「ったく…一人にしてくれって言ったろ?」
「だって…また、私の傍からいなくなっちゃうのかなって、思っちゃって。」
「俺が最後に言った言葉、聞いてくれてなかったのか?」
「そういうんじゃない。」
「やっぱ俺はレイのこと、不安だよ。俺もいつだって傍にいてやることはできないんだぞ?」
「それはそうだけど…一緒に居たいの。」
こんな話をしながら、街灯に照らされた夜道を二人で歩いている。最早手を繋ぐことには何も抵抗は感じなかった。…そういう俺を嫌う自分もいたけれど。
不安といった俺に対し、レイは俺の腕にしがみついてきてこう言う。
「ねえ…私、エイ君のことを気付かない内に傷つけちゃってたの?」
「…そんなことないよ。」
「嘘。本当のこと言って。」
やっぱり、俺と長くいるだけあって、嘘はもうすぐ見抜かれるようになっちゃったな。
「傷ついたことはないよ。でもさ、そういう優しい言葉を言ってくれる度に俺は苦しかった。俺自身は、こんな幸せを享受していいとは、許されていいとは全く思っていないから。」
「もしかして…私って、その、霞ちゃんの代わり
「そんな訳ない!」
強く否定したくて、大声になってしまった。だって…
「だってさ…誰が死んだ奴の代わりになれるんだよ。今ここにいる人間ってのは、そいつだけなのに…。もう居ない奴の代わりを、誰ができるんだよ…。」
「ごめん。変なこと訊いちゃった。今までもごめん。知ったような口利いちゃってたよね。」
「レイが謝るようなことじゃない。俺がいけないんだから。」
「ううん。私、少なからずエイ君を傷つけちゃってたのがわかったから。」
「いつのまにそんなに強くなってたんだな、レイ。俺が思ってる以上に…。」
「だって、私…。
ねえ、さっきは皆のこと、大切って言ってくれたよね。それでも…私への気持ち、変わってない?」
「俺のこの気持ちが…許されるのなら。」
許されるとは思っていない。だって、許してくれる人はもう生きちゃいないんだから。
いつの間にか、また公園にまで来ていた。自分が無意識に向かっていたのか、それともレイに誘導されていたのかはわからない。でも、今は俺ら以外の人間がいないその空間が、とても安心できた。
「こっち向いて。」
「え?」
「許してあげる。」
その言葉と共に、レイからディープキスをされた。俺はただただ驚いて、それを返すことすらできなかった。
状況が読めない俺に対し、彼女は笑って俺に言う。
「レイ、何を…」
「私もエイジ君のこと、誰よりも好き。だから…」
俺に抱きついて、最後の言葉を言う。
「もう、全てを背負い込まないで。私にくれた心を、自分で壊さないで。お願い。」
-綾波レイ-
彼の目から、さっきの言い合いの時には流れなかった涙が流れている。多分、ずっと我慢してたんだ。私たちに、弱い姿を見せちゃいけないって。全て背負わなきゃならないんだから、そんな余裕はないんだって。
でも、彼が壊れてしまったら、 私は今度こそ独りになってしまう。エイ君は、本当に私の事を思っているから…だから、私の過去の秘密も受け入れてくれた。彼は優しすぎるのかもしれない。だって、私の事を気に掛けながら、他の二人も気にしてるんだから。
「あ…俺、何で涙が…。」
「辛かったら泣いていいの。自分の気持ちに素直になって。私もエイ君の痛みを知れたから。」
「それ、は…うっ、俺は……レイ……。」
彼は泣きながら、私を強く抱き締め返してくる。多分、彼なりの精一杯の甘えなのだろう。
「落ち着くまで、ずっとこうしてあげる。」
「ありがとう…。」
-惣流・アスカ・ラングレー-
アイツの声…また何か越しにしか聞いていない。やっぱり、あたしじゃあ…。誰かに泣きつく事なんて一度もなかったのに。このあたしですら、人前で泣かないって決めていたのに…。
二人に気付かれる前に、家へと戻っていった。
またすぐあるシンクロテスト、今までで最悪の成績を出すんだろうな。エヴァに乗ってるあたしを否定されて、それでもあたしを見てくれそうな二人は手の届かない所にいる。エヴァに乗らないあたしを真正面から見てくれる人なんて、誰も…。
「お帰りアスカ。その感じ…あんまりだった?」
「別に。シャワー浴びてから寝るわ。おやすみ。」
「おやすみ。」
着替えたあと、あたしは何も考えずにベッドに体を投げ出した。
ゲームする気にも、テレビ見る気にもならない。余りにも強い無気力があたしを襲っている。あ…そういえば、渡してほしいって言ってたプリントがあったっけ。起き上がり、鞄を漁って引っ張り出す。
進路調査なんて…バカバカしい。だいたい、エヴァに乗らなくてよくなったとして、あたしに何ができるの?…何もわからない。
ん…二人が帰ってきた。起きてる内に渡さなきゃ…。
-葛城ミサト-
「ねーミサト、寝てるときに一升瓶を抱えてたときがあるって本当なの?」
「うへぇ…本当よ。」
「ふふ。でも、初めて一緒に暮らす中学生の子にそんな無防備な姿を見せれるなんて、そんなに信頼してたんだ。」
「それは…信頼関係を結ぶには、私から緊張を解かなきゃかなって、思ってただけよ。特別畏まらなくていいかなって。」
「ミサトの言うことはわかるよ。でも、エイジには逆効果みたいだったけど。」
「でしょうね…。彼、最初から真面目な子だったし。」
私とミチヨちゃんは一緒の布団で寝ている。彼女の要望だったからだが、小学生くらいの子って、こんなに早く寝るんだったのかしら。まだ11時にもなってないのに。
時間管理が大変になりそうね…。
「ねえ、ミサトはどうして
「え…?どうしたの?ミチヨちゃん。」
「エイジも知らないことだから。教えて?」
「……使徒への復讐よ。」
「どうして、復讐しようって思ったの?」
「私のお父さん、セカンドインパクトの研究をしてて、南極の実験で亡くなってしまったから。失語症になって、それを乗り越えてから、ネルフと使徒の事を知った。だからここにいるのよ。」
「ごめんなさい、嫌なことを思い出させてしまって。」
「いいのよ。…本当にごめんね、あなたたちのような子供を死地に送ることしかできない大人で。」
「ううん、起きたときも言ったように、私はこの命に感謝してる。それに、今は私の意思でこの役割を全うするから。安心して?」
「ごめんなさい…。」
ただ謝って、彼女を強く抱き締めることしか私にはできなかった。
-影嶋エイジ-
テーブルで水を飲んでから、明日以降の事を考える。明日の食事はシンジに一任しちゃおうかな…。いや、でも最近は俺が帰ったり帰らなかったりだったから、やっぱ俺がやるべきか。冷蔵庫にゃまだそこそこ使えそうなのがあったし、今日のハンバーグの残りを弁当にしてもー
「影嶋、今いい?」
「ん?どしたアスカ。」
「学校でこのプリント書いてくれって。今週中までだって、はい。」
「ありがと。進路調査かァ、確かに俺らはその辺うやむやになってたしな。」
アスカはテーブルに座って俺に訊いてくる。
「ねえ…アンタはそれにどう書くつもりなの?」
「俺か?職業なら適当な役所勤めって書くし、俺はとりあえず普通の高校と大学出るつもりかなァ。今はアスカと違って大卒持ってないし。」
「そういうこと、ちゃんと考えてるんだ。」
「そらまぁ、二度目とはいえ俺の将来の事だしな。その点アスカはいいよ、大卒持ってんだから。俺らみたく高校行かなくてもどっか就職できるのはデカいアドだよ。正直羨ましい。」
「そうなの?」
「そらね、ここ日本だし。学歴社会としちゃあこれほどいい条件はないんじゃない?
ところでさ、アスカは将来何かしたいこととかあるの?」
多分、答えは―
「…わからないわ。」
案の定だな。まあ、まだ焦る段階じゃないけどさ。
「そっか。まだ時間はあるからゆっくり考えればいいよ。でも、日本の高校出るかどうかは3年になる前には決めとけよ。3年になってからじゃ遅いからな。」
「うん…。」
だいぶ上の空だな。一度しっかり話を聞いてやらないとか。
「明日の訓練の後、暇?」
「そりゃあ、何もないけど。」
「一度ゆっくり話さないか?誰かがいると話せない事なんてのもあるし。」
「ねえ、アンタにはファーストがいるのにそんなことしていいの?」
「俺が外に出る前の言葉、覚えてるよな。その言葉の意味通りだ。プリントありがとうな。それじゃ、おやすみ。」
「おやすみ…。」
俺はリビングを後にする。やっぱり申し訳ないし、飯は俺が作ろう。自分の部屋に入ると、先回りしていたレイがいた。
「ねえ、あの話…アスカと何を話すの?」
「アスカに前を向かせるための話をするつもり。前回の使徒との戦いで、アスカの心がズタズタになったから、その修復の手伝いをするんだよ。」
「そーゆーのって、自分で解決するもんじゃないの?」
「俺を見てまだそんな事を言うか?彼女だって人間なんだよ。それとも何だ、まだアスカに妬いてんの?」
「そっ、そそそんなこと。」
「やっぱりね。こんなこと言ってても仕方ないし、もう寝よっか。」
「もー、イジワル。」
次の日、久々に学校に行った俺は、まあ…そうだな、色々酷い目に遭った。まず、数日ちっとばかしすれ違っただけでもうどこまで想像力があるんだっていうくらい憶測が飛んでくる。しかもそれは男女関係ないってのがまたね。人の気持ちも考えねぇで…全員殴り飛ばしてやろうか。確かに俺も中高くらいの頃はそんな話を聞いてたけど、言われる側になって初めてそのダルさを感じた。誰々が別れただの付き合ってるだの、正直マジでうるさい。
頬杖をついて座ってぼーっとしていると、トウジから声をかけられる。
「よ~エイジ。ここんとこご苦労さん。」
「ああ。」
「何や、気ィ抜けた返事しおって。にしても、おぬし見とるとほんま羨ましゅう思うわ。」
「どーゆう意味だよそれ。」
「そりゃあ付き合う相手に困らないいうとこかのう。それとも、おぬしがそう思っとらんでも、惣流の方が…せやエイジ、最近の惣流の様子、ありゃどういうことなんや?エイジなら知っとるんやろ?」
「そら知ってるさ。でもトウジ、お前が知ってどうす―」
「お!やっぱ知っとるんやないかい。で?で?何がどうしおわっ!?」
人の話を最後まで聞け。あと他人のプライバシーにずかずか入り込んでくるな。
俺はトウジの胸ぐらを掴み、睨む。
その様子を見て、その時だけ教室が静まり返る。
「人の事を面白おかしく噂にするの、そんなに楽しいか?」
「いや、そういうわけじゃのうてな…。」
「だったら二度と、俺らの聞こえる所でしないでくれ。勝手なことばかり言いやがって…。」
「わかった、わかったからもう睨むのやめてくれや。な?」
「ほんと頼むぜ…。」
手を離してやると、トウジは物凄い勢いで自分の席に帰っていった。もう勘弁してくれ。
席に座り直すと。レイが小声で話しかけてくる。
(ねぇ、これじゃ逆効果じゃない?エイ君勘違いされちゃうよ?)
(それならもう言いたい奴は勝手に言わせときゃいいよ。最早収拾がつかないラインいっちゃってるしさ。パイロットのことがバレた時みたいなもん、こうなったらお手上げだよ。)
(なんだか、こういううときだけは普通の子が羨ましいよね。)
(俺も同感だ…。)
-碇シンジ-
昨日エイジ君のことを秘密を聞いてからというもの、とても複雑な気持ちだ。もしかして、僕がここに来るっていうのを知っていたら、あのとき無理してでも自分がやるって言ったのかな。
あれ、そういえば山岸さんがいない。それにカヲル君も。二人ともどうしちゃったんだろ。また何も聞けてない。それに、僕の母さんのことも…。何も知らないと思っていたら、唐突に重いものを背負わされて、どうなっているんだろう。
どう気持ちに整理をつけたら……そもそも、僕が戦う理由って何だ?
父さんに、僕を見てほしい…?
「ようシンジ、どうしたんや、そんな暗い顔して。」
「トウジ、エイジ君に怒られたからって今度は僕ってこと?」
「そ、そんなことないわ!それより、何キョロキョロしてたんや、もしかして山岸を探してたり~なんて?」
「あ、そうだ。山岸さんどうしたの?」
「ああ、アイツならまた転校しおったで。理由は…何やっけケンスケ。」
「父親の仕事だよ。元々山岸の親父は国連の人でさ、技術交換なんかでこっちに来ただけって話だったし。」
「そうだったんだ…。」
「最近は渚も体調不良なんかで休んどるし、ちっと文化祭ではしゃぎすぎたんかいな。」
「というより、使徒が2回も連続で来たストレスってのもあるだろうね。それはシンジたちとは比べちゃいけないんだろけどさ。」
「そんなことないよ。みんな不安に感じるのはわかるし。僕だって、戦いに出るときはずっと不安だよ。」
「そうなんか…。せや、今日の放課後、ゲーセン行かんか?いい気分転換になると思うで?」
「あ…ごめん、今日は午後から訓練があってさ。」
「そうか、悪かったの…。」
「また誘えばいいじゃん。それじゃ、また都合が合うときにでも誘うよ。」
「ごめん二人とも、ありがとう。」
-赤木リツコ-
「アスカ、聞こえる?いつも通り余計なことは考えないで。」
[はい…。]
「どうしたんでしょうか。いつもあんな元気なアスカが、こんなに落ち込んでるなんて。それに、シンクロ率もかなり低いですし。」
「こないだの戦闘で、思いっきりやらかしたからでしょうね。それで自信をなくしてしまったんでしょう。」
「仕方ないのはわかりますけど、こう不確実なときにこうなってしまうと…。」
「弐号機、アスカからエイジ君の専用機に変えるのも一つの手かもしれないわね。代わりにシステムにはアスカに乗って貰うことになるけれど。」
「もしかして、今日のシステム搭乗実験って…」
「仕方ないでしょ。最早彼はパイロット3人の支えになってしまっているわ。今更人員の交代なんてしたら、それこそ士気に関わってしまうもの。…管制室、コアの子はどう?」
『中央の試験管に入って大人しくしています。システムリンクも完璧です。』
「結構。それじゃあこの実験が終わったらいつでも起動できるようにしておいて。」
『了解。』
「…シンジ君も今日は調子が悪いわね。相変わらずレイとエイジ君の二人は安定しているけど。」
「でもエイジ君の数値、前より落ちていませんか?以前は60%+だったというのに今は55%程度ですよ。」
「それくらいなら大丈夫よ。現在でも十分な精度は保証されているわ。何より彼の価値はアークシステムでも基礎数値の高さでもなく、『全てのエヴァとのコア書き換え無しのシンクロ』にあるのだからね。」
「いつでも彼らの代わりになれる、ということですか…。」
「いざという時のバックアップというものは何においても必要よ。それじゃあみんな、上がっていいわ。お疲れさま。」
アークシステムのプラグルーム。搭乗互換訓練のためにパイロットを集めているのだが、やはり場所が試験プラグの方向と反対側というのが少し面倒ね。エイジ君が外から出て、今回の実験の概要を説明する。
「さて、今日3人にはシステムとの接続実験をしてもらうらしい。目的は俺の後継者…というより非常時バックアップだな。本当はシステムを介さずにエヴァ間でクロッシングをできればいいんだけど…」
そう言って彼は私の方を見る。
「そのシステムはまだ実証段階にまで行っていないの。だからエイジ君が何らかの理由で欠けてしまう場合、誰かが代わりにここに入らないといけないわ。」
「解説ありがとうございます。という訳で、俺がいつもやってる事を体験してもらおうって話だ。それじゃ、まあ…番号順にやってくか。」
-綾波レイ-
プラグに入ると、普段と変わらないインテリアに内壁、LCL。システムと接続すると、零号機によく似た感覚が来る。これが妹の…ミチヨちゃんの感覚。
-どう?お姉ちゃん。私と繋がった感想は。-
「零号機に似てるのね。特に変な感じはないわ。」
-よかった。それじゃ、前々回の使徒との戦闘記録からクロッシングを再現するわ。頑張ってね、お姉ちゃん。-
「ありがとう、ミチヨちゃん。それじゃお願い。」
意識を集中させると、最初は弐号機の視界…な!?他の二人が見えてるイメージまで一緒に頭の中に…それに、感情も…
「う、あ、頭が痛い!こ、こんなに…!」
-実験中止。大丈夫?-
「みんなの感情がぐちゃぐちゃになって気持ち悪い…。」
-惣流・アスカ・ラングレー-
こんなものに乗って、何になるんだろう。仮にこれでこっちのシステムに適応してるというのがわかったら、エヴァから下ろされちゃうんだろうな。
-システム接続。アスカ、私と繋がった感じはどう?-
「少し気持ち悪い。でも、これくらいなら…。」
-わかった。それじゃあ、シミュレーション開始。-
その言葉と同時に送られてくる、エヴァ全ての視界と感情。ヤバイ、情報量が多すぎて…
「タイムタイム!何でいっぺんに送ってくるのよ!」
-え?エイジはいつもそうやってるよ?-
「は、はァ!?そりゃファーストが顔を真っ青にして出てくるのもわかるわ!せめて情報を絞ることはできないわけ!?」
-それじゃあ、もう少し情報を絞ってみるわ。少しだけアスカとの回線を広くするわね。-
ミチヨとかいう子の感覚が更に高まる。クロッシングとはいえ、こんなに深く繋がるのは…。
その次に来た情報はかなり限定されていて、視界の情報と、それを見ている人一人の感情だけ。感情がわかるってのが難点だけど、それ以外の気持ち悪さが無いからまだやってられる。
今までこんな情報量を、たった一人で…。
「これならまだ何とかなるわよ。ほんと影嶋のヤツ、どういう脳ミソしてんのよ…。」
-碇シンジ-
エイジ君以外の誰かが頭のなかに入ってくる感じ、どうしても慣れない。
でも、これを使えば…クロッシングなら、父さんの考えてることがわかるのかな。父さんが、本当は僕にどう思ってるのかを。
何だろう、今日は妙に集中ができない……。
-シンジ、クロッシングはそういうことに使うものじゃないわ。-
「えっ?そ、そんなこと思って―」
-勇気を出して、お父さんと会話してみて。ずっと怯えているままじゃあ、なにも変わらないわ。-
「それは……。」
-大丈夫。成長を恐れないで。-
「…わかった。」
-赤木リツコ-
「やはりアスカが一番このシステムに適応しているわね。」
「アスカは頭の回転は速いですからね。俺みたくとりあえず全部受け止めてから考えるっつーより効率のいい方法をとってますし。」
「これで念願のエヴァに乗れるのよ?それなのに淡々としているわね。」
「俺はそんな子供じゃないですよ。だいたい一人の入れ換えなんかやるくらいなら、どーせアメリカが持ってても宝の持ち腐れな参号機を寄越してくれりゃそれでいいんですよ。」
「やけに参号機にこだわるのね、どうしてなの?」
「わからないけれど…参号機が俺の戦場での居場所だって、そんな気がするんです。根拠が余りにも不鮮明ですけどね。」
「直感、といったところかしら。…それでも、このままアスカがエヴァに乗れなくなるといった場合、あなたに弐号機を渡すことになるわ。それだけは知っておいて。」
「わかりました。」
「それにしても…」
プラグから出てきた3人を見る。シンジ君だけは何もない様子だが、レイとアスカは顔を真っ青にしている。エイジ君のように精神汚染区域には誰もはいっていないのに…まさか、彼は―
「まだ気持ち悪い…。」
「頭痛い……あんな情報量をどうやって処理するのよ…。」
「父さん…。」
これじゃ、エイジ君並みの処理速度には誰も追い付けないでしょうね…。
-惣流・アスカ・ラングレー-
あたしは影嶋から来いって言われたジオフロントの湖近くの公園にいる。もう夕暮れで、天窓から入ってくる日光も赤みを帯びている。予定時刻より少し送れて影嶋はやってきた。
「遅い。あたしを待たせるとはいい度胸じゃない。」
「悪いな、少し今後のことに関してな。あ、俺のことだぜ?」
「ふーん。ま、いいわ。で?話って何?」
「アスカの戦う
「答えは変わらないわ。あたしの存在意義を示す為よ。この役割が他の人間には務まらない、特別なあたしだけのモノだって示したいの!」
「それじゃあ、俺らが必要にならなくなったらどうするつもりだ?」
何、必要にならなくなったらって―
「そんなの…いつになるかわからないじゃない!」
「だからこそだ。俺らはまだ『子供』なんだぞ?将来の事をちっとは考えとかないとだろ。」
「でも、あたしは……エヴァ乗れないあたしを、誰が見てくれるっていうの!?」
「アスカ、自分の存在価値をエヴァにだけ依存してたら、いつか自分がいなくなるぞ。」
「何、それ…。自分がいなくなる?」
「……あなたは、そこにいますか?」
「どういうことよ、それ。」
「エヴァが必要にならなくなって、俺らが必要にならなくなった時…アスカはどこにいるんだ?いつまでもここに依存してられないんだよ、俺らは。」
「そんなことない!」
「アスカ…自分でもわかってるんだろ?いや、わかってるからこそ蓋をして、知らないフリをしてるだけだ。」
「ちがう…」
そんな冷たい目をしないで…。
「あたしはエヴァに乗るために産まれて、必死に勉強して!ママを失っても泣かないって決めて!もうあたしにはここにいるしかないの!」
「ママをって…お袋を失った…?」
「あたしが7歳くらいの頃…ママは実験で精神が壊れて、人形をあたしだと…『ママの子供』だと思って…首を絞められても、求めていたのに……ママは…!ううっ、く……」
「な…!?」
その場に座り込んで、泣いてしまった。こんな大きい声で、人前で…。
影嶋は…エイジは私の肩を抱いて、傍に寄ってくれる。
「ごめんアスカ。辛いことを思い出させちゃって…。」
「あたし…エヴァにっ、乗れなくなったらぁ…ぐす、誰があたしをみっ、見てくれるのよお…。加持さっ、も…最近顔見せてくれないのにぃ…。」
「それはアスカがそう思い込んでるだけだ。アスカのことをちゃんと見てくれている人はいるよ。加持さん以外にもさ。」
「ほっ、ほんと…?」
「ああ。俺もアスカのこと、ちゃんと見てるから。だからさ、もう無理に大人ぶるのも、誰かに依存する必要もないんだよ。アスカはちゃんと自分で考えられる頭を持ってるんだから。きちんと相手とも、自分とも向き合える。」
「ひぐっ、でも…。」
「大丈夫、アスカは上手くやっていけるよ。自分で決めれる強い心があるんだから。ね?」
「あっ、ありが、とう…。」
少したったら、あたしを立ち上がらせてベンチに座らせてくれる。
しばらく泣いて、落ち着いた頃。私もエイジに聞いてみた。
「ねえ…アンタが戦うワケって何?ほんとのことだけ言って。」
「相変わらずそこの信頼はゼロだなァ。…俺の戦う理由ってのはな、パイロット全員の命と帰る場所を守ること。それが俺の戦う理由だ。」
「それじゃあ、エイジはどこにいるの?」
「今んとこはパイロットが帰る場所が俺の居場所かな。」
「そう…本当に昨日のことは嘘じゃないのね。」
「当たり前だろ?世話の焼ける子が3に…いや4人もいるんだからな。」
「アンタらしい。最後にきかせて。あたしとファース…いや、レイと……どっちが大切なの?」
「俺には二人を比較はできないよ。」
「違うわ。アンタ自身が好きなのはどっちなの?『子供』として。」
「ええ~…。アスカには申し訳ないけど、レイだよ。」
「もう少しくらい躊躇いなさいよね。でもはっきり言ってくれてスッキリしたわ、ありがと。」
「にしても悪かったな、イヤな思い出まで掘り起こしちゃって。」
「ううん。このこと、言うつもりだったから。」
「アスカも前を向けたんだな。俺はそれだけで嬉しいよ。」
「誰かさんはさっき言ってたわよね~、『大人ぶる必要はない』ってさ~。」
「おいおい、俺は26だが?」
「ガワは15の癖に。」
「痛いとこ突いてくるなほんと。俺なんて早々子供には戻れないよ。色々知りたくないことも、汚さも知っちゃったしね。…もう遅いからさ、先に帰りなよ。俺は買い物してから帰るからさ。」
「うん。今日はありがと。また家で。」
「おう。」
全てを吐き出した時、エイジは下手な事を言わずに傍にいてくれた。私を肯定してくれた。
でも、答えは自分で出してくれって言った。あたしもそれを望んでる。
あたしは特別じゃなくても、何かに依存しないでも生きていけるって、そう言ってくれた。
ありがとう、エイジ。