ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE36:フォース

「初号機、参号機エンゲージ!!前方2km地点に第3使徒型エネミー!」

 

[了解!エイジはシンジのバックアップ、レイは陽電子砲でアシスト!フォーメーション13-0(ワンスリー・ゼロ)!]

 

「オーライ!」

[了解!]

[わかった!]

 

初号機はマゴロク・E・ソードを持ち、敵に接近していく。敵は使徒ビーム初号機に放つが、シンジの真後ろを走っていた俺は咄嗟に前後を入れ換え、マステマの刃部で防御する。

 

「今だシンジ!」

[了解、一気に行く!]

 

立ち止まった俺の右側をシンジがすり抜けていく。レイは後方から陽電子砲を撃ち、的にたいして牽制。その隙にシンジは持っていた刀をコアに深々と突き刺し。戦闘が終了する。

 

[状況終了!]

 

[だいぶ仕上がってきたわね~。アスカの指揮もなかなかじゃない。]

[いえ、まだまだよミサト。あたしの指揮はまだエイジ頼りの所が多いわ。相変わらずアイツはどの位置にいても頭の回転が早すぎるのよ…。]

「伊達に全員への同時指揮はしちゃないからな。」

[つ、疲れた…。]

[またあたし後方だけだ…。]

 

「レイは狙撃能力は高いけどさ、相変わらず近接戦はボロボロだからな。後ろでスナイプしてた方がいいんだ。」

 

-それってさ、”えこひいき”って言うんだけど知ってる?-

 

うるさいなミッちゃん。

 

[アンタもいい加減レイを甘やかすのやめたら?どんな状況になるかわからないんだから、最低限ナイフ術くらい安定させておいた方がいいわよ。]

「んー…それもそうか。それじゃ次はレイを前衛に置いた02-1(ゼロツー・ワン)で行こう。アスカ、交代だ。」

 

[わかったわ。ったく、もう少し交通の便よくなってくれないかしら…。]

[ちょっと待って。それに関してはある程度解消済みなのよ。それじゃ、プラグ000とプラグ02入れ換え開始。]

 

赤木博士の声と同時に、突如としてプラグが振動、慣性が働く感覚がする。

 

「おわっ!?何か動いてるぞ!?」

[何何!?どうなってんのよ!?]

 

少し経って、ロックをしたような振動の後、アークシステムに接続した。

 

-やあエイジ。今度はちゃんとクロッシングできたわね。-

 

「こりゃ凄い…。よし、パイロットとのクロッシングスタート。全員、聞こえるか?」

 

[聴こえる。]

[大丈夫よ。]

[こっちも平気。あーびっくりした…。]

 

「問題ないな。よし、それじゃフォーメーション練習開始。敵設定は…第7使徒型で行こう。」

[え!?初っぱなからユニゾンやるの!?]

「ちっと難しいくらいが丁度いいだろ?俺のクロッシングもあるし。それじゃ赤木博士お願いします。」

 

 

[それじゃ、今日の訓練はここまでよ。みんな、お疲れ様。]

 

「ふー…やっぱ10連戦はクるものがあるな。」

[クるなんてレベルじゃないよ…エイジ君も戦闘に参加してるのにどうしてそんな余裕そうなのさ…。]

[流石のあたしも疲れたわ…。]

[もうむり…。]

 

俺らはプラグから抜け出し、各々シャワールームへ向かう。にしてもマステマとかいう欠陥兵器をよくもまあ思い付いたよな。取り回し最悪、妙に重いしデフォルトで側面にN2ミサイルが搭載されているとかイカれてる。ミサイルがマジで蛇足、こんなんぶっ飛ばしたら街一個消し飛ぶんだが。そういえばまた近接戦用武装でヒートランスとかいう直球武装を開発してるってのも聞いたな。

 

「ったく、ここの機関はロマンを追い求めるヤツしか居ないのか…?」

「なんか、エイジ君も大変そうだね…。」

「ああ…相変わらずテストパイロットとしていいように扱われてるからな~。」

「3年になってからの新学期早々も色々あったしね…。」

 

3年になってから、クラスへ3名…「霧島マナ」「ムサシ・リー・ストラスバーグ」「浅利ケイタ」の3人が転入してきた。仲がよい三人は妙に俺らに接触してくるし、なーんかキナ臭いんだよな。それに霧島の顔、霞ちゃんに異常に似ててめちゃくちゃ青ざめた。そのときの俺、死人を見たような顔をしていたらしい。

シャワールームを出た俺らはロッカーで着替えるのだが、最近ここは改装されてより綺麗になった。髪を拭きながら、俺はジップロックに入れた写真を見る。

 

「あ、それ持ってるんだ。」

「ああ、折角の全員の写真だからな。俺の覚悟を強くしてくれるんだよ。」

 

レイ、ミサト、シンジ、アスカ…そんでもって俺が家のリビングで並んで写った写真。去年の年末に加持さんがまた来た時に撮って貰った写真だ。今は霞ちゃんの写真と一緒に持っている。

 

「それじゃ帰るか。」

「そうだね。」

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

「…あれ、アンタ身長また伸びた?」

「そう?よくわからないや。それよりさ、アスカの新しいスーツ、アスカ風にアレンジされてて格好いいね。」

「そうかしら?あたしにはエイジのやつの色違いにしか感じないけど。」

 

アスカも本格的に指揮に参加し始めて、アークシステム用のスーツを新しく支給されていた。エイ君と一緒のスーツの上に上着を羽織るタイプに、特殊な形状のヘッドセット。今までのアスカとは雰囲気が違って、何だか格好いい。

 

「それにしてもさ、レイって持病があるんでしょ?それなのにエヴァに乗り続けて大丈夫なワケ?」

「へーきへーき。薬を飲んでれば少しは発作も収まるし、いざとなればエイ君が助けてくれるから。」

「アンタら、ほんっとそういう信頼は厚いわねぇ。…でも、戦闘の時はそうにもいかない可能性だってあるわ。自分の身を守る術は持っておいて損はないわよ。エイジがいつも守ってくれるワケじゃない。もしかしたら、レイがエイジを助けなきゃならないかもしれないんだから。」

「…なんかアスカ、格好いいー。」

「へっ!?何言ってんのよレイ!もー、からかわないでよね!」

「照れちゃって、可愛いんだから。」

 

 

 

 

 

-惣流・アスカ・ラングレー-

 

今朝もあたしらは全員一緒に登校する。最近は特にあたしらは衝突もなく、平和~な3年を過ごしている。あたしは別に気に掛けてはいないけれど、高校受験で段々みんな勉強の鬼になってきてるし、エイジもひっぱりだこになっているしで、学校生活も忙しくなり始めている。そんで、これくらいの場所になったら…

 

「おはよう、四人とも。」

「よ、おはよう。今日もお前ら3人は一緒か、ほんと仲いいなァ。」

「そりゃさ、ずっと一緒にいる幼馴染だしね。」

 

「あ、シンジくんおはよー!」

「おはよう。」

「来やがったわね、あんの女狐…。」

 

「おいおい、また惣流から睨まれてるぞマナ。」

「あんまりからかいすぎるなよ~?」

「もー、そんなからかってなんて~。」

 

「アンタらねぇ…!」

「ほらアスカ、こんなんで怒らないでよ。」

「そーよ、あんまり怒ってると顔が変わっちゃうよ?」

「シンジとレイもからかわないで!」

 

「あ~、今日も平和だ。一生これが続いてくれれ…はい、もしもし。ミサト?どうしたんです。」

 

こんな風にいつも通り駄弁っていると、エイジの携帯が鳴る。あたしらと一緒に歩きながら電話を聞いていると、段々と表情が険しくなっていく。

 

「……はい、わかりました。急用ができた。アスカも一緒に来て欲しいらしい。」

「どうしたの?そんな深刻な顔をして。」

「深刻なんだよ。ここじゃ話せない。

「…!わかったわ。失礼、あたしらは重要な用事が回ってきたみたいで。担任には遅刻だって言っておいて。」

 

「え?わかったよ。」

「頑張ってね~。」

 

「それと霧島!あたしがいないからってシンジにあまりベタベタしないでよね!」

 

 

 

取り急ぎあたしらは本部直通の電車を捕まえた。その中であたしはエイジに訊いてみる。

 

「で、結局どんな話なワケ?あんなに深刻な顔をしたって事は余程の事よね。」

「…四号機とアメリカ第2支部が消滅した。」

「え…!?」

「詳しくは本部で聞けるらしい。急ごう。」

 

 

 

 

あたしらは足元のディスプレイに写し出される、第2支部が消滅する様を見ている。

ここにいるメンバーはミサトとリツコ、オペレータの3人とあたしら指揮をしている二人。深刻すぎる話だからか、会合は極々少数だ。

 

「手がかりは静止衛星からの映像のみで、後は形跡も残っていません。」

 

「エヴァンゲリオン四号機並びに半径49km以内の関連研究施設は全て消滅しました。タイムスケジュールから推測して、ドイツで修復していたS²機関の搭載実験中の事故と思われます。」

 

「予想する原因は材質の強度不足から設計初期段階のミスまで32768通り。妨害工作の線も考えられます。」

 

「つまり、原因不明というワケね。そんなに数字を並べられてもこっちが困っちゃうわ。」

 

だいたい原因が3万通りあったところで、本質的な原因がわかんなきゃ意味がないじゃないの。

 

「でも、爆発じゃなくて” 消滅”なんでしょ?つまり消えたと…。」

 

「S²機関の搭載実験中の”ただの事故”ならここまで大規模なものになるんかな。こないだの使徒爆弾ですら、コアの破壊時にあの程度の爆発で済んでたのに…。明らかに質量に対して釣り合わない規模だ。」

 

「よくわからないモノを無理して使うからよ。」

 

 

 

会合も終わり、あたしとエイジ、ミサトとリツコの4人でエスカレータを降りる。

 

「これで折角直したS²機関もパーね。」

「そうね、夢は潰えたわ。」

「基地一ヶ所もそうだけど、エヴァ一機に予備パーツがまるまる消えたのもだいぶ痛いですね。敵はこっちの都合なんてお構い無しだっつーのに。」

「パイロットまで犠牲になったんでしょ?支部5000人の命も…やってらんないわね。」 

 

そう、あたしらと同じくらいの年齢のパイロットの子…名前も知らないけれど、その子も巻き添えになったらしい。ミサトも溜め息混じりに頷く。

 

「ほんと、流石にこれは都合が悪すぎるわ。で?残った参号機はどうすんの?」

「ここで引き取ることになったわ。米国政府も、第一支部までは失いたくないみたいね。」

 

「まるで忌み子のような扱いだ。んなくらいならさっさと俺に寄越してくれりゃよかったのにさ。2機より3機。3機より4機でしょう?」

「今更危ないとこだけうちに押し付けるだなんてムシのいい話ね。」

「あの惨劇の後じゃ誰だって弱気になるわ。支部まるまる一つの損失なんて、S²機関のデータと引き換えにしては大きすぎる代償ですもの。」

 

「…で、参号機の起動実験はどうすんの?エイジ君?他の3人?それともダミー?」

「パイロットに関しては指令と相談して、これから決めるわ。エイジ君の可能性も無くはないわね。」

 

幾らアークシステムのメインパイロットとは言え、ここまで頑なにエヴァに乗せられていないエイジを見ると、少し不憫にも感じる。エイジ、後ろで見てるだけってのは嫌うし。

 

「…いいですよ、現状は誰かがシステムに乗らなきゃならないんですから。」

「エイジ…。」

「まだ…まだ俺はみんなと同じ立場になれないのか。」

「まま、エイジ君落ち着いて。二人は私が送ってくわ。」

「よろしく、ミサト。それじゃ私は用事があるからここまで。二人とも、学校頑張ってね。」

 

「はーい。」

「ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

-赤木リツコ-

 

ダミーの残骸が浮遊している部屋。ここに来るのはいつぶりかしら。天井にはやっとの思いで製造した一本のダミープラグが吊るされており、私は碇指令と一緒にこれを見つめている。

 

「これが試作されたダミープラグです。レイのパーソナルが移植されています。ダミーの生体パーツに関しては、どうにかして残骸から利用できるパーツをかき集めて再現しました。ですが人の心…”魂”のデジタル化はできません。そのため、あくまで擬似的なもの、人間の真似事をする機械です。」

 

「信号パターンをエヴァに送り込む。エヴァがそこにパイロットがいると思い込み、シンクロさえすればいいんだ。初号機と弐号機のにデータを入れておけ。」

「しかし、まだ実験中の問題が残っていますが。」

「構わん。エヴァが動けばいい。」

「……はい。」

 

とにかく動けばいい…ユイさんに会うために、レイとアダムさえ持っていれば、後は起動した初号機だけが必要ということね。この人は…本当に、自分だけの望みを叶えるためならば何でも、どんな状態のものでも利用するのね。

 

「参号機の搬送はUNに一任してある、週末には届くだろう。後は君の方でやってくれ。」

「はい。調整並びに起動実験は松代で行います。」

「テストパイロットはどうだ?」

「ダミーはまだ危険です。現候補者の中から……」

「四人目を選ぶか。」

「はい。ひとり、生理学的に持ち上げれば可能な子供がいます。」

「任せる。―レイのこの肉体はどうなっている。」

 

私たちは中央の試験管に入っている、まだ生命の無いレイの素体を見つめる。

 

「現在のように投薬をしなければならない脆い肉体とは違い、人間としての機能、生命への耐久性を100%再現しています。現状、いつでもこの器は使用可能です。」

「完璧な肉体か…。現在のレイはどうだ。」

「現状は症状は安定していますが、時折発作が起こるようです。寿命に関しては…今年度持てば、奇跡かと。」

「わかった。いつでもこの器を使えるようにしておけ。」

「わかりました。」

 

完璧な肉体という意味を、碇指令は理解しているのだろうか。それはつまり、一人の人間を造り出したのだ。もう薬を使って身体を保つ必要もない、短命さに絶望することもない。

次の世代の命も紡げる、私の最高傑作。

もう、これ以上私はダミーを製造しない。これは私なりの碇指令への反逆。私は…感情豊かになったレイに、少なからず感化されたのかもしれないわね。

指令が試験管に指を触れても、その素体の目は開かずに眠りを保っていた。

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

今朝はちとばかし面倒ごとがあったが、それ以外は学校で問題が起きることもなくあっという間に放課後になった。

 

「エイ君、結局何の話だったの?」

「帰ったらみんなに伝える。割と深刻な話なんだ。」

「どんな話なんだろ…?」

 

俺ら二人は階段を下っていると、洞木さんの怒った声が聞こえてくる。

 

「ス ズ ハ ラ~~~~~!!!」

 

階段で騒がないでくれおっかない…。

 

「今日という今日は許さないんだから!!!」

「わーーっ!!よりによって一番危険なパンツ見てもうた!助けろシンジ!」

「待ちなさいコラッ!!」

「わっ、ちょっと!?」

 

トウジがシンジを盾にしようとするが、その時勢い余って二人とも足を踏み外してしまう。

 

「危ねぇ!」

 

シンジとトウジが階段から落ちそうになった。俺は両手でシンジとトウジ両方を引っ張り上げるが、逆に俺が階段から落ちていってしまう。

 

「やば―」

「エイジ!?」

「エイジ君!!」

 

頭から落下したら大ケガで済まないな、これ…

 

「エイ君!!」

 

レイからの声にハッとして、必死に身体を反転させ伸ばされたレイの腕をしっかり掴む。それと同時に左手で手すりを掴み、これ以上身体が落ちないように支える。

 

「せーふ…。あぶなかったね。」

「ああ、助かった…。」

 

レイに引っ張り上げられ、踊り場にしっかり着地すると周囲からヒューヒューと冷やかしを喰らう。こいつら、人の心ってのが無いのか?

 

「こいつら、シンジとトウジをを助けようともしねぇで…」

「ほっといて行こ。」

「ああ…。」

 

 

俺らは先に家に帰る。今日は訓練も無いため、放課後は基本的に自由時間だ。シンジとアスカはデートしてくるだの言ってどっか行ってたが、俺らはあんまりそういうことはしない。家で二人でピアノ弾いてる方が楽しいし。

 

「レイ、訊いていいか。結局…あとどれくらい生きれるんだ?」

「高校生になるまで生きてたら奇跡だって赤木博士言ってた。それ以上の望みは殆ど無いんだって。」

「そっか、あと一年くらい…たったそれだけしか生きられないんだな。」

「ううん、1年『も』、だよ。明日すぐ死んじゃうわけじゃないし、私は聞いてよかった。覚悟ができたから。」

「レイ…ほんと強くなったな。」

「エイ君と一緒だから。」

「そっか。…失礼。今日はヤケに電話が来るな。もしもし?」

 

『私よ。今いいかしら。』

「ミサト?今度はどうしたんです?」

『参号機パイロットの件で話があるの。…四人目(フォース)が、鈴原トウジ君に決まったわ。』

「な…!?決定事項なんですか!?」

 

「エイ君?」

 

『残念ながらそうらしいわ。マルドゥックからの正式書類は明日届く。それと一緒に、学校で鈴原君に依頼をするつもりらしいわ。あなたにも同行してもらうって。その他のスケジュールに関しては今日、帰ったら伝えるわ。みんなにもこのこと、伝えないといけないから。』

 

また、俺の周囲の人間が危険に……どうして俺じゃないんだ…。自然と携帯を握る力が強くなっていた。

 

「わかりました。失礼…します。」

「…どうしたの?そんな青ざめて。」

「四人目が…トウジになった。」

「え…?」

 

俺の言葉を聞き、レイまで固まってしまう。

パイロットが「余っている」状態なのに、何故俺が起用されない。確かにクロッシングはミッちゃん(≒MAGI)を介さないとできてはいないが、それに頼らないシステムもここ数ヵ月でかなり完成しつつある。それのテストテストすらしないとは、本気で上層部が何を考えているのかがわからなかった。

 

 

夕食後、全員でテーブルを囲み現状報告をミサトから受ける。

 

「さて…みんなあ集まってくれたわね。もう聞いたかもしれないけれど、私からもう一度伝えておくわ。

まず、アメリカの第一支部が四号機へのS²機関搭載実験中に丸々消滅したわ。支部職員は勿論、アメリカで唯一見つかっていたパイロットもろとも、ね。」

 

「そんな…。」

「ミサトさん、僕らのエヴァは大丈夫なんですか!?」

 

「それは平気よ。今のところはそういった危ないモノを扱う予定は無いわ。そうよね?エイジ君。」

「ええ。俺がやってる武装評価試験でも、危ない武器は1つ以外思い付きませんし。」

「逆に危ないのって何よ?」

「マステマ。」

「あっ…それは納得ね。」

 

「それで、参号機パイロットの件。あれって本当に決定したことなんですか?」

「綾波、何それ。」

 

「これも説明しなきゃならないわね。四号機の件でビビったアメリカがこっちに参号機を押し付けてきたのよ。現在の暫定パイロットは鈴原トウジ君。それで起動実験だけど―」

「ちょっと待ってください。なんでトウジなんですか!?」

「シンジ、落ち着きなさいよ。」

「落ち着いてられないよ!ミサトさん、どうしてなんですか!」

「私にもまだ、詳しいことは伝えられていないわ。正式な書類も明日届くのよ。」

「そんな…だからって―」

 

「それじゃあ、自分の知らない『誰か』だったらいいの?」

 

「ミチヨちゃん…?」

 

シンジはミッちゃんを睨むが、彼女の言っていることはもっともだ。俺が起用されない以上、同年代の誰かがパイロットになったことは間違いない。それがたまたまトウジだったというだけだ。感情では否定しても、この事実は覆らない。

 

「シンジ、そうミッちゃんを睨むな。もう決まったことにとやかく言うのはよせ。」

「エイジ君は何とも思わないわけ!?」

「思うに決まってるだろ!今は受け入れて、トウジのサポートをしてやるのが最善なんだ。それじゃあ何だ、仮にトウジが断ったとして、それで誰かが代わりをして、それならいいのかよ!」

「そ、それは…」

「シンジ、世の中にはどんなに頑張っても覆らない事だってある。理不尽を押し付けられる事だってある。だからって、何でもかんでも噛みつくのはダメだ。」

「そんなこと言われたって…」

 

シンジは納得していない顔をしているが、それも仕方ないだろう。14の子にそんな理不尽を押し付けている時点でだいぶイカれたことをしているんだから。

 

「ごめんね、急にこんな話になっちゃって…私も唐突な話で色々面倒ごとが重なってるのよね。

それじゃあ、今後のスケジュールを伝えるわ。

まず、明日4月26日に鈴原君に正式に依頼をするわ。エイジ君はそれに同行をお願い。

4月30日に参号機起動実験を行います。私たちは木曜日には松代に向かわないとだから、数日家を開けるわ。それでも5月2日には帰ってくる予定よ。

そしてエイジ君、あなたは鈴原君と一緒に起動実験に参加してもらいます。ただし、第二実験場じゃなく、第二支部の方でアーク二号機に搭乗、起動実験にはそれ経由で参加して貰います。基本的な移動スケジュールは私らのと一緒だから安心して。

私とリツコが留守の時の実験は加賀さんに一任しています。ま、数回だけだけど頑張ってね。」

 

「わかりました。」

「加賀さんというと…あの人ね。久しぶりだな。」

「綾波は面識があるの?」

「ちょっとだけ。松代から帰ってくるんだ。」

「なーんかあたしも聞いたことがあるわね。優秀なんだけど少しおっちょこちょいな紅茶好きだって。」

 

「レイが面識があるのなら大丈夫ね。それじゃスケジュールも伝えたし、今日はお開きにしましょう。色々思うところはあると思うけど、それでも私たちがちゃんとサポートするわ。安心して。さーみんな寝た寝た!」

 

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

「悪いシンジ、数学の宿題見せてくれんか!?」

「え~、なんか最近忘れっぽくない?こないだまでそんなこと無かったのに。」

「悪いな。サクラの様態があんま良くないんや。最近は病院でつきっきりでの。」

「あ…ごめん、変なこと聞いちゃったね。」

「謝んなシンジ。サクラもお前らに感謝しとる言うてるしな。」

「え。そうなの?」

「そうや。だからウジウジせんといてくれ。」

 

トウジがパイロットになる…まだ受け入れきれてはいないけれど、もう決まったことだし…。やっぱ、そんな簡単に受け入れることはできないや。

 

「どうした、朝からそんな暗い顔して。」

「ムサシ君。…ねえ、ムサシ君はさ、僕が危険な仕事をしてて、もし友達が何か危険なことに巻き込まれちゃったら…どうするの?」

「どうするって…まあ、俺なら全力でサポートするかな。」

「昨日エイジ君から言われたんだ。友達じゃなかったらいいのかって。確かにそうとも思ってる気がするんだけど、どうしても割りきれなくてさ…。」

「別に、気に入らないのなら反発してもいいんじゃないか?んでも、俺はそういうところにいたことがあまり無いからなんとも言えないけど。」

「そうかな…やっぱよくわからないや。」

「答えを出せない問いってのもあるよ。考え抜いた末の答えなら、誰も文句言えないんじゃないかな。」

「そっか…。」

 

「鈴原ーそれと影嶋!至急校長室に来なさい。」

 

「鈴原、何かやったの?影嶋くんまで巻き込んで。」

「アホ、んなことするわけないやろ。」

「…さっさと済ませよう。行くぜ。」

「お、おーう…。」

 

とうとう呼ばれた…トウジはどんな答えを出すんだろう。

 

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

「にしてもエイジまで呼ばれるたぁ、何の用なんかいな。」

「エヴァンゲリオン参号機のパイロット推薦だ。」

「ワシがか?エイジ、冗談も大概に……」

 

俺が本気の顔をしていると、流石のトウジも察しがついたようだ。

 

「本当…なんか。」

「ああ。エヴァのパイロットってのは厚待遇だけど、その分危険も多い。お前は身をもってそれを知ってるよな。」

「あ、ああ。」

「それにな、エヴァが傷つけばパイロットも痛い思いをする。ただ乗って敵と殴り合いをしてるワケじゃないんだ。それに引き受けたが最後、監視生活から逃れることはできない。それを覚悟した上で、しっかり考えて結論を出してくれ。俺から言えるのはそれだけだ。」

「…なんか、めちゃくちゃな事に巻き込まれてしまったんやな。」

「トウジがどんな結論を出しても、それを怒るヤツは誰もいない。自分で、決めてくれ。」

「わかったわ。…失礼します。」

「失礼します。」

 

校長室には赤木博士が座っていた。

 

「エイジ君お疲れ様。鈴原トウジ君ね。ネルフ本部技術一課所属、赤木リツコです。以後、よろしく。」

 

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