ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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思ったように上手くまとまらない定期
すぐ7-8k字になっちゃうんで止めどころに毎回悩みます


RE24:クロッシング

-碇シンジ-

 

6時10分…少し寝坊しちゃったかな。昨日のゴタゴタがあったからかな…。

それにしても、隣の部屋だったから聞こえちゃったけど、エイジ君の弱さを感じ取ってしまった。エイジ君と違う場所にいる僕らが羨ましくて、寂しいっていうのがよくわからない。

それが引っ掛かって、ずっと頭がすっきりしない。そんな状態でリビングに向かうと、エイジ君が朝食を作っていた。

 

「エイジ君!?ダメだよ、休んでなきゃ!」

「え、休む?…何の事よ?」

「昨日の事、覚えてないの?唐突に倒れて大変だったんだから…。」

「何も覚えちゃないなァ。でも迷惑かけたなら謝るよ、ごめん。」

「本っ当に平気?」

「数時間前に若干気分の悪さはあったけど、それ以上は何もないかな。」

 

なんか、変な感じがする。てか、普通にエイジ君の「大丈夫」は信用ならない。悪い前例が多いから…。

 

「信用されてねェな?ごめん、これに関しては本当に俺にもわからない。その時の記憶が何も無いんだ。」

「…やっぱり、後は僕がやるよ。休んでて。」

「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただく。」

 

流石の僕でもわかる、やっぱり無理してるよ。変に頑固なんだから。

 

「俺のことを頑固だとか思ってるだろー?」

「えっ!?いいいや、そんなこt」

「流石に顔見りゃ解るよ。俺は何かしらやってねぇと落ち着かねぇんだよ。エヴァに乗ってるわけじゃないしな。

「え?」

「何でもない。」

 

エヴァに乗ってるワケじゃないから?確かに少し前も、確か2ヶ月くらい前、ミサトさんに参号機の件はどうだって言ってたなぁ。負い目、感じてるのかな。

 

 

 

-赤木リツコ-

 

「新型プラグスーツの着心地はどう?エイジ君。」

[違和感は無いし、格好いいんで俺は好きですよ。]

「ありがとう。それじゃ、シンクロとクロッシングのテストを行うわ。」

 

 

「クロッシングの効果、現れませんね。」

「恐らく、エヴァを媒介にしてシンクロ率を上昇させているのよ。試験プラグはパーソナルと統計データからの数値を読み取ってるだけで、エヴァそのものに入って計測してるわけじゃないわ。その違いが、クロッシングの効果を上下させてるのよ。」

 

この仮説は恐らく正解。前回の戦闘データを見返したら、アークのプラグ深度がマイナス値ギリギリまで迫っていた。恐らくエイジ君は自らを媒介にして、エヴァとパイロットのシンクロ率を高めているのね。でも、そんなことをしたらエイジ君の脳にはパイロットの比ではない膨大なデータが流れ込んでくるはず。精神汚染もやむ無しね。

 

「お疲れ様。昨日言った通り、エイジ君だけ残って頂戴。レイ、彼の帰りは遅くなるわよ。」

[本当ですか?そんなこと言って彼に-]

「本当よ。帰って休みなさい。」

 

他のメンバーの中継映像が切れていく。試験プラグ内にはエイジ君のみが残った。

 

「それじゃあエイジ君、これから現在本部にあるエヴァ全てとのシンクロテストを行います。用意はいいわね?」

[俺はいつでも。]

「結構。それじゃあ零号機からよ。」

 

 

今回は様々な解析をかけながら、ゆっくり実験を行った。

 

「先輩、何ですか、このデータは…。」

「予想外ね。弐号機とシンクロできないのはパーソナルが合わないからだと思っていたけど、この仮説は撤回しなければならないわ。」

 

やはり彼は”異常”だ。零号機と初号機のパーソナルパターンは元々似ていたから、その2機とシンクロできるのはまだ理解できた。でも、アスカの居ない弐号機とのシンクロがこんなに簡単に行ってしまうのは予想外だった。

彼はエヴァのパーソナルパターンに対して、意識してか無意識かはわからないけれど、自分からエヴァに合わせるように変化させている。それも以前より精度が向上…つまり、シンクロ率まで上昇している。前回の計測で20%台だったのが急に40%台、更に零号機とは55%という彼の最高値を取っている。

人間は、自分のパーソナルパターンをそう容易に変えれるものではない。それは「自己否定」という過程を踏まなければならないからだ。子供でも大人でも、自己否定というのは意識して行えるものではない。寧ろ外的ストレスに依存して無意識に発生することが多い。でも、これがコアの書き換えを不要としている要因…。

 

テスト後の身体検査も、今回は脳を中心に念入りに行ってみた。まさかとは思うけれど、ゼーレからの洗脳があるかもしれない。レイと同じ存在の可能性だってある。自己否定の原因がはっきりしない以上、数字とグラフからしか読み取るものはない。私はカウンセラーにはなれないし。

 

「エイジ君、これからいくつかの質問をさせて頂戴。」

「あなたと殺り合いたいなんてこれぽっちも思っちゃないですよ?」

「あら、脳波はそう思ってないみたいよ?」

「なるほど。嘘はつけない、とね。」

 

「それでは始めるわ。あなた、日本で雪を見たことある?」

「そら何度も。毎回毎回平日に降りやがるもんですから、登校・出社と何度か地獄を見たことがありますね。」

 

「そう。何年生まれ?」

「95年。日付は同じです。」

 

「どこからここへ来たの?」

「長野に住んでいた記憶はありますけど、それ以上は。どういう経路と経緯でこの都市に来たかすらも、正直わかりません。」

「…正直に言ってくれてありがとう。これで終わりよ、お疲れ様。」

 

やはり、洗脳はされている痕跡は無いのに「本来の影嶋エイジ」とのプロフィールに齟齬が生じている。やはり、あの時出てきた子供なのかしら…。

 

 

 

「ねぇリツコ、話があるって…どうしたの?」

「エイジ君の事についてよ。これを見て頂戴。」

「シンクログラフ?どれも好成績じゃない、弐号機ともシンクロできたのね。これがどうしたっていうの?」

「それは大したことじゃないわ。問題はこれ、こないだの戦闘中の他のパイロットのシンクロ率データと、アーク内プラグ深度のデータよ。」

 

前回の戦闘記録、戦闘終盤になるにつれて他パイロットのシンクロ率上昇に比例して、アーク内プラグ深度の数値が高くなっていった。精神汚染区域にも入りかけているにも関わらず、当初は汚染の兆候や明確な症状は発生していなかった。

 

「……え?エイジ君だけ汚染区域に入ってるじゃない!大丈夫なの!?」

「正直に言うと、汚染されてる可能性は高いわ。昨日、エイジ君は文化祭の企画の練習とか言って女装をしたそうよ。その時、人格が変化していたわ。そのストレスがトリガーとなって、症状が出てきたんでしょうね。」

 

昨日の診断時、明らかに別人格の人間になっていた。精神汚染の影響…彼自身の人格が侵されるのを危惧して別の人格を形成して押さえ込んだ、というのが一つの仮説。

でも、それであるならばクロッシング状態で発症するのが一番筋が通ってるはず。エヴァに関係しない外の世界で発症したのが理解できない。それすらも押さえ込んでいたというのなら、彼の精神力はやはり子供のそれじゃない。思春期の子供が、こんな器用なこと出来るはずがないもの。

 

「対応策、あるんでしょうね?」

「まだ汚染と明確に決まったわけじゃないのよ。でも、エヴァとのクロッシングがその症状を加速させている可能性は十分にあるわ。毎回汚染区域ギリギリに入って、脳を酷使し続けているのよ。その上に普段じゃあ思春期のパイロット達とズボラな誰かさんの面倒を見てるんでしょ?普通の人間だったらストレスでもう100回くらいは倒れているわ。」

 

「それは…私だって、仕事が無ければ―」

 

「昨日の症状は、ストレスによる暴発じゃないかって踏んでるわ。その後倒れたのも、自分の人格と違う人格のズレが体に影響を及ぼしたのでしょうね。

ミサト、あなた何やってるのよ?パイロット達のメンテナンスは本来あなたの仕事でしょう?」

 

「それは、そうだけど…。」

 

「どうせ貴女のことだから、普段はエイジ君に全部押し付けてるんでしょ?倒れるのも無理は無いわ。エイジ君とは一番長く付き合ってるのに、それすら気づけなかったわけ?」

 

「仕方ないわよ、彼は……私に何も言ってくれないんだから。」

「あら、自分のコミュニケーション能力を棚に上げて言うことかしら?」

「違うわ。彼、殆どの回答が『自分は大丈夫』っていう趣旨なんだもの。」

「…信用されてないわね、相変わらず。」

「まったく、ね…。」

 

ズボラな所が無ければ、こんなことにはならなかったかもしれないわね…。

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

「ただいま。遅くなったな。」

「お帰り、エイ君。」

 

「お帰り。」

「んー…。」

 

「何だアスカ、そんな顔しやがって、俺は化けモンじゃねぇよ。」

 

「昨日の事を聞いてから言うことね!この変態!!」

「おわっと!?だからつって初手キックは無いだろ!はいはい、アスカにゃこれ渡さないとだから大人しくしてくれ。」

 

「なにこれ、楽譜?」

「歌の部分だけ抽出したんだよ、どーせ知らない曲だからな。」

 

「何、えーと、『こころよ…』何て書いてあるワケ?」

「『心よ原始に戻れ』だよ。」

「げんし…オリジンってこと?」

「まァ意味としちゃあそれが一番近いかな。」

「うわ、漢字ばっか…」

「だから楽譜渡したんだよ。それじゃあやってみっか。」

 

 

それから当日まで毎日、3人と演奏の練習をした。

この中で一番厄介だったのが、最悪なことにアスカだった。彼女、おっそろしい程音痴で、それの矯正に1週間も消費した。恐ろしすぎる。

 

『もっと音をよく聴いて声出してみて。…はい』

『ア~!!(超絶外れ音)今度こそどうよ!?』

『耳きちんと聴こえてる?』

『うっさいわね!!!!!!!』

『ああ悪かったよ!シンジ頼む、俺じゃ無理だ!』

『は!?僕に押し付けないでよ!!』

 

まあ、結果的にはこれのお陰で2週間の見積もりが1週間になったんだから御の字だ。今度からアスカの面倒なトコは全部シンジに押し付けよ。

 

レイに関しては俺の思った通り、センス抜群だった。…いやいや、惚気じゃないし贔屓じゃないって。すぐ音を覚えるし、曲のリズムを掴むのも早い。でもまだ「弾く」ってのと「聴く」ってのは訓練が必要だな。

 

『だいぶ鍵盤を押さえるのは上手くなったな。でもまだ「弾く」にゃ至ってない。そこはきちんと音楽を「聴く」訓練しような。』

『やっぱり、それが未だに掴めない。何かを聞いても、どう感じたらいいのかが…』

「そうか。それじゃあ単純な曲で一回やってみよう。「きらきら星」を弾くからさ、聴き比べしてみて。」

 

俺は曲を二回、一回はただ鍵盤を叩くだけ、二回目は情景をイメージして弾いてみる。こいつならどうだ?

 

「どうだった?」

「最初の方は、何だか無機質…そんな風に感じたわ。二回目はそうじゃなかった。」

「上出来。レイの弾き方は、まだ俺が一回目にやったようなのなんだ。そうだな…それならさ。朝と夜、散歩してみない?」

「散歩?」

「そ。色々なのに触れることができれば、その分世界は広がるからさ。やってみよ?」

「ええ。」

 

 

 

それとは別に、誰にも言っていない用事も作った。こないだの俺の騒ぎ、多分誰かに相談とかそういうコトで解決するような生易しいモンじゃない。

練習開始から二週目、エヴァとの直接シンクロテスト、クロッシング影響実験を終えた後、俺はアークの中にまた残った。

再度アークと繋がり、コアに呼び掛ける。

 

「今日も頼む。」

 

-わかったわ。-

 

意識に集中すると、身体の感覚が先端部から消えていく。その全てが消失した後に目を開けた時、俺は沈没船の底で鎖に繋がれていた。コア曰く「俺自身の心」だと言っていたが、最初はそれに混乱し、数十秒と意識を繋げることができなかった。数日でそれには慣らしたが、今度は「影嶋サヤ」と名乗る、完全に俺が女装したときの顔をした女が出てきたもんだから当然混乱し、また接続を切ってしまった。

そんなこんなで一週間くらいかけて精神を慣らし、今日はやっと対話できそうだ。

 

『やっと話せるね、エイジ兄さん。』

 

「兄さん呼ばわりはやめてくれ。だいたい、何でお前が俺の中に居るんだ。」

 

『そりゃあ兄さんがそんな感じに自分を縛り付けてるからだよ。それに、あの子らの全部を背負おうともしてる。兄さん、システムを通してくるフィードバックに対してフィルタもかけず直接受け取ってるでしょ。そんな事してたらいつか兄さんが壊れちゃう。だから私がそのストレスを発散させてあげてるの。』

 

「それが俺の役割なんだよ。エヴァの受領が叶わない以上、俺はシステムを使って後方からバックアップするしかないんだからな。」

 

『そんなに前に出たいのならさ、レイちゃんに正直に言えばいいじゃない。「俺が零号機に乗るから、もう戦場に立たなくていいんだよ」って。』

 

「そんな簡単に上手く話が通るとは到底思えないな。そもそもレイの意思に反する。今回のクロッシングで伝わってきたんだよ。レイは『俺にもうこのシステムに乗って欲しくないから、エヴァに乗って戦う』って、そう思ってるんだ。」

 

『互いに何も面と向かって言わないままじゃずっとすれ違ったままだよ、兄さん。それにそんなんじゃあ兄さんの意志が無いじゃないさ。』

 

「俺がやるべき事はレイを、パイロット全員を生かす事だ。その過程で俺がどうなろうと構わない。パイロットが…レイが生きているのなら、それでいいんだ。」

 

『嘘よ!兄さんはレイちゃんと一緒に生きたいと思ってるのに、どうして―』

「俺のように汚れた大人とずっと一緒に居ちゃダメなんだよ!俺はお前みたく子供にゃなりきれないんだから…!」

「兄さん…兄さんはどうして、そんなに自分を縛り付けるの?

大人だからなの?そんな大人って何なの?レイちゃんの気持ちをきちんと考えたことはあるの?そんなの自己満足だよ!」

 

「だからだよ……俺はその事に気付いてた。事実、そういう態度を取らざるを得ないのが苦痛だよ。でも、それが今の俺のやるべき事なんだ。その苦痛があったとしても、耐えなきゃなんないんだよ。」

 

「そう言って…そんな風に逃げてちゃダメ!レイちゃん、本気で兄さんの事を心配してるんだよ!?いつもそうやって独りで全部背負い込んで、相談とか、ただの愚痴だけでもいいのにって、ずうっと悲しそうな目をしてた!兄さんも知ってるでしょ!?どうしてよ!」

 

「俺は決めたんだ…あの日以降、レイには弱いところは絶対に見せないって。あの時、本心を言った時…拒絶されるのが怖くて仕方なかった。俺は脆い存在だって思いたくなかったし、これ以上レイに思わせたくなかった。認めてしまったら、レイがもっと遠くへ行ってしまいそうな、そんな気がするんだよ。」

 

『好きだから、この距離を保ちたいっていうの?』

 

「ああ、これ以上深い関係になりたくない。俺はそう思ってる。」

 

『…どうしても認めないのね。教えてあげる、本心はそうは思ってないわ。

兄さんはレイちゃん自身が欲しいんでしょ?求められたいんでしょ?』

「な!?俺はそんな事は思っちゃない!!」

『嘘。交わりたいと、一つになりたいと思ってるのに。』

「やめろ!俺の心を穢すな!!」

 

『何をヒステリックになってるの?兄さんは私、私は兄さんなのに。

彼女を、綾波レイを、穢したくてしょうがないんでしょ?』

 

「接続終了!!これ以上俺を惑わすな!!!!!」

 

船底からアークのプラグ内に引き戻される。唐突に精神攻撃に切り替えてきやがって、最悪だ。今まであれだけ押さえ込んで、自分の中から排除し切ったと思っていたのに。それを突き崩しやがったのが自分自身だというのは何とも皮肉なことだ。

 

-どうだった?彼女とのお話。-

 

「最悪だったよ。26年生きてて、2番目にゲロなイベントだった。」

 

-1番じゃなくて2番目なのね。-

 

「ああ。俺にゃあの記憶ほど最悪なモノはないよ。」

 

-そう。…来客よ。外に出て、お話してあげて。-

 

「ああ。」

 

LCLが排水され、 上部ハッチが開放される。プラグから飛び降りると、まだプラグスーツのままのレイが居た。それも酷く動揺した顔で。

何で、何でよりによってこういう時に限ってレイなんだ?こういうときくらいミサトが悪戯っぽい顔で俺の前に現れて欲しかったのに…。

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

今日もエイ君は何も言わずにアークの中に入って何かをしている。

どうして何も言ってくれないの?信用できないから?恥ずかしいことだからなの?

わからない。だから、アークの表示パネルに触れてしまった。

どうしても知りたかったの。彼が何をしているのか。

 

「俺がやるべき事はレイを、パイロット全員を生かす事だ。その過程で俺がどうなろうと構わない。パイロットが…レイが生きているのなら、それでいいんだ。」

『嘘よ!兄さんはレイちゃんと一緒に生きたいと思ってるのに、どうして―』

「俺のように汚れた大人とずっと一緒に居ちゃダメなんだよ!俺はお前みたく子供にゃなりきれないんだから…!」

 

エイ君の声とサヤの会話が聞こえてくる。

嬉しいのか、悲しいのかわからない感情が私の中を駆け巡る。言葉にできなかった。あの時私を守ってくれたのは、自分はどうなってもよかったからだっていうの?

その後も、ずっとエイ君は自分を殺してでも私を守るって言っていたけれど、素直に受け取れるわけがない。だって、エイ君が居なくなったら、私、どうやって…。

 

『兄さんはレイちゃん自身が欲しいんでしょ?求められたいんでしょ?』

「な!?俺はそんな事は思っちゃない!!」

 

その言葉と同時に急激にプラグ深度が高まる。部屋に響く警告音。

 

「イヤ!行かないでエイ君!!」

 

私の叫びはこの部屋に虚しく響くけれど、インテリアは尚も引きずられていく。

 

『嘘。交わりたいと、一つになりたいと思ってるのに。』

「やめろ!俺の心を穢すな!!」

『何をヒステリックになってるの?兄さんは私、私は兄さんなのに。

彼女を、綾波レイを、穢したくてしょうがないんでしょ?』

「接続終了!!これ以上俺を惑わすな!!!!!」

 

その叫びと同時にプラグの移動が止まり、初期位置まで引き戻される。その後、少し誰かと話してから彼はプラグから出てきた。

私を見て、彼は酷く驚いた顔をしていた。こんな顔、ほとんど見たことがない。

 

「まさか…聞いたのか?」

「…何で、何で何も言ってくれないの?」

「聞いてたんだろ?それに…何でもかんでも訊かないでくれ。」

「そんな、私は心配で―」

「レイ、自分の出自を俺にしつこく訊かれたら、レイは俺のことをどう思う?」

「そ…それは。」

「それと一緒だ。先に帰るよ。」

「待って!」

 

彼は何も言わず、そのまま行ってしまった。この…きょりかん?が私にはわからない。私、エイ君を傷つけちゃったのかな…。

いつも笑いかけてくる彼が、一切取り繕うことない険しい顔をしているように見えて、とても怖かった。

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