ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE41:思い出

-碇シンジ-

 

「そいやさ、今日のアスカの指揮練どうしたんだ?ヤケに気合い入れてたじゃない。」

「そりゃあ…こないだの戦いの時、あたしが途中でへばっちゃったし、少し負荷を強めにいってみただけよ。」

「余り無茶すんなよー?それで身体ぶっ壊したら元も子もねぇし。」

 

「それ、エイジが言えるワケ?」

「同意。」

「エイ君?私もそれはエイ君が言っていい言葉じゃないと思う。」

 

「味方ゼロ人かよ…。」

 

訓練の帰路、僕だけは今日は行かなきゃならない所があるから、一人みんなと離れる。

 

「それじゃ、僕はここで。」

「あれ、シンジどこ行くの?」

「ちょっと、行かなきゃならない所があるから。それじゃ。」

 

「どーしたんだろ。エイジ、何か知らない?」

「流石に俺でもわからねぇな。帰ってきたら訊いたらどうだ?」

「そうねぇ…。」

 

 

 

僕は一面に等間隔に並べられた、形だけの墓地に来ている。セカンドインパクトで余りにも多くの人が亡くなってしまい、せめて墓標だけでもと作られた場所らしい。去年も来たけど、やはりその光景は殆ど変わっていないようだ。

母さんの墓標の前に立ち、買ってきた花束を備えて、お祈りをする。

 

(母さん、僕もとうとう3年になったよ。僕ね、この1年近くで色々な人に会ったんだ。同じ仕事仲間のエイジくん、綾波…学校でも、トウジやケンスケ、ムサシに…カヲル君。いろんな人と友達になれた。それに、アスカって…好きな女の子もできた。仕事も頑張ってる。正直、このまま高校生になれるのかは少し不安だけど、それでも普段の日々が楽しいんだ。だから、僕…父さんとも、少しずつ向き合ってみるよ。例え最初はダメでも、まだ時間はあるんだし…。)

 

「シンジか。」

 

「あ、父さん。久しぶり…なんて、同じとこで働いてるのにそれはないか。」

「………。」

 

父さんは僕への挨拶は返さないまま、母さんの墓前に花を供える。

 

「ねえ、父さん。こんなところで言うのも何だけどさ。今度、一緒にご飯食べない?みんなと一緒に…」

「そんな時間はない。」

「あ…せめて、僕とだけでも。それでもダメ?」

 

「言った筈だぞ。私とわかり合おうなどと思うなと。人と人は完全に理解し合うことなんてできないんだとな。それを忘れたわけじゃあるまい。」

 

「…それでも。僕は父さんと話がしたい。だって父さん、何も言わずに僕の前からいなくなったじゃないか。それじゃあ、わかり合うも何も……僕は父さんのこと、何も知らないままだよ…。」

 

「シンジ…成長したな。」

 

「え?」

 

「月末、時間を作る努力をしよう。追って私から連絡する。時間だ、私は先に帰る。」

 

父さんの背面には、去年と同じVTOLが降り立つ。前はこの状況を飲めなかったけど、今は受け入れることができている。あの父さんが、僕と、話を…?

 

「ありがとう、父さん。」

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

「…って事になったんだけどさ。僕、どんな話をすればいいのかな…。」

 

「何だ、んな事考えるまでもない。シンジが聞きたいって思ったそのことを聞きゃあいいんだ。お袋はどんな人間だったんだとか、いつ親父とお袋は知り合ったんだとかさ、そんなところをさ。」

「でもさ、もしそれが地雷だったら…」

「話してくれるさ、話せないなら「それは話せない」ってね。そしたら適当な別の話題を吹っ掛ければいい。シンジ、そんだけ親父にアタックかけといて尻込みしてちゃダメだぞ?ちゃんと最期まで勇気もって話さなきゃ。」

 

「うん…そうだね。ありがとうエイジ君。そうだ、もうひとつ聞いていい?」

「何だ?」

「父さんが前に言ってた事なんだけどさ。

 

『人は思い出を忘れることで生きていけるけど、決して忘れてはならないこともある』

 

って、どういう意味なの?僕、まだその答えがわからなくて…。」

 

「……。それはな、簡単に言えばずっと後ろを向いてるなって事だ。ずっと過去を引きずっていきるな、前を向いて生きろって…。」

 

「エイジ君も、そう考えてるの?」

 

「寧ろ真逆の考え方だ。死んだ人の存在を、その人がここにいた記憶ってのを俺が忘れてしまったら、存在が誰からも忘れられるんじゃないかっていつも思うんだ。そういう恐怖があるから、俺は絶対に過去を忘れることなない。囚われることはなくても、その人の存在自体を消したくないからこう思ってるだけだ。

ま、後はシンジ自身でよく考えることだな。それじゃ、おやすみ。」

「おやすみ、エイジ君。今日はありがとう。」

 

シンジが部屋を出ると、入れ替わりでレイが入ってくる。

 

「碇くんと何話してたの?」

「人間は生きていくために思い出を忘れるのか、それとも思い出を全て背負って生きていくかって話。」

「何それ。哲学?」

「いいや、言葉通りの話だよ。こんなのを聞くのはアレだけどさ、レイはどうなの?」

 

「私?私は…そりゃあ、全部を全部覚えてるわけじゃないし。少しは忘れちゃうんじゃない?エイ君はどう思ってるの?」

「俺は今までのこと、これからの事は絶対に忘れることはないよ。例え俺が、どういった状態になっても。」

 

「それじゃあさ、去年の今ごろは私とどんな話してた?」

「去年の6月か。俺がレイに弁当押し付けて、そこから俺が弁当をレイに渡すようになり始めた頃じゃなかったかな。」

「あれってそんな時期だったんだ。今でも覚えてる、美味しかったな~あれ。そうだ、今度のお昼、またサンドイッチにしよ!ちょうど付き合い始めて1年くらいだし!」

「それもいいかもな。」

「うれしい!エイ君すき!」

 

自分にとっては重々しい話題とは対極に、レイのそんな無邪気な笑顔が、堪らなく可愛かった。

 

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

あれ以降、父さんからの連絡がない。…やっぱ、ダメだったのかな。そんな事を考えてると、携帯が鳴る。

 

「もしもし。」

 

『…私だ。明日の18時、私の部屋の前で待て。以上だ。』

 

「わかった。ありがとう、父さん。」

 

電話が切れる。何だかさっきまで考えていたことがバカらしく感じてきた。

 

「あら、シンジったら珍しく嬉しそうじゃない。どうしたの?」

「明日さ、父さんと食事することになったんだ。はじめて父さんと話をするから楽しみなんだよ。」

「え?初めてって…シンジってあたしより長くこっちにいるのに?だいたいシンジのパパは総司令でしょ?アンタはもっと気に掛けて貰ってるのかと…」

「父さんはあんなだからさ、僕とも全然話してくれないんだ。…まあ、僕も父さんを避けてはいたけどさ。」

 

いいな……。

 

「え?」

 

「ううん、何でもない。楽しんできなさいよね、シンジ。」

「ありがと、アスカ。」

 

一瞬アスカの顔が曇ったのは何だったんだろうか…。

 

 

 

 

 

-加持リョウジ-

 

「…遅かったな。お前さんには悪いが、俺はまだ死ねないんでね。」

 

廃工場に、俺とゼーレの刺客が来るが、それの周囲を更に黒服が囲う。囲った黒服は全員で中心にいる刺客に対し発砲、処理をする。

 

「加持一尉、司城大佐がお呼びです。」

「了解だ。…少し遅れると言っておいてくれ。」

「了解。」

 

俺は今は、これ以上は干渉できない。その間に勝手に殺されちゃたまらんからな…。

 

「葛城、俺だ。今俺は―」

 

 

 

 

「お待たせしました大佐。で、お話とは何でしょうか?」

「加持君、君を呼んだのは他でもない。単刀直入に言ってしまえば、ゼーレの裏の動きがおかしい。妙にエヴァシリーズの量産を急がせている、もしかしたら裏で更に何か動きがあるかもしれない。こちらも山岸主任に戦力の増強プランを立ててもらっている所だが、如何せん出来ることはまだ限られているからな…。」

 

「なるほど。その調査を私に、と。了解です。…ところで、ご子息の事、お聞きになりましたか?。」

「ああ…。まさか、使徒と同質の存在になってしまうとは…流石に予想外だった。しかし、私はまだ表舞台には出ることは許されない身だ。それが、非常にもどかしい。」

 

「子供を大人の都合でいいように動かさなきゃならない世界…嫌になりますね。」

 

「ああ。だが、それを終わらせる為に、我々『WILLE(ヴィレ)』が居るのだ。引き続き、監視を頼む。」

「了解。」

 

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

僕は学校を終えてすぐ、父さんの部屋の前に来た。少し時間があるけれど、待つ分にはいいかなって。

結局30日っていうギリギリまで待たされた。今日は平日だから他のみんなは普通に訓練があるし、エイジ君はまた例によってリツコさんにこき使われているんだろう。

 

「待たせたな。」

「ううん、さっき来たばかりだから。」

「そうか。…行くぞ。」

 

僕は父さんについていき、地上に出て高級レストランに行く。店に入ってからというもの、慣れない雰囲気にどうも落ち着かない。だいたい、こんなところ来るの初めてだし。

 

「どうした、もっと堂々としていろ。」

「そうは言っても…。」

 

とりあえず水を飲んで落ち着いたら、話を始める。あ、メニューは正直よくわからなかったから父さんと同じものを頼んだ。

 

「ねえ父さん。母さんってどんな人だったの?」

 

「…………。」

 

「どうしても言いたくないのならいいよ。でも、僕はほとんど母さんのことを覚えてないんだ。エヴァに取り込まれた時だけ、覚えてるような気がするんだけど…」

 

「ユイは、私の救いであり、支えであり、希望だった。」

 

「希望?」

 

「ああ…。私は愛する術も、愛される術も知らない。そんな暗闇の人生に、唯一神が与えた光だった。私に向けてくれた笑顔が、美しい人だった…。」

 

父さんは淡々と言うけれど、それでも…母さんを想ってるっていうのが何故だか伝わってきた。

 

「それじゃあさ、父さんと母さんってどこで会ったの?エヴァに関わること?」

 

「いいや。私とユイは、京都大学の同期だった。初めて会ったのはそこの学食で、私がユイの先に並んでいた時―

 

 

『B定。』

『あ、私も。』

 

『悪いねぇ、定食この人で終わり。』

 

『え!?』

 

ユイはその後渋々カレーライスを頼んでいたのだが、私の定食を非常に羨ましそうに見ていたんだ。私も流石にそれをみていられなくなり、食事を交換した。

 

『取り替えてやるから、そっちくれ。』

 

『あ…ありがとうございます。』

 

『いいよ、じゃあ。』

 

『あの…一緒に食べません?』

『え?』

『イヤですか?』

『一人の方が好きなんでね。』

『そんなこと言わずに―』

 

 

―その後は話をしながら食事をした。そのとき、ユイが私が笑っている顔を…可愛い、と言っていた。そんなユイの笑顔が、とても美しかった…。」

 

な…何だろう、想ってた以上に、何というか…

 

「想ってたより普通だったんだね、父さんと母さんが会ったのって。こんな機関にいるから、もっと凄い出会い方をしてるのかと想ってた。」

 

「そんな事はない。それに、人工進化研究所に所属するようになったのは結婚した後だ。」

 

「人工進化研究所?」

 

「ネルフの前に設立された組織だ。ほとんどのメンバーがそのままネルフに移籍した。」

 

「そうなんだ…。」

 

「シンジ…弐号機パイロットとはどうなんだ?」

 

「え、あ、アスカと!?突然どうしたのさ父さん!?」

 

「私の所にも話は入ってきている。うまく行ってるのか?」

 

「まあ…最近はだいぶ丸くなったと思うし、いつも一緒にいて楽しいよ。」

 

「そうか。…少し冷めてしまったな。食べよう、シンジ。」

「うん。」

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

食事の前、私たちは両肘をテーブルにつけ、両手を互いの手で包み合い、心を通わせる。そしてクロッシングをしてから食事をするのが新しい習慣になっている。最初はやっぱり青く光る目が少し怖かったけれど、何度も繰り返してる内に慣れていった。

 

「どう?今日も美味しい?」

「ああ。相変わらず涙が出てきそうだ…。」

 

彼の味覚は、クロッシングによって擬似的に復活させることができた。でもこれは「私の味覚」であって、「彼自身の味覚」ではない。いつか、全てが終わった時に彼を治す術は見つかるのだろうか。尤も、その時に私はいないんだろうけど…。

 

「レイ、頼むから縁起でもない事を考えないでくれ。俺まで不安になる。」

「あ、ごめん。どうしても、やっぱり現実を見ちゃうと…辛くなっちゃうから。」

「…たまにはさ、現実から目を背けてもいいんだよ。俺みたく現実だけを見続けて、感情に飲まれて、潰れかける前に、少しだけさ。」

「そう?…ふふ、やっぱり経験者の言葉は違うわ。」

「そういう揶揄は勘弁してくれ…。」

 

でも、こういうことを互いに笑いながら言い合えるのは、大きく変わったポイントだと思う。

 

「…ふう、今日も美味かった。いつも悪いな、レイ。俺がこんな不自由な身体だから…」

「こら、まーた自分だけが悪いって思ってる。ダメだよエイ君、そういうとこ直さなきゃ。」

「…そうだな。クロッシング切るよ。今日もありがとうな。」

「どういたしまして。」

 

食事の時にまた笑ってくれるようになって、本当によかった。

 

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

父さんは車で家まで送ってくれた。車を降りて、父さんに感謝をする。

 

「今日はありがとう、色々話せて嬉しかった。」

 

「ああ。…シンジ。」

 

「何?」

 

「もし……いや、何でもない。また明日から訓練に励め。」

 

「わかった。じゃあ、また明日。」

 

「ああ。」

 

たったそれだけの会話をして、車は出ていってしまう。今日、僕は父さんとの距離を少しだけ縮めれた気がした。母さんも、どこかでこれを見守ってくれているのかな…。

 

「ただいま。」

 

 

 

 

 

-葛城ミサト-

 

今日はどうしても出席しなきゃならない会議やら何やらで帰りが遅くなってしまったから、夕食は外食て済ませてきた。当然、みんな既に帰ってきてる。ミチヨちゃんはレイにお守りを頼んでしまったから、明日は私がちゃんと構ってあげなきゃ…。テーブルではペンペンが缶ビールをストローで飲んでいる。この飲んだくれペンギンめ。

 

「あれ、こんなところに電話なんて…」

 

ふと視線を動かすと、固定電話がわざわざテーブルの上に置いてあり、その横には小さいケースがある。留守電のランプが光ってる……私はそれを押してみた。

 

『葛城、俺だ。今俺は重要な仕事をしていて、暫く顔を見せられない。その間に勝手に殺されてちゃ堪らないからこの留守電を残す。

…真実を君に渡す。それをどう解釈して、どう利用するかはお前次第だ。全て終わって、また会える事があれば…8年前から変わらない俺の気持ちをお前に言うよ、葛城。

真実は君と共にある。迷わず進んでくれ。俺は必ず、お前に会いに行く。』

 

<TELメッセージ 午後0時2分です。>

 

「………。バカ、やっぱり危ないバイトやってるんじゃない。でも、その言葉を信じるわ、加持。」

 




シンジ君もゲンドウ君も、本編では切っ掛けを与えられなかっただけで実は話そうと想えば話せる人だと思ってます。その切っ掛けっていう外力が尽く粉砕されてるのがエヴァ原典なんですが。
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