ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE21:特別な日(後)

22時過ぎ、やっと全部の実験が終わった。なかなかにハードな内容だった…。初号機inレイの起動実験が無事終わったと思ったら、今度はそのまま戦闘試験があるとか。俺まで疲れちったよ。夕食は休み時間を貰って、食堂で済ませてきた。二人とも疲れていたからか、会話もなしに、互いにただ食事を胃の中に突っ込むだけの作業と化していた。

最終調整を終え、いつでも使えるようになってやっと実験が終わった。半日丸々潰されるとは思っちゃなかった…。

 

[今日の実験はこれで終わりよ。二人ともお疲れさま。]

 

「お疲れさまでした…。二度とやりたくねぇわこんなん…。」

[お疲れさまでした。]

 

[パイロット両名、着替えたら部屋に来い。話がある。]

 

「指令が?…わかりました。」

[了解。]

 

 

 

さて、指令の部屋。なんか床に天井にと謎の模様が描かれている他、妙にだだっ広い中に、机がちょこんと置かれてるだけ。何だろなぁ、この不気味さは。二人で並んで立っていると、指令が話を切り出してくる。

 

「レイ。」

「はい。」

「アークのパイロットとの生活は、楽しいか?」

「…はい。」

「そうか。」

 

 

「アークのパイロット。レイとはどうだ?」

「どうって、そりゃ楽しいですよ。他のパイロットとの交流もまあ…問題なくできてますしね。」

「そうか。レイから、出自の話は聞いたか?」

「そいつは…レイが、話すのを余りにも辛そうにしていたから、聞いていません。」

「わかった。影嶋エイジ、お前にはレイのことを知る必要がある。これを持って、レイに案内して貰え。」

「え?ですが……」

 

「命令だ。レイ、辛いとは思うが、きちんと話すんだ。」

「……はい…。」

 

 

卑怯な言い方だと思いつつ、俺は更新IDを受け取った。少しデザインが違うし、名前も刻印されている。つまり、逃げれないっつーことか。ま、そのつもりはハナからないけど。

それより、レイの出自がNERV(ここ)に関連しているっつーのはどういうことなんだ?

そんなこんなを考えていると、レイが辛そうな顔をしながら、声をかけてくる。

 

「来て。…こっち。」

 

 

 

レイの案内で、俺はドグマの深部へと足を運ぶ。ここは確か、アダムを見た区域…。何があるんだ?何かまたイヤな予感がしたから、例によってヘッドセットを装着したまま俺は進んでいる。最悪、この裏技でごり押しをするしかない。

レイが扉の前に止まる。俺がカードキーを通し、扉を開ける。部屋はとても閑散としていた。ベッドと、仕切りと、大型の機械。ここはまるで―

 

「昔のレイの部屋みたいだ…。」

 

「そう、私が生まれた場所よ。」

 

「生まれた?こんな、何もないような場所で…?そういえば、レイの親ってのは知らないよな。まず…ちゃんと居るの?」

 

「…行きましょう。」

 

レイは質問に答えず、さっさと行ってしまう。こいつは地雷だったな、後で謝らないと。次の部屋は、中心に大きな管が配置され、天井へ機器が伸ばされている、円筒形のよくわからない部屋。

 

「ここは、ダミープラグを製造している場所。私の記憶の保管庫。」

 

「ダミープラグ?何だそれ?それに、レイの記憶の保管って、どういう―」

 

「私がコアになっているから。」

 

「レイが、コア?」

 

「行きましょう、赤木博士のところへ。」

 

赤木博士?技術関連は確かに博士の管轄だけど、何故今になって?何でレイとの関係が発生するんだ?

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

少し遅い時間だったけど、赤木博士はまだ研究室にいた。普段は医務室で投薬を受けるけど、今日はデータ処理でこの部屋に居るみたい。

 

「あら、レイ。どうしたの?エイジ君と一緒でなくて?」

 

「先に帰ってもらいました。」

 

「…レイ。あなた、最近急激に変わったわね。エイジ君と毎日楽しそうに生活して、表情が人間らしくなったじゃない。」

 

人間らしく…。胸が痛む。でも、本当のことだから―

 

「…いけない、事ですか?」

 

「まさか、いけないだなんて。ただ…少し驚いてるのよ。今まで碇指令しか眼中になかったようなのに…。エイジ君のアプローチがそんなに良かったの?」

 

「そ、そんなこと……」

 

自然と、顔が赤くなるような、そんな気がする。

 

「…たいしたものね。ただの人形かと思っていたら、人間らしく恋人なんて作るなんて。」

 

「私はもう人形じゃありません。昔、碇指令ばかり見ていたのは本当です。でも、それは赤木博士だって―」

 

「っ!!!」

 

赤木博士は持っていたチューブで私の首を絞めてくる。指を隙間にねじ込んで、呼吸は何とかできる。でも、苦しい…。

 

「黙りなさい。あなたは人形だけやっていればよかったのよ。それなのに…!」

 

「やめて…」

 

抜け出そうともがくと、鞄にぶつかり、中身が散らばる。

 

「これは…。」

 

私は突き飛ばされ、一時的に解放された。咳がなかなか止まらない。早く、この部屋からでなきゃ…。

 

「…あら、エイジ君へのプレゼントというわけね。すっかり色気付いちゃって。」

 

「やめて…触らないで…。」

 

「………。」

 

今度は私を押し倒し、両手で首を絞めてくる。イヤ…まだ、私は…!

 

「この時ほど…レイ、あなたが憎いと思った事はないわ。人形の癖に、幸せになる権利なんて無いのよ?」

 

「た…たす…けて、エイジ君…」

 

「残念だったわね、あなたを助ける人は誰もいないわ。」

 

 

-影嶋エイジ-

 

途中から部屋の盗聴が何故か効かなくなり、扉に耳を当ててギリギリ聞こえるかどうかの話を聞いていた。「危なくなったら助ける」を前提に、レイは自分から赤木博士のところへ向かった。…つまり、赤木博士はレイに何らかの、俺にとって都合の悪い関わりがあるわけだ。話し声が止まったと同時に、争うような音が。こうしちゃいられない。さっさと突入しなければ…!

開閉ボタンを押すが、解錠されない。それならカードはどうだ?IDを読み込ませても拒否される。まだ手はある!

 

「アーク、目の前の部屋のロックを解除しろ!」

 

[カスパーによって拒否されました。解錠できません。]

 

「な、MAGIが裏切った!?shit、どーすんだこんなん…!」

 

 

-ねえ、「好き」って、なに?-

 

 

「な!?何で今…!」

 

 

-教えて。-

 

 

「そんなに知りたきゃ俺にでもシンクロして読み取りやがれ!クソ、これならドアを蹴破ってでも…!」

 

突如、頭に来る不快感。前に一度あった、零号機に似た不快感だ。少し経つと、それは引いていった。

 

 

-これが、感情…。ありがとう。-

 

 

「ええい、しゃーない、蹴破ってやる!おらぁああ、あああああ!?」

 

蹴破ろうとした瞬間、ロックが解除された。ずっこけるけど咄嗟に受け身をとって、銃を引き抜く。

 

「嘘、どうやって!?」

「エイ、ジ…君…」

 

「赤木博士!?何やってるんです!!」

 

レイが博士に馬乗りにされて、首を絞められている。俺が銃を向けているのに気付くと、ゆっくり手を離し、両手を上に上げた。

 

「……そういうこと。レイ、あなたもやるようになったわね。」

 

「ケホ、ケホ…言ったでしょう?私はもう、人形じゃないわ。」

 

「ダミー、レイの出自、『代わりはいる』…洗いざらい喋ってもらいますよ。レイ、こいつは見ておくから自分の荷物を集めといて。全部終わったら、そのまま帰るぞ。」

「わかったわ。」

「さて、拒否権は無いですよ。さっさと喋ってください、赤木博士。」 

 

「いいわよ……教えてあげる。」

 

 

俺は銃を突きつけたまま背もたれを前にして椅子に座り、赤木博士に対面する。地べたに座り込んだまま、赤木博士は喋り始める。俺の後ろには、レイが怯えた顔で俺の影に隠れるようにしていた。

 

「レイは、碇ユイ…シンジ君のお母さんの生体情報から造られたクローンよ。その生体パーツを使ってダミープラグ…人を乗せずともエヴァとシンクロできるプラグを開発しているわ。」

 

なるほど、クローンか。それだけで全ての理由付けができると。レイはその事を知られたくなかったんだな…。

 

「代わりはいるっつーのはレイがクローン体の一人だからですか。なるほどな?」

 

「そう。レイには、ある存在の魂が宿っている。だからエヴァを操縦できるのよ。でも、大量の肉体を造っても、魂が宿るのはその中1つだけ。それが『現在の』綾波レイよ。

…でも、所詮その肉体は、その魂を入れておくためだけのモノ。今は問題なく生活してはいるけれど、いずれその『生』に体が耐えれなくなるし、生殖機能もない。それでもエイジ君、あなたはレイのことを好きでいられることができるかしら。」

 

「俺とレイの絆ってのは、そんな生半可なモンじゃないですよ?バカにしないで欲しいですね。

レイの素体を製造しているのなら、そのプラントが必ずありますよね。案内してください。」

 

「いいの?あなたがそれを見て正気でいられるかしら。」

 

「体だけの抜け殻なんて、そらレイじゃないですよ。"モノ"を見たところで何とも。」

 

「…そう。来てちょうだい。」

 

 

 

赤木博士の案内で、俺らはプラントに移動する。勿論俺は銃をつきつけたままだ。

ここは、レイの記憶を保存している所だと聞いた。正面の外壁が開くと大きな水槽が露出し、その中にはレイの「器」とでも言うべきものが大量に浮いている。

 

「こいつが…」

 

「そう、レイの魂の器。」

 

イヤな気分だ。「道具は道具らしく大人しくしてろ」っつーワケか。わざわざ「人形」だの「人間らしく」なんて嫌味言いやがって。 

レイはなにも言わない。自分がそうだと知っていたようだし、特段驚くことでもないか。でも、レイの顔は暗かった。

 

「レイは今のままでいいのか?」

 

「エイジ君?」

 

「レイは誰かの器として生きていきたいのか?でもそれは自分自身を殺す、辛い道になるぞ。」

 

「今のまま、あなたと生きていてもそれは変わらないわ。」

 

「黙れよ。残念ながら俺は人種差別主義者(レイシスト)じゃないんでね、クローンだろうが何だろうが受け入れられますよ?何ならきちんとした体機能を持った人間にして、もう一度レイを生まれさせて欲しいくらいですね。」

 

「独り善がりな考え方ね。それに、そんなことをしたら記憶以外の感情が全てリセットされてしまうわよ?また昔の、何も感じないレイに戻る…。それでもいいのなら、やってあげてもいいわ。」

 

「大概に狂ってんな、アンタ。まだ中学生にも満たない精神の子に、そんな事実を突きつけて…!」

 

「全ては影嶋エイジ君、あなたがレイに感情を教えたのが原因よ。それをしなければ、レイはそんな苦しい思いをしないでよかったのに。」

 

その言葉と同時に、赤木博士は俺に銃を向けてくる。

 

「エイジ君!!」

「レイ、手を出すな。…ここまで頭のイカれた人間が居るとは思っちゃいませんでしたよ。」

 

唐突に赤木博士が殴ってくる。不意打ちだったが素人の攻撃だ、難なく逸らすことができた。

 

「死んでもらうわ。あなたにだってバックアップ(代わり)はいるのよ?」

最低(さいってー)だ、アンタ。」

 

赤木リツコは俺に発砲しようとするが、体当たりでまた不発にさせる。

 

「レイ伏せろ!」

 

近距離で発砲し合いながら転がり、揉み合いになる。俺は赤木リツコの持っている銃を、銃床で弾き飛ばす。向こうも俺の銃をもぎ取り、どこかへと放り投げる。殴り合いに発展する不毛な取っ組み合いの中、何かのリモコンが赤木リツコの懐から落ちてきた。多分、これは…!それをレイの方へと蹴り飛ばし、叫ぶ。

 

「選べ!自分自身を信じろ!」

「やめなさい、レイ!」

 

「私は………私は、このからだで生きたい…!代わりなんて、いらない!」

 

レイはリモコンのスイッチを押す。すると、水槽に入っていたレイの体は崩れていく。彼女の意思だ。誰も文句は言えないだろう。

 

「くっ……あなたさえ居なければ…!」

「往生際が悪…!?ぐっ、あ、アンタ…!」

 

凄まじい、火事場のバカ力とでも言うべきモノで俺の首を絞めてくる。これはもう正当防衛だ。ナイフを取り出し、赤木リツコの左肩に突き刺す。それでも、女は力を更に込めてくる。ヤバい、俺の方が先にダウンしそうだ……

力が、はいらなくな っ て …

 

「イヤ!もうやめて!」

 

 

発砲音。

 

 

 

女の体勢が崩れ、自由になる。レイの方を向くと、泣きながら俺らの方向に、俺の銃を向けていた。

 

「ゼー、ゼー…。レイ、お前……ヤバい、逃げるぞ!」

 

警報音がする、さっさとここから離れないと。俺は腰を抜かしたレイの手を引き、本部から抜け出そうとする。なるべく最短ルートの裏道を通ったのだが、それでも最後の最後で見つかってしまった。

 

「ファーストにアークのパイロットですか!?今本部は危険です、いますぐ保護を…」

 

剣崎さんは俺の状態を見て、口を止めた。俺への返り血とレイの持ってる拳銃(物騒なモノ)、それを見て警戒してしまったのだろう。剣崎さんも銃を取り出す。

俺は剣崎さんの方を向いたままレイから銃を受け取り、剣崎さんに突きつける。

 

「俺らはもうロクでもない理由で殺り合いたくないんですよね。頼みますから穏便に家に返してください。」

「……。」

 

一触即発といったところか。そんなバチバチの状態を打ち破ったのはレイだった。

 

「やめて!もう、もうこんな…!お願い…!」

 

泣きながらも、俺を庇うように立つ。なんか、今日はレイに助けて貰ってばかりだ。

 

「……私は誰とも遭遇しなかった。容疑者も、要保護者も見つけてはいない。」

 

「…!ありがとうございます。レイ、行くぞ。」

「ありがとう…!」

 

助かった、ありがとう剣崎さん。俺らはそのまま、誰にも会うことはないまま家に帰ることができた。

 

 

-綾波レイ-

 

エイジ君は、憔悴しきった顔でソファに座っている。今夜のことで疲れきり、今にも寝てしまいそう。私も彼と似たようなもの。

 

とても怖かった。エイジ君が居なくなりそうだと思ったの、これで何度目…?そのどれもが、私が手を出せないところで起こっていた。

でも、今回は…エイジ君を助けることができたのだと、思う。でも、赤木博士を撃った…。これが私の手を震えさせてしまう。

 

でも…今は23時50分。もうすぐ今日が終わってしまう。

彼は生きているもの。それならば、はやく、伝えなくちゃ。

 

「エイジ君…まだ、起きてる?」

 

「レイ?うっ…ああー…。どうしたんだ?」

 

「これ…受け取って。」

 

ラッピングは崩れてしまった。それでも…。

 

「レイ、これどうしたんだ?俺へのプレゼント…ってことでいいんだよな。」

 

「そうよ。開けて?」

 

「…わかった。」

 

怪訝な顔のままの彼の横に座り、包装を丁寧に剥がしていくのを見る。

中からは、エイジ君が家に戻ってるときに買った、目薬とアイマスク、お香が出てくる。

 

「目薬に、アイマスクに、こいつは…お香ってやつか?なんでまたこんなものを?一本使ってみっか。

 

「エイジ君、いつも気を張ってるでしょう?今朝、猫を触ってた時くらいしか楽な表情を見てないもの。」

 

「え?そう?」

 

「今もそう。まだ鋭い目をしてるわ。」

 

お香の香りが広がっていく。

エイジ君は少し考える素振りをした後、私に微笑んでくる。それは、今までのようなどこか警戒しているような目ではなく、本当に安心した目のように見えた。

 

「ありがと、レイ。ところでさ…今日って何かあったっけ?」

「忘れたの?エイジ君、あなたの誕生日でしょ?」

「え???………あっ、そーか。ごめん、すっかり忘れてた。」

 

すっとんきょうな質問をしたからか、二人からは自然に笑いが出てきた。

 

「そっか。何で今このタイミングなんだろって思ったら。」

「ふふ。お誕生日おめでとう、エイジ君。」

 

優しかった彼の目は、私の手を見て一気に変化した。

 

「どうした?レイ。手、震えてるよ?」

 

「そ…そんなこと!ない…。

 

「怖かったんだろ?また俺が居なくなりそうでさ。」

 

「っ!!」

 

「やっぱり。大丈夫だよ。俺はここに―レイ?」

 

気持ちが、感情が制御できない。彼の胸に飛び付く。

違う。それもだけれど、それ以上に―

 

「怖かったのは…私が、赤木博士を傷つけたこと…はかせを、ころそうと…」

「言わないでいいよ、レイ。」

 

エイジ君は、私を強く抱き締めてくれる。

 

「人を傷つけるのを怖がるのは、誰だって感じることだよ。俺もそうだから。

でもね、怖がってばっかじゃいけない。その痛みもまた、成長に必要だからさ。落ち着いて、ゆっくり受け入れればいいよ。」

 

「エイジ君…!怖かった…こわかった…!」

 

 

声をあげて泣いた。

 

 

 

しばらく経って、落ち着いたら急に恥ずかしくなってきた。顔は見えないと思うけれど、泣き疲れて寝たと思っているかな…。彼は私の両肩に手を置き、離そうとする。

…まだ、一緒にいたい。抱き締める力を強くすると、彼は困ったような声を出していた。

 

 

エイジ君はズルい。

 

私だって、彼を助けてあげたいのに…。いつも先にいて、笑ってこう言うのだ。

 

 

「俺は大丈夫だから。」

 

 

本当は、辛いはずなのに…。

 

 

-葛城ミサト-

 

ったく~、折角の休暇だったってーのに「非常事態だから来い!」なんて…。しかもよりによって深夜だし、もー最悪。リツコの怪我だとか、機密がどーたらこーたら言ってたり、ワケわかんない。また私の知らない所で何かが起こったのね…。今日はエイちゃんにレイが実験やってたって言ってたし、二人とも大丈夫かしら…。

 

「ただいま~。あれ?電気つけっぱじゃない。もー、またエイちゃんに怒られるわよ?」

 

玄関は自動点灯で暗いときは勝手に点いてくれるけど、奥のリビングからの光が漏れてる。だいたい、今は2時よ?いったい誰がこんな時間まで起きてるのよ~。

ん?なんかリビングからいい香りがする。

 

「ただい…あら、エイちゃんにレイ。」

 

リビングへと入ると、エイちゃんとレイが、ソファで抱き合って寝てる。というか、エイちゃんにレイが抱きついてるってのが正しいのかしらね。エイちゃん、こーゆうときは年相応な顔してるんだけどなー。普段がアレな分、ちょっと残念。

 

あ…ミサト、さん?お帰り…。」

 

「あら、起こしちゃった?ただいま。お楽しみのところごめんね、エイちゃん。」

 

「はー、あいっかわらず意地が悪い…。今は寝ちゃいますけど、少し前まで狸寝入りで俺から離れたがらなかったんですよ?それに、何かある度にいつも泣かせてばっかですしね…。俺としちゃ辛いですよ。」

 

「あら、珍しいじゃない。エイちゃんが弱音を吐くなんて。」

 

「レイが聞いてないからですよ。レイだけじゃない。他の子らの前じゃ、無用な心配かけるだけですからね。最早自然に隠す表情が出てくるあたり、病気か何かじゃないですか?」

 

「ねえエイちゃん…。あなた、休んでるときってあるの?そんな調子のままだと、いつか倒れてしまうわよ。」

 

「大丈夫ですよ。毎日ちゃんと寝ちゃあいますからね。」

 

「私が言っているのは『心』のこと。体だけでなくて、心にだって休息は必要なのよ。明日は二人とも学校も訓練も休んで、一日くらい何もしないでゆっくりしていいわ。」

 

「え?でも……」

 

「『でも』じゃない。こーゆうトコロで素直に『はい、わかりました』って言えないのはエイちゃんの悪い所よ。

そ・れ・な。ら、影嶋エイジ及び綾波レイ両パイロットは、明日は一日休息をとること。これは命令です。これならいいの?」

 

「無茶苦茶だ…。越権行為じゃないですか?」

 

「もー!!折角親切に言ってあげてるのに!!」

 

「レイが起きちゃいますよ?もっと声量落としてください。でも、いいかもしれませんね……わかりました、ありがとうございま………」

 

言い切ることはないまま、彼はそのまま頭が倒れていった。やっぱり。いつも仕事も、学校も頑張っているものね。

掛け布団を二人にかけ、エイジ君の頭を楽にしてあげて、呟く。

 

「いつもお疲れ様。おやすみなさい。」

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