ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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漫画版ということで、使徒のナンバリングはアダム→サキエル→…って順番で数えています。
そのため8番目の使徒はバルディエルです。カヲル君が12番目の使徒になってますし、そこからの逆算でも同じ結果になります。(11巻P46より)
今回の方がサブタイに合っていたので以前のサブタイを変更しました。


RE40:代償

こんな風に検査衣を着て、病院の機械に身体を押し込まれるのはいつぶりだろうか。メディカルチェックの最後の記憶は、確かクロッシングが強くなったあの日以来か…。俺の身体は、外観は殆ど問題なく、零号機から受けた首元の傷だけが痕となって再現されていた。

検査を終えると、赤木博士がだいぶ渋い顔をして座っている。正直、眼鏡無しで目がきちんと見える時点でおかしいと思っていた。それに、無意識にやったとはいえ未だに受け入れられていないこともある。制服に着替えた俺は赤木博士の研究室に向かう。部屋には一先ずの「保護者」としてミサトも同席した。

 

「検査結果が出たわ。覚悟をして聞いて。」

「……何であれ、俺は受け入れますよ。」

「エイジ君、無理しないでいいのよ?」

「そんな事思っちゃないですよ。お願いします。」

 

「そう…。簡潔に言ってしまえば、今のあなたの肉体は左半身を中心に半分くらいが別のモノに置き換わっているわ。それは使徒の構造に近いものがある。あなたが結晶に覆われていた所の細胞遺伝子が、以前サンプルとして採取した第3使徒の遺伝子パターンに酷似していたわ。恐らくあなたは、ヒトでありながら使徒に近い存在になっている。」

「リツコ!あなたそんな事を平気な顔で…!」

 

怒鳴るミサトに対して、博士は目を若干逸らし、下に向ける。

 

「平気なわけ、ないじゃない。」

「っ!!く…。」

「生身でATフィールドを扱えたのも、それが要因でしょうね。」

「え…?生身でって、どういうこと?」

「エイジ君、やってみて。」

 

俺は無言で掌を上に向け、人差し指の先にフィールドで形成した正12面体を浮かばせ、回転させて遊ぶ。ミサトはこの光景に驚いているが、赤木博士はその被害を身をもって知っているためこの程度では驚かない。その少し後、軍部の人間が日向さんの引率の元ぞろぞろやってくる。

 

「葛城二佐!!この部屋でパターン青反応が…え、エイジ君…?」

 

「ひっ…。」

「またこいつかよ…。」

「目、また青く光ってるぜ。いつ裏切るかわかったもんじゃねぇ…。」

 

悪かったな、こんなワケわからない身体で。俺は3人目に愚痴を言った男に対して浮かべていたフィールドの立体を指で弾き飛ばし、ぶつける。

 

「いてっ!この…!」

「撃ったら、俺の正当防衛が成立しますよ。手を吹っ飛ばされたいか、首をねじ切られたいかの二択ですけど。」

「子供の分際で!」

 

「二人ともやめなさい!!日向くん、全員撤収させて。」

「しかし…」

「上官命令よ!さっさと引きなさい!」

「り、了解!」

 

互いに睨んでいた人は撤収の際に「この化け物が…」と溢していた。今後は腫れ物扱いのモルモットか…。ま、妥当な扱いだろうな。

 

「エイジ君大人げないわよ?あんな安っちい挑発に乗るなんて。」

「大人だって理不尽な事を言われて攻撃されれば傷つくし、腹も立ちますよ。そりゃミサトだって知ってるでしょう?」

「そうだけど…」

「俺だって完璧超人じゃないんです。失礼。」

 

「待って。エイジ君、あなたもレイと同じときに定期検診を受けて頂戴。あと、『首をねじ切る』は脅迫に過剰防衛よ?」

「すみません、今はそんな余裕が…。」

 

変な回答とは思ったが、どうも上手く頭が回らない。ふらふらと廊下に出て、適当なベンチで横になると、そのまま眠ってしまった。何か、妙な疲労感が……

 

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

ジオフロントの、一昨日の戦闘跡を見る。エイジ君、相変わらず凄かった。みんなと同時にクロッシングして、動きを伝えて全員で強かったあの使徒を倒した。正直、未だに実感が湧かない。でも、目の前の光景を見ていると「勝った」って事実は伝えてくれる。

 

「なーにそんなところで黄昏れちゃってんのよ、シンジ。」

「アスカか。なんか、勝ったって実感が湧かなくてさ。そうだ、アスカは大丈夫?戦闘中だいぶ消耗してたけど。」

「リツコの所行ってきたけど、汚染の心配は無いって。特に異常は無いみたいよ。」

 

「よかった。あの時、クロッシングで伝わって来ちゃってさ、アスカが苦しんでるのが。ダメだね、僕。結局エイジ君やアスカの指揮無しに動けてないし、アスカ一人助けるのすら手間取って…」

「そんなこと無いわ!シンジ、レイが来てくれるまでの間、あたしを守ってくれたじゃない!そりゃあシンジは若干反応遅いし、考えもトロいけどさ、それでも動くときはきちんと動いてくれるじゃない!」

「はは、手厳しいなぁアスカ。」

「本当じゃない。でも……ありがと。」

「別に改まって言ってくれなくていいよ。当たり前でしょ?」

「こんのバカシンジ、言うようになったじゃない!」

「痛たたた、アスカ、痛いよ!」

 

 

 

 

 

-SEELE-

 

[エヴァシリーズに生まれいずる筈の無いS²機関…まさか使徒を取り込むことによって自ら発生させるとはな。]

[我らゼーレのシナリオとは大きく違った出来事だよ。]

[この修正、容易ではないぞ。]

[碇ゲンドウ…あの男にネルフを与えたのがそもそもの間違いではないのかね?]

 

[だが、あの男でなければ全ての計画の遂行は出来なかった。今回の件、エヴァンゲリオン参号機だけに限った話ではない。]

[影嶋エイジ…彼はタブリスに近い存在になったとの報告があった。このイレギュラー、碇にすら制御ができないと見て間違いないだろう。]

[左様。彼と参号機の組み合わせは、最大の驚異となった第9使徒すら、残りの3体のエヴァの補助を得たといえ撃破へと持っていくほどの力を持っている。]

 

[例え制御はできなくとも、鈴さえ着けておけば問題は無かろう。…タブリス。]

 

「聞こえてるよ。なんだい?」

 

[各エヴァパイロットの精神常態に気を付け、異常があったらすぐ知らせろ。]

 

「了解…と言いたいところだけど、僕はまだ彼らとはただの学校の同級生だよ?それにパイロットに欠員も出ていない。トウジ君の代わりにエイジ君が参号機を動かすだろうし、そこはどうするの?」

 

[次の2体の使徒は、ただエヴァを出して攻撃すればいいものではない。ロンギヌスの槍を失うのは承知の上で殲滅をさせるつもりだ。]

 

「本気?それじゃああなた方の計画はどうするんだい?」

 

[ロンギヌスの槍の量産型とエヴァシリーズの生産を水面下で進めている。攻撃の日、最も欠けた心を持っているパイロットをヨリシロにして執り行う。それを失敗した際のバックアップもある。]

 

「なるほどね、理解したよ。それじゃあ、僕は行動し始めるから。」

 

[タブリス。]

 

「今度はなんだい?」

 

[あまり肩入れしすぎるなよ。]

 

「…わかってるさ。」

 

 

 

 

 

-碇ゲンドウ-

 

「使徒を殲滅したとは聞こえがいいですが…彼とエヴァ参号機の処遇、如何なさるつもりですか?」

 

「以前から彼は非常時には命令無視のきらいがあった。正直なところ問題だが、それで毎回戦果は出している。今回も不問でいいだろう。これで余計な波を立てるとパイロットの士気に関わる。」

「ああ。参号機は当面凍結処置を取る。彼の戦力は確かに魅力的だが、彼の本業は指揮だ。明日の午後、フォースを使っての起動実験をもう一度行う予定だ。」

 

「了解です。では失礼。」

 

加持が出ていくと、冬月が私の案じていることを口にする。

 

「碇、アークパイロットは大丈夫なのか?第8使徒での戦いで消せなかったんだぞ。彼の意思でインパクトを起こされたら我々の計画もパーだ。」

「サードインパクトの意味を知っているのであれば、恐らくそれはしない。それは確信があるからいいが、問題は我々の計画だ。今までの戦闘で初号機を暴走・覚醒へと導くことができていない。それだけが最大の懸念事項だ。…だが、シンクロ率が100%を超えているアークパイロットなら、或いは…」

「余りにも危険すぎる!人の意思に飲まれたらその時点で終わりだ!」

「だが、使徒の意思からは自身を守り切った。可能性はある。」

「碇、何でもかんでも利用できると思うな。現に彼はお前の息子と違って制御不能なんだぞ!」

 

私はそれに対しては沈黙を守った。レイの命はもう長くない。レイの新しい肉体に関してはレイ自身にも、影嶋エイジにも知らされていない。奴を使って、ゼーレからの攻撃を防ぎきれば…後は今のレイが死んだ後に極秘裏に動けばいい。世界には何も知らされず、静かに事は進む。

時には危険な賭けも乗り越えなければ、自分の欲するものは得られませんよ、冬月先生。

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

今日も検診を受けた。まだ…生きれる。薬の効果が薄れてきているとは言われたけれど、まだ自覚症状が出るほどじゃない。まだ私はここにいられる。そう掌を見つめながら思い、部屋を後にした。

通路を歩いていると、エイ君がベンチで横になっている。顔を覗き込むと、目元を手で覆って寝ているみたい。流石にずっとここでってのも不安だし、肩を貸して引きずって行こ……う、やっぱ体重もついて力も前よりついたけど、やっぱ男の子は重い。上半身を起こして座らせる体勢へと変えるだけで手一杯だった。あの時ってどうしてベッドまで引きずれたんだろう…。

 

「ミサトさん、今いいですか?」

『どうしたの?レイ。珍しいじゃない。』

「エイ君が通路の椅子で寝ちゃってて。せめてどこかのベッドに運びたいんですけど…お願いしてもいいですか。」

『わかったわ。ミチヨちゃんに場所は聞いたからすぐ向かうわよ。』

「ありがとうございます。」

 

 

すぐに来たミサトさんは、彼をお姫様抱っこをして運んでいく。私とミチヨちゃんはそれについていくのだが、それが親子みたいだって数人からからかわれた。…やっぱりそういうことを言われていい気分にはならない。どうしても引っ掛かりができてしまう。

 

「レイ、あんなからかい気にするほどじゃないわよ。今は少し忙しいだけで、碇指令も全部終わったらきっとよくしてくれるわよ。」

「…はい。」

 

現在はミサトさんの所に住んでいるが、書類上は今でも私の保護者は碇指令ということになっている。でも、どうしても碇指令が保護者をやっている様子が想像できない。私には少しは良くしてはくれていたが、碇くんとは結局仕事以外で一言もしゃべらないし、最近は私とも疎遠になってきている。確かに、今思えば喋り方が不器用な人のそれだとも思うけれど、それでも極端に碇くんに対して避け過ぎ。どうしてなんだろ…。

 

「うんしょ、これでいいかしらね…。エイジ君もここ数日検査に戦闘にって忙しかったしね。たまにはゆっくり休んでほしいわ。」

「それができないのがエイ君ですから、」

「でも、お姉ちゃんのお陰で最近はマシになってきたけどね。」

「それでも不安なのは不安。」

 

こんなしょうもない話をして、ミサトさんとミチヨちゃんは部屋から出ていった。偶然だろうが、ここは以前私が家出した時の404号室だった。エイ君、寝顔が少し辛そう。やっぱ、疲れが一気に出てるんだろな。少し視線を下に向けると、私が参号機につけた傷がフィードバックの痕となって出ている。結晶に覆われていたはずなのに、どうしてこれだけ傷痕が残ってるんだろ。やっぱ、私がつけたのを知ってて…

また思考が無限ループしそうだったから、頭を振ってこの考えを追い払った。起きたら、また教えてもらおう。彼の頭を撫で、一言言ってから私は部屋を後にする。

 

「おやすみ。また明日来るから。」

 

明日はお弁当、私が作ってあげよ。

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

「うわあああああああああああ!!!!」

 

肩で荒い息をしながら俺は飛び起きる。目元を拭うと、涙なのか汗なのか、はたまた両方なのかわからない液体がべっとり付いている。どんな夢を見たんだ、俺は…。時刻は午前5時45分。少し寝過ごしたか?とりあえず俺は近くにあった着替えを持って…ん?何で俺は個室に入って、着替えが置いてあるんだ?どっかの通路で意識が無くなった以降、俺の記憶が無い。つまり、あそこで寝て誰かがここに連れてきてくれたっつーことか。まあ、起きたての回らない頭を動かすより、シャールームへ体を動かすのが先か…。

 

 

シャワーを浴びて、汗で濡れていない服に着替えるとさっぱりした。そういえば今日は何日だっけか。地下にずっといたのもあるが、1週間寝てたらしい時点で時間の流れが掴めていない。あれ、携帯が…服をの中を漁って携帯を見つけるが、バッテリーが切れている。ため息を吐きながら部屋に戻ろうとすると、赤木博士から声をかけられる。

 

「おはよう、エイジ君。あの後寝ちゃったらしいわね。」

「おはようございます。開口一番がそれですかァ?やめてくださいよほんと。」

「あなたにも可愛い所があるんだなって思っただけよ。どう?コーヒー飲んでいかない?」

「んー、それじゃご馳走になりましょうかね。」

 

 

 

「あの後、どこか体の調子が悪いとか、違和感とかなかった?」

「殆どわからないまま寝ちゃいましたね。今んとこは特に問題はないですよ。」

 

赤木博士はコーヒーカップを俺に差し出してくる。淹れたてのコーヒーか、いい匂いだ。…ん?何か口の中、滅茶苦茶違和感がある。

 

「どうしたの?」

「いや、何か口の中が変な感じなんですよね。何かこう、匂いに対して物足りなさがあるというか…」

「寝起きだからまだぼーっとしてるんじゃない?」

「そうですかね。」

 

俺は適当に返答して、コーヒーを少し飲む。

 

「エイジ君。もしレイが新しい肉体で生きれるのなら、あなたはそれを受け入れられる?」

「どうしたんですか唐突に。まさか、まーたスペアを造ってるなんてバカな話はないですよね?」

「そんなことはないけれど、私の科学者としての意地もあるのよ。彼女に命を与えたのに、勝手に短命にしてしまって…独善だけど、私にはどうしても納得はいってないわ。」

 

「まあ…レイがそれを受け入れるのなら、俺はそれに従いますよ。俺はレイにあれやこれや口出しするつもりはありませんし。んでも誰にも何も言わず、レイにすら秘密で勝手にそうなってたら俺は納得できませんけどね。」

 

「なるほどね。レイの同意があれば…か。」

 

正直嫌な予感がするが、余り根掘り葉掘り聞くのはやめた。それが真実ならば、恐らくわざと濁して言っている。でも、俺はきちんと思う所ははっきり言った。

 

「それでも、実物を目の当たりにして…本当に今まで通りに接することができるかは、正直自信がありません。記憶は残ってたとしても、感情が無くなるってのを聞いてますからね。」

 

「それでも…エイジ君なら、きっとまたあんな元気なレイを取り戻してくれるわ。」

「そうですかね…。」

 

自分も消極的な事を言っているせいで、空気が気まずくなってくる。それを発散しようとしたのか、露骨に博士は話題を変えてくる。

 

「そうそう、あなたの目を考慮してこの眼鏡とカラーコンタクトを渡しておくわ。これで少しは誤魔化しが効くはずよ。」

「ありがとうございます。」

 

俺が渡されたのは緑色の虹彩に偽装できるカラコンと度が無い眼鏡。目の色さえ変わってなければレーシックで直したって誤魔化せるんだが、色が変わってるせいでそういう嘘の効果が低くなっている。

感謝だけして、俺はコーヒーを一気飲みした。…ん?おかしい。どうして味を、苦みを感じないんだ…?

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

「おはよ、エイ君!」

「おはよう、レイ。」

「どう?元気?」

「まあまあ、かな。昨日、俺をここに運んでくれたんだってな。ありがとう。」

「私はミサトさんに頼んだだけ。はい、荷物まとめてきたから。」

 

私は色々入れた鞄をエイ君に渡す。

 

「悪いな。ん?弁当まで作ってくれたのか。なんかここまで色々してくれるなんて、ほんと申し訳ないな。」

「ほら、そういうのは余計なことを考えずに素直に受け取るの。」

「それもそっか。」

 

エイ君、元気そうでよかった。やっぱ1日近く寝ると違うのかな。

 

「そうだ、レイ。あのみんなが写った写真、まだデータある?」

「あるけど、どうしたの?」

「いや…昨日確認したらさ、青い結晶でボロボロになっちゃってて。新しいのが欲しいなって思ってたんだよ。」

「わかった、帰ったらまたプリントしてあげる。」

「ありがと。」

 

あの写真がボロボロってことは、カスミちゃんの写真もなんだろな。でも、それで動揺しないのはエイ君が変わったからかも。

 

「どうした?」

「いや、ちょっとね。」

「何だそりゃ…。」

 

外見は普段と殆ど変わらないけれど、眼鏡が変わっていたり目の色が元に戻っていたりと、やっぱりみんなの前じゃどうしても隠さなきゃいけないものもあるんだなってのがわかる。多分、エイ君の重症具合は鈴原君も知らない事だ。私も詳しくは知らない。しかも、その鈴原君にまた来てほしいなんて…。

 

「「おはよう。」」

 

「あ、エイジくんにレイちゃんおはよ~!」

「お、久々に夫婦が揃ったな~。エイジ、もう怪我はいいのか?」

「おう、俺はもう元気だよ。あといい加減夫婦呼ばわりはやめてくれ?」

 

マナちゃんの挨拶の後にムサシくんがからかってくるけど、エイ君はいつも通りの対応をする。だが、それを気に入らないのか浅利くんが茶々を入れてくる。

 

「エイジ君、そーいうときは顔を赤くしなきゃダメだよ。何で本当に困ってるような雰囲気を出すんだよ~。」

「たり前だろ!ったくよ~それならアイツらの方が…って、あれ、シンジとアスカは?」

「多分二人とも…」

 

現在、時刻は予鈴が鳴る直前。つまり…

 

「うぉおりゃぁあ~!!せ、セーフ…。シンジ!あんたどうしてちゃんと起こしてくれなかったのよ!!」

「ぜー、ぜー…。はぁ!?僕が起こしてもアスカが起きなかったんじゃないか!これで何回目だと思ってるのさ!!」

「なんですって!!だいたいいつもシンジはトロくて…」

「ちょっと、それは今関係ないだろ!?」

 

「ほら見たか、アイツらの方が俺らより楽しそうじゃんか。」

「碇くんとアスカ、お似合いでしょ。」

「確かにな~。何度見ても面白いし。」

 

「「ちょっと、三人ともそれはどういう意味!?!?」」

 

 

 

お昼になって、私たちは教室で昼食を食べる。今日は久々に私が料理をして作ったもので、内容は焼肉弁当。エイ君には、たまには多く食べて欲しいし、エイ君のは少し多めにした。喜んでくれるかな。

 

「レイの作ってくれた弁当か…正直、何か不思議な感じだ。」

「食べてみて。これでも自信あるの。エイ君には及ばないけどさ。」

「それは楽しみだ。」

 

…あれ、エイ君の目、何だか不安そうだ。いや、私への言葉は本当にそう思ってくれているのはわかるけれど、それ以外の不安があるような、そんな…

彼は一口だけお肉を口へと運び、食べる。だが、彼の顔は曇ったままだ。

 

「やっぱり…感じない…。」

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

あの後は「必ず話す」と約束しておいて、俺はどうにかその場は乗り切った。でも、午後はずっとこのことが引っ掛かってしまいマトモにものを考えられなかった。

 

[それでは、フォースによる第二次参号機起動実験を行います。二人とも、準備はいいわね?]

 

[ワイは大丈夫です。]

「俺はいつでも。」

 

[結構。それでは、実験開始。]

[了解。電源接続省略、パイロットとのシンクロ開始。]

[シンクロ率…0.00000%、変化無し。S²機関も稼働していません。]

[やはり、無理か…。]

 

[エイジ、何か参号機が前と違う感じあるんやが、どうなっとんのや?]

「そっか…。トウジ、お前はこないだと同じようにしてるよな?」

[あ、ああ。そらシンクロ言うたらやること変わらんしな。]

「だよなぁ。赤木博士、やはり参号機が拒絶してると見て間違いないと思います。」

 

[こちらも同じ結論になったわ。やはりシンクログラフが常に変化していて、鈴原君を受け付けていない。この機体、実質あなたの専用機になったわね。]

「そうですか…。」

[鈴原君、終わったらこちらに来てちょうだい。話があるわ。]

 

[わかりました。]

 

恐らくネルフからの登録抹消の話だろうな。意気込んでいたトウジには申し訳ないが、これでよかったと思う。例によって俺も同席したそれは、案の定な話だった。トウジは複雑な顔をしていたが、俺らよりかは機密に触れていないということで監視も軽めになるらしい。

訓練や実験が終わって地上への出口へ向かう中、トウジは俺に話しかけてくる。

 

「何か、悪かったな。ワイも何か助けになれるんか思ってたのに…。」

「いや、これでよかったと思うよ。俺はこれ以上、この話に首を突っ込んで欲しくなかった。洞木さんの事もあるしな。一般人の彼女には言えない事が余りにも多すぎる。」

「せやなぁ…。ここも今日限りちゅーことやったし。」

「俺としちゃ、ここに来てワケわからないヤツらと戦って、人生狂わされなくてよかったな、としか言えない。というわけで!明日からはまた一般人生活だ。頑張れよ。」

「お、おう。」

 

これは俺の本心だった。ここで戦いに巻き込まれて、今後の人生全てを狂わされるような、そんなことだけは避けたかった。

何より、俺が守った命を棒に振って欲しくなかった。

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

「なあレイ。今日だけ、俺の頼みを聞いてくれないか?」

「え?いいよ?」

 

エイ君、どうしたんだろう。今日の昼以来ずっと思い詰めた顔をしているし、夕食もあまり手をつけてなかった。ことに食事の時に悲しそうな顔をするのがずっと気になってしょうがない。多分、そのことで何かあったんだろう。なにも感じないって言ってたのが不安。

私まで心配になってたし、寝るときについでに聞こう。

 

 

「ね、ねえ。やっぱり着替えてきたい。恥ずかしいよ…。」

「今日だけだから。ね?」

「う、うん…。」

 

私たちは普段から一緒に寝ているから、それに関しては最早抵抗のての字すら出てこなかった。でも、私の格好が下着に制服のYシャツ一枚っていうのがちょっと、その…恥ずかしい。でも彼はそんなことお構いなしに私を正面から強く抱いている。相変わらず力が入りすぎて少し痛い。

 

「こうしてるとさ、思い出すんだよ。2番目の使徒が来る前の静かな日々を。」

「え…?」

 

彼の声は今までにないくらい弱々しく、掠れていた。

 

「訓練さえあったけど、いつ敵が襲って来るかなんてピリピリしないでいい、そんな平和な日々をさ。短い時間だったし、かりそめの平和だったけど、それでも俺は苦しくなかった。多分俺は、大人であり続けたかったからそのこじつけの理由が欲しかったんだと思うんだよ。自分に嘘をついて、それで自分の感情を潰しきればそれは嘘じゃなくなるから。」

 

「でもそれじゃあ…自分が苦しくなるだけじゃない。」

 

「ずっとそうだった。その度に俺は苦しいって事すら潰してたから…そんな負の無限ループしかしてなかったんだよ、俺。」

 

「…全部、知ってる。ううん、最初から知ってた。意味を理解できなかっただけで。」

 

「そっか…。レイ、もう一度訊かせて。俺はここにいていい?」

 

「どうしたの?さっきかららしくないよ。」

 

「俺はここまで、自分の心を潰して、人間もやめて、目の色まで変わって、味も感じれなくなって…挙げ句の果てにはATフィールドまでこの体で使って、俺が人間なのか化け物なのかわからないんだ。」

 

「え、人間をって…」

 

「昨日の精密検査でわかったんだ。俺は8番目の使徒と細胞レベルで同化してるんだってさ。体の半分はもう人間じゃないんだって。目の色の変化はそれによる影響だって…多分、食いモンの味がしないのもそれが原因だ。俺さ、こうしてると安心するんだよ。俺はレイの近くにいる、レイをまだ感じれるって。

なあレイ、俺は本当にここにいていいのか?こんな人間なのかそうじゃないのかわからないような俺が…」

 

エイ君は本気で不安な顔を、目をして私に訊いてくる。そんなの、答えは決まってる……

 

「いいの。それなら私だって本当に人間か怪しいじゃない。エイ君はそんな私を受け入れてくれない?」

 

「そんなワケ、無い。」

 

「なら、私の答えも一緒。どんなになっても、エイ君はエイ君だから。受け入れてあげる。」

 

「ありがとう…。」

 

彼は嗚咽を漏らしながらそう言った後、ゆっくりと呼吸が穏やかになっていき、そのまま寝てしまった。エイ君の顔を見ると、本当に安心しきった、幸せそうな顔をしている。彼の涙を親指で拭って、私は呟いた。

 

「おやすみ。」

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