ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE17:あなたはどこにいるの?

こんなに心に余裕が無くなったのは、いつ以来だろうか。いや、最初から余裕なんてモノは無かったのだろう。表面だけの空元気で、適当な言葉を並べて…隠し通してきただけだ。自分の本心と一緒に。

俺は、「今の俺」はどこにいるのだろうか。今ここにいるのは、昔の俺自身しかいない――

 

 

 

 

-碇ゲンドウ-

 

「碇、火傷の具合はどうだ?」

 

「問題ない。」

 

「そうか。…まさか、綾波レイが反抗期を迎えるとはな。こうなることは碇でも予想はできなかっただろう?」

 

「…当然だ。アークパイロットに強く影響されているんだからな。」

 

「計画は大丈夫なのか?」

 

「ああ。必ず、何にでもバックアップは用意されている。使い物にならなくなったら、そちらを使うまでだ。」

 

だが、俺は酷く動揺していた。食事を持っていった時も、あんなに逆上され、枕まで投げつけられるとは思っていなかった。

…やはり、私は親にはなれないのだな。

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

 

結局、俺はレイに会えなかった。いや、避けてしまったというのが本音だろう。

俺にはわからない。「大人を演じる」べきなのか、「子供を演じる」べきなのか。こんなちぐはぐな魂と肉体、嫌になる。一体、何の謂れがあってこんなことになっているのか…。

駅を歩いていると、ふと声をかけられる。そっちの方向を見ると、茶髪で赤い眼鏡をかけた子がいた。

 

「やっほーお兄さん。元気ないね?」

 

「………………俺に言ってます?」

 

「そーだよ、やだなー。どう?お兄さん。どこかでお昼しにゃい?」

 

「悪いけど、逆ナンに付き合ってる暇はないんで。誰か別の奴でも捕まえてろ。」

 

「そー言わずにさー。あ、あそこのマクド行こ!ほらほら!」

 

「な!?ちょ、何なんだアンタ!?」

 

「いーからいーから~。」

 

何なんだよこれ…。

 

 

俺は彼女に言われるままに窓際の席につく。注文は勝手にされた。彼女、古臭ぇ曲ばっかハミングしながらずっとこっちを見てるけど、一体何のつもりなんだか。ワケがわからない。

俺らはハンバーガーを食いながら少しづつ話を始める。

 

「ねー、この曲知ってる?」

 

「『明日があるさ』だろ?なァ、一体何なんだよ。俺はアンタのような見ず知らずの人間に貢ぐような金は持っちゃないからな?」

 

「違うよ~。君、病んでるような顔してたからさ、『人生のお姉さん』として相談してあげるのよ。何かあったんでしょ?」

 

「何が人生のお姉さんだよ。その感じ、外見は俺と同年代くらいじゃねぇか。たかだか1、2コ上の年齢の子が何を―」

 

「こー見えても私、98年に16だよ?」

 

「…頭大丈夫か?今は15年だぞ?それじゃ今の年齢は33じゃねぇと辻褄が合わねぇ。」

 

「君、95年生まれでしょ?それなら文句はないんじゃない?」

 

「な!?……何者だあんた。何で俺の誕生年を知ってる。」

 

「だいたいのことは。ゼーレのわんこ君?いや、今はネルフか。」

 

「その蔑称は何なんだよ。だいたい、俺はNERVの忠実な兵士じゃねぇぞ?」

 

「へぇ~。それならさ、そのシェイク飲んでみてよ。」

 

「それとこれに何の関係が…」

 

「ほらいーから。君のことおしえてあげにゃいよ?」

 

「押し付けんなっつ…しゃーねえなァ。」

 

押し付けられたシェイクを渋々飲む。俺はこういう甘い系が滅茶苦茶苦手だ。前世にラムネのシェイク飲んだことがあるけど、ゲロ甘な味で全部飲みきれなかった。

これも案の定、ダルダルの甘さで頭が痛くなってきた。味を上書きしたくてハンバーガーを食っても、口の中に若干甘さが残ってて最悪。

 

「気持ち悪…まだ甘さが口の中に残ってる…。」

 

「なーるほどね。本当に君、違う人なんだ。私が知ってる君はめっちゃ甘党だったよ~?」

 

「そら他人の空似ってヤツだろ。世界の全人口を洗えば、自分に似た顔を持ってる人間は3人くらいはいるってジンクスがあるくらいだからな。」

 

「いや、私が話してるのは君自身のことよー。君、本当に別人だね。びっくりしちゃった。」

 

「んな事言われたって、俺は俺だからなァ。それともアレか?ガワは同じで中身は違うとか、そういうファンタジーを言ってるのか?」

 

「……君、本当に私を見て話してる?」

 

「アンタ以外に誰を見て喋れと?」

 

今の会話だけで適当な受け答えしてるのが見抜かれた。多分、普段から言葉を崩して誤魔化しているのも見抜いてるだろな。加持さん並みに人を見てるな、この人。

 

「あ、図星だ~。やっぱりねー。君、自分を守るのに必死で他の人を見れてないでしょー。」

 

「…アンタから見ると俺はそう見えるのか?」

 

「そーだねー。ねぇ、考えてもみなよ。折角の二回目の青春だよ?どうして楽しもうとしないのさ。子供に戻っちゃいにゃーよ。」

 

「楽しむ…ねぇ。家事もできない大人を抱えておいて、楽しむかよ。俺には無理だ。」

 

「も~。君、そーゆうところよくにゃいよ~?今の君は影嶋エイジ25歳じゃなくて、影嶋エイジ14歳なんだから。そんなかったるいこと忘れてさ、パーッと生きちゃいなよ。そっちの方が楽しいよー?」

 

「もうそんな生き方、忘れちったよ。俺に残ったのは醜い面しか見えなくなった眼だけだ。俺はそれが嫌で仕方ないね。そんな俺が保護者ごっこなんざ、過ぎた遊びだったんだろ。今ならそれがわかるわ。」

 

「そーでもにゃいわよ?」

 

そう言って彼女は窓の方を指差す。そっちの方を向いてみると、窓越しにレイがこっちを見ていた。

 

「よっ、レイ。」

 

ジェスチャーと共にそう言うが、レイは何も言わずに走り去ってしまう。

 

「何だお前、現代の探偵の差し金か何かか?指令の依頼だろ。」

 

「ほーんと、君って子供になれないんだねー。探偵ごっこなんて(そんなこと)しても、何も面白くないよ。

それにしても君、顔を作るの上手いね。意識してやってるでしょ。」

 

「これはバレるよなァ。こーゆう適当な嘘だとか、すぐ顔を作れるってのは悪い大人って感じだ。でも人間関係を上手くするにはこーゆうテクってのは使って損はない。イヤな社会だよ。」

 

「そんなコトをしてさー、君の知ってる言葉にするなら…『君はそこに居るのかにゃ?』」

 

「自己否定さえしなきゃ、いつでも自分はここにいる。例え、周囲に誰も居なくなったとしてもね。」

 

「それなら君、矛盾してるよ。どうして自分を抑圧してるのに自己否定してないなんて言えるのよ。

はっきり言っちゃうよ。今の君はここにも、彼女のところにもいないよ。」

 

「そっか……やっぱ、そうなんだよな……。」

 

「え?ちょっと、どこ行くの。まだ話は―」

 

「俺の分の金は置いてくから。それじゃ、もう二度と会わないことを願ってるよ。」

 

「ちょっと!…もー、頑固なんだから。ま、そういうところはいつも通りだよね、影嶋中佐。」

 

 

 

 

 

家には帰りたくなかった。どうしても、ミサトさんと、レイと対面するのが怖くて逃げてしまっている。弱い心だな、ほんと。やっぱ、昔から何も変わっちゃない。勝手な被害妄想をして、勝手に怖がってる。

…それでも、俺はレイの昔の家の前にいた。ドアに手をかけると、鍵はかかっていない。鍵、かけてないんじゃなくれ壊れてたのか。何度見ても閑散とした風景。…それでも、少し前はここで二人で夕食してたんだな…ベッドもテーブルも、ある程度手入れされている。流石過保護モンペ(碇指令)って感じだ。

……これを見ていると、何故か胸が痛む。

 

もう、独りでもいいと思っていたのに―

 

誰にも、心を開くっていう疲弊することをしないでいいと思っていたのに―

 

「レイ……。」

 

誰かを求めてしまう―

 

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

エイジ君が加持さんに連れて行かれた後、私は一人で家に帰った。

最近、彼が私を見る時間が減った気がする。

その視線には、セカンドと加持さんが毎回入っている。

…彼のことを考えると、また胸が痛む。

でも、この痛みはとても気持ち悪い…。

 

 

 

帰ったらすぐにエイジ君のノートパソコンを”借りて”、この間の登庁の時に話していたことを調べた。

 

十数分後、私は顔を真っ赤にしながらノートパソコンを閉じた。でも、見てよかったものもある。

A…つまり「キス」。恋人同士が唇を重ねること。ふと、彼の言葉が思い出された。

 

『恋仲なんて色々言い方はある。いいと思わない?』

 

その言葉が、とても暖かく感じた。きっと、そう思ってくれているからこそ言葉にしてくれたのだろう。そんな、淡い気持ちを持っていた。

 

「ただいま。悪ィな遅くなって。」

 

「お帰りなさい。」

 

「なあ、どうしたんだ?そんな拗ねてさ。」

 

「エイジ君、私…」

 

私なりに、この思いを伝えたい。そう思った私は、意を決して彼にキスをした。

―でも、エイジ君の反応は思っていたものとは真逆だった。

彼は私からすぐ離れ、ひどく困惑した顔をしていた。

 

「な…!?」

 

「…そう。」

 

違うんだ。エイジ君は、私のことを好きじゃない―

 

「レイ、一体どうしたんだよ?なんか最近おかしいぞ?」

 

「………ばか。

 

その場から突き動かされるように走っていた。

 

「え?あ、ちょっとレイ!!」

 

彼はそういうだけで、私を追ってくることはなかった。とめどなく、涙が流れてくる。

悲しい。

降り出す雨の中、本部へと逃げるように向かった。

 

 

 

否定された。

 

 

 

傍にいてくれるって、言ったのに。

 

 

 

 

もう、心配しないでいいよって。

 

 

 

 

 

 

それに追い討ちをかける出来事があった。

 

「あら、レイじゃない?」

「あ、本当だ。綾波、どうしたの?」

「ファースト、何してんの?もしかして盗み聞きィ?」

 

「黙って。」

 

『…でも俺は、一度もそうとは思えていません。たった今でも、俺と彼らの関係性ってのは、『上司とパイロット仲間』としか考えてませんよ。便宜上都合がいいから、他の人間が言うような、そういう関係の言い方をしてるだけです。』

 

「え…。」

 

彼が今、どんな顔をしてこれを言ったのかはわからない。でも、この言葉は私の心に深く突き刺さった。

 

私自身を見てくれている訳じゃなかったの…?あんなに親身になってくれたのに…?

 

どうしたらいいの…?

 

その場から、また逃げ出すしかなかった。それ以外の手段を、知らなかった。

 

「あ、綾波!!」

「ほっときなさい、七光り。」

「でも…!」

 

 

 

すぐにエイジ君に会いたくなくて、本部から出ていった。そのまま呆然と街を、駅を歩いていると、店で女の人と話している彼を見つけてしまった。彼の声が聞こえてしまった。

 

「…が嫌で仕方ないね。そんな俺が保護者ごっこなんざ、過ぎた遊びだったんだろ。今ならそれがわかるわ。」

 

保護者ごっこ…どういうことなの?彼、とても寂しそうな眼をしてる。私に一度しか見せたことがない、あの眼―

女の人がこちらを向かずに、私を指差す。それに気付いた彼もこちらに振り向く。

 

『よっ、レイ。』

 

彼はいつもの顔をしてくる。でも、今だけは酷く、悲しそうだった。

だいたい、何を話せば……また、立ち去ることしかできなかった。

 

 

 

照明がついていない暗い部屋。

月明かりだけが、部屋の中を照らす。

もう夜更けだというのに、寝れない。

ベッドの上で体育座りをして、俯いていることしかできない。

…食事にも、手をつけれない。

私は、私は……

 

果物ナイフを手に取る。

 

もう、私には、本当に何も――

 

震える手で、それを喉元に―

 

 

「レイ、まだ起きて―お前!!何を!?」

 

 

エイジ君!?どうやって…!?

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

加持さんに言われた部屋に向かうが、扉に鍵が掛かっている。…今、どうしても話したい。申し訳ないけど、裏技を使わせてもらう。ロッカーに急いで走り、インターフェースヘッドセットを装着する。

 

「アーク起動。」

 

[了解。メインシステム、起動します。]

 

「居住区404号室のドアロックを解除。」

 

[了解。]

 

走りながら、無機質な機械音声を聴く。何だか、胸騒ぎがしてそうがない。こーゆう時の「イヤな予感」ってのは十中八当たるから本気でうかうかしてられない。

んでも、礼儀としてカチコミだけはしないようにするけど。

扉のロックに触れると、赤だったロック表示は緑になる。…妙に気を効かせてくれるな、アーク。

 

「レイ、まだ起きて―お前!!何を!?」

 

レイはベッドの上で、ナイフを自分の喉元に突き立てようとしていた。

最悪すぎる。護身用の飛び出し型ナイフを取り出して、レイの持ってるナイフの刃を逸らす。左手と右手首で腕を押さえ、刃を遠ざける。

 

「嫌!!離して!!」

「バカなことはやめろ!」

 

レイのこの眼…いつか見た、酷く怯えている顔だ。荒治療だろうが、俺の蒔いた種だ。俺がケジメをつける。

刃を格納して、逆手に持つ。そこからもう一度刃を開き、レイの左手にかるーく切っ先を刺す。傷自体はほんの針を刺した程度の傷にしたが、レイの両手はビクつき、ナイフを取り落とした。

 

「ったく…素人がこんなナイフで刺すような傷、痛いばっかりで死ぬまでに時間かかるぞ?」

 

ナイフを取り上げ、部屋の隅に投げ捨てる。静止しきったのを確認して、レイの方を振り向く。彼女は両手をついて、顔を背けて泣いていた。

 

「どうして…どうして死なせてくれないの…。」

 

「バカやろ。んなこと黙って見てられるわけないだろ。」

 

「嘘!じゃあどうしてあんなことを平気で!」

 

「平気なわけ!…ないだろ。まあ、話でも聞いてくれ。」

 

近くの椅子を引き寄せ、それに座る。別に聞いてくれなくてもいい。でも、レイにだけは教えたかった。

 

「これは俺の出自を知ってるヤツ…つまり、昼に会った女の子しか今のところ知らない。

俺はね…魂と肉体がちぐはぐなんだよ。」

 

「え?どういう…こと?」

 

「外見の年齢はレイと一緒だけど、魂だけは成人してる。俺は本来は25歳…今年で26になる。

最初はね、俺はこんな干渉する気は無かったんだ。そもそも、人付き合いってのが嫌いな性格だったし、年を重ねてく内に人間の醜い部分しか見えなくなってった。自分なんて、どこに居ても変わり無い―いや、どこに居ても、そこに俺はいなかったんだよ。」

 

「それ、昔の私みたい…。」

 

「そうだな。それに、俺はこのちぐはぐな体と魂ってのに、最近になって困惑したんだ。普段は今まで通り「大人」として振る舞ってたんだよ。都合のいいタイミングだけ「子供」になってさ。それだからさ、レイのことも自分の子供のようだと思って接してた。レイだけじゃない。他の子や、ミサトさんですらそう思っていたのかもしれない。」

 

「昼に言っていた『保護者ごっこ』…。そういうことなの?」

 

「あーあ、聞かれちったか。そーゆうこと。俺へのキスだって、先に帰った後にABCに関して調べたんだろ?」

 

「あ…」

 

レイの顔がいつになく真っ赤になる。こりゃ全部調べたんだろな。俺みたく顔を作れなきゃちょんバレだ。…可愛い。

 

「大人になるとさ、見えちゃうんだよ。こーゆう余計なところがさ。それにね……俺は抵抗感があったんだ。意味がわかるかは知らないけど、「大人が子供に手を出す」ってのがさ。

…でもさ、俺はここで、色々な人に触れて―よかったと思ってる。俺の子供の頃の楽しい記憶が蘇ったようだったから。

後ね、大切な人ができたんだ。絶対居なくなってほしくない人が。

ごめん。レイは俺自身のことをずっと見てくれていたのに、それに応えてあげれなくて。」

 

「それは―」

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

初めて、エイジ君が自分のことを話してくれている。どれも、知らなかったことばかり。

もしかして、彼が私に話さなかったのも―

「思いやり」…。言葉だけでは知っていたけれど、こういうことなの?

 

「ごめん。レイは俺自身のことをずっと見てくれていたのに、それに応えてあげれなくて。」

 

「それは―」

 

「アーク、この部屋の監視を無力化しろ。ついでにドアロック。」

 

「エイジ君?何を―」

 

「レイ……好き。」

 

私が、エイジ君から聞きたかった本当の言葉。

それと同時に、彼の唇が、私の唇に重なる。

逃げたくても、逃げれなかっただろう。

彼は、今までにないくらい強く、私を抱き締めていたから。

 

 

長い時間に感じた。

 

 

いつまでも、こうしていたい。

 

 

彼の唇が離れると、更に強く抱き締めてくる。

 

「ごめんね、レイ。気持ちをきちんと理解ってあげれなくて。」

「エイジ君、苦し―」

「俺だって…レイが、居なくなりそうで…作った表層をっ、本当の心だと、思い込もうとしても…でも…寂しくて…俺は…!」

 

はじめて見た彼の弱い部分は、酷く脆いものに見えた。

私に、できること―

 

「こんな一方的なモノでも…レイは受け入れてくれる?」

「…ええ。」

 

前にやってもらったように、彼の頭を撫で、背中をさする。

しばらくすると、彼も私のように落ち着いていった。

 

「ありがとう、レイ。俺の我儘に付き合ってくれて。」

「いいの。…帰りましょ?エイジ君。」

「うん…。」

 

 

 

 

-葛城ミサト-

 

レイの心が不安定になっていると聞いて、アスカとシンジ君のついでに、レイのところの監視もしていた。

信用できない、かぁ。保護者失格ね。いつも面倒事はエイジ君に押し付けてるし、使徒との戦いだって、彼らに任せるしかない。私は、後ろで見守るだけ―

 

「レイ?何を―まさか!」

 

『葛城一尉、聞こえますか!?』

「どうしたの日向君!?今急用が―」

『アークが勝手に起動してます!こちらの制御を受け付けません!』

「何ですって!?え、でもエイジ君は今レイの部屋に…まさか!」

 

モニターを拡大すると、彼の頭にヘッドセットが装着されていた。

 

「そーゆうこと。道理でロックのかかった部屋に…。日向君、それについては平気よ。大事にしないで。」

『え?でも…』

「命令よ!アラートを黙らせて。」

『わ、わかりました。』

 

『嫌!!離して!!』

『バカなことはやめろ!』

 

「エイジ君、ナイスタイミングよ…!」

 

今、私が行っても事態を拗らせるだけだと思い、心中しようなんて言い出さない限りは手を出さないことにした。それにしても、あそこまで大声を出すレイ、初めて見た。やはりエイジ君の影響が色濃く出てるのかしらね。

エイジ君は椅子に座り、レイに話を始めた。

 

『外見の年齢はレイと一緒だけど、魂だけは成人してる。俺は本来は25歳…今年で26になる。

最初はね、俺はこんな干渉する気は無かったんだ。そもそも、人付き合いってのが嫌いな性格だったし、年を重ねてく内に人間の醜い部分しか見えなくなってった。自分なんて、どこに居ても変わり無い―いや、どこに居ても、そこに俺はいなかったんだよ。』

 

そう…そういうことだったのね。妙に落ち着いている所とか、金銭管理まで全部やっているところ。ただの一人暮らしを経験した中学生にしては、手際も良すぎる。家事も、人付き合いも―

でも、だとしたら彼は何者なの?こんな内容、マルドゥックの報告書には何も特筆した記載がなかった。どういうことなのかしら…。

 

「大人になると人の汚い部分ばかり見てしまう」というのも、彼が20代後半なら納得ができる。彼も、彼なりに苦労してきたのね…。

同居を始めた最初の頃に私の愚痴を頷きながら聞いてくれてたのも実体験なのかもね…。何だか、そう思うと苦笑してしまう。

彼は、ずっと大人として振る舞っていた。私も、彼にずっと頼るわけにはいかないわね…。

 

『ごめん。レイは俺自身のことをずっと見てくれていたのに、それに応えてあげれなくて。』

 

『それは―』

 

お?来た来た!お楽しみタイムよ~!

 

『アーク、この部屋の監視を無力化しろ。ついでにドアロック。』

 

この言葉の直後、その部屋に対する監視機能が全てダウンした。

 

「え~そんな~!!酷いわよエイジ君~!!」

「何だ葛城、シンジ君とアスカだけじゃ飽き足らず、仲直りしてる彼らまで見てたのか。悪い大人だなぁ。」

「加持君!?いつからそこに―」

 

「エイジ君、やるじゃないか。いい雰囲気に上手く持ち込んだな。」

 

「ええ~!?加持君だけ見るなんてズルいわよ!?私にも見せなさい!!」

 

「おっとダメだぞ。葛城、エイジ君とちゃんと話した方がいいぜ。」

 

「わーってるわよ、んなくらい。」

 

邪魔が入った上に加持君に独占された…。




書いててとてもしんどかったです
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