ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE11:痛み

帰りもVTOLを使って本部に戻り、パイロットの控え室に入る。中では、プラグスーツ姿のレイとシンジ君が白い机の前に座っていた。俺は近くの自販機に売っていた缶のホットココア3本を抱えて部屋に入る。

 

「よォ、レイにシンジ君。待機してるのも疲れるだろ?これは俺の奢りだ、受け取ってくれ。」

 

「エイジ君!?今までどうしてたの!?」

 

「ちっとミサトさんに連れられてね。外をほっつき歩いてた。」

 

そう言ってココア2本をそれぞれレイとシンジ君に渡す。

 

「ありがとう。」

「ありがと、エイジ君。」

 

シンジ君は軽く振って飲むが、レイは飲もうとしない。

 

「ん?もしかして飲めなかったか?」

 

「いいえ、開け方がわからないの。」

 

「そっか。こうして開けるんだよ。爪気を付けてね。」

 

レイの横に座り、缶をよく振ってから、プルタブを開ける。レイもそれを真似て缶を開き、ココアを飲む。

 

「…おいしい。」

 

「そいつァよかった。」

 

俺はココアを一気飲みし、立ち上がって作戦内容を伝える。

 

「よし、それじゃあ作戦説明だ!今回の作戦『ヤシマ作戦』は、あの青い半透明の正八面体を超遠距離から狙撃するってモンだ。敵の正確な当て返しが想定されるため、狙撃、防御の役割分担がある。狙撃役はシンジ君、防御役はレイだ。」

 

「根拠は?」

「ぼ、僕今まで狙撃なんて一度もやったことないよ?できるかな…。」

 

「まずは根拠からだ。シンジ君は初号機とのシンクロ率が高く、機体操作に不安定が無いことが狙撃役の理由。レイに関しては、零号機がそもそも起動したてでまともに調整をしていないというのが理由だ。両者とも、必要なタイミングでアークの補助をつける。

そんでもってシンジ君、ここからは君の重要な立ち回りだ。」

 

シンジ君の顔が険しくなる。

 

「今回使う武器ってのは陽電子ライフル。こいつが曲者で、敵の攻撃の干渉、地球自身の重力、自転なんかの要因で弾がまっすぐ飛ばない。んでもやることって言ったら照準や誤差修正とかはMAGIに全投げして、チャージが終わったらトリガーを引く。弾は暫く銃口から出続けるらしいから、照射が終わったらすぐ移動してくれ。ポイントは逐次こちらで知らせる。

最悪のことを言っておくと、幾らMAGIによる誤差修正があったとしても確実に一撃で仕留めるっつー保証はどこにもない。何があっても、絶対に焦って撃っちゃダメだ。いいね?」

 

「責任重大…正直、不安だよ。」

 

「今のシンジにしかできないことだ、頑張れよ。お次はレイ!」

 

彼女の顔が少し強ばる。

 

「防御に使うシールドなんだが、理論上は敵の攻撃に対して17秒間もちこたえられる。だけど陽電子ライフルはチャージに最短20秒かかる。仮にチャージ開始と同時に防御する場合、3秒間以上無防備な時間が発生してしまう。そのリスクを知っておいてくれ。」

 

「わかったわ。」

 

「よし、お次はスケジュールだ!一度しか言わねぇからよく記録させとけよ?

作戦開始時間は、明日午前0時から。

本日17時30分に両パイロットはケイジに集合。もう30分後だな、何か軽いの食っとけよ。

18時00分にエヴァ零号機、初号機起動。

同5分に二子山仮説基地に向かい、30分に到着。以降は待機だ。

んで、明朝日付変更と同時に作戦開始。

二人ともいいね?」

 

「わかった。」

「了解。」

 

「俺はシステムの都合上、ここに残らなきゃならない。戦場からは遠くにいるけど、エヴァの中ならいつでも傍にいる。頑張れよ、二人とも。」

 

「うん。」

「ええ。」

 

「それじゃ、行ってらっしゃい。健闘を祈る。」

 

 

 

現在時刻18:45。アークシステムに搭乗、起動させ葛城一尉と連絡を取る。

 

「葛城一尉、設営はどうですか?」

 

『だいぶ順調よ。ありがとうね、作戦概要の説明までエイちゃんに投げちゃって。』

 

「これも俺の仕事ですからね。んでも、今回の彼らとの位置はだいぶ遠いですけど。」

 

『上手いこと言うじゃない。エイジ君、あなたのお陰でだいぶ指揮もスムーズに行ってるわ。本当にありがとう。それじゃ、こちら側の作戦も説明するわ。

これから冷却装置と送電システムの最終チェックを行うわ。その後、作戦開始と同時にMAGIによる照準修正を開始。仮に敵がこちらを察知できても、先に撃てれば問題ないわ。それで確実に仕留める。』

 

「作戦というか狙撃の手順まんまですね。それなら、なるべく気づかれないよう時間稼ぎが必要ですね。…アークシステムに周囲の山中にある兵装ビルの操作権限を寄越してもらえませんか?そこまでいかなくても、こっちに地形データと戦力データをください。

飽和攻撃でなるべく敵の注意を逸らします。」

 

『なるほど、多くの弾をバラまいて、敵の気を引こうって作戦ね。いいわ、指令と交渉する。』

 

「ありがとうございます。なるべく”万一”ってのは減らしたいですしね。」

 

『そうね。』

 

「それじゃ、こちらとの通信終わり。そちらも頑張ってください。」

 

『エイジ君も、サポートよろしく。…あ、ちょっと待って。あなたたち宛に、伝言が来てるのよ。そっちに送っておくわ。』

 

「伝言…ありがとうございます。」

 

通信終わり。お次は…お二人と少し会話していくか。あんまりイタズラはしたくないけどね。

零号機をジャックして、ジェスチャーと同時に

「よっ」

と言う。唐突に俺の声が零号機から来て、レイもシンジ君も驚いてこちらを向いている。はは、面白れ。

 

「二人と話したいからさ。悪ィね。」

 

[め、めっちゃ驚いた…。]

[……。]

 

「ごめん、これで少しは緊張は和らいだ?」

 

[え?うーん、どうだろう。]

[…わからない。でも、声を聞けて安心した…ような気がする。]

 

「ま、考える余裕があるのなら平気だな。…今回の作戦、俺のサポートがどこまで効くかは正直未知数だ。それにそもそもがゴリ押しのような作戦。こんなものでも付き合ってくれて…本当にありがとう。」

 

[やだな、エイジ君らしくない。]

[それほど厳しいってこと?]

 

「残念ながらそうだ。でも、俺は絶対に諦めない。…もうそろそろ時間だ。ジャックを切るよ。」

 

[エイジ君も頑張って。僕らも頑張るから。]

[誰も死なせない…!]

 

「最後に、俺ら宛に伝言が来てる。…再生するぞ。」

 

[[あー、ワイや、トウジや。シンジ、こないだはすまんかった。それで何やが―

トウジ、そんなぐちぐち言ってもしょうがないでしょ?

う、うるさいわい!…三人とも、頑張れよ。

僕からも。ケンスケです。頑張れ、応援してる。

じ、じゃあ最後に…洞木です。影嶋君、碇君、綾波さん…。頑張ってね。クラスのみんなも、応援してるから。]]

 

「…終わりだ。絶対に勝つぞ。」

 

通信終了。

 

 

 

[現在時刻、9月10日、午前00時00分。時間です。]

[ヤシマ作戦開始。]

[了解、第一次接続開始!]

 

「兵装ビル、ミサイル7番から20番、解放次第発射!」

 

ディスプレイに表示される地形図と、中継映像を確認しながらこちらも時間稼ぎの指揮を執る。

 

「砲台6番から25番まで展開、射撃開始!」

 

指示を飛ばした所から順番に撃墜され、兵装ビルが破壊されていく。お構い無しに間髪入れずに次々に指示を飛ばす。狙撃ポイントが勘づかれたら終わりだ。

 

[撃鉄起こせ!]

 

「よし、このまま絶対に攻撃間隔を空けるなよ!アーク、初号機とクロッシング開始!」

 

画面が移り、今度は初号機…正確には初号機が覗いているスコープの画面が投影される。

 

「シンジ君、準備はいい?」

 

[大丈夫。]

 

次の狙撃ポイントはここから1.3km東に移動したポイントだ。MAGIに位置座標を転送する。これで誤差修正もある程度早くなるだろう。こうしている間にもカウントは進められていく。

 

[5、4、3、2、1]

[撃てッ!!]

 

ミサトさんの号令と共に放たれた初号機の射撃は、正確に敵のコアを貫いた―ように見えた。

 

[やったかッ!?]

 

その発言はフラグだバカ上司!

 

[砲身冷却、再チャージ開始!]

 

「初号機、零号機!次の狙撃ポイントを転送する、各自指定座標へ速やかに移動!敵がやられたかの確認ができない以上油断するなよ!零号機とクロッシング開始!」

 

[了解!]

[了解。]

 

第一射は葛城一尉の発言のせいで恐らくハズレだ。ということは、ここに弾が飛んでくる可能性が極めて高い。素早く移動できたが、果たして―

 

[目標内部に、高エネルギー反応!!]

 

マズい、移動が間に合わない!!!!

 

「レイ!」

[わかってるわ。]

 

零号機は盾で初号機を庇う。こちらにもそこそこフィードバックが来ており、体表が熱くなっている感覚がある。

 

[綾波!]

 

[碇君、行って!]

「シンジ君行け!今なら狙撃ポイントに行ける!」

 

[わ、わかった!]

 

「再チャージまでどれくらいだ!?」

 

[残り10秒!]

 

まずい、既にこの盾で10秒は受けた。間違いなく間に合わない。……レイを傷つけるわけにはいかない…!

 

「アーク、零号機のコントロールジャック開始!」

 

[え!?]

[影嶋君!?]

 

「やってくれ!」

 

[…了解!]

[ダメ、待って!]

 

数秒後、俺は零号機とシンクロした。

 

それと同時にてプラグ内を照らす青白い閃光。

激しい熱。

最早言葉で形容できない悲鳴が体から出てくる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああっ!!!!!

AT…フィールド…全開ぃいいいいい!!!!」

 

物凄いフィードバックが来る。体全体が焼き尽くされそうだ。それでも、この痛みを、レイに受けさせるわけには…ッ!!

 

[…まよ、撃っ…]

 

何か聴こえたが、言葉として理解できなかった。この苦しみに耐えることしか、今はできない。数秒後、閃光から解放されたようだが、よくわからなかった。でも、これはわかる。作戦は、成功…だ…。

 

 

 

-綾波レイ-

 

不安だった。

 

影嶋君が、私を庇った時、一瞬だけ聴こえてしまった。

 

彼の叫びを。

 

苦しむ声を。

 

 

大急ぎで受付で場所を教えてもらい、走って病室へ向かう。

病室には、数人の医師と看護師。肩で息をしながら、彼らに尋ねる。

 

「影嶋君、大丈夫…ですか…?」

 

「…彼は今昏睡状態だ。ダメージが大きかったようで、しばらくは目を覚まさないだろう。」

 

「え……」

 

昏睡―そんな…。

 

もし、このまま起きなかったら……

 

目を、覚ましてくれなかったら……

 

あの笑顔を、見れなかったら……

 

胸が痛む。嫌な予感ばかり、私の中を襲う。

 

イヤ…

イヤ…!

イヤ!!!

 

「起きて……」

 

右手を、両手で包む。

 

「起きて……影嶋君……。」

 

涙が流れる。理由はわからないけど、ずっと流れ続けた。

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

ここは…?初めてエヴァ関連で意識が無くなったときより目覚めが悪い。なんか近くで規則的な音を鳴らしてるものがある。あと、口の周りに何か当てられているんか、これ。手を何とか動かして見ると、呼吸器のようだ。ああ、病院か。

まだはっきりとせず、眼鏡もないから周囲の輪郭しか把握ができない。ん?誰か座ってる?青い髪に、白い体…。

 

「…れい?」

 

掠れた声しか出ない。それでも、俺の声に反応して起きたレイは、こちらを見ている…ようだ。顔がわからねぇや。

 

「影嶋…君……?」

 

「ごめん、目が、わるくてさ…。レイのかおが、よく……」

 

言い切る前にレイが凄い勢いで俺に顔を近づけてくる。うん、これならはっきり見える。プラグスーツのまま俺の傍にいてくれたようだ。

 

「影嶋君……私、また泣いてるの?どうして…?」

 

「俺が生きてたよろこびか、むちゃをした俺にたいする怒り…そのどっちかだ。」

 

「私、私は……」

 

顔を背けて泣き続けるレイを優しく抱く。彼女の体は一瞬ビクっとしていた。

 

「ありがとう、レイ。」

 

俺の目からも、涙が流れていた。

 

「影、嶋君…!よかった…!生きてて…!」

 

 

 

その後、レイは着替えに部屋を出ていった。それと入れ替わりにミサトさんが入ってくる。

 

「おはよう、エイジ君。今日はお疲れさま。」

 

「はは、まだ今日なんですね。ちなみに何時です?」

 

「今は16時2分よ。ほんと、アークのプラグの中で浮いてたなんて聞いた時はヒヤヒヤしたんだから。無茶しないでよ。」

 

「あづづ…。その割には思ったより外傷は無いですね。」

 

「あ、ダメよ!まだ無理しちゃあ。怪我人は怪我人らしく寝てなきゃ。」

 

横のテーブルに置いてあったひび割れた眼鏡をかけ、やっと視力がある程度戻る。こりゃ買い換えだな。

 

「俺だけ寝てるってのも性に合わないんあだだだ…」

 

「ほーら、ちゃんと寝てないとダメよ?無理して動いたら、治りが悪くなっちゃうわ。」

 

「こりゃ、まだダメみたいですね…。それじゃあ、何か食いもんください。頭が回り始まったら空腹感が出てきましたよ。」

 

「そうねぇ、それじゃ、レイに持ってこさせるわ。それまで待ってね?」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

葛城さんが部屋を出ようとする。

 

「あ、待ってください。」

 

「どうしたの?エイジ君。」

 

「お疲れさまでした、葛城ミサト一尉。」

 

「ありがとう、エイジ君。」

 

これだけはきちんと言いたかった。

 

 

 

-碇シンジ-

 

時間は巻き戻り、作戦終了直後。

二度目の射撃で、敵の使徒を確実に撃破した。僕は、身を呈して守ってくれた零号機を、綾波を助けようとした。

 

(待ってろ…!)

 

背面の装甲板をナイフで無理矢理剥がして、プラグを引き抜く。自動排水が終わったら、初号機の手にプラグを乗せ、僕も外に出る。

 

「綾波!!」

 

過熱したハッチに手をかけようとすると、唐突にそれが開いて、泣きそうな綾波の顔が飛び出てきた。

 

「碇君!?お願い、すぐ本部に!」

「ちょ、綾波!?どうしたの!?」

「影嶋君が…!早く…!」

「わ、わかった!」

 

泣きそうになっている彼女の手を取りながら、僕らは迎えのVTOLに走る。

向かいからはヘルメットをしたミサトさんが駆け寄ってくる。

 

「二人とも、無事なのね!?」

 

「はい!でも、なんか綾波が…」

「葛城一尉!影嶋君が、私の…!」

 

「…!二人とも、すぐこれに乗って。

私たちは後回しでいいから、パイロットを先に本部へ!」

「了解!」

「こちら葛城、本部の職員に至急アークの管制室に向かってと伝えて。パイロットが危険な状態みたいよ。……流石、それは確認できてるわね。わかったわ。」

 

VTOLに乗り込み、シートベルトをすると、すぐに発進した。

外を見ると、不安そうに見上げるミサトさんが妙に目に入った。

 

 

 

 

病室で、一人で泣いている綾波を見ても、何もできない。何て声をかければいいんだろう。そんな気を利かせて何か言うなんてことはできない。

…悔しい。こんな時、何か言いに行く勇気が出ないなんて。結局、僕は着替えて、一人で家に帰った。玄関では、ペンペンが待っていた。

 

「ただいま。…お腹空いた?」

「クワーッ!」

「そっか。じゃ、待ってて。」

 

ペンペンのご飯だけ先に作って、僕はレトルト食品を食べた。…あまり味を感じない。僕だけ、こんなことをしていていいの…?

 

次の日は平日だったけど、僕らは休みになった。まあ、昨日あんな大仕事したから無理もないか…。ペンペンの食事を作ってから、また一人で朝食にする。…そうだ、綾波にお弁当作ってあげよう。もし、あのまま何も食べてなくて、倒れてしまったら大変だ。エイジ君も、綾波がそうなってしまったら悲しむだろう。

食べ終わったあと、いつもの包みにお弁当を入れ、病院へと向かった。

 

 

綾波は、疲れきって机に体を預けて寝てしまっていた。目元は赤く、涙の跡がある。

 

(綾波、夜通しエイジ君の傍にいてあげたんだね…。)

 

腕が動いても落ちない、でも目に届くところにお弁当を置く。そして、未だに起きないエイジ君の方を向く。

 

「大丈夫…絶対、エイジ君は起きるよ。」

 

何の根拠もないけど、そう思えた。

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