ずっと円満よりちょくちょく喧嘩やってた方が好きです(隙自語)。
「このデカい目玉が使徒本体ですか。こいつ、一発で確実にここに来れるようご丁寧に誤差修正までやってる。随分利口なヤツですね。」
「新型N²航空爆雷も、まるで効果がありません。その後の消息は使徒による電波撹乱のため不明です。」
「来るわね、たぶん。」
「次はここに、本体ごとね。」
「南極の碇指令は?」
「使徒の放つ強力なジャミングのため、依然連絡不能です。」
「エイジ君、あなたはどう見る?」
話を聞きながらゼリー型食糧を食ってると、俺に葛城一尉から話を振られる。
「敵はATフィールドを利用した超質量の使徒爆弾つったところですか。俺は爆発物なんて扱ったコト無いし、あんな規格外の大きさの相手…。質量がこれでも、受け止める以外の現実的な防衛手段が思い付きませんね。現実的って何だよ。」
「奇遇ね、私も同じこと考えてたのよ。」
「あなたたち…自分で何を言っているのかわかっているの!?失敗すればエヴァを全て失うのよ!?」
「でも、もっと安全な攻撃方法も無いですよね。現在のNERVが持っている武装では成層圏までの安定した狙撃方法がありません。第二次ヤシマ作戦をしようつったって時間が無さすぎる。それならエヴァのATフィールドを最大展開して使徒を受け止める他方法がない。更に俺がクロッシングでブーストをかければ磐石です。どうですか?」
「…MAGIには提出するわ。でも二人とも聞いて。奇跡を待つより地味な努力よ。やはりドグマの機能退避とエヴァの保全を優先すべきです。」
「確かにそうね。でも私達には時間がない……起こすのよ。私達の手で、奇跡を。」
「葛城一尉!!」
「悔しいですけど、今回は俺も葛城一尉に賛成です。どっちみち失敗すりゃあ人類滅亡ですからね。それに赤木博士、前にも言ってましたよね。『確率はゼロじゃなきゃ可能性はある』って主旨のことを。俺は今回はそれに賭けます。」
「エイジ君…。」
赤木博士は不機嫌そうな顔をしていたものの、最終的には渋々了解を取った。
「わかりました。そこまで言うからには全力でサポートさせてもらいます。」
「ありがとうございます。行きましょう、葛城一尉。」
「そうね、エイジ君。」
俺はコーヒーを一気飲みし、
ケイジまでの移動中、俺はアークからの情報をもとに三人で作戦会議をする。
「アーク、俺との接続開始。葛城一尉が持ってるタブレットと接続。」
「…わお。アークって便利ね。」
-はじめまして、葛城ミサト。-
「この声…レイなの?」
「いいえ、彼女はレイじゃないですよ。よし、それじゃあMAGIからのデータをこっちに寄越してくれ。」
-わかった。今回、二人して無茶苦茶なプランを立てたそうじゃない。影嶋エイジも葛城ミサトの大胆さが移ってきた?-
「んなワケ。後さ、フルネームじゃなくてせめて下の名前で呼んでくれ。冗長になる。」
-わかったわ。…これがデータと成功確率よ。エイジ、どう見る?-
「思ったより確率が高いな。10%もあるとは思わなかった。」
「落下予想ポイント、出せる?気候と降下角度、誤差修正込みで。」
-はい。これがMAGIの計算結果よ、ミサト。あんなに大きくても、思ったより風に流されるのね。-
「なるほど…現在のシンクロ率データは?」
-シンクロ率は全員安定してる。今のところアスカがトップよ。-
「それなら…精度を最大にして落下予想ポイントを絞って。更に流される可能性のある降下ポイントを重ねて表示。受け止める時間を考慮したエヴァ全機の行動範囲を表示させて。…ありがとう。不確定ポイントを考慮しつつ確定ポイントと重なるポイントに弐号機を配置。更にそこから確定ポイント内の円周上に弐号機と等間隔で零号機と初号機を配置させて。これのシミュレーションは?」
流石、作戦本部長をやってるだけあって判断と配置が素早い。俺にはできない事だ。アーク側も要求と計算の処理に時間がかかり、表示までに少し時間がかかった。
-………成功確率、30%まで上がったわ。-
「ふう…私にはこれが限界。あとは皆の頑張り次第と言ったところね。さ、伝えに行きましょう。」
「こういう所だけはホント流石だ…。」
「”だけ”は余計よ。」
ケイジにて俺らは作戦指示を始める。概要を伝えた後は案の定、阿鼻叫喚といった感じだった。
「えぇ~!?”手で受け止める”ゥ~!?」
「そうよ。落下してくる使徒に対し、エヴァのATフィールド全開で受け止め、その隙に目標のコアを破壊するの。今回のオペでは昨日のような呼吸の合った連携が必要よ。」
「連携なんて必要ない!あたし一人で殲滅させるもん!」
「無茶言わないでくれ。この広大な落下エリアに対して、たった5分しか動けないエヴァでどうやって対応しきるってんだ。それに受け止め役、攻撃役で最低でも二人は必要なオペだぞ、それを一人でやるってのは無理だ。」
「ちいっ…。」
「この配置の根拠は?」
「各パイロットの練度、シンクロ率と落下予想データから、最も最適な案を提出したわ。成功確率は3割だけど、これが最も高い数字よ。」
「またあたしが一番リスクが高くて、バカ波が一番安全なとこ…毎回いいわよねぇ、ヒイキにされてる零号機パイロットさん?」
「む、エイ君はそんな事考えて―」
「二言目にはエイ君エイ君って鬱陶しいのよ!アンタら付き合ってるからって、毎回露骨なことしないでちょうだい!」
「アスカ、こんなところで喧嘩しないでよ!」
「何よバカシンジ、あんたまでコイツらの肩を―」
「原案は私よ!私達はね、アスカの実力を信頼してこの配置にしてるの。それをわかってちょうだい。」
「はっ、どーだかね…。そういえばミサト、影嶋とは長いのよね?それな―」
「いい加減にしろアスカ、これ以上駄々をこねるのなら本当にコクピットから叩き出すぞ。俺のように後ろから見てるのが好きなら勝手にしろ、弐号機は俺で出る。それが嫌なら、黙って自分の責任を果たせ。」
今はわざとキツい言い方をした。このまま永遠に我儘を言われても困るしね。
「わかったわ…やってやるわ!やればいいんでしょ!」
「あ、ちょっとアスカ!」
「…私も行きます。」
ケイジから勝手に解散していき、各々のエヴァへの搭乗準備を始める。今までにない位、最悪な出だしになったな。ミサトは頭を抱えて唸る。
「どーしてこうなっちゃうのかしら…。」
「俺らがメンタルケアをサボったからでしょうね。俺もシステムルームに行きます。」
-惣流・アスカ・ラングレー-
みんな嫌い、大っ嫌い。
ヒイキされてるファーストも、後方支援しかしない予備のヤツも、ソイツらを擁護する奴等も。
どうして?どうして皆あたしのことをちゃんと見てくれないの?
あたしはスーパーパイロットなのに、どうして…?
[クロッシングスタート、最後の命令だ。スタート前カウント0030からクロッシングを切る。それ以降は受け止め、コア破壊のタイミングでクロッシングによる援護を行う。いいな?]
[わかった。]
[了解。]
援護なんてどうせ寄越さないでしょ。いいわよ、一人でやるから。
[いいな、アスカ。]
「あたしは何だっていいわよ!うるさいわね!」
頭の不快な感覚を無理矢理押しやる。残りカウント0045、もうすぐね…。
大丈夫よ、アスカ。私は誰にも負けない、誰よりも上にいるスーパーパイロットなんだから…。
カウントが0000になると同時にミサトのドスの効いた号令が飛ぶ。
[エヴァ全機、スタート。]
号令と共にアンビリカルケーブルが解除され、全てのエヴァが全力でポイントに走り出す。何度も目まぐるしく更新されていく指定ルートを走りながら、絞られていく予測落下ポイントへ向かう。これは…あたしが一番!
「絶対…絶対にあたしが倒す!フィールド全開!!」
先ずは両手で使徒を受け止める。フィールド自体は体勢に影響されないから、ここから膝を着くまでに何としても決着をつける…!
左手だけを使徒に向け、右手はプログナイフを逆手に装備。刃先を露出させ、思いっきり使徒のフィールドへと突き立てる。
「こんな目玉にあたしが…スーパーパイロットが負けてらんないのよ!!」
更に刃先へ力を込めると、フィールドを貫通する。よし、これなら…
そう思った瞬間、上方向からの強烈な力が弐号機を襲い、ナイフを取り落とすどころか両膝まで着いてしまう。しまった、これじゃあ押し潰され―
[クロッシングスタート!しっかりしろアスカ!!]
「な!?余計なコトを」
[んな事言う余裕があるならさっさと立ち上がれ、潰されるぞ!]
一番助けてほしくないヤツに助けられた。そんな…
[アスカ!?クソ、弐号機コントロールジャック!]
弐号機とのシンクロが途切れ、プラグ内壁が写し出される。あたし、結局何も…何も……!
暗くなったプラグ内で、膝を抱えることしかできない。
「たすけて…加持さん……。」
-影嶋エイジ-
これは俺のジンクスなのだが、悪い予感ってのは想像した時点で8割方現実になる。
出撃前からアスカの様子がおかしかったから、いつも以上にクロッシング時は気を遣った。それでも無理矢理接続切られたけど。
にしても、何がキッカケなんだ?昨日はこんな様子はなかった。2連戦のストレスでの暴発…いや、それを考えるのは後だ。
俺の今回の役割は作戦指示じゃなくて、クロッシングによるパイロットのサポートだ。そこまで出番はない。
葛城一尉の指示で一斉にケーブル解除、スタートする。一尉の戦術眼と「女の勘」はこういう時は目を見張るものがある。ドンピシャで弐号機が一番乗りした。アスカ、無茶しないでくれよ…?
だが、やはり現実はそう上手くはいかない。弐号機は片手でフィールドを維持し、ナイフを手に取る。アスカは本気で一人でやる気なのか!?
「バカ、無茶するな!!」
敵の軌道が若干風に流されてるせいで、残り二人の到着が遅れている。稼働時間ギリギリではあるけれど、何とかやれそうだな。使徒の質量により、弐号機が両膝を着いた時点で危険と判断、クロッシングによる援護をする。
「クロッシングスタート!しっかりしろアスカ!!」
[な!?余計なコトを]
「んな事言う余裕があるならさっさと立ち上がれ、潰されるぞ!」
意識をアスカにリンクさせパワーを上げようとするが、それ以上にアスカのシンクロ率低下が激しくなっていく。
「アスカ!?クソ、弐号機コントロールジャック!」
このままだと本当に弐号機がアスカごとお陀仏になりそうだったから、無理矢理操作権を奪い、弐号機を動かして体勢を立て直す。状況判断としては正しいのだろうが、アスカの感情も共有している以上俺にまでネガティブな感情が来る。
[ごめん、お待たせアスカ!]
[やっと追い付いた!]
「遅いぞ!クロッシングスタート、一気に決めろ!」
シンジ、レイの順で使徒にたどり着き、俺の隣に来て使徒を更に押し上げる。
シンジが落ちていたナイフを手に取り、敵のフィールドを裂いてそれを押し広げ、締めはレイのナイフの一突きで使徒は殲滅された。
爆発し終わった直後に内部電源が切れたようで、パイロットとのクロッシングの感覚だけが残る。
終わったの…。あたしは受け止めただけ。他になにもできなかった。もう、あたし………。
一気に負の感情が押し寄せる中、他パイロットからの安堵や喜びといった感情まで同時に流れ込み、俺の頭の中を掻き乱す。胃の中には殆ど何も入っていないのに、強烈な吐き気が俺を襲う。
「うっ!?……はー…アーク、今すぐ全パイロットとの接続を切れ!」
-はい、お疲れ様。……大丈夫?全然嬉しそうじゃない。それに、泣いてるの?-
「クロッシングでアスカの感情を感じ取ったろ?そういうことだ。この涙は俺の感情に起因するモンじゃないよ。」
-こういうのを「プライドをズタズタにされる」って言うの?-
「こうどストレートに言語化されると俺までキツくなるな…。多分アスカは、エヴァに乗れることが自分の全てだと思ってるんだ。だからワンマンプレーをしてでも自分の居場所を守りたいんだろ。この考えを改めて貰わないと、今後どうなるかわかったもんじゃねぇ。コクピットどころかNERVからも叩き出されるかもしれないしな。」
-不安なのね、アスカのこと。-
「そりゃあ同じパイロット仲間だしな。だいたいこんな運命を14歳の子がするって時点で残酷以外の何物でもねぇよ。」
-エイジって、自分で思ってるよりアスカの事が好きなのね。ここまで考えてあげてるなんて、ただの仲間というだけならなかなかできないと思うわ。-
「バカ言っちゃいけない。こういうのは大人の義務みたいなもんだよ。接続終了、俺は上がるぜ。お疲れ。」
-お疲れ様。-
プラグのハッチが解放され、いつも通り戦闘記録が残っているのを確認してから部屋を出る。ドアが閉まろうとしたその時、廊下の電気が落ちた。停電か?でも暫く経てば復旧するだろ。
………おかしい、15分経っても復旧しない。アークからの応答もないし、下手に動く方が危険かな。異常事態だから、念のために銃を取り出し、その下に電灯を着けておく。自分の位置を自分で知らせる諸刃の剣だが、こんな暗い中じゃあ仕方ない。ギリギリまで消灯しておこう。
後は、復旧を待つだけ…。
-惣流・アスカ・ラングレー-
影嶋に、あたしの心を読まれた。
心に入ってきて、あたしを無理矢理動かそうとした。
弐号機を奪われた。
世界で、唯一の居場所を……。
泣きたい。
でも人前では泣いてはダメ。
怒りをアイツにぶつけたい。
そんな小さいこと、してはダメよ。あたしは大人なんだから。
一人で生きるんだから。
一人で……
ひとり
Einsamkeit
Hilf mir.
プラグの外にいても中にいても、同じ喪失感を感じる。あたしって、全然特別なんかじゃないんだ。今まで4回もチャンスがあったのに、どれもフイにしてしまった。魚みたいなヤツも、分裂するヤツも、毛虫から羽虫になったヤツも、あのバカでかい目玉のヤツも…。
完全にあたしだけの力で倒した使徒なんて一匹たりともいりゃしない。スコアは全部、バカシンジとファーストに吸われてる。その上、心に侵入してくるヤツまで居るのに。
あたしがバカだった。文化祭なんて幼稚なものに浮かれて、影嶋に心を許しそうになってた。あの飄々として、憎たらしい口調のアイツに…。
学校でも、話題に真っ先に上がるのは影嶋のことばかりで、次に名前が上がるのはファースト。ケンスケからディスクを貰いながら昨日の事を誉められても、ちっとも嬉しくなかった。
エースの私が、影嶋に負けた…。あんな後方支援しかできない、自分のエヴァも持ってないヤツに…。
今のあたしは、ケイジの隅で膝を抱えて泣くことしかできなかった。
「アスカ、大丈夫?」
「…何よ、アンタもあたしを笑いに来たわけ!?」
「そんなんじゃないよ。いつも一番乗りで帰ってくるのに、今日はこなかったから心配になって来たんじゃないか。立てる?」
「アンタなんかの手を借りなくたって自分で立てるわよ!あたしはもう行く!」
「行くって、こんな暗い中を?」
「足り前でしょ!?ったく、あたしを何だと…!?」
「アスカ!」
無理矢理涙を拭っても、目のぼやけは治らなかった。階段を降りようとした矢先に足を踏み外し、転がり落ちそうになるのをシンジに止められる。
「あ、危なかった…。」
「………いつまで手ェ握ってんのよ、エッチ。」
「へ!?ご、ごめ」
「あたし、よく見えないからシンジがロッカーまで連れてって。」
「あ、うん。…目、どうしたの?」
「よくわからない。ずっとぼやけたままなの。」
-影嶋エイジ-
…やっぱり、何度考えてもわからない。俺はアスカとどう接すればよかったんだ?キッカケなんて、何度もあった。でも、その度に俺は逃げていたような気がする。それは俺の経験不足が原因なのはわかるんだが、それでも…何かできたはず。
霞ちゃんはこんなことなかったのに…。
俺がレイを贔屓して、戦線から離してる……そう積極的に仕組んだことは「まだ」一度もない。でも、最近の戦闘訓練も実戦も、確かにレイには狙撃役やサポートにばかり回して、緊急時には俺が動いている。そう文句を言われるのも無理はないか。
「無自覚ほど怖いものはない、か…。」
「どうしたのエイ君、また悩みごと?」
「レイ、よくこの暗い中ここまで来れたな。」
「ここの地形、体が覚えちゃってるから。そうそう!今日初めて私がトドメを刺したの。」
「そうか、そうだったな…。」
「嬉しくないの?もっと喜んでくれると思ってたのに。」
「ごめん、今はそんなこと考える余裕が―」
「もしかして、アスカの事を考えてるの?あんなの、ほっとけばいいじゃん。いっつも妙に私らに突っかかってきちゃってさ、私最初からあまり好きじゃなかったの。人形呼ばわりされたし。エイ君もそうでしょ?アスカのこと苦手って言ってたしさ。」
「レイ、そういう陰口ってのは思っても口にはしないもんだ。それに俺は…アスカのことを苦手だとは思っても嫌いだと思ったことは一回たりともないよ。でも、未だに俺はアスカのことを知らなすぎてる。苦手だからって真正面からぶつかるのを避けて……ほんと、しょうもないよ…。」
一応断っておくが、これは俺の本心だ。でも、だからと言って彼女に特別な感情を持っているかと訊かれればそれは違うけど。でもその言葉に不服なのかレイが語気を強くして聞いてくる。
-綾波レイ-
「ねぇ、どうしてそこまでアスカのこと気にするの?なんだか私より気に掛けてない?」
「俺は
「へぇ~。そーゆう理由つけてアスカの方を優先させるんだ。」
「おいおい、別に俺はそんな事思っちゃ―」
彼が喋っている途中で館内の電源が復旧する。なんだか、聞いてて疲れてきちゃった。
「もういい!先帰る。」
「あ、ちょっと!?」
なんだか、嫌な気分。折角私がいつも側にいるのに、話の内容はアスカ…いや、”セカンド”のことばかり。あの子、昔エイ君が揶揄して言った「スーパーパイロット」って言葉を何故か気に入っちゃってるし、今日だってエイ君はアスカに付きっきりだった。
もう私のことどうでもよくなっちゃったのかな。それならもっと色んなことしとけば……
着替えてロッカーを出ようとすると、入れ替わりでセカンドとすれ違う。
「あ、アス…「セカンドさん」じゃない。」
「何よファースト。そんな嫌味、ファーストらしくもない。」
「良かったわね、エイ君に私より心配にされて。」
「はぁ?一体何の話よ。」
「気に入られてる彼から直接聞いたら。さよなら。」
「ちょ、待ちなさいよ!」
そんなにアスカが好きなら勝手にすれば。
はじめて、こんな感情で涙が出た。
-惣流・アスカ・ラングレー-
何だったのアイツ、普段無いくらいイラついて…。にしても予備のヤツがあたしのことを気に入ってるってどういうコトよ?あんなあたしに当たりが強いのが…?
「ちょっと待てよレイ!あ゛~!何でこうなるんだよ…。」
噂をすればってヤツかしら。
「ちょっと予備、どういうつもり。」
「は?唐突にどうしたんだアスカ。」
「は?じゃないわよ!あんたにはファーストが居るのにあたしにまで手を出すつもり!?さいってー…!」
「ふ…ふ…ふざけんな!!レイに何を吹き込まれたのか知らねぇけど間違いなく9割5分は話を盛られてるぞ!?」
「ふーん…?どーかしらね。それとも何、ファーストと協力してあたしを蔑もうって話なの?あたしを心配してるとかそんな安っちい感情でさ。」
「勘弁してくれ、そんな器用なコトできねぇよ。だいたいほんとどうしたんだよ今日はさ。妙に俺らに当たりが強かったじゃねぇかよ。」
「別に。あんたには関係ない。」
あたしは目線を外すが、予備のヤツは視線を外さない。
「もちっと感情を隠す修行をしたらどうだ?俺への敵意が駄々漏れだぞ?」
「…それも心を読んでるわけ?」
「まさか、アスカは言葉とは真反対に行動はわかりやすいからな。それにクロッシングなんて見れるのは表層だけだっつーの。もういいか?俺も帰る用意を―」
「待って。」
「…?どうした?」
また今までの関係に戻る前に、どうしても聞きたいことがあった。彼のスーツの袖を掴んでいた。
「影嶋、本当なの?あたしのことを心配に思ってるとか、嫌いだって思ったことがないって。」
「あそこでの会話、聞いてたのか。」
「どうなのよ。」
互いに動きが止まる。沈黙がしばらく続き、周囲には何の音もしない。無視するなら歩き去るのだろうが、彼はそうしなかった。
影嶋は振り返らないまま回答をする。
「………たり前だろ。俺はアスカのことを、他の誰よりもその実力を信頼してる。だからこそ、俺はアスカに重要な役割を任せられるんだ。一昨日の囮役も、今回の広域カバーも。」
「じゃあ、どうして出撃前あたしにあんなこと言ったの。あんな…あたしを否定するような……そんな、こと…!」
あんなに人前で泣かないって決めてたのに、あたし、また泣いてる。
「……。」
「答えてよ!」
「…知らなかった。アスカが俺に、こんなに劣等感を抱いてるなんて。クロッシングで初めて、このことを知った。この程度の言葉、普段通りのプライドではねのけてくれると、そう思ってた。ただただ地雷を踏み抜いたんだよ、俺はさ。」
「嘘…嘘!そんなネガティブなことだけじゃないんでしょ!?本当の事を教えなさいよ!」
やっと影嶋は振り返って、私の腕を袖から外しながら目を見て言う。
「アスカ、やっぱり今日はどこかおかしいぞ。もうさっさと家に帰って美味いモン食って寝ろ。やっぱ連戦で疲れてストレス溜まってんだろ。な?」
「そんな事言ったって、逃げさせはしないわよ!?ちゃんと言いなさいよ!」
今度は彼の手首を掴もうとしたが、彼はスッと離れて、手の届かない範囲に行ってしまう。
「おやすみ、アスカ。俺はまだやることあるからさ。」
「待ちなさいよ!待って…よ……。」
あたしと話するまで帰る気でいた癖に…。あたしもどうして、こんな寂しい気持ちが出てくるの…?シンジと一緒にいれば、少しは忘れられると思ったのに。
今はあんなキライだった影嶋がいなくて、寂しい……。
その場に座り込んで、両手で顔を覆って、声を出して泣いた。