど経って公園のベンチで座っていた。正直何が起きたかよく分からない。あまりに不自然だけど…
俺たちが駅に着いた時、B班も既に全員そこで待機していた。駅員の女性に切符を貰い、端の方で話していた。
「…………………」
「…エマ?どうしたの?」
「あ、ううん。なんでもないんです。…フィーちゃん、今回の実習大変なものになると思いますから…年下に頼るようで悪いですがフォローしてくれると助かります」
「うん。…なんか上手くはぐらかされた気がするけど」
「うっ…あはは…」
「…………」
「ジェイル…?」
「…眠い」
「お前なぁ…」
エマがこっちを眺めていた。フィーにそれを探られ誤魔化している。…そういえばこの前もエマとちょっと変わった話をした気がする。もしかしてエマが?───────いや今は
列車内では各々自由に会話したりブレードというカードゲームで遊んだりしていた。そろそろケルディックも近くなってきたという時、各自で持っているケルディックの知識を擦り合わせたりもした。
途中、教官の話をしている時に待っていたかのように突然教官が乱入してきたりもしたが、すぐさま寝てしまったため語ることもないだろう。
ケルディックに到着し、初めてということもあり教官の誘導の元今日利用する宿に案内してもらった。部屋に置いてあった封筒を手に取って準備を整えた後宿を出る。後ろから着いてきたサラ教官に質問をし、突如シラフに戻った教官がそれに答えた。リィンは教官の意図を理解したようだった。
────これはリィンが押し付けられた生徒会の依頼と同じ。もっと言えば、まるで遊撃士の真似事のような。ただ、今回やこれからの特別実習に依頼の取捨選択が必要になるようなものはさすがに無いかな。とりあえずできる限り依頼を解決しここの土地を把握すれば良いのだろう。
初日に渡された依頼は三つ。東ケルディック街道の手配魔獣の対処と西ケルディック街道の街道灯の交換、そして薬草の調達。薬草の調達は必須では無いものの可能なら全部の依頼をこなしたいというのは俺たちの総意だった。
教会で話を聞いたところ、ひとつは大市で調達が可能なようだ。もう一つは西ケルディック街道方面の農家の方が取り扱っているとの事。先に西側で二つの依頼をこなしたあと、宿で遅めのランチを取って最後の依頼へ。大体の予定を決めたところで早速活動開始だ。
「おい!そっちは街道だ。勝手に出ようとするんじゃない!」
「…は?」
「ちょっとジェイル…!」
「…俺たちはトールズ士官学院のⅦ組に所属しています。現在特別実習でこちらに来ていて、その課題の達成に街道に出る必要があるのですが…」
「む、そうか…実習とやらは聞いていないが、諸君らの学院から領邦軍に進んだ者も何人かいる。トールズの名に泥を塗らぬよう励むといい。それから、面倒事は起こさぬように」
「はい、ありがとうございます!」
リィンがすぐさまフォローしエリオットが愛想良く返してくれたことで何とか彼らは去っていったようだ。彼らは領邦軍、ケルディックは…位置的にアルバレア家から派遣されているのだろう。いざ!という時に呼び止めるものだから思わずキツめの声が出てしまった。
気を取り直して街道に出ると辺り一面の気持ちのいい緑が視界を襲った。
「わぁ…!」
「とてものどかだ…落ち着くな…」
「えぇ、本当に…」
「ここで寝転がってゆっくり寝たくなるな…」
「お前らーまだ街道出て数歩だぞ〜?感動するのはいいけど依頼忘れんなよ〜?」
さっきは俺一人だけ咎められてたというのに何だこの差は…。ゆっくりと皆で動き出す。風車小屋もあってとても風情があった。四人が言っていた通り休みたいのは分かるがこれは実習なのだ。
やっぱりこのメンバー、というかⅦ組全員に言えるのだがとても真面目だな。最初のだらけから一瞬で切り替えたのだから大したものだ。動き始めておよそ四十分程だろうか?件の灯りのところまで来て、交換を始めた時周りに魔獣が集まり始める。
「こっちは俺たちが対処する。そっち任せたぞ、リィン」
「分かってる!」
「…ふむ、数が多いだけだな」
「うん!このくらいなら僕でも大丈夫だね」
ラウラがパキンパキンと魔獣たちの核が壊れる音を鳴らしながら軽々と話している。エリオットとアリサも上手く連携して対処しているようだ。ラウラの処理の仕方が容赦なさすぎて若干引いた。そうこうしているうちに魔獣たちが退いていく。リィンの手際の良さもさながらに、灯りのありがたみが身に染みるな。
その後農家の方に皇帝人参というものを分けてもらった。これも薬草の一種だと言うが変わった見た目だ…。それからちょっと先のルナリア自然公園というところに向かったのだが…
「ん?…なんだ?お前ら」
「ここになんか用かい?」
「え、えっと…?」
「その、たまたま通りがかっただけなんですけど」
「ふむそなたたちこそどういった者たちなのだ?」
「俺たちは、あー…、管理人だ。今は通行止めでな。分かったら帰った帰った」
「どうする?リィン」
「……はい、今はこちらにも用事は無いので帰ります。お仕事頑張ってください」
…どうやらこのまま離脱することを選んだようだ。実際このまま居座っても意味はあるまい。
「ん?お、おう!お前たちは…見た感じ学生だな?頑張れよ!じゃあな!」
「どう思う?」
「正直、違和感は拭えなかったけど…多分あのまま聞いても通行止めで押し通されるだろう。今は大人しくケルディックに戻ろう」
「…そうだな」
そうして昼の一時頃にはケルディックに戻れた。大市で残りの薬草を確保し各自大市で気になったものを購入し、教会に薬草を渡してから一度宿に戻る。昼食を取り終えた頃には二時半になっていた。
食後休憩を取ってから東ケルディック街道に出て手配魔獣の相手をしに行く。
「…うわぁ。凄い、狂暴そうだね…」
「うーん…なんか、緊張するわね」
「やるしかなかろう」
「心強えなぁ…俺は
「…Ⅶ組A班、構えろ!これより手配魔獣との戦闘を開始する!」
『応ッ!』
戦闘はつつがなく進んだ。皆の戦意を高揚させ続けるリィンに、気弱さとは裏腹に探索のおかげか補助慣れしているエリオット。二人を中心にどんどんと追い詰めていく。
それよりも…さっきからラウラが戦いに集中出来ていない。ちらちらとリィンのことを気にしている。なんだ…?戦いながらだから難しいものの、俺もリィンに少し気を配る。……?マジで何なんだ?一瞬ラウラの眼が鋭くなったけど、よく分からない。かなり追い詰めたし、そろそろ終わりだ。
「キメるぞ、リィン!」
「あぁ!」
戦術リンクを接続させる。全力で、下から持ち上げるように…!
「崩すッ!」
────────っ?
「…紅葉切りッ!」
ラウラの眼が鋭い。今のは俺でも、いや俺の方が明確にわかった。トドメを刺す直前、リィンから伝わってきたイメージは紅葉切りとは全く別物だった。居合の構えから切り抜けるようなものじゃなくて、重心を低く前に偏らせ右腕と右脚を後ろに引いた状態から突撃、凄まじい速度で斬り抜けるものだ。しかし直前でそのイメージは掻き消え、実際足に籠っていた力がふっと抜けた。これは…出来るのにしないのか、したいけど何かあるのか。それとも別の何かなのか。
ラウラが少しピリついていることもあり、あまり話すことも無く早めにケルディックに戻ってきた。夕方のケルディックは少しざわついていた。騒ぎの元の大市に向かうと二人の男性が取っ組みあっていたので、俺とリィンで急いで止めに入る。元締めが鎮めてくれたあと俺たちはオットー元締めの家にお邪魔して、今ケルディックで何が起きているのかを教えてもらった。アルバレア家からの圧力、領邦軍の怠慢や不手際…俺たちは聞いた話を胸の内でもやもやさせつつ宿に戻った。
リポートを書き終え夕食を取り終えた後、気づけばどうしてトールズに入ったのかという話になっていた。アリサは自立、ラウラは憧れの人に追いつくため、エリオットは希望とは違ったが仕方なく、リィンは自分探し。俺は───
「俺も大体はリィンと一緒かな。自分でここを見つけたか、誰かに勧められたかの違いくらいだよ」
本当は辞める予定だったが、しかも嘘だけど。自分の産まれてからの十一年間を知りたい、なんて言ったらせっかく休んでるのに面倒くさいことになりそうだしな。それから少し雑談をし満足したのか部屋に戻っていく。その時だ、俺とリィンが呼び止められたのは。
「リィン、どうしてそなたは本気を出さないのだ?そなたの剣は八葉一刀流なのだろう?リィンの力はそんなものでは無いはずだ。それにジェイルも。そなたは確かに力は全力なのだろうがその余裕を余しているところを見るに、まだいけるはずなのに、なぜ…」
「誤解させていたならすまない。確かに俺は《剣仙》に直接指南を受けていた時もあった。だけど剣の才能の限界を見限られた身。所詮ただの初伝どまりだ」
「………そうか。ジェイルは?」
「ハハ、いつもヒリついてるなんて疲れちゃうだろ?余裕はあるだけいいんだよ」
「………はぁ…、良き鍛錬仲間が、できると思っていたのだがな…。少し外で剣を振ってくる。戻る時間は気にするな」
「レポート書けよ〜」
「……あぁ」
子どもというかなんというか、ラウラはとても真っ直ぐな子なんだな。勝手に自分で期待して応えてくれないから拗ねる。見る目があるせいか相手に、自分の期待に応えれるだけの実力があることを見抜いてしまう。
だけどラウラ、コレは真っ当に生きてきた奴が突っ込んでいい問題じゃない。
───────だって、自分探しをあんな真剣に、覚悟した顔で言う奴が普通なわけが無い。くさすぎたか?なんて言葉を、照れ隠しではなく誤魔化すために使う奴が何も抱えてないはずがないんだ。コイツは、何かに振り回されながらここに辿り着いた。俺と違って、道を指し示してくれる人がいなかったのなら、同類として、ちゃんと手助けしないと。
「リィン、レポート書き終わってるか?」
「…ん。さっきお前がやってた時に済ませたよ」
──────さて、藪をつついて蛇を出なきゃいいが
「刀持ってこいよ。─────ちょっと、お話しようか」
当然だが、鬼が出てくるなんてことはこの時の俺は想定していなかった。
現在だいたい6000字半ばになるようにしていますが皆さんはどれくらいが好みですか?
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もうちょい少なめ(3000~5000)
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今くらい(5000~7000)
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もうちょい多め(7000~9000)
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一章三話ペースで進めろ(9000~)