ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE44

-葛城ミサト-

 

あのレポートを読んでから、私の心は曇ったままだった。

 

脳幹の変質に伴う感覚の喪失。そして、徐々に浸食痕から拡大していく、神経部への汚染。

異常な肉体の再生速度。

 

そして…病室の監視カメラに残っていた、エイジ君の手から結晶が生えてくる現象。

彼に私はどう向き合えばいいの?最早レイだけじゃない、彼の命まで危ういなんて。私は段々人間じゃなくなっていく彼と、どう…。何より、3人にどう話したらいいのよ、こんなデータ…

 

「ミサト、どうしたのよ。最近元気全然無いじゃない。まーだあの二人が勝手に出ていったのを引っ張ってるワケ?」

「違うわ。別の事でよ……。」

「じゃあ何よ。最近はあたしらに色々喋ってくれると思ってた矢先にこれじゃない。」

 

「アスカはエイジとお姉ちゃんの命を背負える?」

 

「エイジとレイのって…ミチヨ、どういうこと!?」

 

「手、繋いで。」

 

ミチヨちゃんはアスカと手を繋ぐ。数秒経つと、アスカの顔がみるみる青ざめていった。

 

「嘘…何よ、これ……。エイジはあたしら全員を守る為に、こんな……」

 

「エイジは自分が自分でなくなる恐怖と必死に戦いながら使徒とも戦っているの。みんなを、帰る所を…ここを守る為に。アスカはこの重責を背負える?」

 

「…あたしだってシステム搭乗者だもの。やってやるわ。アイツができない分まで、あたしが…!」

 

「そう、それがアスカの選択なのね。…来るわ。ミサト、エイジに連絡して。もうここには帰ってきてるから。」

 

「わかったわ!シンジ君、アスカ!至急本部へ行くわよ!」

「ミサトさん、使徒ですか!?」

「シンジ、そんなの当たり前でしょ!?ほらさっさと行くわよ!!」

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

これで家を出て五日目、私は身体へとかかる重みで目が覚めた。あの後も博物館や動物園に行ったり、街をぶらぶら二人で歩いたりしたけれど、結局夜はいつも身体を重ねていた。彼の安心しきった寝顔、本当に可愛い。頬をぐにぐにしていると、彼は唸りながら頭を私の腕に落とす。ぱらぱらと落ちていく髪と結晶を見て、これじゃどっちが女の子かわからないななんて思っていると、彼が目を覚ました。

 

「おはよう、エイ君。」

「おはよう…何時?」

「5時半。もうそろそろ帰ろ?」

「そうだな…シャワー浴びてくっか…。」

「うん。」

 

私たちはシャワーを浴びたあとは手早く撤収の準備をして、チェックアウトして帰路についた。少し慌ただしかったが、新幹線に乗ってやっとくつろげた。

 

「楽しかったね。」

「ああ、俺も久々に楽な気分になれたよ。」

「帰ったら怒られちゃうかな?」

「だろうなァ。ことにミサトは泣きつくかも。」

「ミサトさんは割りとしっかり雷落としてくるかもよ?」

「そうかー?ミサトが本気で怒る所って余り想像できねぇな…。」

 

そのあとは二人で少し寝ると、起きたら丁度第三新東京市に着く前だった。

 

「帰ってきたね。」

「ああ。」

「いい夢見れた?」

「……勿論。」

 

駅から出ると同時に携帯が鳴り、ネルフの車が目の前に来る。現実に引き戻されると同時に、私たちはいつもの仕事モードへと移っていった。

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

「綾波、今までどこ行ってたの?」

「秘密。」

「何だそれ…みんな二人が突然いなくなって不安がってたんだからね?ミサトさんなんてずっと暗い顔だったし。」

「ありゃ…それはちゃんと謝らないと。」

 

「遅かったわね、5日も家を空けて、時間ボケでもしたの?」

「いいや?丁度ここに戻ってきたタイミングだ。」

「新婚旅行はどうだった?楽しかった?」

「ああ、一生モノの思い出だ。」

「え?」

 

アスカの小馬鹿にするような質問からの俺の返答に、質問した当人は困惑していた。でも俺らはそんな事には構わずロッカールームへと走る。

プラグスーツに着替え、システムルームへ向かおうとするとアナウンスが鳴る。

 

[エヴァンゲリオン零号機・初号機はB型装備で戦闘配置!参号機はB型装備でパイロット付随で待機命令!弐号機はF型装備で待機!]

 

「な、俺が参号機で待機だって!?」

「どーゆう事よ…あたしがシステムに乗るっての?」

「…頼む。」

「言われなくたって!」

 

俺は参号機のケージへと走り、プラグへと飛び乗って待機状態に移る。そして、開口一番は不服の言葉を吐いた。

 

「葛城二佐!どういう事ですこれは!!」

 

[碇指令の絶対命令よ。現状、私たちの最大戦力である参号機を動かせるのはあなたしかいない。けれど、あなたを消耗させるわけにもいかない。だから参号機をいつでも出せるようにしたという判断よ。エイジ君は参号機内での待機、システムにはアスカが乗るわ。]

 

「畜生、こんなときに限って…!それにレイの身体はもう…」

[ごめんね、私からも言ったんだけど、どうしても受け入れてくれなかった。]

「レイが悪いわけじゃ…」

[でも、頑張ってくるから。応援してて?]

「レイ…。頼む葛城二佐、今からでも―」

 

[あなたの力は最初から使って消耗させるわけにはいかないの!それはあなたもわかるでしょ…?今回はアスカ指揮で、初号機と零号機のツインドッグ、参号機は緊急時のバックアップよ。]

「だから俺は今までトリプルドッグで動かしてたんだろ!個々の消耗を小さく抑えるためにさ!頼むよ、ミサト…緊急時なんて、そんな悠長な事言ってられる余裕がどこにあるんだ!」

 

[……作戦開始。]

 

 [作戦要項を伝えるわ。シンジが前衛、レイが後衛。レイにはやっと開発が終わったアンチAT弾を持って狙撃をして貰うわ。シンジは何でもいいから、一番使い慣れた適当な武装で敵の撹乱をお願い。もしレイに傷一つ付けたらエイジが黙っちゃないわよ。]

[やめてよアスカ、そういう冗談言うのさ…。]

[本気よ。…エイジ、レイが危ないと思ったらいつでも勝手に出て。指揮系統を上書きしてくれてもいいわ。絶対に皆を守るわよ!]

「たり前だ…!」

 

[初号機、零号機ケージアウト!!]

 

戦闘が始まる。でも、依然として感じるよくわからない異常な程の不安は一体何なんだ…?

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

私の身体、エイ君と離れてからだいぶ危うい状態だというのがわかる。時々痛むし、それで集中が削がれるのもわかる。

 

[レイ、絶対に無理しちゃダメよ。みんなで帰るのよ…!]

「わかってる。」

 

今回だけは、もう…エイ君に痛みを背負って苦しんで欲しくない。絶対に!

 

[膠着状態ですね。まず、敵の攻撃手段が読めないことには…。]

[青からオレンジへ、パターンが周期的に変化しています。]

[どういうこと?]

[MAGIは回答不能を提示しています。]

[答えを導くにはデータ不足というわけね。ただ、あの形が固定形でないことは確かだわ。]

 

[ずっと、あそこで回転してるままだ…。]

[しばらく様子見するわ。敵の攻撃がわからない以上、慎重に…]

「いいえ、来る!」

 

敵は螺旋構造から一本の紐状になり、私たちに迫ってくる。碇くんはパレットライフルで応戦するが、効果がない。即座に太刀に持ち替え、碇くんは叫ぶ。

 

[くっ…普通のライフルは効かない!綾波、虎の子をお願い!]

「了解!」

 

私は後方からアンチAT弾を装填した試製ライフルを撃ち、敵へと放つ。敵に着弾したそれはATフィールドをも貫通し、先端部を弾き飛ばす。

 

「やった…!効果、ちゃんとある!」

[いけるわ!シンジは無理せずに敵を撹乱、レイはその間、ポイント更新に合わせて移動、狙撃!]

 

[[了解!!]]

 

私は一射毎に更新される攻撃ポイントへ向かい、少しずつ敵を削っていく。碇くんも回避をしつつ私の位置を悟られないように、太刀を敵に向けて振り回して少しずつ傷つける。だが、紐状という今までに無い戦いづらい相手に、碇くんも段々と消耗していく。

 

[くっ…!]

[シンジ!レイ、侵食部を狙って撃って!]

「やってみる!」

 

とうとう敵に釘付けにされてしまった碇くんが、太刀を使徒へと接触させたまま身動きが取れなくなってしまった。接触面から使徒の侵食が始まる。私は侵食部を撃ち飛ばそうと狙い、敵に対して撃つ。かなり使徒の切れはしが残ってしまったが、何とか侵食部と本体の切断には成功した。しかし、今の狙撃によって私が補足されてしまい、使徒の片側がこちらに向かってくる。

 

[レイ避けて!!]

「うっ!?あ…」

 

避けようとした瞬間に発作が起き、動けなかった。口から流れ出た血液が、LCLを濁していく。その瞬間、敵は先端を複数の触手に変化させ、私と融合を始める。

 

「あ、ぐ…」

 

限界に近い肉体の痛みに加え、侵食による二重苦に晒されて段々意識が遠のいていく。

 

[レイ!!!参号機出る!!]

 

[ぐあああああああ!!!!!!!]

[初号機、両足破断!]

[きゃあ!し、しまった…!レイ、脱出して!]

 

「ダメ…脱出したら、一気に侵食されちゃう…!」

 

[そんな、どうしたらいいのよ!?]

 

みんな、やられる…ダメ、そんなの…!

もしかして…今が、その時なの…?それなら、私はそれに従うわ…!

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

「お前ら大見得切っといてこのザマかよ!ふざけんな!!」

 

全員へのクロッシングで状況を整理しつつ上昇する。俺は射出されたらまず太刀を振り回している方を向き、太刀の同化部根元をATフィールドでねじ切り、シンジを救出。まっさか同化型で刀を振り回されて両足を切り飛ばされるとは…。

次はレイ。零号機は複数の触手に同化されているが、それら全てにフィールドを展開し、ねじ切ろうとする。だが、胴体の中心へ同化しているものだけはねじ切れなかった。

 

「それが本体か!!」

[うっ、ぐ…バカ、掴むと侵食されるわよ!!]

「うるせぇ!こいつは俺が喰ってやる…!」

 

零号機も同じ場所を必死に引き抜こうとしているが、俺が他を切断したせいでその一本がさっきより太くなってしまっている。俺もその部分を掴み、ATフィールドを何層も張って、より強く引き抜こうとする。

 

「この、いい加減レイから離れろ…!」

[エイ君、ダメ…離れて……。]

「何がダメだ!レイだけでも絶対に!!!」

 

俺はレイの痛みを肩代わりしつつ、敵をレイから引き抜こうとする。敵も敵で俺に複数箇所から同化しようとするが、その部分から逆に同化返しをしており、現状はこちらが若干有利といった状態だ。

 

-ねえ、私とひとつにならない?-

 

「クロッシング割り込み…!」

 

 

 

 

次の瞬間、俺らが見ている光景は一面がLCLに覆われている湖のような所へ出る。

 

「ここは…」

「何なんだ…?」

 

水面には半分水に浸かった、レイらしき人間がいる。水面から写る俺らを見る感じ、俺らは宙に浮いている状態のようだ。

 

「使徒…私たちが『使徒』と呼んでるヒトなの…?」

 

「私とひとつにならない?」

 

「いいえ、私は私、あなたじゃないわ。」

「お前、対話もどきもいい加減にしろ!お前ら使徒がやってることはいつも暴力を俺らに押し付けるだけだ!いい加減レイの身体からいなくなれ!!」

 

「もう遅いわ。私の心を、あなた達にも分けてあげる。」

 

レイを模倣した使徒は、俺らの肉体を一気に同化し始める。プラグスーツの表面に蛇状の跡が残るほど強く。だが、使徒の方にも変化があり、肉体の両腕が青く変色している。恐らく俺の同化返しの表現ということだろう。

 

「ほら、痛いでしょう?心が痛いでしょう?私も心が痛いわ。」

 

「痛い…?違うわ、これは「怖い」…。自分の存在を消されそうで、怖いのね。」

「この恐怖、不快だ。お前らのような心を持たない種族が、人間の事を理解しようなんざ…!」

 

「この恐怖は、あなた達のものよ。」

 

「え?」

「な…っ!!」

 

「二人とも、お互いがいなくなるのが怖いのね。そして、その恐怖を誤魔化すために、自分が安定するために、あなたは一緒に居て、同じ戦場に出て、同じところで生活して、交わって…。そうじゃないの?影嶋エイジ…いや、『バルディエル』。」

 

「てめぇ…!」

 

「あなたも、いつもそばにいてくれるのに、もうすぐ尽きる命に、恐怖しているのでしょう。自分を愛してくれる人が自分より先にいなくなってしまったらって。代わりの存在があってしまったらって。何より自分が、自身を愛してくれる人から離れてしまうって。そうでしょう?綾波レイ。」

 

「私は…。」

 

「それがあなた達の心。悲しみと憎しみと切なさに満ち満ちている、あなた達自身の心よ。」

 

 

 

 

ビジョンが現実に引き戻される。零号機への同化が一気に進み、背中の肉塊がこれまで戦ってきた使徒の姿が混じったグロテスクな姿になる。

 

「ふ…ふざけんな!!俺は人間だ!お前の都合でレイを殺されてたまるかよ!!零号機コントロールジャック!!」

 

無意識にバルディエルの能力を使い、右肩のウエポンラックを破壊してもう一本の右腕を生やし、更に強引に引き抜くために力を込める。システムと接続をするが、零号機側から拒絶される。まさか、神経部まで使徒が…!

 

「なら使徒への直接クロッシングで…!」

 

バルディエルみたくクロッシングで意思を制圧すれば最低限プラグは助かる筈だ!俺はもう二度と…!俺は左腕を伸ばし、侵食されていた太刀を掴んで引き寄せる。そして、侵食部付け根から切り飛ばし、零号機自体を俺が一度同化しようとした。だが、クロッシングで気付いてしまった。このまま使徒を傷つければ、零号機も…レイにもダメージが及んでしまう。

まさか、ここに来て自爆以外の手が無いのか!?八方塞がりなんて…!

 

「エイ君、私…Dモードを使うわ。」

「!!わかった。だけど絶対に脱出することが前提だ!」

 

より意識を敵の使徒へと集中し、プラグから、生体パーツから必死に使徒を排除しようとする。だが、時間がかかりすぎたのか生体パーツから動く気配が無い。焦る俺に、レイの呟きが伝わってくる。

 

「私、決めたの……。もう痛みを、背負わせないって…。」

「レイ?まさか、やめろ!!」

 

[零号機、ATフィールド反転!]

[使徒を押さえ込むつもり!?]

[レイ、どういうつもりなの!!ちょっと二人とも、どうしてクロッシングを切―]

 

使徒が零号機へと引き込まれていく。俺は何とか使徒が腹から出ている状態を保っているが、引き込む力が尋常じゃない。異常な程膨張したコアが、俺を更に焦らせる。

 

「レイ、どういうつもりだ!!命を諦めるつもりかよ!!」

「いいえ…これが、『私の命の使い方』。エイ君もわかってるでしょ?もう、私の命はほんの少ししかないって。それに…もう、機体も手遅れだって。」

「それでもだ!!トウジを救えてレイを救えない道理はねぇ!!俺は、レイ……俺の見えないところでお前にいなくなって欲しくないんだよ!!!」

 

「エイ君、クリスマスの日に、こう言ってくれたよね。『私の意思なら、どんな選択でも受け入れてくれる』って。あれ、嘘だったの?」

 

その言葉に激しく動揺し、使徒を握っていた腕の力が僅かに緩まってしまう。徐々に零号機側へ引き込まれていく使徒を必死に引き留めるが、持たなくなるのも時間の問題だった。

 

< Dモード、起動。パイロットは速やかに待避してください。>

 

「ひ…卑怯だぞ、レイ…。」

 

< Dモード、解除コードアクセス不能。>

 

「ねえ、最期くらい、笑って?私、エイ君に出会うまで、本当に人形だった。でもね、エイ君がいてくれたお陰で、私は短い時間だったけれど、人間になれたの。誰にも利用されることのない、自分の意思を持った、ただ一人の『綾波レイ』って人間に。」

 

「たり前だろ…!人工的に造られた身体でも、人間は人間だ……!」

 

「最期までそう言ってくれるの、本当に嬉しい。私、満たされた人生だった。」

 

俺は…また失うのか…?人一人、最期の時まで生かしてやれずに……。

 

-ううん、私は生ききったの。霞ちゃんとは違って、私が、私の意思で命の使い方を決めたの。それを教えてくれたのはエイ君よ。-

 

俺は…確かにDモードを使ったことはある。でもそれは、俺が遠隔で動かしてたからできた芸当だ!レイ、コア付近の衝撃は自分を殺すかもしれないんだぞ!!

 

-わかってる。私も、覚悟を決めてるから。-

 

そんな覚悟、レイが……

 

 

泣きながら顔を伏せる俺に、レイは優しく顔を手で包み、持ち上げる。そして、長い口づけをした。これが現実じゃないのは理解しているのに、感覚はダイレクトに伝わってきた。そんな言葉を交わさない対話の中、俺はレイの最期の、二つの我儘を聞く。そして、レイは最期にこう告げた。

 

 

 

-エイジ君。私、ずっとエイジ君のこと、どんな姿になっても…………-

 

 

 

 

 

 

 

 

愛してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

手が離れた瞬間、使徒は零号機内へ一気に引き込まれ、そこからコアが潰れていく。

目の前で起こる爆発。コアが臨界を突破し、街ひとつを消し飛ばすN2爆雷ほどの火力を出す、エヴァの最終手段。だが、俺はそれに対しATフィールドで防御し、第三新東京市に被害を出すことはなかった。

 

 

 

[目標…消失。]

[……現時刻をもって作戦終了。第一種警戒体制へ。弐号機に初号機と参号機の回収の補助をさせて。零号機は…?]

[エントリープラグの射出は確認されていません…。]

 

当然だ。最期までレイは零号機の中にいた。確実に使徒を殲滅するために……

 

[生存者の救出、急いで!]

 

いない。

レイはもう生きちゃない。

クロッシングが突然切れたことが何よりの証拠だ。それでも…

 

「アーク……レイの…零号機のプラグを探し出せ…!破片だけでもいい、教えろ!!」

 

-…………………見つけたわ。ポイント更新、お姉ちゃんを…迎えに行ってあげて。-

 

「ああ…!」

 

俺はよろよろと巨躯を動かして、指定された場所へ向かう。その間に右肩の腕は崩れ落ちていった。

 

[まさか…ダメよエイジ君!例え見つけたところで劣化LCLで汚染されているのよ!]

[参号機パイロット。命令だ、戻れ。]

 

大人は身勝手だ…。何が命令だ…。

 

「いいじゃないですか、迎えに行ってあげることくらい。」

 

[……LCL圧縮濃度を限界まで上げろ。どんな手段を使っても、参号機を止めろ!]

[了解…。]

 

直後、激しい息苦しさに襲われる。視界が霞み、足が上手く動かなくても、俺はレイの元へと歩いた。

 

だって、俺は約束したんだ。最期までレイの傍に居てやるって。

 

プラグを見つけると俺は参号機から降り、参号機に地面へと移動させてもらう。

そこにあったプラグは、中央でひしゃげてメインハッチに穴が空いていた。フィールドでメインハッチを切り飛ばし、その破片を中に落とさないようにどこかへとポイ捨てしてから中を露出させる。

 

レイは熱で丸焦げの状態に…LCLが一瞬だけ防壁になったのか、人間の形状だけは保っている。俺はレイを抱き上げ、そのまま強く抱き締める。クロッシングしようと、痛みを俺も味わおうとするが、できない。

 

当然だ。レイはもう死んでしまっているのだから。

 

「ばかやろ…何で俺は、人一人助けられないんだ…!これじゃあ……ぅ…く…!」

 

 

 

 

 

絶叫。

 

 

 

 

 

参号機()の叫び声は、第三新東京市に虚しく響いた。

 

 

 

 

 

 

俺の悲しみで歪んだ顔とは裏腹に、レイは最期まで…笑っていた。

 

 

 

 

 

 

RE44: 永訣(わかれ)の光

 




あたし行かなくちゃ…
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