蒼閃の軌跡 作:衝動エンジョイ勢
今作品は、私が閃をやっていて違和感を覚えたところを消化するために細かい改変が入っています。今日中にケルディックを終わらせるべく執筆中です。この感じだと20時頃には投稿できるかと思います…
実習二日目の朝、全員が朝食を食べ終えうつらうつらと頭を揺らしていた時、突如静寂を破る者が現れた。
「じ、事件です!マゴットさん、大変なんです!!」
「来るのが遅いよルイセ。早く手伝っておくれ」
「ごめんなさい…でも大市がっ!」
必死なルイセの声を聞いた時頭をよぎったのは昨日の騒ぎ。全員と軽く目配せをしてからリィンが先導し大市に到着すると昨日とは比べ物にならないほど空気が張り詰めていた。怒鳴り合う二人の商人、二人を止めようと声をかけるも聞いてくれる気配がなくただ困った表情を浮かべる元締め、その後ろにはぐちゃぐちゃに破壊されたハインツの屋台。少し目を右にずらすだけでもうひとつ、同様に破壊されたマルコの屋台も見てとれた。
二人の興奮が頂点まで到達しようとし殴り合いが始まりそうになったため、俺とリィンが後ろに周り羽交い締めにして何とか抑えた。
「落ち着いてくださいマルコさん!これじゃあ話すものも話せません!」
「アンタもだおっさん!自分がやべぇっていうのがまだ分かんねえのか!?」
どれだけ強く抑えても二人はじたばたと暴れるばかりだ。どうしようか困っていた時、辺りの喧騒を止めるには十分なほどの大きな笛の音がした。
「ええいこんな早朝からなんの騒ぎだ!何が起きたか説明しろ!」
「う、うむ…それがですな─────」
騒ぎを聞き止めた領邦軍がオットーからの説明を聞いた後、隊長は信じられないことを口にした。二人を引っ立てる。意味が分からない、どういうことだ?二人が同時にお互いに屋台を破壊した?そんなわけが無い!しかし、そんな異議は通らず、先程の言い分を盾に強引に騒ぎを終わらせた。
俺たちはそれぞれふたつに別れ、それぞれの言い分を聞いた。
「ハインツさん、何があった」
「何があった!?見て分からないのか!私の商品が消え、屋台は崩壊!もう終わりだ…何もかも!」
「落ち着け。状況が悪いのはおっさんの方なんだ。もう少し落ち着いて考えないと」
「なぜ私の方が悪いというのだ…どう見たってヤツのせいだ!自分の商品を隠し、私の商品を盗む。そして両方の屋台を壊す。これで犯行は成立だ!」
「それはおっさんにも言えるだろ…もっと冷静になれ。アンタの屋台の方が手前にあるんだ。あのマルコって人が先におっさんの屋台を壊したなら、アンタがマルコさんの屋台を破壊するよりも先に気づく。あんな高級な商品が沢山無くなったんだ、真夜中だろうが時間を問わず騒ぐだろうよ」
「だ、だが…!」
「アンタが先に屋台を破壊すれば、おっさんの屋台を破壊することに意識を割いたマルコさんは壊れた自分の屋台に気づかず無心でおっさんの屋台を破壊した。これで辻褄が合う」
「そんなのは辻褄合わせだ!領邦軍と同じじゃないか!」
「じゃあ分かれよ。これでもこじつけにしてはマシな方なんだ。それでもおかしいってんなら直ぐに他の誰かって分かるだろうが」
「あっ…うぅ…私の商品…」
「それが無事かは分からん。だけど俺たちが何とかする。待っててくれ」
「君たちは学生だろう?何をどう信じれば」
「いいから!──信じろ」
強引に抑え込んだジェイルたちは向こうでマルコと話していたリィン、アリサ、エリオットと合流した。
「こっちはマルコさんは何とか落ち着いてくれて…でも全然事情は聞けなかった。そっちはどうだった?」
「こっちもだいたい一緒だ。あでも解決するって言っちゃったわ…ま、いけるでしょ」
「アンタ何言ってんの!?」
「でも目安は着いてるだろ」
アリサがキレながら当たってくるが、当然かのように返せば困惑したような顔をする。マジぃ?見てみればラウラもハテナを浮かべている。
「…そういえばさっきも言っていたが…本当はどうなのだ?」
「ん。まぁ本人たちかは別として、関係があるのは間違いないと思う」
「それって何なのよ!」
「本当に分かんねえのかぁ?あんなキレてくんのにぃ?えぇえ?…分かったすまん言うから!…おそらく関係してるのは」
「…領邦軍」
エリオットが静かに、ただし力強く答えた。リィンも頷いていた。アリサも言われてみればという顔をしていたが、ラウラはただ一人驚いた顔をしていた。そのままエリオットは続ける。
「…冷静になって考えてみればおかしかったんだ。だって昨日の夕方騒いだのに一度も出てこなかった。でも…今日は違った。朝僕達が宿でルイセさんから聞いてすぐこっちに来たんだ。騒ぎになってそんなに時間は経ってない…なのにこんなにすぐに来たんだよ。明らかに…知ってたとしか思えない」
「そんな…領邦軍だぞ…?その地を治める貴族から派遣された軍がそんなこと───!」
「昨日聞いただろ、アルバレアからの圧力。搾り取るためなら大体のことは許されてるんだろうさ。それこそその貴族から派遣されているんだから」
「だけど…父上は…」
「ラウラの父さんが珍しいだけだ。全ての貴族が搾取するとは言わないが、一定数いるだろうな。大きなところこそ沢山搾り取れるから起きて然るべきなんだ」
ラウラが驚愕、というか困惑している。父親という善き貴族の鑑が居て、それを見て育ってきた。世間を知らない真面目で真っ直ぐな女の子っていうのは大変だな。
「ラウラ、信じられないことを愚直に受け止めようとしたって疲れちゃうだろ?こういうのは話半分に聞き流してればいいんだよ、余裕を持てって」
「だけど現に被害者が出ている!」
「いいから」
…すまない、そう言ってしゅんとしながら落ち着きを取り戻したラウラを脇目に今後の方針を立てる。
まず最初に依頼の処理。当たり前だ。今回のは偶然起きてしまった事故、本来の依頼はあって然るべきだ。幸い今日出ている依頼は少ない。さっさとこなして次に移ろう。
第二に事件の調査。当然こっちは遭遇してしまっただけで対処するどころか首を突っ込む必要なんてない。だけどこのまま終わるなんて夢見が悪いだろう。だから俺たちは本分を全うした上で犯人を突き止めてやる。
一つ目は財布の落とし主の捜索。五人が手分けしてケルディック中を当たったのだ。間もなくして落とした人は教会で見つかった。確かに旅行者ならば財布は命だろう。なぜだかまた会う予感がした……予感だけで済めばいいのだが。二つ目の手配魔獣は一瞬だった。戦闘時間でいえば二十分もなかっただろう。昨日相手にした魔獣より僅かに強かったものの、昨日を通じて得た戦術リンクの経験に比べれば誤差たるものだった。オットー元締めに討伐報告を行って午前十時半、追加の依頼も無いためこれでようやく本格的に動ける。
昼の十一時半、早めのランチを取り終え、大市での聞き取りは朝の段階で終わらせていたため直接領邦軍の詰所に向かう。アリサやラウラに任せるのは心配、リィンやエリオットは押しが弱い。やるのは俺しかねえ!行くぞ!
「む、お前たちは昨日のトールズの生徒か」
「お忙しい中申し訳ありません。今朝の手腕、素晴らしいものでした。将来軍属を志すものとして、是非隊長でおられる方にお話をお聞かせ願いたいのですが」
「…フン、まぁいい。取り次いでやるから待っていろ。………それと貴様、そうおだててどうにかなるものだとは思うなよ。これは手ごころというものだ」
「い゛」
「はぁ…」
「これならリィンに任せた方が良かったんじゃないかな?」
「よくもまぁそんな心にもないこと言えるわね」
「………」
皆からの言葉が突き刺さる。馬鹿野郎バカ正直に行けば失敗してたかもしれないだろ!つまりこれは俺の手柄だ、なんて調子のいいことは言えない。実際露骨だし。リィンの愛想の良さに任せてしまえば良かったかもしれない。少しして、先程の兵士とは違う少し派手な装いの者が出てくる。いくつか質問を重ねるものらりくらりと躱されてしまった。
「もういいか?お前たち学生の戯言に付き合っている暇はないのだが」
「じゃ、じゃあ最後にいいですか…?」
「なんだ、言ってみろ」
「被害者になられたマルコさんの食品ですが、
「む…?盗まれたのは加工食品のはずだが…」
「…ふーん」
「な、なんだその目は?」
「あ、俺からも一つ─────その足元の泥の在り処、俺たちは分かっているからな」
「うーん気持ちいい!やっぱり偉そうにしてる奴が呆然とする様を見るのは最高だな!」
「それにしても、よく靴に目をつけたな。俺は隊長と対峙することに集中してて気づかなかったんだが」
「午前に西ケルディック街道に手配魔獣を殺りに行っただろ?その時たまたま昨日には無かった轍を見つけたんだ。まぁそれには何も無かったんだけど。問題は手配魔獣の向こうからずっと続いてきていたケルディックに向かって歩く乾いた泥の足跡」
「そういえば…それに領邦軍の詰所を超えた先には泥の足跡は無かった。ここまで歩いたせいなのか減ってはいたけど…確かにここの土とは違うそれが道中に見られた。でもどうして領邦軍はそこに…?」
「分からない。でもこれ以上ここでヒントを見つけられないなら、街道に出るしかないだろ」
新たな指針が決まった。正午、俺たちはこの事件を終わらせるという決意を胸に西口を出ようとした時、異常なほど、それこそ昨日の深夜の風見鶏の匂いを優に超える酒の匂いを感知した。目を向ければそこにはアホほど瓶を開け、死ぬほど酔ったおじさんが。
「さ、酒臭っ!」
「うおきっつっ…お、おいおい、おっちゃんどーした?」
「んああ〜?なんだ〜?かなしいかなしいおじさんの話を聞いてくれんのか〜?」
「どうしたんですか?こんな昼間から…」
「それがよぉ〜、十数年めちゃくちゃ真面目にやってきたしごとをクビにされたんだよぉ!くっそ〜!」
「…御仁、そなたは何の仕事をしていたのだ?」
「おお嬢ちゃん、お目が高い!俺は自然公園のかんりにんさぁ〜!あそこのきょうぼうな魔獣は、おれがひっしにてなづけたんだぞぉ?おらぁ凄腕の調教師だ!おれがいなくなる意味がわかってるのかぁ?」
何となく読めてきた。皆が確信を持った目を向け合う。
「それなのによぉ…あんなチャラチャラしたガキみてえなやつらにこの仕事取られちまったよ…俺はこの宝石を元手に一山当てるぜぇ!」
「!お、おじさん、その宝石どこで拾ったの?」
「あぁ?これはなぁあけがたに新しい管理人が押してただいしゃから落ちたもんなんだ。女神さまも俺をみすてちゃあおらんかったのよ!それで安心して寝ようと思ったのに兵隊さまは出たり入ったりでベチャベチャうるさくてねれやしねえ!もうやけだやけ!酒持ってこーい!」
おっちゃん全部言いやがった…でもこれで全部繋がった。最初からこのおじさんに聞いとけばよかったとも思ったが、それでも酒呑みの妄言と切り捨てるかそうじゃないかの差はあっただろう。そうして何となくもっと早く済んだじゃないかというもやもやを嚥下する。
要するにこうだ。新しい管理人はアルバレアの息がかかった者たち。潜伏先として利用する予定だったものの中の魔獣が手強かったため、領邦軍の手を借りた。自然公園から帰投する領邦軍たちの足には泥が着いたままだった。
「思い返してみれば、昨日は西側の街道で行ける場所ほぼ全てを回ったはずだ。その中で泥濘んだ道は見受けられなかった」
「決まりね。行きましょう、ルナリア自然公園、その奥地に」
「二人の商品を取り戻すんだ…絶対!」
「…そして、彼らに罰を。こんな非道を見過ごす訳には行かない…!」
俺たちは自然公園に到着した。リィンの見事な居合で音を立てずに内部に侵入することが出来たA班は、鬱屈とした、だけどどこか神秘的な内部の景色に息を呑んだ。
「行こう。轍も薄くだが見られる。この先に必ず…」
「ね、ねぇリィン。これ私の見間違い、じゃあないわよね…?」
アリサが見つけたのは二アージュ程はあるであろう巨大な足跡。俺たちはその巨大な足の持ち主に怯えながら最奥の手前まで来た。道ほどで出会ったゴーディオッサーと言われる角が生えた大型の魔獣もあれほどの足は持っていなかった。
最奥に突入し、木箱と駄弁る偽の管理人たちに奇襲をしかけ、程なくして拘束し終わった。当たり前だ。いくら対人戦の経験が少ないとはいえこちらはこの二日間だけで手配魔獣を二件対処している。素人が握る導力銃など恐るるに足らなかった。
「お前ら!こんなことして絶対後悔するからな!」
「私たちにそなたたちを罰する権利はない。だが、これが明るみになれば困るのは、それもまたそなたたちだ。…この木箱たちは本来あるべき場所に戻させてもらおう」
「くっそ…」
──────────♪
「…?…今何か、笛の音が…」
俺たちはさっさとこいつらを連れて離脱すべきだった。そう後悔したのはヤツの姿を見た時だった。
ドスン─────ドスン─────ドスン─────
「っ……来るぞッ!」
『GAGyAaaaaaaaaaaaaa!!!!!!』
「ひっ…!」
「これが…あの足跡の持ち主…!」
「相手にとって不足なし…いざ!」
「なぁリィン、俺のガントレットあれに効くかぁ…?」
「効くさ!俺のあれを止めたんだから!Ⅶ組A班、総員戦闘準備!ルナリア自然公園のヌシに応戦する!行くぞ、全力を尽くせ!」
─────────────────────────
「グッ!数が多いッ!ゴーディオッサーが数匹いるだけでも手間取るというのに…!」
「こいつら群れかよ…っ!アリサ、エリオット!補助任せたぞ!」
アリサの弓による敵の行動の妨害、エリオットの弱点解明や回復、リィンとジェイルによる速度を活かした遊撃に圧倒的な膂力を利用した攻め。バランスの良い確かな連携が取り巻きのゴーディオッサーを減らしていく。
「…っすまない!皆、十秒だ!十秒俺にくれ!全てをひっくり返す…今全てを出し切る!」
『応ッ!』
リィンの言葉を信じて前衛後衛問わず、リィンを護るように前に出る。
「こっちよ!いって、フランベルジュ!」
アリサが気を引き、
「オラァ!どこ見てんだド低脳ッ!」
ジェイルが殴り飛ばす。
「皆頑張って!エコーズビート!」
エリオットの心強い援護が、
「すまないジェイル。やはり私は余裕を持つというのは無理だ。奴らを罰せぬということに腹が立って仕方がない。だから私は…この怒りを剣に乗せるッ!……ォォォオオオっ!洸刃乱舞ッ!」
ラウラの渾身の技がゴーディオッサーの大半をなぎ払い、グルノージャへの道を生み出す。
「…開けたっ!行ってこい、リィンッ!」
俺は皆を信じている。皆も俺を信じてくれている。だから、俺はそれに応えるんだ。
深呼吸をする。吸って、吐いて、少しずつ自分を消していく。この吹き荒れる戦いの風に身を任せて、泣くように揺れる草を感じて。この身を包む温かい、焔があった。俺はこの焔を握り締める。温かな光は確かな熱に。この手を焦がす、熱い、熱い焔となる。
───────行ってこい、リィンッ!
───────任せたわよ、リィン!
───────思い切り倒しちゃえ!
───────締めは任せたぞ、リーダー
俺はこの信頼に応える。そのための焔は、もとより俺の中にあった。
「コォォォォォオオオオ…!焔ノ太刀ッ!」
リィンの一撃によってグルノージャが倒れ込む。ヤツの身体からはプスプスと煙が上がっており、リィンが決めたあの攻撃が決定打になったのが明らかだった。
リィンが右肩を抑えてしゃがみ込む。昨日変貌したリィンの対峙した時でさえ見たことのなかった全身全霊の一撃。この時だけだったとしても、間違いなく
これで終わり。あの木箱を持ち、そこで腰を抜かした偽の管理人たちを連れて帰れば大団円、だというのに。
──────────────♪
「っ…まただッ!笛の音が聞こえるんだよ!おかしいよ…笛の音を聞いてるだけなのに、こんなに怖いなんてっ!絶対なにか─────」
──────ズッ ドスンッ
「───────ぁ」
GYAaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!
だというのに。それを許してくれないのか、お前は。
閃の軌跡ここがおかしいよ領邦軍。荷物どこに言ったか聞かれてるんだから知らんで通せるのに何故か気になる部分を素直に言っちゃう。ということで言うこと変えました。
読んでお分かりの方もいらっしゃると思いますが、エリオットに少しだけ男らしく、ラウラには女の子らしくいてもらいます。
エリオットは親がああなら嫌でも寄るよねっていう。ラウラは見本がいて、常に正しくあれたんだから外での歪み知らなさそうだよねっていう。キャラクターの性格にもそこそこ改編入れてます、ご了承ください…
現在だいたい6000字半ばになるようにしていますが皆さんはどれくらいが好みですか?
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もうちょい少なめ(3000~5000)
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今くらい(5000~7000)
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もうちょい多め(7000~9000)
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一章三話ペースで進めろ(9000~)