ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE38:犠牲

-惣流・アスカ・ラングレー-

 

「アーク、接続そのまま弐号機へのエントリー用意!」

 

-わかったわ。-

 

以前体感した慣性が長く続き、止まったかと思えば下へと移動する感覚。シンクロのシークエンスが始まり、弐号機の視界がプラグに投影される。

 

「弐号機、ケージアウト!!」

 

戦闘区域への最短ルートを上昇していく。地上に出ると近くの陽電子砲を受領し、右肩のウエポンラックをパージして敵へと構える。いや、アレは…!零号機が首を絞められたまま、初号機の目前に突き出されてるの!?

 

「初号機にクロッシング!っ、く…こんなに負荷がかかるのこれ…っ!?シンジ、まさかレイが!」

[あの敵、綾波を盾にしてる…!マズい、どうすれば……]

「焦っちゃダメ!あたしはいま後ろ取れてるから、撃って隙ができたらタックルなり何なりで参号機をレイから引き離して!」

[やってみる!]

 

あたしは参号機の頭部へと照準する。今だと思った瞬間、レイが参号機に反撃をして、レイは自分から拘束を解いた。

 

「今よ、シンジ!」

 

その掛け声に合わせ、参号機の頭部に陽電子砲を撃ち、その次のタイミングにはシンジが参号機にタックルをして更にあたしらから離れたところに退かせる。ついでに近くに転がっていた刀を回収したようだ。

 

「とりあえず上手くいったわね…。レイのバイタルは!?」

[不安定ながら、戦闘継続は可能です!]

「了解!みんな、畳み掛けるわよ!」

[うん!綾波とも連携して…]

 

[いやあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!]

[零号機、シンクロ率が急激に低下、活動停止!]

 

[綾波!?]

「シンジ、今は参号機が先よ!」

 

まさか、レイは気付いてしまったの!?仕方ない、あたしらだけで片付けるわ!

 

[アスカ、どうするの!?]

「焦る気持ちはわかるけど落ち着いて!両前衛で一気に片をつけるわ。ユニゾンで攻め込むわよ。」

[でもそれじゃあ、エイジ君が…]

「今は参号機を止めるのが先よ。…アンタも覚悟を決めなさい。」

[…っ、わかった。]

 

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

クロッシングしているアスカと波長を合わせて一気に攻め込もうとした矢先、参号機が自身に生えたもう1対の腕を引きちぎり、咆哮する。

 

[停戦申請…エイジ君からです!]

[アイツ、復活したのね!?状況を教えて!]

[現在、参号機の操作権を奪取したと松代から報告がありました!参号機のエントリープラグ回収も要求しています!指令!]

 

[……停戦は認められない。初号機、弐号機は目前の使徒を殲滅しろ。]

 

「何で!?エイジ君が受け答えしてるんでしょ!?どうしてなのさ父さん!!」

 

[使徒からの精神汚染の可能性だって有り得る!戦え、シンジ!]

 

「そんな、無茶苦茶だ!現に参号機は攻撃をしてきてないんだよ!?エイジ君がシンクロして動かしてるんじゃないか!」

[そうよ、指令はエイジを殺すつもりなの!?IFFはダメでも、せめて通信くらい開かせてちょうだい!]

 

[……ダミープラグ起動!システム解放―]

[待て碇!今の状態で参号機を殲滅すればアークパイロットの命はないぞ!!パイロットは現在こちらで救助中だ、もう少しだけ待ってくれないか!!]

[ダメだ!狩谷、いつまた乗っ取り返されるかわからないものを放置はできない!]

 

「そんな、初号機が動かない!?やめてよ父さん!これじゃエイジ君が本当に死んじゃう!それなら僕らで参号機を拘束すればいいじゃないか!」

 

[そんな悠長な事はやってられない!攻撃開始!!]

 

「ダメだ!!」

 

エイジ君が殺される!!止まれ、止まってよ!!

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

何も無い闇。

自分の存在が、辛うじて認識できる程度の世界。

他には何も無い。

レイにもっと、外の世界を見せてやりたかったな。

 

最期に悪あがきで、チャンネルを全解放して、外の世界でも拾えればいいか…。

 

レイ…俺は…。

 

 

 

-エイ君に殺されるのなら、まだ……最期に声を聞きたかったな…。-

 

 

な…!?レイ?駄目だ、生きてくれ。これじゃあ、俺がこっちの世界で生きてきた意味が…!届くかはわからないけれど、叫んだ。

 

「生きろ…!俺のことはいい!レイ、お前は生きるんだ!自分でそう願ったんだろ!?だったら最期までその命を使え!」

 

その瞬間、意識がもとの体に戻ってくる。プラグ機能は再現されているようで、ノイズが走りながらも外の様子を確認できる。というか最早その必要もなく、自分の目が参号機の目となり、外を視認できている。どうやら状況は肩から生えた腕で零号機の首を絞め、それを初号機の盾にしているようだ。

 

「やっと…戻ってこれたな…?」

『何!?何故お前がここにいる!』

「これはミサトからの受け売りなんだがな、『奇跡ってのは自らの力で起こすもんだ』…らしいぜ?いい加減俺の身体から出ていきやがれ、使徒!!」

『させるか!!』

「ぐ、俺を押さえ込もうなんざ…!お前こそ…それ以上好き勝手させるかよ!」

『な!?私を逆に乗っ取ろうというのか!?』

「俺は…お前だ!お前は…っ、俺だ!!」

 

叫び終わると、零号機が俺の首筋にナイフを突き立ててくる。激しい痛みが左側の首付け根を襲うが、そのお陰で意識が更にはっきりした。

その後は零号機の蹴りで間合いから剥がされ、頭部への狙撃とタックルによる追撃。

間合いが離れたのを確認すると、俺は叫びながら両肩に生えた腕を引きちぎる。

 

「うおおおおおおおおお!!!!操作権奪取!発令所、聞こえるか!!」

 

[こちら第二支部発令所、通信回復を確認!参号機はどうなった!!]

 

「こちらアーク、参号機の奪取に成功!戦闘中止と参号機パイロットの保護を申請!」

 

[了解!直ちに本部へと連絡する!]

 

「ありがとうございます!」

 

これでひとまず戦闘行為は止まるだろう。未だに武装を向けている初号機と弐号機の動きに注意しながらも距離を取って静かにしている。参号機の処遇はともかく、人員が無事なら…な!?初号機が俺を!?どうにか組み合って動きは止めたが、シンジにしちゃあ妙に力が入ってる。接触回線を開いて真意を訊くしかない…!

 

「おいシンジ、どういうつもりだ!もう停戦通知が来たはずだぞ!!」

[わからない!初号機が勝手に動いてるんだ!]

「な!?勝手にだって!?」

 

ダミープラグ!?バカな!だって”アレ”は全て破壊したはずだ…レイの意思で!なのに何故!?

そんなことより、今はシステムコアの恩恵を得られない…そんな状態でクロッシングできるのか!?…いや、やるんだ!!

 

「クロッシングスタート!シンジ、レイ、アスカ、聞こえるか!?」

 

[聞こえる!]

[あたしにも届いたわ!]

[あ………エイ…君…?]

 

「レイ、無理するな。今指揮してるのはアスカだな!アスカ、指令に伝えろ!参号機はもう暴れないから戦闘行為を止めろって!」

 

アスカは陽電子砲をこちらに向けたままだ。と言うことは、まだ何か問題があるということだな。

 

[いえ…参号機からはまだ使徒の反応が残ってるわ。停戦が認められないのも確かね。指令は参号機の殲滅をご所望してるわよ、エイジ。]

「クソ、なら俺が初号機を抑えてる間にトウジが入ったプラグを回収してくれ!最悪自爆してでもコイツを破壊する!」

 

[わかったわ!]

 

にしても初号機のこのバカ力は何なんだ!?どうにか関節を極めて動きを封じているが、いつまた暴れだすかわかったもんじゃない。人間が動かしていない以上、無理矢理関節を外してでも攻撃をしてくる可能性だってある。

 

[エイジ、プラグを回収したわ!]

 

「了解。…Dモード始動!」

 

Dモード…所謂自爆モード。本来はエヴァに刺さったプラグから直接操作するようなモノだが、アークの管制システムなら遠隔でも発動できる。勿論どっちもパイロットの脱出が前提だけど。

…結局、俺は最後までエヴァのパイロットにはなれなかったな。ずっと俺だけ、後ろで…

 

[アークパイロット、機体からのパターンブルー反応が消失しました。Dモードを解除してください。]

 

「了解。奇跡、か…。あ……?」

 

気を抜いたその瞬間、左半身の感覚を喪失して唐突に意識が途切れた。

 

 

 

 

 

綾波レイ-

 

う、あ…戦闘は、どうなったの…?少しの間だけ、直接エイ君を感じれたような、そんな気がしたけれど…。シンクロが回復して周囲を見回すと、参号機が目の赤い初号機に関節技を決めていたところだった。

 

[パターン青、消失!]

[そんな、唐突に!?]

 

[碇…アークパイロットに助けられたな。アーク2号機に直ちに報告!]

[りょ、了解!]

[現在、アークパイロットのバイタル微弱!それに…幾つかの計測値が異常です!この状態でシンクロを続けるのは危険です!]

[何!?直ちに救助を再開!絶対に助け出せ!]

 

使徒が…消えたの…?そうだ、エイ君、彼は……

 

[と、止まれ!父さん、どういうつもりなんだよ!?]

[使徒は殲滅しなければならない!得体の知れないモノを持つ余裕など無いんだ!]

[でも!エイジ君と参号機のシンクロは切れてないんでしょ!?今度こそエイジ君が死んじゃうよ!!]

[言っただろう、駄々をこねるな!ダミーに参号機への攻撃指示を出せ!]

 

[碇お前…!パイロットは使い捨ての電池じゃないんだぞ!]

[松代との通信を切れ。これ以上「こちら」の邪魔をさせるな。]

 

何とか起き上がって初号機の方を向くと、そこには動かなくなった参号機に馬乗りになった初号機が、参号機を執拗に殴り続けている。ダメ、ダメ……

 

「もうやめてよおおおおおおおおおおおお!!!」

 

初号機に飛び付き、初号機と共に転げながら参号機の上からいなくなる。そのまま初号機に馬乗りになり、参号機の首もとに突き刺さったままだったナイフを引き抜き、逆手に持って初号機に何度も切っ先を叩きつける。

どうして!どうして!

 

「どうして!!!」

[レイ、やめなさい!]

 

弐号機が私の邪魔をしようとするけれど、それも振り切って尚も攻撃を続ける。

 

[ちょっと発令所、いい加減初号機をどうにかしなさいよ!このままじゃ使えないエヴァがもう一つ増えるわよ!?]

 

[…仕方あるまい。]

[ああ…。初号機のダミーを解除!]

[了解。ダミーシステム、解除します…。]

 

[…アーク、レイの零号機コントロール権を剥奪して。]

 

どうして…どうしてみんなこんな酷いことをするの…どうしてよ……。

 

右手に掴んだレバーをただただ必死に前後に動かし、何度もナイフを初号機に叩きつける。シンクロが切れた後も、力尽きるまでずっと―涙をLCLの中に溶かしながら、腕を動かし続けていた。

 

 

 

 

 

-葛城ミサト-

 

う……全身が痛む…。痛い…?

 

「私、まだ生きて………加持君?」

「生きててよかったな、葛城…。」

 

「リツコは?」

「君よりかは軽傷だ。」

 

「そう…。エヴァ参号機は?」

「一時的に使徒に乗っ取られたが、今は本部で凍結処分中だ。噂じゃ封印とまで言われてるよ。」

「え…?殲滅、されたんじゃないの?」

「エイジ君が頑張ってくれたらしいよ。鈴原君は軽傷で済んでるし、他のエヴァの損害もそれほど深刻じゃない。」

「エイジ君は?アーク二号機で鈴原君のサポートをしていたのだけれど…。」

 

「…………。」

 

「加持君…?」

 

「彼は、使徒によって汚染されている。本部で隔離措置を取られているようだ。」

 

「そんな…!」

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

…………ん…、ここは…病院…。そっか、私…あのあと、怒りで我を忘れて…。罰則は免れないんだろな…。頭を抑えながら起き上がろうとすると、近くに座っていたであろう碇くんに止められ、押し戻される。

 

「あ、ダメだよ!まだ寝てなきゃ!」

「い、かり…くん…?エイ君は…?無事…よね…?」

「そ……それは…」

「嘘…嘘でしょ!?ねえ!嘘だって言ってよ!!」

「お、落ち着いて。エイジ君は生きてるよ。でも…その、状況は複雑なんだ。」

 

「複雑って…どういうこと?私、確認したいの。ちゃんと彼が無事か…。」

「綾波…。ほら、肩貸すから。一緒に行こう。」

「うん。」

 

あのとき、ダミーで動いていた初号機に対して全くの無抵抗だったのがどうしても気になる。何かあったんじゃないかって、不安でしょうがなかった。

 

 

 

 

 

-惣流・アスカ・ラングレー-

 

棺桶のような機械に隔離されているエイジを見て、あたしは拳を握り締め、目の前のガラスに叩きつける。

目の前にいるエイジは…左半身が青い結晶物に覆われており、昏睡状態にある。何故か生命活動を続けている状態だとヒトミは言っていた。左半身は依然としてモニターできないままで、半開きのままの右目は濁った青色をしている。現在は呼吸器を付けられ、カプセルの中に隔離されている。

今回の戦闘、あたしは後ろでシステムに乗っていただけで、ほとんど何もできなかった。アイツも…今までずっとこんな感情を持ってたのね。ただ後ろで痛みを背負うだけで、戦闘に直接参加できないもどかしさを。見ていることしかできない辛さを。あたしは弐号機としかシンクロできない分、あの時レイを直接助けてあげられなかった。

唇を噛み締めて、震えるほど握り締めた手と額をガラスに当てていると、二人分の足音が聞こえてくる。レイが起きたのね。あの子…これを見て落ち着いていられるはずがない。あたしですら、平静を保つのに必死だったのに…。

 

「来たわね、レイ。」

「アスカ…。っ!?」

 

レイもすぐに気付いたようで、あたしの真隣まで駆け寄って、ガラスに両手をつく。

 

「何…これ……。」

 

当然の反応に対して、コンソールと向き合っていたヒトミが回答をする。

 

「恐らく、使徒による物理的な汚染だと…推測されます。こんなこと、レイちゃんの前で言いたくないんだけど…。」

「どう、したんですか…ヒトミさん…。」

 

「パターン青反応が、エイジ君の左半身から発せられているの。」

 

「嘘……。」

 

レイは青ざめ、その場に座り込んでしまう。無理もない、エイジが使徒に精神だけでなく、肉体までも汚染されてしまっているなんて、早々受け入れられないわ。

 

「綾波…。」

「しばらくそっとしておいてあげましょう。ヒトミ、場所移しましょ。」

「ええ、わかりました。」

 

 

あたしらはヒトミの研究室に移り、改めて話を聞く。

 

「それで、エイジ君の状態なんですが…現状は打てる手がほとんど無いんです。病気に対して抗生物質を打ってどうにかするとか、そんな単純な話じゃないから…。」

「目覚めるかどうかも不明、といったところかしら。」

「ええ。栄養に関しては点滴などで外部から供給できますが、昏睡状態が長引くとその分脳へのダメージも否定できませんし…。」

「そんな…僕たちにできることは無いんですか?」

「現状は…。それでも、私たちは全力で対応します。せめて、あの子の命だけでも救います。」

 

「…ありがとう、それを聞けただけでもよかったわ。レイ、あの調子じゃあ立ち直れないかもしれないし。あの子、自分が思ってる以上にエイジに依存してるのが目に見えるしね。」

「綾波…大丈夫かな…。」

「あの子にこれ以上何か言っても気持ちを逆撫でするだけよ。…鈴原のところ行きましょ。」

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

どうして、彼がこんなことに…。彼に対して何もできないなんて…。

 

「やれることならあるよ、お姉ちゃん。」

「ミチヨちゃん?」

「クロッシングするの。エイジは今、自分の存在をかけて使徒と戦っている。お姉ちゃんができることは、彼に呼び掛けて助けてあげること。すぐには効果は得られないかもしれないけれど、それでも呼び掛けてあげて。そうすれば必ず彼は目覚めるわ。」

 

「わかった…。」

 

彼へ意識を集中させ、意識へのリンクを試みる。…やっとの思いで見つけたそれは、とても衰弱していた。私がそれに触れると、少しだけ温かく、穏やかな感情が伝わってくる。数分間それに触れ続けていると、唐突に外部から無理矢理に私の意識を引き込もうとする感覚が起きる。慌てて自分の意識をエイ君の中から出すと、それ以上は追ってこなかった。

 

この日以降、毎日朝と放課後に必ずここに来て、彼へクロッシングで呼び掛けている。反応自体は少しずつ強くなってくれているけれど、それでも彼が目覚めてくれることはなかった。

 

 

 

 

 

-葛城ミサト-

 

ケイジに必要以上に強力な拘束をされた参号機を私は見つめる。エイジ君は自分を犠牲にして、機体とパイロット両方を助けた。

でも、私たちはあんな大見得切っておいて何も……

 

「もう起きていいの?」

「仕事ができれば問題ないわ。リツコこそどうなのよ。」

「あら、私はあなたよりかは軽傷よ。…それにしても、今回の戦闘は無茶苦茶だったわね。」

「私も聞いたわ。エヴァだけでなく、アークシステムまで乗っ取るなんて。向こうのシステムコアはどうだったの?」

 

「それに関しては報告が上がっているわ。システムは参号機のパターン青が消滅したのと同時に機能停止、システムコアは形象崩壊していたらしいわ。

クロッシングシステムのレコーダーは参号機の異常が発生したのと同時に空白になっていて、エイジ君が操作権を持ったのと同時に復活している。恐らく使徒からの介入のせいね。」

「今回の使徒はわからないことだらけだわ。どうしてシステムを介していたのかしら。」

 

「もしかしたら、クロッシングが関わっているのかもしれないわ。」

「どういうこと?」

「クロッシングに関しては、使徒が自発的に行っていた前例があるわ。あの毛虫から蛾みたいに変態した使徒、覚えてる?」

「ああ、何故かカウントされてないアレね。」

「あの使徒は人間の中に入り込んで、周囲の人間とクロッシングをしていたらしいのよ。普段から訓練でもクロッシングをしているエイジ君の証言だから信憑性はある。」

 

「まさか、使徒が人間のことを知ろうとしたわけ?」

「そこまではわからないわ。でも、今後も何かしらのアプローチがある可能性は否定できない。…そういえばね、参号機に関して調べて、色々わかったことがあるの。ミサトにも教えておくわ。ついてきて頂戴。」

 

 

リツコの部屋に行くと、パソコンに膨大なデータが映し出される。

 

「まずはこれ。参号機の腕が増えたときのデータね。」

「これは…使徒が新たに骨格と筋肉を造り出したって言いたいの?でもこんな膨大なエネルギー…」

「そう、機関が無ければ実現はできないわ。今までの使徒は統計的にほぼ同じ大きさの球体がどこかに必ずあったけれど、今回ので使徒のコアの大きさに依存しないことがわかったわね。次はこれ、エイジ君が意識を取り戻した後。パターン青が残っているけれど、主要なエネルギーは参号機自身が作り出しているのよ。」

「まさか、参号機が機関を取り込んだって言うの!?」

「恐らく、といったところね。でもね、もうこのエヴァとシンクロできる人間はいないと思われるわ。」

「どういうこと?エヴァがパイロットを拒絶をしているの?」

「そうなんだけど、それが今までのとは違って特殊すぎるの。このグラフを見てくれればわかると思うわ。」

「常にパターンが変化しているのかしら。他の3機と違って不安定なグラフね。」

「そう。そしてこれは今までグラフが固定されていたものとは一線を画すものよ。パーソナルが固定されている他の子では動かせないでしょうね。今までの経験則で、動かせるのは―」

 

「エイジ君だけ、か。この機体の暴走の可能性は?」

 

「当然、莫大なリスクがあるわ。だからあんな風に拘束をしてるのよ。…気休めでしょうがね。」

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

参号機の件から1週間くらい経って、色々落ち着いた頃に私は指令に呼び出された。

 

「何故呼ばれたかはわかるな?レイ。」

 

「初号機への…攻撃ですね、指令。」

 

「分かっているのなら話は早い。何故初号機を破壊しようとした。」

 

「それは………エイジ君が、殺されそうになってたから…。」

 

「アークパイロットを生かす為なら初号機パイロットの命はどうでもいいのか。」

 

「っ!?そんなこと!!あのときダミーを使っていたのならシンクロはそもそも切れていたはずです!」

 

「だが、お前がやったことはそういう事だ。自らのエゴを押し通そうとするとは…変わったな。」

 

「碇指令!!」

 

「話は終わりだ。処分は追って伝える。下がれ。」

 

「く……失礼します!」

 

 

どうしてみんな、こんなに冷たいんだろう。彼の命は私とは違って、重いものなのに。軽くはないのに。どうして…。ロッカーの長椅子に足を乗せ、腕で抱えて壁に寄りかかる。私…こんなに思い詰めてる。考えすぎなのかな。でも…

 

「私、わからないよ…。」

 

こんなことをしていると、訓練を終えたであろうアスカが入ってくる。

 

「あら、レイ。今日はどうしたの?訓練来なかったじゃない。」

「ごめん…碇指令に呼ばれてて…。」

「一日くらいいいわ。レイも辛いのに…。」

 

「ねえ、アスカ。私、何が正しくて何が間違ってるのか、わからない。使徒を倒さないといけないのはわかる。指令の命令にも従わないといけないのもわかる。でも、それで誰かの命を踏みつけにしていいの?エイジ君だけじゃない。もしエイジ君がいなかったら、鈴原君があんなになって…それでも助けなきゃいけないんじゃないの?」

「もしかして、指令から何か言われたの?」

「初号機に攻撃したこと。あの時はもう参号機を殴る初号機を見てられなくなっちゃって、それで…。」

 

「それでよかったんじゃない?」

「そうかな…。」

 

「そうよ。あたしだって、シンジが似たような状態になったら同じことしてたと思うわ。それにあんな、半身が結晶に覆われるなんて動揺しないはずがないもの。もっとも、あたしだったら指令のところに殴り込みに行くかもしれないけど。」

 

「アスカが…?」

「ええ。…でもねレイ、幾ら相手がエイジであっても、戦うのをやめちゃダメよ。助けられるものも、助けられなくなるわ。少し前にエヴァ同士の戦闘訓練やったでしょ?乗っ取られた時を想定してやったあれ。あの時を思い出して。エイジは何て言ってた?」

 

「『相手を殺さずに無力化するのも戦い方の一つ。でもそれには、相手を殺すことより訓練をしなきゃならない。』…だっけ。」

 

「そうよ。エイジはね、私たちに人殺しなんてやってほしくないって思ってるのよ。エイジは知ってるのよ、人を手にかける怖さってのを。私だってドイツ(向こう)で訓練を受けてるときにはそんなこともやったわ。でもそれを使えてるのは相手が使徒だからで、人間だからじゃないし。」

 

「………。」

 

「無理に飲み込んで欲しいわけじゃないわ。でも―」

 

[総員、第一種戦闘配置!地対空迎撃戦用意!]

 

「話は終わり、行きましょう!」

 

「……うん。」

 

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