ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE5:同居人

-碇シンジ-

 

 

「た…ただいま。」

 

「お帰りなさい。さ、入って入って。中、ちょっち散らかってるけど。」

 

「はあ…。」

 

入ると、散らかっているって言ってた割には案外整頓されていた。へえ、意外としっかりしてるのかな、ミサトさんって。

 

「ね、悪いけどそれ冷蔵庫に入れといて。」

「あ、はい。」

 

冷蔵庫を開くと、ビールが目立つけどちゃんと食材なんかも入ってる。料理、できるのかな。

 

「ふぅー。お、帰ってきてたんですか。お帰りなさい。」

「ただいまエイちゃん。そうそう、シンジ君、うちで引き取ることにしたからよろしく。」

「…はい??ったく、またですか?俺がこんな状態で誰が飯作るんです。」

「シンジ君にやってもらえばー?」

「それが大人の回答ですか?しゃーねぇなぁ、ほんと。

 

お風呂の方で色々話してる声が聞こえる。ミサトさん、たしか「エイジ君」って言ってたような…。その人は風呂場から出て、ラフな格好でリビングに来る。あ、左手、やっぱ怪我してるんだ…。腕を吊ってる。

 

「よ、さっきぶり。」

「ど、どうも…。」

「俺は影嶋エイジ、君らのバックアップだ。よろしく。」

「い、碇…シンジ、です。よろしく…。」

 

おずおずと差し出された手を握る。なんか、真面目そうな人だ。

 

「あれ?メガネどうしたんですか?」

「ああ、すぐ部屋に戻るつもりだったからさ、かけてねぇんだわ。それじゃ、碇君の部屋は俺んとこの向かいだから。ついてきて。」

「はあ…。」

 

 

「はい、ここ。とりあえず荷物なんかは後で適当に整理しといて。んじゃ、夕食のときに。」

「わかった。」

 

段ボールが積まれている。後は机とベッドだけ。閑散としている―

僕みたいだ。少し整理していると、リビングのミサトさんから声をかけられる。

 

(エイちゃん、シンジ君、夕食にしましょー!)

(あいよ!)

「わかりましたー。」

 

ドアが開き足音がする、影嶋君が部屋から出ていったらしい。僕も、後に続いて―あれ、ドアが半開きになってる。電気もつけっぱだ。…案外、彼ってテキトーなのかな。中を覗いてみると、けっこう散らかっていた。

机にはノートパソコンと本が乱雑に開かれ、筆記用具が散らばってる。壁寄りにマンガや参考書なんかが立て掛けてある。これ、高校の参考書?凄いな…。他には…これはプラモなのかな。なんか、ゴテゴテしてるけど。

 

床は散らかってないけど、ベッドの上には…楽譜?ピアノかな、これ…。

 

(シンジ君?どうしたの?)

「あ、今行きます!」

 

急いで部屋を出た。

 

 

「「「いただきます。」」」

 

…オールレトルト。料理できないのかな?

 

「ごめんねシンジ君。いつもならエイジ君が料理つくってくれるんだけど…」

「え?」

「流石に右腕だけじゃ厳しいですよ。葛城さんだって、まだ料理下手なんですから。」

「そ、それは…」

「悪ィね碇君。つーわけなんだ。あ、そうだ。碇君て料理できたりする?」

「え?まあ、少しは…。」

「ならさ、俺の代わりにやってよ。ちゃんと俺がみてやるからさ。ね?」

「あ、うん、わかった。」

「ありがとう。」

 

なんか、影嶋君て強引なところあるな…。

 

その後、一週間くらい学校に通うと、色々驚いた。影嶋君、昼休みに勉強教えてる。それも、担任の先生とは比較にならないくらいわかりやすい。それに、友達も多いようだ。それに、僕とすれちがった時は無表情だった綾波があんなに笑ってる…。

家でも、料理について色々教えてくれる。しかも、毎日違うものをしっかり作っている。知らないことばかりで驚きを隠せない。

なんか、本当に同じ年なのかな…。

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

今日からレイが登校するのだが、案の定包帯ぐるぐるの状態だった。

 

「お弁当…どうしたの?」

 

「ああ、腕がこんなんだからさ。台所立つの危なくて。ごめんね、綾波。しばらくしたら、固定も外れるからさ。…そんなに楽しみだった?」

 

「ええ。食事はいつも、錠剤で済ませていたから…。」

 

「そっか…。綾波って複雑な環境にいたんだな。」

 

「ねえ、レイって…もう呼んでくれないの?」

 

なっ!?!?そっそそそそんな残念そうな顔しないでくれ…。いや、これも可愛い…しぬ…。

 

「ご、ごめんレイ。これが取れたらさ、家で何か作ってあげるよ。それでいい?」

 

「…うん。」

 

一生見てられる。もう脳をとろけさせてレイが可愛いってだけ言うbotになっていい。

 

「そうだ!エイジくんも何か知ってるでしょ?」

「そうよ、ノロけてないで教えなさい!」

 

「えェ、何の話だ?悪ィ、何も聞いちゃなかったわ。」

 

「影嶋君、ネルフで働いてるって噂よ?それに、その怪我は何よ?こないだまでなかったじゃない。」

 

「あくまで噂だろ、そりゃ。それに、これは職場での怪我だよ。んなくらい、どこでもあるだろ?」

 

「ちぇ~、つまんなーい。」

「で、碇くんはどうなの?」

 

話的にエヴァ関連だろね。ちっと可哀想だけど、俺らにも守秘義務ってのがある。

 

「ほんと…だけど。」

 

この言葉と共に、碇君の周囲に人だかりが形成され、質問責めにされる。この感じ、エヴァのパイロットってことが割れたと見た。諜報部と広報部さん?情報統制は大丈夫なんですか?

正直、俺に飛び火しないでよかった。俺だってうっかり口を滑らせることだってあるだろうし。あ、レイまで一緒になって見てるけど…なんかよくわかってなさそう。

碇君がたどたどしく答える中、外野からの刺のある言葉が飛んでくる。

 

「偉そうにっしとってもなーんも知らへんのやな!パーちゃうか!?」

 

「トウジー、よしなー。」

 

「黙っといてくれエイジ。これは俺とこいつの問題や。」

 

エヴァ絡みで何かあったのだろう。碇君がパイロットだとわかって突っかかってきてるわけだし。

 

「なら尚更黙ってられねぇな、トウジ。もう一度言う、やめろ。」

 

「何やと!?こいつとお前に何の関係がある言うんや!」

 

「同業者だ。」

 

「な…」

 

どうせ隠し通そうつったって近い内に割れることだ。

 

「俺も予備だがパイロットだ。昨日アレには俺も乗っていたときがある。」

 

「…お前ら!ちと顔貸せや。」

 

「ごめんレイ、ちと行ってくる。」

「うん。」

 

 

 

 

 

チャリ置き場近くで俺らはトウジと対面する。ケンスケもついでについてきたようだ。

 

「ええか転校生、よう聞いとけよ!ワシの妹はなぁ、今怪我して入院してんねんぞ!誰のせいやと思う?」

 

トウジは碇君を睨む。

 

「お前のせいや!お前が無茶苦茶暴れたせいでビルの破片の下敷きになったんや!

チヤホヤされていい気になっとるんちゃうぞ!」

 

トウジには申し訳ないが、割りとありそうなな状況だ。

言いたいことはわかるが、怒りの対象を間違えてる。避難をしているはずなのに取り残されたか、はたまた引き返してしまったか。その場の監督官とNERVの監視の方がよっぽど問題だろそれ。後で葛城さんにも言っとくか。

 

「ごめん。」

 

「舐めとんのかワレ!『ごめん』で済む話か!!」

「トウジやめろよ!」

 

「じゃ、どうして欲しいの?土下座しろって言うんならするけど。」

「やめろ碇君、煽るな。…それはいつだ?」

 

「いつって、上でドンパチやっとる時決まっとるやろ!」

 

「違う、日が出ているかどうかだよ。」

 

「日ィ?確か、出とったらしいで。その後デカい爆弾が爆発しとったらしいしな。」

 

NN爆雷攻撃前...!

 

「それなら俺が原因だ。」

 

「何!?」

「エイジくん!?」

 

「トウジ、君の妹に怪我をさせてしまったのは申し訳ないと思う。でも、戦ってる最中に足元を気にしてる余裕なんて無い、俺だってアレが初戦だ。俺らにキレる前に、妹さんらを監督していた人にキレてくれ。」

 

「何やと!お前らに責任が無いっちゅーのか!」

 

「違う、責任の所在をはっきりしろって言ってるんだ。サクラちゃんの監督官の話だよ。避難が完了してないのに出撃命令が出たのならNERVの責任、それが出ているのに外に民間人がいたのなら監督官の責任だ。…まあ、出撃命令が出たんだから十中八九後者だろうな。」

 

「エイジおのれ…何を!!」

 

トウジに殴られた。これだから子供ってのは苦手だ…。無闇やたらに人に当たるし、論理が通じない。まあ、もっとわかりやすく言おうとしない俺も俺だろう。

にしても痛ぇわ。何とか左肩から落ちることはなかったけど衝撃が響いてジンジン来る。

ぼーっと考えながら寝転んでると、碇君から声をかけられる。

 

「ねえ、エイジ君大丈夫?」

 

「え?まあ大丈夫よ。痛いけど、ね。」

 

手を差し出して来たから、それを掴んで引き上げてもらう。

 

「さっきはありがとう、庇ってくれて。」

 

「はは、アレを庇ったって思ったのか?」

 

「え?」

 

「いや、何でもない。教室戻るか。」

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

 

[それでは、インダクションモードで始めるわよ。兵装ビルの位置は頭に叩き込んであるわね?]

 

「はい、多分。」

 

[それじゃあ始めて。]

 

バーチャル空間に、前回戦った敵を模したものが出現する。これに照準を合わせてトリガーを引く…。たったこれだけだ。

単調なことをしていると、昼間の事が何度も頭に浮かんでくる。

 

『アレを庇ったって思ったのか?』

 

自嘲のような笑いと共に発せられたその言葉の意味が、未だにわからない。自分自身のケジメのつもりだったのかな。…鈴原君とのやりとりも、だいぶ大人に感じた。でも、あの淡々と言う感じ、どこか怖さを感じる。僕は、影嶋君のことがよくわからない。勉強に、家事に、本当に僕より長く生きてきたかのような知識量。…考えれば考えるほど、よくわからない。

いったい何者なんだろう…。

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

初号機がバーチャル空間で射撃訓練をしている。俺も一緒に見ていると、これ見よがしにマイクを切ったミサトさんから唐突に会話を振ってきた。

 

「ねえエイちゃん、シンジ君、学校どんな感じ?」

 

「監視つけておきながらわざわざ口で聞くんですか?」

 

「やーねー、身近な人から聞くってのが重要なのよ。」

 

「まあまあじゃないですかね。自分から話しかけないってのは少しアレですけど。あと、無自覚かはわかりませんけど時折煽るような言い方するんですよね。」

 

「そっか。ところでその頬と肩の傷、大丈夫?」

 

「一発殴られた程度なら大丈夫ですよ、自業自得の傷ですし。肩だって激しく動かさなければ大丈夫です。戦線復帰ですね。」

 

「そう。シンジ君、転校してすぐ喧嘩なんてしたら、どーしたらいいんだろうって思って。」

 

「まァ似たようなもんですけどね。 よし、それじゃ今度は着弾煙の再現ありでやろう。いいね?」

 

[わかった。]

 

「んじゃ、赤木博士お願いします。」

 

「わかったわ。...あなた、ミサトより腕があるんじゃない?シンジ君がこれに乗り続けてるのも、あなたの影響が大きいかもしれないわよ。」

 

「そうですかね?そこはやっぱよくわかりませんよ。」

 

「そうかしら?実は自分でもわかってるんじゃないの?」

 

「んな事は無いですよ。他人の考えることなんて"想像"以上に知ることなんて出来ませんし。それより、先日言ってたガトリングってもう出来たんです?」

 

「もうそろそろね。あなたの要望通り、着弾煙が少ない弾にさせたわよ。」

 

「ありがとうございます。それじゃ、彼の後試用してみますか。」

 

「やる気十分ね。この後会議があるから、そこからはマヤが監督をしてちょうだい。」

 

「わかりました、先輩。」

 

「私もエイちゃんに立場を取られないように頑張らないとね。」

 

「俺にそれはできませんよ。俺は同級生であって保護者にはなり得ません。大人のコミュと子供のコミュは全然違いますからね。それに、作戦立案ってのは俺にはできませんよ、現場指示はできても、それ以上のことはできません。」

 

「やっぱ、エイちゃんは大人ねぇ。」

 

「俺にはその『大人』って言葉が理解できませんね。あ、そうだ。少し赤木博士と話があるから後で連絡よこしてください。向こうの時間に合わせる、と言っといてくださいね。」

 

「わかったわよ。ちなみに、それはどんなヤツなの?」

 

「シンクロを使った、サポートですね。正直どこまでできるかはわかりませんけど。」

 

「わかったわ。それ込みでリツコに伝えるわね。」

 

「わかりました。…お疲れさま、碇君。」

 

[エイジ君もお疲れ。この後はどうするの?]

 

「俺は少しだけ訓練してから帰るよ。初号機借りるわ。」

 

[わかったよ。頑張ってね。]

 

「おう。…着替えに行くんで、後は頼みます。」

 

「わかったわ。」

 

 

相変わらず起動ギリギリだけど、何とか動かすことはできた。

ガトリングの試験はバーチャル空間でのみ行われたが、概ね良好な結果だった。ちっとだけ着弾煙が強い、重量も相まって持ち上げ、構えの動作が重い。これは仕方がないかな、重いし。でも、破壊力は前回の第3使徒でのシミュレーションならだいぶ良好な結果だった。

 

「概ねいいっすね。それじゃ、俺は上がります。お疲れさまでした。」

 

[お疲れさま、エイジ君。葛城一尉から連絡が届いてるわ。この後30分後に赤木博士と面談できるわ。あと、先に帰らせてもらう、と言ってましたよ。]

 

「ありがとうございます、伊吹さん。お疲れさまでした。」

 

 

 

 

同日、赤木研究室。

 

「さて、私に話があると言っていたわね。何かしら?」

 

「コーヒーありがとうございます。…突拍子もないことを言ってもよろしいでしょうか?」

 

「構わないわ。この頃の子供っていうのは創造力が豊かですもの、大人よりいいアイデアが出ることもあるわ。」

 

「ありがとうございます。それでは…エヴァと外部からシンクロして、内部パイロットのアシストってのはできないでしょうか?例えば、任意のエヴァの視覚情報をこちらで共有して、動きのアシストやパイロットへのアドバイスをするとか。MAGIのサポートもつければ磐石だと思います。…どうでしょう?」

 

「確かに、完全に素人のパイロットと、病み上がりの女の子をサポートするのは重要ね。でも、それは難しいと思うわ。

エヴァというのは、人ひとりとシンクロすることで動いているのは知っているわよね。」

 

「はい。それが起動の基本ですからね。」

 

「そう。でも人の思考…例えば言語でもいいわね。例えば、日本語と英語とか。それが違うだけで複数人が入っているエントリープラグでは起動できないわ。起動中でも他人がプラグ内に侵入すると、神経系統に異常が発生することがわかってる。」

 

「なるほど。それじゃあ理論上であれば、まったく同じ思考であれば、同じエヴァに同時にシンクロできるということですか?」

 

「そうね。でも、それは現実としてはありえない。だいぶ難しいわね、その要求は。」

 

「ん~、そうですか。せっかくエヴァに乗れるのに、前に立たずに後ろでサポートだけっていうのも自分は嫌なんですよね。それなら、エヴァって初号機以降のナンバリングってあるんですか?どうせ使徒はここに来るのでしょう?」

 

「ナンバリングは、今のところ四号機まであるわ。弐号機はドイツ支部で、三、四号機はアメリカ支部にある。…そうね、エイジ君がいれば。3人、いや4人での作戦展開ができるわね。でも、そうして他の国が黙ったままとは思えないわ。」

 

「利権ですか。ダルいですよね、やっぱ。」

 

「仕方ないわ、それが国家というものよ。」

 

「『大人』ってのは嫌な世界ですね。今日はありがとうございました。しょうもないこと喋りに来てしまって。」

 

「いいえ、そんなことはないわ。あなたが必死になって他のパイロットをサポートしようという意思を感じる。それだけで十分だわ。今日はお疲れさま。」

 

「ありがとうございました。失礼します。」

 

 

 

まあ、言ってみたことはファフナーのジークフリードシステムのようなものだ。実現したら、恐らくアニメ本編でも言っていたようなデメリットも同時に背負うことになったが、後ろでずっと喋ってるだけよりかは自分の気が晴れる、そう思った。んでもやっぱ現実ってのは厳しいな、ほんと。

 

…ふと、今日の昼の事を思い出した。トウジへああ言ったのは流石にキツ過ぎた。明日、謝ろう。

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