ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE32:アスカとミサトの誕生日

今日も真夏のように暑い。もう12月だっつーのに、どうして……あ、ここ日本だったわ、セカンドインパクト後の。それでも12月に変わりはないから、既にクリスマスのムードが始まっている。例えば商店街なんかはセールや時期に向けて色々装飾をしているし、ポスターなんかもオーストラリアとかの南半球でやってる水着サーフボードのサンタクロースなんかもある。とても俺の知ってる日本のクリスマスじゃないな。そのお陰か、動画投稿サイトなんかで観光名所だとかを調べてみても避暑地なんかが多くあげられていたり。ま、夜は涼しくなるから所謂高台に行って夜景を楽しむこと自体は変わってないようだ。俺の知ってる服装なんかとは真逆だけど。

 

《ということで、涼波コトネの『クリスマスシーズンにお勧めのデートスポット巡り』でした~!》

 

こういう静かな所だったら俺も行けるかな…

 

「お?エイジ~、おぬしこういうこと興味あるんな~。やっぱクリスマスは綾波とデート!なんか?」

「いーだろ何だってよ。美味い飯の動画探してたらたまたま引っ掛かっただけだ。」

「ほんとかいな?な~、ワイらの仲やろ?ちっとくらいさ~」

「もうそろそろ怒るぞ。興味があるのはわかるけども少し話し方ってのを知れ。」

「ちっ、相変わらず宿題のことといいケチンボやなぁ。」

「そんな事言ってると今度は本当に殴られちまうぞ?にしてもこの子、第二中の生徒だっけ。最近人気なんだよねぇ。」

「へぇ、そいつは知らなかったな。」

「それよりエイジ、今日はネルフに行かないでいいの?」

「今日は休み。最近働きすぎだから休めって怒られたんだよ。」

「そうなのか。あ、それじゃあこれから―」

「悪い、今はちっとぼーっとしてただけでさ、今日は用事あるんだ。悪いな、また今度っつーことで。」

「つれないやっちゃなぁ。」

「仕方ないよ、普段から忙しそうだったし。それじゃ、また明日な。」

「おう、それじゃ。」

 

とりあえず、帰り際には予約しとかないとな…。

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

今日はエイ君無しでの訓練。彼はシンクロテストに関しては基本的にいい成績らしいし、最近はF型装備とかいう新装備計画のテストパイロットで忙しいみたい。また働き詰めで倒れてほしくないから、ミサトさんらの要望で水曜日は休みになったようだ。そもそも水曜日は午前終わりだし、午後もエイ君の補講をゆっくりやっているようで何より。また無茶してほしくないし、このスケジュールに関しては賛成だった。でも「今週の金曜日だけはどうしても空けたい」って強い要望でズレたけど。

それにしても…アスカのこの明るさ、正直今までのを見てると何というか、不気味というか不自然というか。やっぱすぐには慣れない。でもアスカは自然に振る舞っているようだし、これが本当のアスカなのかも。

 

「何よ、さっきからこっちばっかジロジロ見ちゃって。こないだのことなら平気よ。エイジもレイのこと、ちゃんと好きみたいだし。」

「なな、何よ。私のことまで名前で呼んで。何か悪いものでも食べた?」

「アンタ、今日の弁当作った人が聞いたら悲しむわよ?それ。」

「冗談よ。もー、アスカも…あれ…?」

 

あれ、立ち眩みが…?

 

「レイ、大丈夫!?顔が真っ青よ!?」

「大丈夫、ちょっと立ち眩みがしただけ。少しすればよくなるから…」

「立ち眩みだけって…!ほら、肩貸してあげるから医務室行くわよ!」

「ごめんね…。」

 

 

「軽い貧血かしらね。少し寝れば治ると思うわ。」

「急に倒れたから驚いたわよ、全く…。エイジの真似しないでちゃんと寝ときなさいよ?」

「わかってる…。ありがとうね、アスカ。」

「それじゃ、あたしは先に帰るから、ゆっくり休んでね。」

「うん。」

 

多分、ただの貧血じゃない。今日もちゃんと食事は摂ったし、昨日は健康的な時間睡眠を取った。ずっと忘れられると思っていたのに、案外早くに来ちゃったんだ。

 

「赤木博士…もしかしなくても、私の体……。」

「…否定はしないわ。これを渡しておくから、食後に飲みなさい。これで直ちに影響が出ることはなくなるわ。でも、長い目で見ればこの処置もほんの僅かな効果しかないことを知っておいて。」

「やっぱり、私は私なんですね…。」

「エイジ君なら受け入れてくれると思うわよ。どんな姿になっても。」

「やめてください。」

「もし…あなたの体機能を完全にしたモノを造れるとしたら、彼はどう思うのでしょうね。」

「エイ君は…多分、それは望まないと思います。」

 

人為的に命を造って、それで生き延びることはエイ君は許してくれるのかな。例えそれが、感情を全て失った私だとしても。

 

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

今日のシンクロテストも不調だった。戦う意味…それを今更見失うなんて。ヤシマ作戦の前は「みんなを守りたい」なんて御大層なことをかんがえていたけど、加持さんから聞いた話が、それを夢物語にしてしまった気がする。よくわからない秘密結社が裏で何かをやろうとしてるなんて…僕の手が届くところなんて限られてるのに、どうすれば―

 

「シンジ!って、どーしたのよ、そんな暗い顔しちゃってさ。何、またシンクロテストで微妙な成績だったからってウジウジしてるわけ?」

「そうじゃないよ。ただ、どうして僕はここでエヴァに乗ってるのかなって…。」

「ここで戦うワケかぁ。あたしもこないだエイジから聞かれたわ。」

「どう答えたの?」

「その時は自分の存在意義を示すって言ったわ。でも今は―

今は、誰かが戦わないといけないのなら、今その力を持ってるあたしがやってやるって思ってるわ。戦う力があるのに、誰かから平和を譲って貰うなんて我慢できないもの。」

「そうなんだ。…アスカって強いんだね。僕なんて、誰かから…父さんに、ただ認めてほしくてここで戦ってるみたいなものだし。」

 

「なんか、こないだまでのあたしみたい。」

「え?どういうこと?」

「あたし、こないだまでエヴァに乗ることが全てだって思ってた。でも、エイジはそれ以外もあるって教えてくれたの。ここにいることだけに依存するなってね。

ねえ、シンジは本当のところどう思ってるわけ?」

「僕は…みんなを守りたいって思ってた。今戦えるのは僕だけなのに、逃げてちゃダメだって。でも今は―」

 

「それでいいじゃない。」

「え?」

「わかりやすくて、真っ直ぐじゃない。それがシンジの本当の戦う理由じゃない?」

「そうなのかな。よくわからないよ。」

「もー、こーゆうのはウジウジ考えてても仕方ないの!ほら、前向いて帰りましょ!」

「あ、ちょっと引っ張らないでよ!」

 

 

 

 

 

-惣流・アスカ・ラングレー-

 

なんだか最近、前よりも気分が軽くなったって感じる。変に気張ることがなくなったからかも。

 

「それでね、ヒカリったらまだ心の準備が~とか言っててさ。あたしとサヨコでそんなんだと一生振り向いて貰えないわよーって言ったら顔真っ赤にしちゃってさ。」

「はは、トウジのことだから一生気付かなそうだよね…。」

「あの鈍感ジャージは仕方ないわよね~。」

 

アンタも似たようなもんだけど。そんな世間話をしてると家に着く。

 

「ただいま。」

「ただいま~!リーベ、あなたいつも一番乗りね、偉いわ~!」

(ニャ~)

 

リーベを抱き抱えて頬擦りする。制服に着付いた毛を取るのが少し面倒だけど、それでも帰ってきて一番のこれはやめられない。

 

「お、二人ともお帰り。あれ、レイはどうしたん?」

「レイなら貧血とか言って倒れちゃってさ。少し寝てから来るって。」

「貧血?珍しいな。わかったよ、ありがと。」

「あら、案外落ち着いてるのね。もっと騒ぐかと思ったわ。」

「バカ言っちゃいけない、貧血くらいなら仕方ないよ。とりあえずリーベ下ろして、二人とも着替えてきたらどうだ?」

「そーね、そうしてくるわ。」

 

 

着替えるために、いつも髪に着けているインターフェースを外すと、髪が少し伸びてる感じがある。近いうちに美容室行かなきゃかな。普段通りまた着けようとしたけど…しばらく外してみようかな。デザインも良いから少し躊躇うけれど、手に持ったそれをそっと机に置いて、ヘアゴムで髪をセットした。

 

 

 

 

 

-葛城ミサト-

 

「ねーミサトー、あとどれくらいで終わるー?」

「ちょっち待って…………よし、終わり。後は家でも出来るから、今日は帰りましょ。」

「やった!」

「あ、でもその前にレイを迎えに行かなきゃね。」

 

最初にレイを見たときは異常なくらい痩せていたけれど、今は健康的な体型になった彼女。貧血というと…あれ、でもレイはまだ来てなかった筈よね。そればかりは個人差があるから仕方ないけれど。正直な話、あまり原因が思い付かない。

 

「失礼するわよ。レイ、大丈夫?」

「はい。少し寝たらだいぶよくなりました。」

「そう、無理はしないでね。私よりもあなたのことを大切に思ってる子もいるんだから。」

「そそそ、そんな…ありがとうございます……。

「ミサト、また悪い顔してる。」

 

エイジ君もこんな風に顔真っ赤にしてくれればいいのになーなんて。

 

 

帰る途中、レイはまだ寝ぼけてるのか車の中で寝てしまった。…こないだ撮ったエイジ君とアスカの写真、レイに見せたらどんな―

 

「ミサト、そんなことしたらまたエイジから殴られるわよ。」

「え゛。…まさか、クロッシング?」

「いいえ、彼の経験則。ミサトが悪い顔してる時は大抵ロクなことを考えてないっていう。

エイジはね、ミサトのそういうところをだいぶ嫌ってるわ。『人の不幸に対して軽々しく口出しするな』って。」

「それって…もしかして、シンジ君をぶった時も、レイの事を楽観視した時もって事、よね。」

「エイジの過去を聞いたでしょ?彼はそういうところ、異常なくらい過敏なの。大人だからそれくらい言わないでも理解しろとも思ってるわ。…家の唯一の大人だから、自分の出来ないことをしてほしいって思ってたのよ。」

「エイジ君に謝らなきゃね…私、保護者として全然らしいことしてあげられてないし。」

「それがいいと思う。互いにこのままだと、関係は良くはならないわ。」

「そうね…。」

 

こんなことを話していると、家にすぐ着いてしまった。車から降りて、後ろに座って寝ているレイを優しく揺すって起こす。

 

「レイ、着いたから起きて。」

あ…わかりました……。」

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

うん、今日も俺の作る飯は美味いな。今日は少しばかり趣向を変えて、鯖の味噌煮なんてものを作ってみた。中学くらいの頃の給食でクッソ美味かったのを思い出すなァ。最近はあまり和食にしてなかったから、アスカの口に合うかちっとばかし実験ぎみなところはあるけど。

 

「ただいま~!」

「「ただいま。」」

 

「お、三人ともお帰り。丁度夕食にしようってとこだけど食うよね?」

 

「もちろん!今日も美味しいご飯食べて優勝したいし!」

「それじゃあまずは手を洗ってうがいしてこい。」

「は~い。」

 

 

 

「どう?今日はあんま慣れないけど和食テイストで行ってみたんだけど。」

 

「あ、美味しい!昔大学の学食で食べたの思い出すわ~。」

「確かにこれ、思ってたより数倍美味しいわね。」

「ゆーしょう!」

「何だろう、優しい味…。」

「ほんとエイジ君何でも作れるんだね…素直にすごいや。」

 

「こいつばかりは何度か作ったことがあるんだよ。ふとしたときに学校の給食で食べたのを再現したくなるときがあるんだよね。それでなかなか記憶の味にならねぇなって、そんなんだから作り方を体が覚えちゃったんだよね。美味いんだけど何か違うなァって何度も作ってたら。」

 

「給食ねぇ…あたしはそういうの経験したこと無いからわからないのよね。」

「案外大したことはしないよ、正直ダルいまであるし。上手い下手なんて割と顕著にでるんだぜ?私見まみれの話だけどさ。」

「ふーん。案外大したことはないのね。」

 

「あれ、レイ、それは薬か?」

「そう。赤木博士が処方してくれたの。」

「そっか。」

 

にしちゃヤケに種類がある。…一瞬、以前に博士から吐かれた言葉を思い出したがすぐ頭のどこかに追いやる。まさか、こんな早くに来るなんて、んな事はない…ない筈。ううん、絶対無い。

 

「どうしたの?」

「あいや、何でも。考えすぎだったよ。」

「そうなの?」

「ああ。」

 

この後は特に何も掘り下げられる事はなく、学校の話題や職場の愚痴なんかの他愛もない話に移っていった。こうなってくれてよかった、このまま話続けていたら…悪い方向に進んだ気がする。

 

 

飯もみんな食い終わって、各々が自分のやりたいことをしている頃。俺はリビングでスケジュール確認をしていると、ミサトから声をかけられる。

 

「ねぇエイジ君、今…ちょっちいいかな。」

「え?俺は構いませんけど。何ですか?」

「えっと…今までごめんなさい!」

「え!?は、話が読めないが!?」

 

唐突に頭を下げられちゃ俺だって何の話か想像できない。やらかしけっこうあるし。

 

「あなたが今までシンジ君たちのこと、ずっと気に掛けてくれていたのは知っているわ。でも、あなたは本当は私にもシンジ君たちに色々してあげて欲しかったのよね!大人として。

謝ることしかできないけど、せめて言わせて。私、威勢良く引き受けたのはいいけど、知っての通りエイジ君ほどの経験なんて全く無くて…でも、なにか力になりたかったの。私が一人で寂しかったってのもあるわ。でも―」

 

「俺の方こそ…もっときちんと言うべきでした。言わなくても伝わるだろうなんて、しょうもないこと考えて。こちらこそ今までごめんなさい。」

「エイジ君…。」

 

「ま、これで手打ちということで。ミサトもミッちゃんが来てからだいぶ保護者らしくなりましたしね。」

 

「話を聞いてくれてありがとう、エイジ君。おやすみ。」

「おやすみなさい。」

 

 

 

 

 

-葛城ミサト-

 

「ね?話せばちゃんとわかってくれたし、伝わったでしょ?」

「ええ。きっかけを作ってくれてありがとう。」

「どーいたしまして。そうだ、明日水族館に連れてって!私、生きてる魚をまだ見たことなかったんだ!」

「ええ、行きましょう。」

「やった、ミサトすき!」

 

布団の中で私に抱きついてくるミチヨちゃん。もっと私も色々なことを勉強しないとね。

 

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

「なんか、僕らだけが家にいるのって珍しいね。」

「前のマンションで同居を始めた頃を思い出すよな。あの頃のミサトも忙しかったみたいだし。」

 

土曜日になって、アスカは委員長の友人とデートに行くとか言って朝から(嫌な顔しながら)外出してるし、ミサトさんはミチヨちゃんと水族館に行くって言ってアスカの後に外出した。綾波は友達と女子会とか言ってたっけ。そういえば、昨日はアスカの誕生日だったような…みんな最近色々あったから忘れてるのかな。

僕もプレゼント、何か用意して―

 

「そうだシンジ、今日はアスカとミサトの誕生日会やろうって思ってんだけどさ、シンジは何か用意してんの?」

「それ、翌日になってから言うこと?僕は一応アスカに何か渡したいとは思ってるんだけど…どんなのがいいのかな。」

「よし、ヒントだけやる。アスカは中途半端な事は嫌うのは知ってるよな。つまり、ちゃちいのは蹴られる原因になる。金なら適当に渡すからよく考えて選べな。」

「それは大丈夫かな、あまり使ってないし。それよりエイジ君はどうするの?」

「俺はもう用意してあるよ。後は取りに行くだけかな。」

「え、それってどんな…」

「さー動いた動いた!今から動き始めないとみんな帰ってきちまうぞ?」

「あーもうわかったよ。行ってくる。」

「おう、行ってら。」

 

 

商店街に向かう途中、何を渡そうか色々考えてみる。

お金に関しては、僕らはパイロットということで普通じゃ考えられないほど貰っているから、高い買い物もだいぶ困らない。でもエイジ君が管理してるのもあって、普段は一般人らしい生活をしてるけど。

アスカが喜んでくれそうなもの…そういえば、最近はいつも髪止めにしてたインターフェースを外してる。装飾品…かな。ふと顔を左に向けるとドンピシャな店が。とりあえず見るだけならと思って中に入った。

 

 

「そ、それじゃあこれを、梱包してお願いします…。」

「お支払はどうしますか?」

「それじゃあカードで…。」

「…はい、ご利用ありがとうございます。またお越し下さい。」

「あ、ありがとうございます。」

 

無理無理無理、こんなところ僕が来るような場所じゃない!とても場違いな感じしたし、なんだか気恥ずかしかった。今でも顔が真っ赤だ、アスカに無理矢理連れてこられない限りは二度と入ることはないと思う。まぁでもネルフのロゴが入ったカードを見せた瞬間に店員の顔が変わったのは正直アレだったけど。

それにしても最近、妙にアスカの事を気に掛けてしまうのは何でだろ。今までそんなこと自覚してこなかったのに。むしろユニゾンの時なんて最悪とも思ったくらいだったわけで。

正直なところ複雑な心境のまま家に帰ると、エイジ君はもう夕食の準備をしていた。

 

「ただいま。あれ、今日はやけに早いね?」

「お帰り、そらこういう日はじっくり丁寧に作りたいしな。お、その感じ買えたな?俺もついさっき持ってきたばかりでさ、まだ冷やしてんのよね。」

「…もしかして、昨日はわざと見送った?」

「そら昨日はみんないつ帰ってくるかわかったもんじゃなかったしな。今日はみんな大した用事はないし、夜には必ず全員揃ってるしで都合がよかった、それだけだよ。」

「本当かなぁ…。」

「そんな疑り深いとこの先やってけないぜ?んで暇なら用意手伝ってくれないか?」

「わかったよ。」

 

リビングで色々用意をしているエイジ君と少し話をと突っ立っていたら、綾波が帰ってくる。

 

「ただいま!」

 

「あ、お帰り。」

「おかえりー!楽しかった?」

「そりゃもう!こういうことあんまりしたことないから楽しかった!」

「そりゃよかったな。んじゃ帰って早々で悪いけどレイも手伝ってくれ!」

「わかった~!」

 

あっさり了承した綾波は僕らと用意を始める。今日の夕食、とても豪勢だ。ここまでしたのってほとんどないよね。これ、店を出せるレベルなんじゃあ…?

 

「お、思ったより数倍早く出来たな。後は同時に帰ってきてくれれば完璧かな。」

「そんな都合よくいくもんかな。」

「大丈夫よ。…ほら。」

 

(ただいま~!)

(ただいま…疲れた…。)

(ただいま。ミサト、本当に大丈夫…?)

 

ほ、本当に同時に帰ってきた…どうなってるんだほんと…。驚きながらエイジ君の方を向くと、彼は悪戯そうに笑って見せる。

 

「運ゲーには自信があるんだよな、俺ってさ。さ、後はさっき言った通りに頼むよ。」

 

 

 

 

 

-惣流・アスカ・ラングレー-

 

まさかミサトたちと同時に帰ってくるとは思わなかった。今は19時前だけど、ミチヨのことだからナイトショーまで見てから帰ると思ってたのに。本気で疲れてそうなミサトを横目に一緒に家に入ると、それと同時にリビングの方で電気が消える。…アイツら、何か謀ってるわね?というかいつも誰かしらが迎えに来る筈なのに誰もこない。シンジすら。

少しムッと来たあたしはズカズカとリビングに押し入る。

 

「ちょっとアンタら、どういうつも―」

 

入ると同時に電気が点いて、続いてクラッカーが連続して弾ける音。

 

「「「お誕生日おめでとう!!!」」」

 

「………え。」

 

ただ呆然としかできなかった。昨日をスルーされてたから全く期待してなかったのに。

 

「お、こいつは効果てきめんだな。どーよ、俺の時の意向返しは。一日遅れってのは土下座してもいいけど。」

 

「えっと、あのさ……」

「あら、よかったじゃないアスカ。ちゃんと覚えてくれてて。」

 

「あのなミサト、あなたの分も含まれてますからね?」

「え、私のも?」

 

そう言ってエイジは調理場の方へ行って、ワインの瓶を持ってくる。

 

「あ~!私の好きな銘柄のワイン!エイジ君ありがとう~!」

「今日くらいは飲んでいいですよ。誕生日なんて年に一回キリですしね。」

 

こんな話を向こうがして盛り上がってる間に、シンジは私の方へ小さい箱を持ってくる。

 

「アスカ、これ…一応、アスカに似合うかなって選んだものだけど…受け取ってくれる?」

「え!?…ご、ごほん。ま、中身に依らせてもらうわ。」

 

小さく綺麗に梱包された箱を開けると、そこには赤いジュエルを嵌め込まれたピアスが出てくる。しかもこれ、穴を開けないでいいタイプね。驚きながらシンジに尋ねる。

 

「これ…シンジが選んでくれたの?」

「う、うん。アスカって赤色が好きそうだったし、最近インターフェースも外してるのをよく見かけたから。髪飾りほど目立つものじゃないけど…。」

「そういうのいいから。ありがと、着けてもいいわよね?」

「え?うん、いいよ。」

 

箱からそれを取り出して、耳に着けてみる。

 

「どう…似合ってる?」

「う、うん!ほんと、思った通りに似合ってるよ…。

 

シンジは顔を真っ赤にしながら言う。

 

「ちょっとバカシンジ、照れるな!あたしまで…

 

あたしまで顔が真っ赤になる。というか、涙が出てきた。こんな贈り物、今までほとんど貰ったことないし…。

 

「あれ、アスカ泣いて…」

「泣いてなんかない!」

「でも…」

「これ以上言うとぶつわよ!」

「そんなぁ…」

 

こんな言い合いをしてるとエイジが私らの背中をテーブル側に押す。今更テーブルを見ると、これから盛り付けられるであろう空のままになっているお皿と、真ん中にはケーキまで置いてある。

 

「まーまー二人とも、美味いモン食ってイヤなことは忘れようぜ。今日はシュニッツェルなんてモンを作ってみたんだ、ささ、座った座った。」

「え、ドイツ料理?そんなもんまで作れたんだ。」

「わざわざ調べて作ったんだぜ?大丈夫、美味くできたからさ。」

 

 

 

 

 

-葛城ミサト-

 

お酒飲むのなんていつぶりだろう。このワインは夕食に合うし、最高。ん~にしても~…

 

「シンジ君とアスカ、いつからそんな仲良くなってたのよ~?」

「うっ!?うぐ…み、水…。」

 

エイジ君が手際よくコップに飲み物を注ぐと、シンジくんはすぐ飲んで流し込んだ。

 

「な、何行ってるんですかミサトさん…。」

「そんな今更、別に結構前からよ。」

「え、本当?」

 

アスカからの意外な返答に、エイジ君が更に援護を飛ばす。

 

「ミサト、アスカの言ってる通りですよ。んでもシンジがこんな大人なのをプレゼントするとは思っちゃいませんでしたけど。」

「わかる~、碇くんも案外隅に置けないわね。」

 

「ちょっと、二人とも…」

「あ、シンジ君顔真っ赤~、かわいい~。」

「ミサトさん…。」

 

「流石に可哀想だからやめてあげましょ。それよりミサト、俺からのプレゼントの感想を聞いてませんね。ワインどうでしたか?」

「とても美味しかったわ~。あんがとね~。」

「うわテーブル越しに抱きついてくんな酔っ払い!レイ助けてくれ!この酔っ払い、力だけは無駄にあるんだが!?」

 

こんなこまりがおのエイちゃんもめずらしい~。あれ、ポニーテールのかれもかわいいわねぇ~。

 

「はいミサトさん、エイ君から離れて座りましょうね。」

「あ~んそんな~。」

 

あれ、すわりなおしたらなんかねむく…ダメ、もうたえられない……

 

(あ、ちょっとミサト!仕方ねぇなぁ……。)

 

なんかわたし、しあわせ……。

 

 

 

 

 

 

-惣流・アスカ・ラングレー-

 

あの後、酔い潰れたミサトをエイジとレイが引きずって部屋へ放り込んだ後は、全員が食べ終わっていたのもあってそのままお開きになった。でも、食事の間も、エイジがミサトに絡まれている間も、お開きになって部屋に戻った後もそのことを気に掛けることができなかった。

シンジから貰ったものの嬉しさが、ずっと頭の中を支配していている。あんな鈍感なのが……あ~本当に嬉しい!

ずっと小箱を胸に抱えてベッドの上でゴロゴロ動いて悶えている。

そんなことしか考えていなかったからか、時計をみればもう10時過ぎになっている。シンジはもう寝ちゃったかな…。起き上がって廊下に出る。リビングの電気がまだ点いてるってことは、エイジはまだ起きてるのね。タイプ音が聞こえてくるし。

シンジの部屋の前に来ると、ノックもせず音を立てないように静かにドアを開ける。部屋は暗く、既にシンジは寝ているようだ。そのまま中に入り、シンジの寝顔を見る。最初は何だこの女顔のひょろひょろはって思ったけど、改めて見ると可愛い顔してるのよね、コイツ。

 

……やっぱあたしって、シンジのことが好きなんだな。だって、加持さんやエイジに持ってる感情と、シンジへと向けてる感情は違うもの。

シンジの寝顔に軽く口づけをして、小声で言う。

 

「ありがと、シンジ。好きよ。」




私はLASも大好物なんですよ
某Mk.6氏主催の非公式オーディオコメンタリーに出ている某A氏に影響されてLASに目覚めましたねぇ!
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