ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE3:交流

[準備はよろしくて?]

 

「いつでも。」

 

[第一次接続、開始]

[主電源コンタクト]

[稼働電圧、臨界点を突破!]

[フォーマットをPhase2に移行]

[パイロット、初号機と接続開始]

[パルス及び、ハーモニクス…若干の揺らぎがあります]

[エイジ君、大丈夫?]

 

この不快感、誰か別の存在が自分の中に入ってきているような感覚。

「拒絶するのも力だが、受け入れるのもまた力のひとつだ」と聞いたことがある。

受け入れろ。拒絶するな―

少しずつ、不快感が引いてくる。

 

[パルス、ハーモニクス共に正常に回復。シンクロ問題ありません]

[オールナーブ、リンク終了]

[中枢神経素子に異常無し]

[1-2590のリストクリア]

[絶対境界線まであと2.3]

[1.8]

[1.1]

[0.7]

[0.5]

[0.4]

[0.3]

[0.2]

[0.1]

[ボーダーラインクリア!]

[初号機、起動!引き続き、連動実験に移行]

 

 

目を開くと、普段のシンクロ実験では見れない外の光景がプラグ内壁に映っている。

 

「この感覚…起動できたんですか?」

 

[ええ、そうよ。あなた、なかなかの逸材ね。]

 

「そいつぁどーも。因みにシンクロ率はどうでした?」

 

[23.95よ。やっぱり少しだけ落ちるけど、なかなかの好成績ね。]

 

「そうですか。」

 

[あらー、いい成績が出たのに嬉しくないの?]

 

「実戦を求められるものに対して、動かせただけで喜ばれるのはよくわかりませんね。」

 

[今はこれを起動できる人が増えただけでも大きいのよ。]

 

「そんなもんですかねぇ。」

 

[それじゃあ、このままインダクションモードに移行。碇指令、お疲れさまでした。]

 

[ああ。]

 

「指令がいらっしゃるんですか?」

 

[…何だ。]

 

「改めて、よろしくお願いします。こう自分の口から言うのは初めてでしょう。」

 

[ああ。]

 

なんだぁこの人。俺のことを快く思ってないな?さては。

 

「愛想悪ィなあの指令。」

 

[どうしたの?]

 

「いいえ、失礼しました。このモードの説明お願いします。」

 

[このモードは銃火器のトリガー操作を優先させるモードです。シンクロは優先されず、バーチャル空間での戦闘訓練を目的としています。]

 

「わかりました。」

 

[それでは、ターゲットを仮想空間に表示します。エイジ君は、出現したターゲットに対して射撃で応戦、これを破壊してください。]

 

「わかりました。少し好きにやらせてください。」

 

円形の的が出現する。とりあえず最初は適当に動かしながら撃ち、その後は落ち着いて狙い撃つ。その他にもタップ撃ちとかもやってみた。銃の構えとか、手に取る動作なんかはある程度モーションが組み込まれているらしい。たしかF91でも「ライフルを取るときは手を近づけてから、後はオートで」なんて言ってたっけ。

 

「やっぱ、弾ってバラけるんですね。」

 

[ゲームのように、全部の弾がまっすぐ進むことはあり得ないわ。ターゲットに近づけば精度は高くなり、逆に遠くなれば精度は低くなります。]

 

「弾の集弾率ってやつですよね。」

 

[そーよ。どうやらゲームとかで指切りは知っているようだし、これなら大丈夫そーネ。]

 

指切り?ああ、タップ撃ちのことか。その後ガチャガチャやっている内に、ある程度の操作は理解できた。ゲーム感覚でできてしまうのが困る。

 

「これじゃゲームですね。やってることFPSですし。」

 

[あら、これは訓練よ?]

 

「そりゃそうですけど、やっぱ現実に『これが敵だ!』ってのが未だに無いですから。」

 

[エイちゃんの言うこともわかるけど、常に正確に撃てることも重要よ。頑張ってね。]

 

「はい。」

 

暫くこのシステムで訓練…いや、遊んでいたという表現の方が正しいかもしれない。どうしてもやっていることはFPSの射撃練習場だ。自分の中に明確な敵が存在していない。だからゲームにしか感じない。使徒が出てくれば自然とそんな感覚はなくなるのだろうが、今はそうにしか感じなかった。

 

 

 

 

シンクロテストを終えた後、今まで以上の入念な精密検査がされた。なんかシンクロ以降しばらく気分が悪かったが、それは「精神汚染」という現象のようだ。おっかない言葉だが、エヴァとのシンクロテストを繰り返していけばそれに慣れていくらしい。んでも、他人が入り込むってのはなかなか気分がいいもんじゃないな。

 

部屋を出ると、綾波が扉の前にいた。

 

「よ、俺はこれで帰るから。」

「待って。これ。」

「あ、そいや箱渡しっぱだったな。ありがと。」

…おいしかった。

「そっか、よかった。じゃな。」

「さようなら。」

 

ケースを受け取り、俺は帰路につく。

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

昼、半ば強引に渡された影嶋君のお弁当。

 

はじめての、錠剤以外の食事。

 

恐る恐る手を伸ばして、一口。

 

「…おいしい。」

 

普段の食事からは感じられない、味覚。

 

はじめての感情。

 

また、食べてみたいと思った。

 

でも、彼に何か言いたかったけど、言えなかった。

 

どうしてなの…?

 

この、言葉にしたい感情は何…?

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

葛城さん、今日は残業か。夕食は食べて帰るって言ってたし、なんか久しぶりに一人だけで食事をするような感覚がある。…正直、最初はそこまで友人なんていらないと思っていたが、思い出すより楽しい生活だ。なんか、バカ騒ぎをしたり、友人をからかってみたりすると、昔の楽しい思い出が出てくるような気がする。やっぱ人間、悪い記憶ばっか先行して、楽しかった記憶ってのは後回しにしがちのようだ。

 

「クワァーッ。」

「あ、悪いな、お前がいんの忘れてたわ。いつも通りビールと飯でいいか?ついでにこいつもあるぞ?」

「クワックワッ。」

 

ビーフジャーキーの袋を出すと喜んでいるように鳴く。用意をして、俺らは食事を始めた。

 

「いただきます。」

「クゥーッ。」

 

二人…いや、一人と一匹の静かな食事。ビーフジャーキーをもう一袋渡すと、物凄い勢いでかっぱらって食い始めてた。ペンペンはちとばかし飼い主に似てオッサンっぽいけど、動物ってのは可愛いし、人間にはない面倒くささがないからいい。

新聞なんかを読んでた時はドン引きしたけどね。

 

 

食事を終え、明日の準備をして寝ようとする…が、ふと頭に綾波のあの言葉が過った。

 

『おいしかった。』

 

……顔が赤くなるような気がする。我ながら青臭い感じはするけど、思い立ったが吉日って感じ。受け取らなきゃ6限くらいの授業中にこっそり食えばいいし、何ならバカ二人に押し付けるのもアリか。コンビニ行って食パン買ってこよ。中身は今日と同じのでいっか。

 

 

 

 

 

次の日。いつも通り弁当を食ってると、レイがこちらを振り向いてくる。

 

「ねえ、影嶋君。」

 

「ん?どしたレイ。う、これしょっぱすぎた…。

 

「お弁当…食べさせて。」

 

「へぇ?…ああ、それじゃこっちでいい?最近訓練続きで腹が減ってさ、夕方あたりに食おうと思ってたのがあるんよ。内容は昨日と同じ。…どう?」

 

「あ…ありが、とう。

 

「どういたしまして。」

 

俺も適当な嘘をさらっと言えるようになったなァ、悪い大人って感じだ。

綾波、最初は機械か何かと思ってたけど、やっぱ人間だよな。笑顔初めて見たけど、とても可愛いなァ…。

 

「エイジ?…何や?委員長の次は綾波かいな。そんなだらしない顔で眺めとるちゃうぞ!」

「綾波に弁当作ってやるなんて、委員長から鞍替えでもするのか?」

 

「はァ?おいおい、勝手なことを言うのもいい加減にしてくれェ?これは綾波から言ってきたんだぞ?」

 

「何やて!?あの堅物の綾波がかいな…。」

「こ、これは特大スクープだ…!さっきの笑顔の写真といい、高く売れるぞ…!」

「ケンスケ。」

「な、何だよエイジ。」

「売るのなら俺だけにしてくれ。高く買うぞ?」

「ええ~、こんな大スクープを当事者のお前だけに独占かァ…」

「嫌ならカメラを破壊して物理的にデータを消すが?あと、綾波の盗撮データもついでに消せよ?」

「…わかったよ。」

「ありがとう。今のは後でくれ。」

「強引やなぁエイジ…。」

 

そんな俺らのバカみたいな会話を余所に見て、綾波は俺の渡したサンドイッチを笑顔で食べていた。やべ…

可愛い。

可愛すぎる。

ついったでよく見た尊死しそうってこういうことなのかな?

 

 

 

 

 

放課後、音楽室。

 

「すげぇな。俺も練習しながら教えてたんに、もうここまで弾けるようになるなんて。正直こんな上手くなるとは思わなかったよ。」

 

「あ、ありがとう。」

 

「残りの時間でしっかり通しを練習すれば、本番でも全然大丈夫だよ。最近俺も忙しいし、本番に俺が伴奏できるとも限らないしね。

それじゃ、俺はこれで。ちっと野暮用があるからさ―」

 

「待って。ねぇ、手、見せて。」

「手?まあ、いいけど?」

 

掌を上に向けて手を差し出す。

 

「わあ…やっぱり大きい。手、合わせてもいい?」

「うん。…やっぱ女子の手はちっこいなァ。」

 

昔、何かで伴奏やってた女子とこんな感じで手を合わせたことがある。正直なにも感じなかったし、寧ろ俺は彼女らの指の細さに、女子らは俺の手の大きさに「いいなぁ~」と言っていた。

ちっとばかし、イタズラ心が働いた。

 

「なあ、こんなことしてるのバレたらトウジが泣くぞ?」

「へえっ…!?」

 

あ、案の定顔真っ赤にしてる。面白。

 

「か、影嶋君!?どうしてそれを…!」

 

「洞木さん、だいぶわかりやすい視線してるからね。ちなみにトウジはそのことはわかっちゃないぞ?」

 

更に顔が赤くなる。もうそろそろ逃げようかな。

 

「か、影嶋君~~~~!!!」

 

「やっべ、俺はもう逃げさせてもらうからな!さらばだあkじゃねぇ洞木君!」

 

「待ちなさいよ、このバカ!!!!あと廊下を走るな!!!!」

 

「人のこと言えたクチじゃねぇだろ!」

 

 

 

 

シンクロ実験場。ぶっちゃけここの正式名称が未だに覚えられない。

 

[エイジ君、最近いいことでもあったのかしら?]

[そうねェ、確かに前よりもいい顔してる時が増えたかも。]

 

「…もしかしなくても、表情(カオ)に出ちゃってますか?」

 

[ええ。そりゃわかりやすーく、ネ。]

[最近はレイとも仲がいいらしいじゃない。彼女のこと好きになったの?]

 

「まだそんなとこまで行っちゃないですよ。でも、彼女の笑顔って可愛いですね。」

 

[[え!?レイが笑顔!?]]

[あ、あり得ないわそんなこと…。]

[やるじゃないエイちゃん。そのまま頑張れ♪]

 

「勝手なことを…。」

 

でも、自分は笑いながら言っていた。

 

[いいわ、上がってちょうだい。お疲れさま、エイジ君。]

 

 

 

 

いつになく上機嫌な感覚がある。昼のレイの表情(カオ)を思い出してしまうからだろうね。可愛かったなァ、綾波。またあの顔見てみたい。

 

「予備パイロット。」

 

「はい?…失礼しました、指令。どんなご用でしょうか?」

 

「レイに、これ以上接近するな。」

 

「え?それはどういう…」

 

「わかったな。」

 

「同じクラスメートですよ?そんな程度で接近とかどういう意味で―」

 

「………」

 

俺の言葉を無視して行ってしまった。何でわざわざこんなことを指令自ら俺に対して言ってきたんだ?不思議だ…。

あ、もしかして…。聞いてみようとも思ったが、他人(ひと)のプライバシーにずかずか入り込むのもアレだからやめておいた。

 

 

 

最早いつもの風景と化した夕食時の会話。

 

「葛城さんまたそんな飲んで…太っても知りませんよ?」

 

「いーのよいーのよ!ねぇエイちゃん、レイをどうやって笑わせたの?私知りたい。」

 

「え?俺の弁当分けてやったら…ですかね。いつもマトモなの食ってなさそうだったからって渡したら、がっついてましたよ。」

 

「へぇ~大胆。あ、もしかしていつも余分に作ってたのってもしかして…」

 

「んな事ないですよ?本来は俺が夕方あたりに食おうと思ってたヤツですから。」

 

「もー、そんな事言って誤魔化そうたって無駄なんだから~。」

 

「んな誤魔化そうなんて思っちゃないですよ。」

 

「い~え!私の目は全部(ぜぇ~んぶ)お見通しなのヨ!正直に白状なさい!」

 

「……ごちそうさま。皿下げますんで。」

 

「あ~!逃げた~!」

 

女の勘ってやつか?アルコール入るとマジでおっかないし面倒だなこの人。

 

 

 

 

1週間くらい後、もうすっかり綾波に弁当を渡すのが習慣になった頃。

 

「ほい、いつもの。」

 

「ありがとう。…今日は零号機の起動実験だから早めに行きましょう。」

 

「あれ、そうだっけ。えーと…こりゃ記録ミスか。さっさと食って行くか。」

 

「ええ。」

 

 

こんなやり取りを離れて見る二人組。

 

「何や、エイジと綾波、あんな仲良くするようになったやないか…。」

「俺は別にいいけど?いい取引相手でもあるしね。でもちょっと羨ましいなぁ。」

「ケンスケ、お前はいっつもそれやなぁ…。」

 

 

「あ、影嶋君…どうしたの?これから仕事?」

 

「ああ、ちっとスケジュール外のがね。もう俺がいなくても大丈夫でしょ?んじゃ。」

 

「あ…うん。頑張ってね。」

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

誰も乗っていない電車。

 

いるのは、私と影嶋君だけ。

 

何故だろう。

 

影嶋君が洞木さんと会話してるとき、嫌な感覚があった。

 

「影嶋君、洞木さんと何かやってるの?」

 

「え?ピアノ教えてあげてるだけだけど。」

 

「二人きり?」

 

「まあ、他にうるさいのが居ても困るしね。」

 

「…そう。」

 

「どした?」

 

何も言えない。この感情の表現の仕方がわからない。でも、この感覚がずっと私の中で渦巻いている。影嶋君は、私に笑いながら言う。

 

「もしかして、洞木さんに妬いてんの?」

 

「やいている?どういうこと?」

 

「いや、何でもない。悪かったな、変なこと言って。」

 

やいている…それが、この感情をあらわす言葉なの?

 

私にはわからない。

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

第二実験場。

俺も指令や赤木博士らと共に実験の開始を待っている。俺はプラグスーツなのだが、この後連続して俺での起動実験も行うそうだ。指令は「なんでお前まで居るんだ」って顔をしていたが、何も言うことはなかった。やっぱ俺のこと嫌ってやがるな?

 

「現在時刻、7月11日13時45分00秒。零号機起動実験を開始します。」

 

 

 

伊吹さんの無機質な経過報告を聞きながら、何も起きない事を願って経過を見守っていた。しかし―

 

「パルス逆流!」

「中枢神経素子にも拒絶が始まっています!」

 

「コンタクト停止!6番までの回路を開いて!」

 

「信号拒絶!ダメです、零号機制御不能!」

 

零号機は拘束具を引きちぎり、頭を抱えて苦しむ姿を見せる。そんな、暴走してるのか!?

 

「実験中止、電源を落とせ!」

 

「零号機、予備電源に切り替わりました!完全停止まであと35秒!」

 

零号機は腕を振りかぶり、俺らがいる制御室目掛けて拳を振るう。

 

「指令危ねぇ!」

 

俺は指令を突き飛ばし、一緒に窓から離れるように倒れ込む。いくら強化ガラスであっても、あの腕力なら少しだけ硬いにとどまってしまうだろう。予測通り、何度もパンチを喰らうと強化ガラスは粉々に砕けてしまう。

 

「オートエジェクション作動!」

 

自動プラグ排出(オートエジェクション)!?マズい!!

 

「レイ!!!」

「いかん!!」

 

俺はいてもたっても居られなくなり、零号機がいる空間への出入り口へと走る。幾らLCLがあっても、あの高さからの落下は生死に関わる!中にはいると、零号機の腕は壁を突き破り、引き抜こうとしたところで完全停止したようだ。横を見ると、派手な金属音を鳴らしてプラグが落下し、静止した。

 

「レイ!!!今…うわっ!?こ、この…!」

 

プラグは過熱し、手で触るには余りにも熱すぎたが、それでも必死でプラグを手動で開き、中へと身を乗り出す。

 

「レイ、大丈夫か!?」

 

「影嶋…君…?」

 

レイは頭から血を流している他、右腕も酷くやられているようだ。ピクリとも動かしていない。それに、こういう衝撃ってのは外よりも中身の方がヤバイことの方が多いんじゃなかったっけか…?

 

「レイ、絶対に動くなよ。今救助が来るからな…!」

 

「私は…平、気…よ。」

 

「バカ言ってんじゃない!レイ?おいレイ!!」

 

彼女は気を失ってしまう。左腕を掴み脈を確認しつつ、口元に顔を近づける。脈も呼吸も浅くなってきている…!

 

「どいてくれ、パイロットを救出する!」

 

「わかりました!脈も呼吸も浅くなってます、どうか…!」

 

「もちろん最善は尽くす、不安なのはわかるけど今は引いてくれ。おい、そっちを持ってくれ!運び出すぞ!」

「了解!」

 

「レイ…。」

 

こういうのはプロに任せるべきなのだが、とにかく不安で仕方なかった。

 

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