後サブタイトルを調整しました。
-碇シンジ-
「トウジ…起きてる?」
「お、シンジか。ワイなら平気やで、ご覧のとおりぃっ!?あつつ……。」
「ほら鈴原、動いちゃダメってさっき言われたばかりでしょ?」
病室にはトウジと委員長がいる。結局トウジは精密検査を受けてもどこにも障害はなく、体の表面にあった僅かな侵食部位を切除しただけで話が終わった。…本当にエイジ君はトウジを守ったんだ。
「元気そうでよかったよ。」
「おう。そいやシンジ、エイジのこと何か知らんか?色んな人に聞いても誰も教えてくれんのや。」
「確かに、ここ最近ずっと見てないわよね。やっぱ連休でも訓練で忙しいの?」
「そ、それは……。ごめん、ここじゃ話せないんだ。ちょっと待って。」
僕は病室の固定電話を取り、赤木博士へと連絡する。自然と小声になっていた。
「すみません、碇です。」
『あらシンジくん、どうしたの?病室の電話なんて使って。』
「エイジ君の様子を…トウジに見せてもいいですか?」
『そうね…やめておきましょう。これ以上の事を知ったら、彼は本当に後戻りできなくなるわ。彼に関しては重症を負ってしまって今は面会謝絶、という体にしておいて。』
「…わかりました、失礼します。
ごめんトウジ、やっぱりダメだった。エイジ君は重症だし、やっぱり今は面会はしちゃダメだって。」
「重症って…そんな激しい戦いだったんか。」
「ごめん、私何も知らなくて…。」
「仕方ないよ。ここにいると話せない事の方が多いくらいだし。それじゃ、僕はこれから訓練あるから。じゃあね、お大事に。」
「おう。」
「訓練頑張ってね。」
今日の訓練、結局最後まで綾波が来ることは無かった。珍しい、いつも絶対に来てたのに。やっぱり、エイジ君がああなったのが深い傷になってるのかもしれない。でも、仮に会ってどういう風に声をかければいいんだろう。やっぱりこれは喋れるようになってもわからない。
そういえば綾波、最近シンクロ率が下降気味だって言ってたな、本当に大丈夫かな…。シャワールームに入ろうとすると、アナウンスと共に警告音が鳴る。
[総員、第一種戦闘配置!地対空迎撃戦用意!]
「使徒!?こんな短い間隔でもう…!」
僕は走ってケージへと戻った。
-葛城ミサト-
こんな短いスパンでもう使徒が!?エイジ君も未だに回復していないのに!
「目標は!?」
「現在、侵攻中です!駒ヶ岳防衛線突破されました!」
モニターには各種兵装ビルやUNの戦闘車両が使徒へ攻撃をするが映像が映されるが、相も変わらず全く効果がない。都市上空に来た使徒は仮面の目らしき部分を光らせ、光線を放つ。着弾位置に光の十字架が形成され、ビルが沈み込んでいく。発令所まで振動が来る攻撃…なんて威力なの!?。
「第1から18番装甲まで損壊!18もある特殊装甲を一撃で…!?」
「アスカ、聞こえる?エヴァでの地上迎撃は間に合わないわ。初号機と零号機をジオフロント内に配置して本部施設の直援に回して!兵装ビルへの武装アクセス権は解放しているわ、好きなだけ使っていいわよ!」
[了解!初号機ケージアウト!零号機…レイ!?どうしたの!?]
「零号機、シンクロ率が起動ラインまで上がりません!出撃不能!」
「何ですって!?」
[あたしが弐号機で出るわ!ケージアウト用意!]
「仕方ないわ。メインは初号機、弐号機のツインドッグで展開!二人とも頼むわよ…!」
-惣流・アスカ・ラングレー-
レイ、エヴァを動かせなくなるほど憔悴しているのね。仕方ないわ、私らが片付けるしか…!
「クロッシング開始!っく、う…っ、シンジ!私がわかる!?」
[アスカ、大丈夫なの!?]
「私がやらなきゃならないんだから…!やるわよ!」
シンジはマゴロク・E・ソードとパレットライフルを装備し、あたしは試製ライフルを装備する。段々とクロッシングに対する負荷が強くなっていっているが、ここで根を上げてはいられない。
「あたしは…っ!行くわよシンジ!」
[うん!]
シンジとあたしは天井をぶち抜いて、倒壊したビルを撒き散らしながら降下してきた使徒に対して射撃を開始する。最初は何かの繭みたいな形状だったのが、今は左右対称の腕を展開して、胸部のコアを肋骨のようなモノで守っている。コイツ、想像以上に大きい…!
ATフィールドは中和しているのに、外皮が厚いのか全く攻撃を受け付けていない。この試製ライフル、ただでさえ相当な火力を出せるのにそれすら受け付けない。こんな相手…!
「降りてきたわ!シンジ!」
[了解、援護よろしく!]
「言われなくても!」
シンジはパレットライフルを捨て、太刀を装備して使徒へと走る。あたしは恐らく頭部であろう仮面に向け狙撃を繰り返すが、怯みすらしない。
何?敵の腕が短くなって、円筒状に変化してこちらに…
「シンジ!防御!」
[な!?]
敵の腕がパイルバンカーのように射出され、勢いよくシンジへと放たれる。シンジは咄嗟に刀の腹で防御して、何とか被害を出さずに済んだ。
[何だよ、こんなのインチキだ!]
「本当よ全く!」
シンジは後方へ退き、あたしもスマッシュホークを持って敵へと対峙する。光線だけじゃなくて、あの伸縮自在な腕…なかなかに厄介ね。
「両前衛開始!ユニゾンA-5から!」
[了解!!]
シンジと波長を合わせ、同じタイミングで前に出る。敵は再度パイルを撃ってくるが、同じタイミングに同じ部位への攻撃のため回避は易い。姿勢を低くして回避して、同時にコアに対して刺突。だが、直前に放たれたATフィールドに阻まれ、後一歩が届かない。
[くっ、硬いなこいつ…!]
「一気に侵食するわよ!」
あたしらはエヴァ二機の力で一気に敵のATフィールドを侵し、弱体化させる。後もう少し、もう少しだけ突き出せばフィールドを破れるというところで、あたしのシステムからの負荷が限界に近づいてしまった。強烈な頭痛から腕から力が抜け、膝をついてしまう。
「うっ!?ぁあああああっ…!あと…一息なのにィ!」
[アスカ!?畜生!]
シンジは一気に敵のATフィールドを貫きコアへと太刀を突き出すが、肋骨のような構造体に防がれて、切っ先が欠けてしまった。効かないと見るやすぐ太刀を捨てて、あたしを抱えて後退をする。下がるときに敵からのパイル追撃を受けて左腹部を少し抉られてしまい、あたしにも同時に痛みが来る。
[うっ!?]
「あ…!?がぁ…っ。」
[アスカ、クロッシングを切って!アスカが持たないよ!]
「でも…そうしたら…!」
[今はお願い!]
「く…っ。システム切断!」
アークシステムから切断され、負荷からの頭痛は収まるもののさっきのフィードバックの痛みは残っている。このザマ…アイツに見られたら笑われるわね。
シンジはもう一度太刀を受領し、あたしを庇うように使徒に立ちはだかる。
[アスカは絶対に傷つけさせない!]
-綾波路世-
[どうして…どうして起動できないの!?]
「レイ、落ち着きなさい!もう一度最初からやるわよ。」
「そうよ、お姉ちゃん。私とクロッシングして、気持ちを落ち着けて…。」
「ミチヨちゃん!?どうしてここに!」
目を閉じ、お姉ちゃんとクロッシングする。
シンクロできない焦りと自分への恐怖…それを感じるのは人間として当然のことよ。でも、その恐怖は克服できる。エイジの手を借りなくても、誰かの手を借りなくても、自分の手で。
お姉ちゃんは、誰かを守りたいって思ったことはあるよね。それは本当にエイジだけに思っていた?
-……いいえ。エイ君だけじゃなくて、碇くんも、アスカも、ミサトさんも…。みんな守りたいって思ってるわ。-
そう、みんな大切よね。逃げちゃダメ。あなたには他の大多数の人と違って、みんなを守る力があるわ。
-でも、それでエイ君を傷つけたのには変わり無いじゃない。-
そうね。でも、その恐怖を乗り越えなければ、ずっとエヴァを動かせないままだわ。
-どうすればいいの?-
簡単よ、強く願うの。ずっと自分の負の感情に対してだけに注目してちゃダメ。上を向いて、目を開いて。そうすれば、エヴァともシンクロできるわ。
さあ、目を閉じて、深呼吸……もう一度……。目を開いて。もう大丈夫。
「零号機、起動!」
「シンクロ率、安定しています!戦闘可能です!」
「ミチヨちゃん、あなた本当に…!」
[皆さん、お騒がせしました。…行ってきます!]
「行ってらっしゃい、レイ。頑張ってね。」
ミサトのお姉ちゃんへの激励を終えてから、零号機を出撃させる。
「零号機ケージアウト。頑張ってね、お姉ちゃん。リツコ、エイジの所へ行くわよ。」
「わかったわ。ミサト、ここはよろしく。何かあったら直通でお願いね、マヤ。」
「わかったわ、リツコ。」
「了解です、先輩。」
「一応軍部の人間6人を呼んだわ。使徒に乗っ取られたまま暴れられても困るし。」
「それは大丈夫。…さあ起きて、エイジ。」
クロッシングを始めると、彼は目を見開き、青色に光らせる。後ろの兵士たちが怯えて銃を向けるけど、大丈夫。彼はもう、普通の人間には傷つけられないから。彼の左半身の結晶が砕け散り、彼はカプセルから飛び起きる。
「おはよう、エイジ。1週間の眠りから覚めた感じはどう?」
-影島エイジ-
意識が、深い深い闇の中で、やっと俺の意識が回復する。何度かレイを感じれた気がするが、詳しい事は何もわからない。
こんな暗闇の中で、何かの声がする。
-お前は誰だ。-
俺は影嶋エイジだ。
-違う。それは肉体の名称だろう。お前は司城光也だ。-
「何か」の声と同時に、俺は昔の…25歳の俺の姿になる。
それこそ違うな。ここに司城光也はいない。彼自身の存在を認知できる人間はこの世界にはいない。違うか?
-では…「お前自身」はどこにいる?-
俺はここにいる。お前こそ何者だ?俺はお前を知らない。
-私はお前らが「使徒」と呼称している生命体だ。だが…見方を変えれば、このような姿にもなる。-
「何か」はシンジの髪を少し伸ばしたような髪型、色は黒。真面目そうだが、少し臆病そうな顔へと変化し、身長はシンジより少し低いくらいの小柄な子に変化する。シンジより男っぽい顔だな。
お前は…俺なのか?
-いいや、私はお前ではない。私は本来存在するべきはずだった影島エイジの姿を模した存在だ。お前は特異な存在だ。本来この人間、この姿でサルベージされる筈だったのに、お前の魂がどこからか現れ、この人間の存在を上書きしてしまった。-
なるほどね。で?何でお前は俺と対話しているんだ?
「それはあなたが僕の肉体から出ていってくれないからですよ、司城さん。」
声が中学生くらいの、声変わりが始まっていそうな少しだけ低いトーンが混じった声へと変化する。こいつが本来の影嶋エイジか。
「ここは…電車か?しかも夕暮れ。随分ロマンチックなものをチョイスしたな。」
「これは貴方の心ですよ。今、僕たちはあなたの心の中で話をしているんです。」
「へェ…で?お前は何がしたいんだ。俺はもういい加減起きたいんだが?レイの事も気になるし。」
「その前に…話に入ってきたらどうですか?影嶋…いや、司城サヤさん。」
電車の後ろの方へとエイジ君(仮称)は声をかけると、この世界での俺の女装姿で出てくる、今は封印しているはずの裏の人格…サヤが現れる。
「私のこと、気付いてたんだ。もう私の出番は無いと思ってたのにさ。」
「…司城さん、何故あなたの人格の中に彼女が形成されたか、わかりますか?」
「んだ唐突に。…確かによくわからないな。」
「ちょっと、私の顔を見ながら言うこと?」
「あなたの贖罪意識が根幹ですよ。記憶が消去されているので何とも言えませんが、あなたは第三新東京市に来たその時から、髪型が羽佐間霞さんと同じものになっていた。つまり、それ以前からあなたは霞さんを助けられなかったことを悔やんでいたでしょう。」
「そら想像に易いよな。」
「うんうん。」
「その時、貴方はこう思ったんじゃないんですか?『自分の命を彼女に差し出せたらどれだけよかったか』と。その意思が顕れたのが彼女、サヤさんです。司城さんの命を差し込む鞘…随分しょうもないネーミングですね。」
「ほんとか?」
「ううん?私そこまで考えてなかった。」
「無意識ですよ。貴方はいつも、複数の事を同時に処理してるじゃないですか。貴方はそれを自覚していない。いつもクロッシングで同時に4人と接続できているのは、貴方の並列処理能力の賜物です。しかし、それは脳にかなりの負荷をかける。表情を自由に作れたのも、同時指揮も、味方のシンクロ率の底上げも…あなたが自身の破滅を望んでやっていたんじゃないんですか?」
「確かに、そうだな。昔の俺は、この世界のどこにもいなかった。ただ自分の存在を、目の前にいる残酷な運命を強いられた子に使うために生きていたさ。それが、自分の命を使って誰かの幸せを守ることが、贖罪の唯一の方法だって思ってたよ。」
「そうです、あなたは一生この呪いから逃れることはできません。それなら…私にその心を譲って、楽になるべきです。もうあなたは傷つき過ぎた。心身共にボロボロのハズですよ?司城光也さん。」
「そうだな。でもな………俺はもう立ち止まらない。」
「何ですって?」
「俺の心を見たのに気付かなかったのか?俺はもう後ろを向いちゃいない。司城光也はな、もう死んだんだよ。」
その言葉と同時に、俺の姿が現在の俺へと変化する。
「貴方、髪型を…」
「この長い髪は、実際俺自身の罪の象徴だ。だけどな、もう俺は霞ちゃんに固執することはない。レイに肯定してもらったんだ。『俺はここにいていい』って!」
「何を言っているんです!自分が何者かわかって言っているんですか!?貴方は大人で―」
「そうだ。でも、俺はこの状況を受け入れたんだ。
俺は影嶋エイジ、15歳。恋人に綾波レイって同級生の女の子がいる、アークパイロット兼エヴァンゲリオン参号機パイロットだ!もう俺を惑わすのは無駄だ、使徒!」
「貴様…!もう一度同化して存在を奪ってやる!」
-起きて、エイジ。-
「ミッちゃんか…!
俺はもう自己を確立した!お前は俺ではない、消え失せろ、使徒!」
俺は目を見開き、飛び起きる。格好はまだプラグスーツのままか。ここはどこだ?俺はどんな状態に…
「おはよう、エイジ。1週間の眠りから覚めた感じはどう?」
「最悪な夢を見たよ。でも、確かめられた。」
「何を?」
「俺は今、ここにいることを。状況を教えてくれ。」
「わかった。現在、使徒がジオフロントまで侵入しているわ。全てのエヴァを投入してるけど、アスカが限界に近づいてるの。皆を守って、エイジ。」
クロッシングで情報を貰って俺は頷いて行動をしようとするが、周囲を見回すとNERV軍部の面々が俺に銃を向けている。
「どういうつもりだ!この非常事態の時に!!」
[あなたは使徒に汚染されているのよ。精神汚染されたその身体でインパクトを起こされたら―]
「人間同士で争ってる時かよ!状況を知れ!!」
目の前のコントロールルームを睨むと、周囲の人間を吹き飛ばしながら目の前の地面を抉って部屋の扉が八角形にブチ抜かれる。
「あなた…!」
「失礼!!」
カプセルから飛び降り、エヴァの格納ケージへ向かう。凍結状態なんざ知ったことか、アイツらの命が最優先だ!
「ミッちゃん!プラグ挿入シークエンス開始!」
-了解。-
インテリアがプラグから持ち上げられ、俺の目の前に来る。それに飛び乗るとインテリアは移動を始め、プラグ内に納められる。その後は普段通りエヴァの中に挿入、LCL注水。
[勝手なことをしないで頂戴!参号機は凍結処分中よ!]
「そうやって頭だけで考えやがって、3人を見殺しにしろってのか!!んぷ、ごぼ…これだから頭の固い大人は困るんだよ!」
ミッちゃんがMAGIに介入してるお陰で邪魔を受けない。シンクロのシークエンスが終了し、参号機との一体化が完了する。とりあえず余計な拘束に関しては素の拘束具を外してもらって、実力で破壊した。
「今までの戦闘情報をくれ。敵のスペックを知りたい。」
-はい、データを渡すわ。-
身体をまた拘束具に預けると、敵の情報が俺の頭に流れ込んでくる。光線、パイルバンカー、堅牢な装甲…だいぶ厄介だな。情報を整理していると、ミサトからの怒鳴り声が通信から聞こえてくる。
[今参号機を動かしているのはだ……エイジ君!?起きたのね!!]
「おはようございます、葛城二佐。休暇を存分に楽しませてもらいましたよ。」
[そんな冗談よしてよ、みんな心配していたのよ?病み上がりなのに戦闘なんて…]
「んな事言ってられませんからね。エヴァンゲリオン参号機は影嶋エイジで出ます!ケージアウト!」
初出撃以来の、上方向へGがかかる感覚。これが俺の、正式なエヴァンゲリオンのパイロットとしての本当の初出撃だ。そう思うと緊張こそするものの、自然に笑みが溢れた。
-綾波レイ-
「遅れてごめん!零号機戦線参加!」
[綾波!]
[ぐ…ったく、遅いのよレイ!]
ジオフロントに降り立つと、弐号機は膝をついており、初号機は単騎で使徒と戦闘をしていた。だが一向に有効打を与えれず、ずっと回避しかできていない。
「アスカは下がって!さっきから無理してるでしょ!」
[わかってるわ!
アスカは地面に落としっぱなしにしていたライフルを回収し、あたしはサンダースピアを受領して戦線に参加する。アスカは余程キツいのか、らしくない余裕のない声を出している。
碇くんが先陣を切り、私が後続、アスカがサポートの陣形で使徒へと向かう。
[レイ、アイツは腕を使ったパイルと光線が攻撃方法よ。あとATフィールドを割っても外皮がめちゃくちゃ硬い。生半可な攻撃は通用しないわ。]
「わかった。…零号機、初号機エンゲージ!」
クロッシングできないほどアスカは消耗してる。私がアスカの埋め合わせをちゃんとしなきゃ!
[いくよ、綾波!]
「了解!」
敵がパイルを打ち出すのと同時に、敵の両腕の内側に滑り込み、碇くんと私の前後を入れ換え。私はサンダースピアを肋骨の隙間にねじ込み、プラズマの刃を発生させる。
私が肋骨をこじ開けるのに手間取っている間、碇くんは太刀で、アスカはライフルで敵の腕を退け、パイルを打ち出させない。段々肋骨に亀裂が走り、隙間が開いてくる。あと少し…!
そう思ったその時、敵は私たちそれぞれに向けてよく知る力場を打ち出し、全員をバラバラの位置に弾き飛ばす。
「まさか!?」
「ATフィールド!!」
「こんな使い方があるワケ!?」
敵は突き刺さったままのサンダースピアを腕で絡み取って引き抜き、私に向けてゆっくりと移動してくる。無表情な仮面は私をじっと見て、クロッシングでこう言う。
-ソンザイヲ、モラウ。-
「な…。」
その一言の後、敵は仮面の口から異常に大きい、捕食のための口を広げ私に迫ってくる。敵に喰われる恐怖で何も考えられなくなり、私は諦めて目をぎゅっと閉じ、その時を待つ。…が、何かが着地してATフィールドに干渉する音でそれは裏切られる。目を開けると、目の前にはこの間回収された、敵であった筈の黒いエヴァが私を守っていた。
「参号機!?誰が乗ってるの!?」
[…お待たせ、レイ。]
「あ、ああ……還って、きたの?」
[言ったろ、絶対に傍にるって。…クロッシングスタート。]
-影島エイジ-
俺は射出途中で拘束具を外し、いつでも斜めに跳べるように足を曲げておく。ミッちゃんとのクロッシングで完璧なタイミングと角度で跳び、レイの元へ直接出向くことができた。背中のケーブルが無い分、身軽な動きができる。
敵は仮面から巨大な口を出して零号機を喰おうとするが、俺はATフィールドを発生させ、それを防ぐ。
[参号機!?誰が乗ってるの!?]
「…お待たせ、レイ。」
[あ、ああ……還って、きたの?]
「言ったろ、絶対に傍にるって。…クロッシングスタート。みんな、俺がわかるな。」
[うん、わかるよ!]
[エイジ君!]
[バカ、あんた毎回いいとこだけ持ってく気?]
「それほど要領はよくないさ。みんな、まだここにいるな。」
今ここにいる全員とクロッシングをし、状況整理。さっき、敵はATフィールドを打ち出して攻撃をした。さっきの俺のように。
「30-12フォーメーション展開!変則30-1で行く!」
[[[了解!]]]
俺は敵の捕食口を、それの根本にATフィールドを張ってねじ切る。そして3人のお返しにこちらもフィールドの力場で敵を弾き飛ばし、時間を稼ぐ。その間に零号機は2本のサンダースピア、初号機と弐号機は右肩のラックをパージして陽電子砲を装備。俺はレイからサンダースピアを受け取り、宣言する。
「零号機、参号機エンゲージ!攻撃開始!」
さっきレイたちがやった戦法を、もう一度行う。
俺が先陣を切り、その真後ろにレイ、両翼をシンジとアスカでカバー。敵は今度は左右の腕を複数展開して射出してくるが、シンジとアスカはそれを回避、俺はATフィールドで防御してダメージ無しで進む。シンジとアスカは両翼から陽電子を撃ちまくり、敵を釘付けにしようとするが相手もバカじゃない。俺が放ったフィールドに突き立てた腕を引き戻し、使徒自体の質量と運動エネルギーを乗せた物理的接触と光線の接射で俺のフィールドをこじ開けようとする。
だが、これで俺らがこの敵に近づく手間が省けた。
「レイ、行くぞ!」
[了解!]
衝突のタイミングに合わせてレイが俺の左側に移動し、同時にコア目掛けて出力最大のサンダースピアを突き立てる。当然敵のフィールドに阻まれるが、再度俺らは敵フィールドを侵食する。
「レイ、ATフィールドの使い方を教える、これで一気に決めるぞ!」
[わかった!]
俺はこの身体になり、ATフィールドの本質を理解した。
ATフィールドとは、自分自身と他者を隔てる壁の事だ。単なるエネルギーフィールドじゃない。使徒は単一で完成された生命体で、尚且つS²機関持ち。どれだけ人間の真似事をしようと自己と他者の存在を分けるものが物質的なモノ、存在そのものでしか確立できない。その為に人類の通常兵器ではどんなに強力でも表面を焼く程度の効果しか出せない強力無比な、可視化できるほどのエネルギーフィールドを発生させられる。恐らくエヴァンゲリオンはその使徒の力の再現を実現したために、使徒と同じATフィールドを発生させることができる。
では人間はどうか?人間には他者という存在がある。同じ種のなかでそれぞれの個性をもつという、使徒とは真逆な生命体だ。人間は対話をし、外観や性格などで自他を分ける。つまり、どれだけ頑張っても自らの価値観という内面的なものでしか他者を評価できないのだ。それによってATフィールドは、エネルギーフィールドという観点からは使徒のものより格段に弱まる。
まあ何が言いたいかと言えば、ATフィールドってのは一種のコミュニケーション手段ってことだな。対話ではない、戦闘という方法を使って自己を守るための手段だ。俺はそれを第8使徒によって理解した。だからフィールドを攻撃に転用できる。
「コイツへの敵意を全てATフィールドに集中させろ!そうすれば敵フィールドを破れる!」
「やってみる!」
敵のATフィールドを自身のATフィールドを円錐帖へと変質させた俺とレイが侵している間、シンジとアスカは陽電子砲で敵の複数ある腕を撃ちまくり、パイルを使わせまいと立ち回る。
[く、もうすぐ弾が…!]
[二人ともまだなの!?]
アスカに急かされるが、俺は意識を集中させたまま伝える。
「二人とも、あと少し持たせてくれ!」
もう少し、もう少しで…今だ!
「消えろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
「はああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
俺らが叫んだ瞬間、敵のフィールドは粉々に砕け散り、フィールドを纏った二本の穂先は肋骨をも砕いてコアを貫く。敵は身体をよじり仮面を上空へと持ち上げるが、尚も俺らは深くねじ込みコアを完全破壊する。コアが砕けたのを見計らって俺らは後方へと跳び、敵は悪足掻きに撃った光線を空へと撃ち、大爆発を起こした。
「状況…終了…。」
俺は片ひざを着いてアイドリング状態になっている零号機に近付き、自身のプラグを排出させる。右手をプラグに近付けさせたところで俺はプラグから降り、その手に乗る。それを見ていたレイもプラグを排出し、上部ハッチを開く。
参号機が零号機のプラグへと手を近付け、俺はそこへと飛び乗った。
「レイ、心配かけたな。」
「ばか、本当に…私だけじゃなくて、みんな心配してたんだから…!」
レイは俺に飛び付いて、強く抱いてくる。…やっぱ泣かせちゃったか。これに関しては本当に申し訳なくなる。
「ごめんな、レイ。でも、もう本当に大丈夫。俺はずっとここにいるよ。」
内容自体は駆け足気味ですが、二つ目の山場を無事に迎えられてホッとしています。