訓練4日目。
今日は今まで休みがちだった対人訓練を優先した。練習も、後は細かいとこの見直しだけだったから大人に引き継いだ。ま、どうにかなるっしょ。
これで銃の講習は終わり、俺もとりあえず持てることになった。ジャケット買っといてよかった。普通のYシャツじゃあ隠すとこがないし。
全部の点検を終えると、加持さんから電話が来る。
『ようエイジ君。二人ともすごい完成度だったな。やっぱ、俺の目に狂いはなかったというわけだ。』
「俺はちっとばかし発破かけただけですよ。大したことは何も。」
『ちょっとアスカがムキになってるけど、『スーパーパイロット』っての気に入ったみたいだぞ。よかったな。』
「『よかった』?よくわかりませんけど、まあ、アスカがやる気になってるんなら何でもいいですよ。それじゃ、失礼します。」
アークでの明日の作戦の最終確認を終え、家に帰る。ちっと遅くなったな。
扉を開けようとすると、ふといい匂いが。
「ただいま。今日も遅くなって悪いね。」
「おかえりなさい。夕食、できてるわ。」
「ほんと?」
リビングに顔を出すと、ペンペンが先に食っていた。これは回鍋肉だな?とりあえず荷物を部屋に放ってきてから、リビングのテーブルへ向かう。
「「いただきます。」」
「お、美味い。レイ、また腕上げたな。」
「よかった。…エイジ君、明日、一人でやるの?」
「え?まあ………大丈夫だよレイ。そんな気にすることじゃないって。」
「でも、会ってからずっと、私はエイジ君に何かをしてもらってばっかりで―」
「いいんだよ。それが大人の仕事なんだからさ。」
「大人……。ねえ、エイジ君。私の事は、どう見てるの?」
「え?」
-綾波レイ-
私にはわからなかった。どうして、彼は表情を隠すのか。
私にすら、まだ見せたことがない顔。それを知りたい。
「ねえ、エイジ君。私の事は、どう見てるの?」
「え?うーん…」
彼は真剣そうな表情で、目線を上にして考えている。彼は、こういうときはいつも考えてからものを言う。
それの真意は誰にもわからない。
「あー…大人としてなら変わらない。俺はレイのことも、皆の事も自分の子供のように大切に思ってるよ。子供としてでも、レイのことは大切にしてる。これじゃあ、ズルいかな?」
「エイジ君自身は?」
「俺自身なら、大人の感情に準拠するよ。俺はさ、あんま曖昧な言い方はしたくないから。」
「本当?」
「本当だよ。」
でも…彼は、本心を隠したがっている、そんな気がする。。
いつか聞きたい。けれど、なかなか言い出せない…。
「…どうした?レイ。」
「ううん、いいの。頑張ってね。」
「おう。」
-影嶋エイジ-
決戦当日。
[目標は強羅絶対防衛線を突破!現在、山間部を第3新東京市に向かい侵攻中!]
[目標、0地点に侵入!]
[MAGIの予想より3時間も早いじゃない!エヴァは!?]
[いつでも出れます!]
[エイジ君聞いたわね!?後はよろしく!]
「了解。エヴァはどうですか?」
[エヴァ両機、発信準備完了しているわ。]
「了解。アスカ、シンジ、これから作戦概要を説明する。発進し、地上に出たタイミングで音楽スタート。そこから先は全ての通信をカットし、クロッシングも行わない。完全な音ゲーになる。…二人とも、頑張れ!」
[もちろん!]
[ああ!]
[いいわね碇君、最初からATフィールド全開、フル稼働最大戦速でいくわよ。]
[わかってる。内部電源が切れるまでの62秒でケリをつけるよ。]
「作戦開始。エヴァ射出。」
エヴァがケージから射出され、地上に飛び出る。
「音楽スタート!」
空中に飛び出た初号機、弐号機は完璧なタイミング合致でランスを投げ、敵を分離状態にする。分離したところを落下しながら膝蹴りし、同時に着地。同時にライフルを受領、射撃をする。
敵は仮面からビームを放つが、両機とも後ろに回転飛びをしつつ後退、シールドで防御。
「援護射撃開始!!ミサイル発射!!」
ビームを放ち、静止している二体の使徒めがけてミサイルが着弾、敵の動きを更に長く止める。その隙にエヴァ両機は前進、ミサイル攻撃が止むと同時に各個体に対してアッパー、踵落とし。後ろに敵が吹き飛んだ瞬間、初号機と弐号機は跳躍、完璧な飛び蹴りで使徒のコアを完璧に同時に破壊。同時に爆発。使徒を殲滅した。
「ナイス!お疲れさま、シンジ、アスカ。」
[最後の着地のタイミング、外したわね?]
[ご、ごめん…。]
[何よ、ほんっとどんくさいわねアンタ!]
[だからごめんって言ってるだろ!?もう終わったからいいじゃないか!]
[……特別に許す。使徒には勝てたんだしね。まあ、どんくさい割にはよく頑張ったわ。]
[君の口からお誉めの言葉を聞けるとは思わなかったよ。]
少しの言い合いの後、寝息らしきものが聞こえてくる。最後の最後まで二人らしいと言うかなんと言うか…。
[あの、二人とも中で寝ちゃったみたいなんですけど…。]
「二人とも、極度の緊張だったんでしょう。このまま起こさないようにしてあげてください。」
それじゃあ、上が―
-あなたは誰?-
え?
-だれ?-
何だ?この声…。っ!?今、一瞬…何かとシンクロした。この感覚、零号機に近い何かだった…。
[どうしたの?エイジ君。]
「あ、いえ、何でもありませんよ。俺はもう上がります。お疲れさまでした。」
次の日曜日。
ここ一週間は全員が大変な思いをしたから、今日の夕食くらいは豪勢なモノにしてやるか。
ミサトさん、ちゃんとアスカに伝えてくれたかな…。
朝からけっこうな買い物をして帰ると、けっこうな量の段ボールが廊下に並んでいた。どれも箱のどこかに、「S.ASUKA.L」の文字が。え、俺何も聞いちゃないんだが?
「ただい…ま…?何だ?この段ボールの量は…。書かれてるのって、もしかしなくても…」
「全部あたしのよ、バ影嶋!」
「そらそうだよなァ…。おいミサトさん!どういう事だこれは!?」
「あら~?わかりきってることを訊くのねぇ~。
パイロット同士、『和をもって貴しとなす』ってね。みんなと仲良くしなさい?」
「そいつは別に構わないですけどさァ、もっとこう、事前通知とかしてくれって話ですよ。ほんっとミサトさんは相変わらず…。」
小言をいいつつ、冷蔵庫に向かって買ってきた食材をとりあえずぶちこんでおく。後は配達待ちかな。昼は何にしようかな…適当にチャーハンでいっか。食材を漁って適当に作る。
「お待たせ、昼食できたよー。」
そう一声かけると、全員がわらわらやってくる。レイだけはずっと待ってたけどさ。
そんなこんなで遅めの昼食がはじまるわけだけど―
「あーっ、なんであたしを一番にしないのよ!ファーストばっかりひいきしちゃってさ!あたしを一番最初にしなさい!」
「キンキン声出すなよ…。しゃーねぇなァ、夕食からそうさせていだだくー。」
「わかればいいのよ、わかれば。」
選ばれたスーパーパイロット様は何でも一番じゃないとやってられないのか。これは覚えておかにゃならんことだな、どうにも気難しい子だ。
「「「「「いただきます。」」」」」
「そーそーアスカ、この家のことはだいたいがエイちゃんがやってるから。何か困ったことがあったら彼に言ってね。」
「ミサト、あんた本当に保護者?」
「俺も同意だ。まあ、仕方ないんじゃない?ミサトさんはミサトさんで忙しいからさ。」
「ふーん…。でも、お金は触らせないわよ?」
「悪いけどな、全員の分は一度ひとまとめにしてから分配する方式をとってるんだ。若干一名が、よく酒ばっか買ってくるからな。」
「ギク…」
「え~!?ミサトあんた、信用されてないわねぇ~。それじゃあ、あたしの小遣いは3万にして!」
「…?ふっ、そ、そんな貰って何に使うんだよ?服くらいなら家計から出してやるぞ?」
「それでもよ!ったく、やっぱりあんたは女心ってのを知らないのね。」
「…いいよ、わかった。」
ちっとカマをかけた。俺も学生の頃はプラモやらCDやら買いまくって金は無かった。んでもそれは、高校以降だったと思うけどね。
「何よ、その笑い。」
「いや?昔の俺を思い出してさ。俺も高校の頃は、だいぶ荒い金の使い方してたから。」
「何よ、それ。」
「こっちのこと。あと、夕食は楽しみにしといて。」
「お?楽しみ~。」
「エイジ君がわざわざ言うってことは、凄いことになりそう…。」
「みんな普段から食べてる癖に。特にファーストなんかはさ。」
「いえ、エイジ君がこういうことは珍しいわ。」
「フン、さようでございますか!」
「「「「「ごちそうさま。」」」」」
こりゃもっとアスカのことを知らにゃならんかな…。
昼食を終え、いつも通り二人で食器を洗う。そいや、まだ段ボールがけっこうあったよな。部屋はそこそこ大きいはずだけど、まっさか…入りきらないなんてことはないよな?
-惣流・アスカ・ラングレー-
アイツ、昼食を『適当に作ったわガハハ』なんて抜かしてたけど、本当だったわね。あーあ、ミサトに言われて来てみたはいいけど、部屋は狭いわ他のメンツがアレだわで、マトモなことになる未来が見えないわね、ほんと。
部屋でGBAいじってると、ドアをノックする音が聞こえてくる。誰よ、全く。
「アスカ?いる?」
「バ影嶋?…何よ。」
「ちっと部屋見せて。失礼。」
「あ、ちょっと―」
「んー?????????」
バ影嶋は外にある段ボールと、まだ荷物を開ききってない、段ボールが積まれている部屋を交互に何度も見てる。何なのよコイツ、デリカシーってもんが…。
「なあ、そんなに何を持ってきたんだ?そこそこ広い部屋だってのに入りきらないってどういうことだよ?」
「この部屋が狭いのがいけないのよ!残り1/3も入らないなんて!」
「ジーザス……ま、どうにかしてくれ。俺の出る幕じゃなさそうだ。」
「何よそれ、あ、ちょっと待ちなさい!」
「今度は何だってんだ?」
「あんた、学校では優等生気取ってるじゃない?気分よさそうねぇ?」
「中学校の勉強なんて基礎しかやらないだろ?それで優等生気取って何が面白いんだ。それはアスカ自身がよくわかってんじゃないの?」
「へー、あんたはそう考えてるんだ。意外。」
「意外って…」
(エイちゃ~ん?なんか荷物が届いたわよ~?)
「お、来たか。はい、今向かいますよ!それじゃ。」
それだけ言うと、バ影嶋は部屋の前からいなくなった。
「何よアイツ、いっつもヘラヘラして…ヤな感じ。」
2時間くらいあと、あたしらは夕食だって呼ばれた。
なんか数分前からいい匂いがしてきてたし、本当に豪勢なモノになってるのかしら…。って、期待するだけ無駄無駄!どーせアイツのことだから、また昼みたいに適当な…ものが…
「すご…何これ…」
「わお、エイちゃんやるゥ♪」
「美味しそう…。」
「エイジ君、本当にこれを一人で!?」
テーブルには、ステーキのセットが置いてある。それに、わざわざこれのためだけに揃えたと思われる食器一式が。コイツ、ここまで本気でやったのね…。
「まーまー兎も角、皆様ご着席ください。」
全員が言われるがまま、各々の席に着く。
影嶋は後ろを向くと、小さいワイン瓶を取り出す。両手に持ったそれは、ノンアルコールのものだった。雰囲気も完璧じゃない?
しかも、ミサトには本物のワインを用意してる。何なの、この気合いの入り方…。
影嶋は栓を抜き、各々のグラスに注いでいく。ちゃんとあたしのを最初にしてた。これくらいは気を使ってもらわないとね。
アイツは最後に注いだ自分のグラスを手に持ち、宣言を始める。
「さて皆様お待たせいたしました。これより先の戦闘で滅茶苦茶苦労したであろう初号機パイロット、弐号機パイロット、そして裏方をやった葛城一尉らの慰労会及び、葛城家の新の同居人、惣流・アスカ・ラングレーさんの歓迎パーティーを開催します!乾杯!!!」
「かぁんぱ~い!」
「「乾杯。」」
「え…。」
歓迎パーティー?どういうこと?
全くの不意打ちに頭が追い付かない。
「おーどーしたどーした?主役のノリが悪いんじゃあ折角の企画がパーだぞ?」
影嶋は腕をあたしの肩に回してきて、いつものヘラヘラした表情で言ってくる。ちょ、ちょっと気安く触らないでよ…!
「ちょ、ちょっとやめてよ!わかったわよ、やりゃいいんでしょ?……か、かんぱい。」
「はいありがと。じゃあ食うか!」
バ影嶋は満足げな顔をして自分の席に向かった。なんか、変な感じ…。だいたい、あたしの歓迎会だなんて、そんなことしないでくれていいのに。
そんなことを思いつつ、まだプレートも熱いステーキに向かい、一口切り出して―
ん?ファーストのヤツ、上手くナイフとか使えてないのね。まーたバカップル共の光景が…
「綾波、ナイフはこう持つんだよ。」
「こう…?」
「そう、そんな感じ。」
「こう見てると、何だか兄弟みたいだなァ…。」
ちっ、何なのよこいつら…。切ったのをとりあえず口に放り込む。
「あ、美味しい。思ったより柔らかいのね…。」
「ほんと!?よかった~。今まで数回しか作ったこと無いから正直見た目だけでもって、不安だったからさ。料理人冥利に尽きるって感じ。」
「『みょうりにつきる』?何それ。」
「これほどの幸せはないってことだよ。じゃ、俺も食うか。」
「あ~、こんな美味しいステーキにワインだなんて、私幸せ~。ねえ、今日の食事といい、調理法方といい、どこで仕入れてきたの?」
「あ、僕も気になる。」
「ちっと中央へ、高級なものを買いに行っただけですよ。だいぶ後先を考えない買い物しましたけどね。後は俺の独学ですね、何度かやった失敗経験を生かしただけですから。」
「ねえ、そもそもなんだけどさ、あたしの歓迎会って『ついで』でしょ?そんなくらいだったらやらない方がマシだったわよ。」
「ちょっとアスカ、やめなさいよ…」
「今日たまたま日付が被ったってだけだよそりゃ。どっかの誰かさんが報連相してくれないで勝手にあれこれ進めるからねェ。」
そう言って影嶋はミサトの方を向く。それに気づいたミサトは、無視を決め込んで目を逸らしながら残りを食ってる。相変わらずのズボラさ…。呆れた。
「そらアスカが家に住むってのがもーーーーーちっと早くわかってりゃもう少し考えたかもね。んでも俺がこのタイミングがバッチリだって思ったのも事実だし…。
どっちみち今日は慰労会をやろうつってアスカを呼んだワケだし、一緒くたにしたのは本当にごめん。これが例えばもっと時期がズレてりゃ、ちゃんと別個のイベントとしてやったよ。
…そーだ、みんな食い終わってきたとこだし、ちっと待ってて。20分くらいで全員分作るから。」
「え?まだ何かあるの?」
「ま、そりゃ見てのお楽しみっつーことでな。」
それだけ言って、影嶋はまたキッチンに向かう。今度は何が出てくるのさ?
ミサトは相変わらずのアルコールが入った表情で色々喋ってる。話なんてほぼほぼ聞き流してた。ファーストとバカシンジの話ばっかだったし、あたしも学校には大して行けてなかったし、どっちでもよかった。
「ねえアスカ~、どーだった?エイちゃんの本気の料理。美味しかったわよね~!」
「ま…まあまあね、まあまあ!」
「もー、そんなコト言っちゃって、素直じゃないんだから~。」
「それにしてもさ。まだあるって、何が来るんだろう?」
「今日は私にも教えてくれなかった。」
「二人にも喋らない、ねぇ…。こりゃ、また大物が来るかも知れないわよ?」
「大当たり。」
「え!?もうできたの!?」
「まあ、重ねてくだけだったからさ。それじゃ、配るから。」
今度はパフェが出てきた。しかも、ご丁寧に容器まで揃えてある。なんだか想像以上ね…。
「ねー、あたしを餌付けしようっての?そうはいかないわよ?」
「ここまで全部、最初から考えてたことだよ。たまにゃいいでしょ?こーゆうさ、誰かと一緒に家で豪華な食事っつーのも。」
「どーかしらね。あたしにはよくわからないわ。」
「経験無いのか?りょ―――いや、何でもない。今の無し、忘れてくれ。」
へェ、バ影嶋って顔の表情を作るのは上手いけど、目の表情を隠すのはできないのね。こんなヤツに同情されるなんて、ほんと…バカらし。
ワンダースワンのゲームソフトが正直馴染みの無いのばっかだったんで、アスカの持ち歩いてるゲームハードはGBAにさせてもらいました
ワンダースワンのファンの方々、本当に申し訳ない