ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

16 / 56
RE16:本心

反省会(笑)が終わってから飛んできたのは、案の定アスカからの怒鳴り声。勘弁してくれ。

 

「ふん!何が優秀な前線指揮官よ!一回で勝てなきゃ意味がないのよ!」

 

「んな事ァない。今回の戦闘は日本の地形がまた変わったこと以外はほぼ損害無しだぞ? 国連も手を出してこなかったし、次で確実にやればいいよ。」

 

「簡単に言うけどさ、僕と惣流の完璧な同時攻撃なんて無理だよ。こんなんだし。」

(なぁん)ですってぇ!?だいたいあんたもあんたよ、七光り!最初の攻撃で決めればよかったのにさ!」

「そ、そんなこと言われても…」 

 

「アスカ、お前俺の話を聞いてなかったのか?今回の敵はスタンドプレーでどうにかなる相手じゃねぇんだよ。それをわかってくれ。」

 

「うるさい!使徒なんてあたし一人で殲滅できるわよ!」

 

頭を抱える。あ゛あ゛~ほんとどうすんだよこんなん!ひっどい石頭だこいつ…!

 

「お困りのようだね、指揮官殿。」

 

「はい?」

「あ~、加持さぁん!」

 

後ろを振り向くと加持さんが立っている。アスカのこの声の変わりよう…頭痛モンだなこれ。

 

「どうだ?ここのメンツで食事でも。夕食、まだだろ?」

 

「今日ばかりはお言葉に甘えさせていただきます…。」

 

レイに電話をかけると、すぐ応答してくれた。

 

『エイジ君、どうしたの?』

 

「加持さんに食事誘われてね。レイも来てくれ、奢りだってよ。」

 

『わかったわ。』

 

「場所は昨日の食堂だ、んじゃまた後で。……なんか、そっけない返事だなァ。乗り気じゃない?」

 

「俺にエイジ君を取られてるのが気にくわないんだろう。まま、行こうぜ?」

 

そう言って加持さんは俺らを押すように食堂へ向かう。シンジは疑問を言う。

 

「あの…加持さん、ミサトさんは?」

 

「あいつは今日はメシ抜きだろ。責任者は責任取らないとだからな。」

 

 

 

食堂に5人が集まる。やっぱレイは機嫌悪そうにしてる。

ついでに食事はというと、俺とレイはハンバーグ、シンジはカレー、アスカはステーキ、加持さんはラーメンを頼んだ。

 

「なあレイ、どうしたんだ?」

 

「……。(プイ)」

 

「ええー…俺何かしたかよ…。」

 

「今日は頭を抱えっぱなしだな、エイジ君。」

 

「笑えない笑えない。」

 

「そ・ん・な・こ・と・よ・り!加持さんはわかってくれますよね!?あれはあたしの本当の実力じゃないってことを!七光りはどうだか知らないですけど。」

 

「はいはいはい、どーせ僕は実力ないですよ。」

 

「まあ二人とも、そう気を落とすなよ。エイジ君の言ったとおり、勝負はまだついてない。この次頑張ればいいじゃないか。だろエイジ君?」

 

「ええ、そりゃそうですけど、肝心の作戦が…」

 

「それに、初めてエイジ君の指揮を間近に見たが、ありゃほんと凄かったな。特に2体に分裂した後。アスカの動きに合わせてるのに、シンジ君が問題なくついていっている。」

 

「見てたんですか?」

 

「ああ。君は本当にパイロットの能力を引き出す力があるらしい。」

 

「そいつぁどーも。」

 

「でも、そいつのせいで使徒に勝てなかったんでしょ?もうクビかもしれないわねェ?」

 

「アスカはまず人の話を聞け。そう全方向に攻撃すんのはやめろ。」

 

「そんなことありません~!むっかつくわねこいつ!」

 

「そうカッカすんなよアスカ。それに、もうそろそろじゃないか?」

 

「もうそろそろって、何がですか?」

 

シンジが疑問を言うのとほぼ同時にアナウンスが流れる。

 

[エヴァ初号機パイロット及び弐号機パイロット、アークシステムパイロットは至急第2作戦会議室に集合してください。繰り返します―]

 

「ほぉら、早速お呼びだ。頑張っておいで。」

 

パイロット二人はごちそうさまとだけ言うと、さっさと行ってしまう。

 

「加持さん、今日はご馳走さまでした。行こう、レイ。」

「……。」 

 

「おっと待った、エイジ君は残れ。」

 

「はい?わっ、ちょっと!」

 

「すまんねレイ。エイジ君借りるよ。」

 

「…そう。」

 

「あっあっ加持さん!?待ってくれレイ、これこそ完璧な誤解だろ!」

 

「おーおー、まるで不倫がバレた夫のようだな。」

 

「加持さぁん!?そんな揶揄やめてくれ!てかどこに連れてく気なんです!?」

 

「君は中学2年、つまり14歳だっていうのに妙に精神がしっかりしている。しかも、そんな年齢で冷静な判断をし、他の子を纏め上げるという素晴らしい能力。だからこそ見せておきたいものがあるんだ。」

 

まァ、実際中身は20代だしね。んでも今までこれをこんな真面目に見る人なんていなかった。加持さんて何者なんだ?

 

「見せたい?何をです?」

 

「NERVが隠し持っているモノだ。」

 

「隠し持っている…それはどういう?」

 

「着けばわかるさ。ターミナルドグマにね。」

 

「ドグマ?そんな深部に何があるってんだ…?」

 

それ以降、加持さんは一言も喋らずにある扉の前に立つ。加持さんが持っていたカードキーを通すと、重々しい音と共に扉が開き、巨大な空間が見えた。 

血の色を連想させる赤黒い十字架に、真っ白な磔の巨人。下半身が無く、切断面とおぼしき場所には小さな足が大量に生えている。うわグロ。そして、顔面には逆三角に7つの目を描いた紫色の仮面。背面からはLCLのような色をした体液を垂れ流している。

 

「これって…使徒、なんですか?なんで本部地下に……まさか、今まで倒した使徒って、こいつを狙って…!」

 

「そう。人類補完計画、そしてE計画の要であり、全ての始まりでもある。『アダム』だよ。」

 

「アダム…最初の人間の男の名前ですか。」

 

「そう、第一使徒だ。」

 

「こいつに使徒が接触すると、セカンドインパクトがまた起きる…?」

 

「鋭いな。」

 

「勝手な妄想の範疇ですけどね。セカンドインパクトは使徒によって引き起こされた。そして、使徒は共通して人類の敵。使徒が人類を滅ぼすのならちまちま攻撃するより、一気に殲滅するのが効率的です。なら、セカンドインパクトをもう一度起こせばいい。順番としては、次はサードですかね。全く、合理的ですね。」

 

「今日、俺が伝えられることはここまでだ。また機会があったら、続きを話そう。さ、葛城の所に行ってこい。」

 

「何故、俺なんですか?」

 

「さっきも言ったとおり、君は14歳にしては精神が成熟しすぎている。まァ少し子供っぽいところもあるが、君なら安心して見せられる、そう思ったのさ。」

 

「そらちっとばかり買いかぶり過ぎじゃないです?それでは、俺は失礼します。」

 

加持さん、俺と少し話しただけでここまで俺の性格を見抜いてる。凄い人だ。

 

 

 

 

「ちょっとエイジ君、どこほっつき歩いてたのよ!もう会議は終わったわよ!?」

 

「すみませんね、加持さんに捕まっちゃって…。」

 

「あんの野郎…!まあいいわ。そんなことより、今後の予定について連絡したかったの。」

 

「それに関しては非常に興味がありますね。どうなりました?」

 

「基本的には使徒はエイジ君の推測通りの弱点を持ってるわ。ヤツの行動再開は約5日後。それまでにシンジ君とアスカの協調、完璧なユニゾンを完成させる必要がある。そのための計画書よ。」

 

「どうも。…これはまた、ミサトさんらしい大胆な作戦ですね。それの指揮者が俺ということですか?」

 

「そうね。…ついでに言っとくと、これは加持の原案よ。」

 

「へぇ。でも、音楽とダンスを使うとは考えましたね。音楽ってのは体で覚えるものですからね。それを体で表現できるようにダンスで更にアプローチをかける…なかなかいいじゃないですか。」

 

「というわけで、あなたも曲を知ってないとダメでしょ?これを渡しておくわ。」

 

「このUSB、中身は今回の作戦の色々ですね、わかりました。」

 

「大変なことをまた押し付けちゃうけど、よろしくね。」

 

「わかりました、やってみましょう。」

 

 

 

-碇シンジ-

 

惣流は今、シャワーを浴びに行った。…まさか、ネルフでこんなことをさせられるとは思ってもなかった。でも、惣流とでよかったな。これが綾波だったら…いや、綾波にはエイジ君がいる。意地でも譲らないだろね。

仮にエイジ君が相方だったのなら…いや、彼は誰とでも上手くいく気がする。どうして僕なんだろう。惣流の相方も、パイロットも…。この間の惣流との模擬戦、僕じゃできない動きをしていた。それも、実戦に向かないとか言われてた零号機で。やっぱり、僕って別に必要ないんじゃあ…

 

「七光り、お・ま・た・せ。上がったわよん♡」

 

声の方を向くと、そそそそそそこにはバスタオルを巻いただけの惣流がいた。

 

「わああああああああああああ!?んだよそのカッコは!!!」

 

「うふ♡どーお?あたしのカ・ラ・ダ。」

 

「さっき散々覗くなとか言ってた癖に!!」

 

興味(キョーミ)ないみたいなコト言われるとプライド傷つくのよね~。

あたしけっこう胸大きいんだヨ。どう?ナマも見てみる?」

 

「やめろ!!取るな~!!」

 

タオルが剥がれたその先には―ちゃんと着込んでいる体があった。

おおおお驚かせやがって…。少しだけ期待はしちゃったけど。

 

「ぶっ、ぎゃはははははははははは!!!今のアンタの顔、耳まで真っ赤になっちゃって、おっかし~~!!」

 

や、やられた……。惣流、床に転げてバカ笑いしてる。過呼吸になってるし、そんななのかな…。

 

「……言っとくけどな。ミサトさんのことだから、きっと監視カメラかなんかで僕たちのコト見てるぞ。」

 

「えっ!?」

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

[嘘っ、どこよ!?どこにあんのよカメラなんて!!]

 

ディスプレイの前には、缶ビールを3本空けて居眠りしてる葛城一尉がいる。なんか、こういうのを見てると自然に舌打ちが出てくるんだよなァ。普段の行いが1000%悪い。

 

「ったくよー、ほんと、保護者としてどうなんだよアンタはさ…。俺らの事も考えてくーれ。」

「んにゃっ。」

 

最後の言葉に合わせ、ミサトさんの額にデコピンをする。さて、帰ってレイに構ってやるか…。

 

 

 

自宅。余計なモンを見ていたせいで、遅くなってしまった。

 

「ただいま。悪ィな遅くなって。」

「お帰りなさい。」

「なあ、どうしたんだ?そんな拗ねてさ。」

「エイジ君、私…」

 

そう言うと、レイは唐突に俺に接近し、キスをしてくる。

俺はというと、それに対してほぼ反射的に離れてしまった。多分、今互いに動揺した顔をしている。頭の中が混乱しきってる…どういうことなんだ?

 

「な…!?」

 

「…そう。」

 

「レイ、一体どうしたんだよ?なんか最近おかしいぞ?」

 

「………ばか。

 

「え?あ、ちょっとレイ!!どうしたんだよ、レイ……。」

 

俺はただ、泣きそうな顔で家を飛び出すレイの背中を見ることしかできなかった。

…わからないもんだ、人の心って。

 

 

 

次の日から、ダンスの訓練が始まった。

 

「ダンスですかぁ?」

「こんな格好までして?」

 

「も~~~~~いちいち文句言うんじゃない!こーゆーもんはね、形から入って気分を大切にするモンなのよ!敵は二心一体だから、こっちが同じ動きをすればあっちも同じ動きをするはずよ。4日間でユニゾンを完璧にマスターするには、曲に合わせた攻撃パターンを覚えるのが一番てっとり早いのよ。」

 

合理的な判断だが、言い方が身も蓋もないなこりゃ。前半部分が余計すぎる。

 

「ちなみに、選曲と振り付けはオレだから。」

 

「加持さぁん!」

 

「あたし一人で大丈夫だってのに。」

「いーからいーから。」

 

「じゃ、振り付けどおり、最初のところやってみるわよ。音楽をよく聴いてね。」

 

二人のダンスが始まる。お?割とよさげじゃ―――

気のせいだった。3小節目くらいには各々がよくわからない動きを始め、シンジはコケる始末。

 

「うーん、こういうのって出だしが重要ですよ?いくら時間が無くてもさ。」

「題して鶴と猿の小踊り…」

「思ったより、時間かかりそうねー…」

 

この後3時間ぶっ通しで練習した。うーん、今日でどこまで二人が覚えられるか…

本当ならこういう「体で覚える」ものってのは、ある程度期間を分け、その間で狭い範囲を確実に覚えていき、少しづつ繋げて慣らしていくというのが定石だが、時間がそれを許さない。どうしたものか…。

 

「それじゃ、俺はこれから用事あるんで録画お願いしますね。」

 

「わかったよ。そう言えばエイジ君。レイちゃんはどうした?」

 

「え?レイは…昨日、家を出ていったキリで。」

 

「どうした、喧嘩でもしたのか?」

 

「いえ、そうなる前にレイから飛び出ていっちゃいましてね。」

 

「ダメじゃないか、彼氏としてちゃんと追わなきゃ。」

 

「俺にはそんな、追い付くまでに考えを全てまとめることなんてできませんよ。」

 

「だとしてもだ。女の子ってのは、そういう男気のある姿に惹かれるもんだぜ?もっと積極的に動かなきゃ。」

 

「……ある人は言ったんです。『私らは家族なんだ』って。でも俺は、一度もそうとは思えていません。たった今でも、俺と彼らの関係性ってのは、『上司とパイロット仲間』としか考えてませんよ。便宜上都合がいいから、他の人間が言うような、そういう関係の言い方をしてるだけです。仮に全員の名字を無理矢理同じにされたところで対応は変わらないでしょうしね。

今、自分の中でその線引きが曖昧になってきてんだろうなって。いや、本当は最初から……」

 

「思った以上に複雑な事情が絡んでるんだな…。まあ、それでもなるべく早くに迎えに行ってあげな。レイはここの個室の404号室にいるからさ。」

 

「ありがとうございます、加持さん。それじゃ俺は失礼します。」

 

「おう、頑張れよ。」

 

 

 

加持さん、今まで出会ったきた大人の中で一番信頼ができる人だ。不思議な魅力がある。俺だってここまで本心を言えたことはない。本当に何なんだ?この人…。

部屋の扉を開けると、動揺した顔が二つ、明らかに敵意を向けてる顔が一つあった。

 

「何だ、皆して今のを立ち聞きか?ったくよ…。」

 

「待ちなさい影嶋。」

 

「アスカ?…何だってんだ。」

 

「アンタ、ファーストにちゃんと『好き』って言ったことある?」

「無い。もういいだろ?俺は―」

「何で即答できるのよ!アンタ最低ね、女心ってのをちっともわかっちゃないわ!」

「女として生きてきたわけでもないのにどうやってわかるんだ。俺にゃそれがわからない。」

「待て、どっか行くんじゃないわよ!

あのねぇ、そーゆうことを言ってるワケじゃないの!アンタ気付かなかったの!?ファースト、あんたが私と喋ってるときずっとアンタのこと、寂しい目で見てたわよ!」

「え…?」

「嘘、気付かなかったの?…アンタ、サイテー!信じられない!だいたい、あんな冷たい事を言うから、ファーストもさっき泣きながら走っていってたわよ!何とも思わないわけ!?」

 

「……そっか。」

 

「『そっか』って…!もー知らない!行くわよ七光り!」

「あ、ちょっと惣流!!」

 

アスカはシンジを連れて部屋に入っていく。…今この瞬間ほど、三面六腑になりたいと思ったことはない。流石にその気を回してやれてなかったのは失格だな。

今度は一人残っている葛城さんが俺に話しかけてくる。

 

「ねえエイジ君。何で私たちには何も言ってくれないの?」

 

「…まだ、俺にとって信用に足る人間じゃないからです。」

 

「そうなのね…。」

 

「わかったでしょう?『俺は保護者になり得ない』つった意味が。失礼します、『葛城一尉』。」

 

気持ちに正直になれって?……そんなこと、できたらとっくにしてるよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。