ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE49

-SEELE-

 

[戦自の行動は余り効果を発揮していないようだな。]

[当然であろう、何者かによって我々の情報が漏らされてているのだ。]

[現にインターネット上で何度も我々の秘匿すべき情報が公開されている。]

[NERVは既に、碇からすらも解き放たれていると見て間違いないな。]

[どういうつもりだ、司城。]

 

「私は最初から人類の補完など望んでいない。我々は我々であるからこそ人類なのであり、完全生物となったそれは最早人間ではない。お前らのように自らを機械で生命を保っておきながら補完を望む思想は我々には理解はできないな、キール。」

 

[我らが人類はこの地に無節操に蔓延り、互いを理解できぬまま憎しみ合い、傷つけあう事しかできぬ愚かな生物。お前自身も息子の命を削ってまで神の子となるのを放棄する気か。]

 

「私の息子はもう大人だ。自分自身で考え、それによって得た結論ならば私は喜んで受け入れる。私がとやかく言ってそれに従ってもらう時期はとうに過ぎた。」

 

[何故、そこまで人類の可能性というものを信じる?]

 

「それは私が人間だからだ。人間であることを諦めたお前には理解できないはずだ、キール。」

 

13番目のモノリスが消滅する。

 

[司城の処遇、如何なさいましょうか。]

[放っておけ。この攻撃が失敗しても、最早人類に群体としての時間は残されておらぬ。]

[忌むべき存在の福音(エヴァンゲリオン)…やはり、我々の障害となったか。]

[やはり、毒は同じ毒を持って制すべきだな。]

 

 

 

 

 

-碇シンジ-

 

「霧島さんやめてよ!こんなことしても何の意味もないよ!」

[シンジくん達がそれから降りてくれればそれでいいの!]

「そんな…。」

 

[シンジ!ミサト、まだなの!?]

[まだよ!量産機が出てくるまで耐えて!]

[簡単に言ってくれちゃって!]

 

[シンジ君たちは早くそれから降りて!シンジ君たちは……きゃ!?]

 

腕を圧し潰されそうになり痛みにうめく中、四号機が目の前のロボットを蹴り飛ばして拘束から抜けさせてくれる。

 

「カヲル君!?」

[君らこそ目の前の情報だけを鵜呑みにして、真実を知ろうとしない。君らの方が踊らされている事を知るべきだ。ミチヨちゃん、この3人は仕方ないよね?…ありがとう。情報をあげよう。それで尚、僕らの邪魔をするのなら容赦はしない。]

 

カヲル君の静かながら圧のある言葉に三体のトライデントは後退りをしていき、地底湖近くへと後退していった。

 

[上を見て。みんな、来るわよ。]

 

アスカの声に促されるまま上を見上げると、天井に開いた穴から多数の翼を生やした白いエヴァが降下してくる。どれも頭部には目が無く、大きい口がついているだけ。そんな不気味なエヴァが、僕らを中心に回りながら空を飛んでいる。

 

「エヴァシリーズ…。」

[あんなウナギみたいな頭をした奴らが、敵ねぇ…。]

 

僕らの周囲を囲うように量産機は翼を畳み、着地する。不気味に笑うそれは右手に巨大な剣を持って、僕らの方向を見ていた。

 

[クロスドッグで一気に片をつけるわよ!フォーメーション開始!!]

 

 

 

 

 

-葛城ミサト-

 

「戦自の誘導、どれくらい上手くいってる?」

「何回かベークライトの隔壁を突破されましたが、概ね順調です。」

 

「エヴァシリーズは?」

「初号機、弐号機、参号機、四号機と交戦開始。クロスドッグで対応中です。付近にトライデント級陸上巡洋艦がいますが、三体とも静観を保っています。」

「トライデントは放っておきなさい。エヴァシリーズの殲滅が最優先事項よ。」

 

「戦自攻撃部隊、第二発令所に集まりました!」

「了解、これより情報開示を始めます!ミチヨちゃん、お願いね。」

「わかったわ、ミサト。」

 

ミチヨちゃんと手を繋ぎ、意識を戦自の軍人やネルフ全館に繋いでもらう。

 

「現在ネルフに居る全ての人に伝えます。この攻撃の真意と、セカンドインパクトの真実を!」

 

 

 

 

 

-惣流・アスカ・ラングレー-

 

「エンゲージ!!!」

 

あたしは先陣を切って両手に持った剣を構え、敵に向かって突進していく。真後ろにはシンジとカヲルがマステマを持って牽制や援護をし、最後尾はレイが狙撃ライフルを持って死角や真後ろに回った敵を確認する。全員でホバー移動で量産機を翻弄しながら確実に一体ずつ撃破をしていっている。

側面や死角からの攻撃は後ろの3人が確実に見てくれているため、あたしは遠慮無く前に突っ込むことができる。

 

「次、目の前の3体!右端からやるわよ!」

[了解。]

[残り4体…もうこんなに倒したのか…わっ!?]

[碇くん、油断はダメ。]

「そうよ!最後まで油断しないで、次!」

 

実際、地底湖の周辺には既に倒した5体の量産機の残骸が転がっている。ある一体は頭部を潰され、ある一体は上半身と下半身が分離している。他に胴体をズタズタにされていたり脳天を撃ち抜かれて地面に突っ伏していたり、見ているこっちが気持ち悪くなりそうなものね。

残り三体も難なく倒すと、やっとミサトの演説が頭の中に入ってきた。恐らく加持さんも戦自の本部に接触している頃。後は戦自の攻撃から本部を守るだけ…。あたしはトライデントに近付き、機首に手を置いて話し始める。

 

「接触回線オープン。あんたらはどうするの?」

 

[私たち?…わからない。もう、私には何が正しくて何が正しくないか、わからないもの。]

 

「そんなの、これから見ていけばいいじゃない。これ以上敵対しないのなら、あたし達はもう攻撃しないわ。後はあなた達で決めるのよ。」

 

[俺たちで…。っ!?危ない!!]

 

ムサシの乗るトライデントが右腕のレールガンを放ち、あたしらの後方へと飛ばす。驚いて振り向くと、左腕と右足を飛ばされた挙げ句に胴体をボロボロにされた筈の量産機が起き上がり、左腕をくっつけようとしていたところだった。慌てて周囲を見回すと、同じく他の量産機も復元を始めており、フォーメーションを直すまでの一瞬であっという間に全部が復活していた。

 

「な…何よ、このインチキ!!」

[あれだけ攻撃したのにまだ動けるの…!?]

[流石S2機関搭載型。最早使徒と同列になったか。]

[…倒す。]

 

「倒すって言ったって…ん?」

 

あれもエヴァよね。なら、エイジがやってたように…!

 

「もう一度攻撃をするわよ!但し、今度はエントリープラグを確実に破壊するわ!」

[プラグを!?で、でも模擬戦じゃあそんな戦い方やらなかったよ!?]

「あたしが知ってるわ!エイジはいつもプラグを狙う!戦い方は教えるから、後はクロスドッグを…レイ!?どうしたの!?」

 

[呼んでる。行かなきゃ。]

 

「行くってどこに!?」

 

[ドグマよ。私の、責任を果たすの。]

 

「何を言って…!?レイ!ちいっ、クロスドッグからトリプルドッグに変更!攻撃開始!!」

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

参号機をドグマに降ろすために降下ワイヤーに足を掛けさせると私はプラグから出る。降りると、私の目の前には碇指令が立っていた。

 

「約束の時が来た。さあ、行こう。お前が還るべき場所へ。」

 

私の、帰るべき場所…。

 

私は指令についていって、ドグマへと、リリスの元へと向かった。

 

 

「老人達は間違いなくここでサードインパクトを起こすつもりだ。

時は満ちた。いや、起こさざるを得ないだろう。用意していたシナリオとは多少違っていてもな。」

 

指令はヘヴンズドアを開く。

 

「後は、アダムとりリスの融合のみだ。」

 

目前には、

以前より下半身が再生し、膝まで再生したリリスがいた。

 

「やはり、ここにいらっしゃいましたね。ここから先は、あなたの思いどおりにならないわ。」

 

 

 

 

 

-赤木リツコ-

 

『ちょっと!指令の拘束をしくったってどーいうコトよ!?』

「仕方ないじゃない!エイジ君みたいな抵抗をされたら手も足も出せないわ!指令は必ずドグマに行く、尻拭いは私がきちんとするわよ!」

『たり前よ!このままサード起こされたら承知しないからね!』

「勿論よ。」

 

ま、サードが起きてしまったら承知しないも何もないけど。

 

「あなたたち3人は私と一緒にドグマへ行くわよ!」

「「「了解!」」」

 

ドグマへの最短ルートを進む中、隔壁を突破してきた小隊と鉢合わせをしてしまう。

 

「赤木博士は先に行ってください!ここは私たちが!」

「っ…わかったわ!」

 

ドグマへと走る。その途中、ミサトからまた連絡が来る。

 

『リツコ、ミチヨちゃんがドグマへ行くって聞かなくて!このままじゃあマズいんじゃない!?』

「何ですって!?わかった、すぐ向かうわ!」

 

このままでは…!

 

りリスの前に立つと、まだ指令やレイ達は来ていなかった。荒くなった息を整えて、リリスを見上げる。私を縛り続けたもの、リリス…。

後ろから扉が開く音がする。…来たわね。

 

「やはり、ここにいらっしゃいましたね。ここから先は、あなたの思いどおりにならないわ。」

 

「思い通りにならないとは…いったいどうするつもりだね、赤木リツコ君。」

「あなたを拘束して、指令の計画を止めます。よくある話でしょう?そこらじゅうに転がっている、勧善懲悪のアニメに。」

「……。そのちっぽけな拳銃でかね?」

 

「いいえ。MAGIのプログラムを書き換えさせてもらっています。私がスイッチを押しさえすれば、ドグマは…リリスは爆破されます。でも、これはすぐにはしませんよ。」

 

「何のつもりだ、赤木リツコ君。」

 

「さっきも言いましたでしょう?あなたに愛想が尽きたからって。」

 

「それだけではないだろう。私を裏切って、お前に何が残る。」

 

「あら、別に私はあなたが全てではないことよ?」

 

「強がりを言う余裕すらあるのか。」

 

「私はアヤナミシリーズを産み出した…いえ、綾波レイと綾波ミチヨという二人を産み出した科学者として、母親としての責任を果たすだけですわ。私もレイも、ミチヨちゃんもあなたの人形じゃない。」

 

「…そうか。」

 

指令は私に銃を向ける。

 

「赤木リツコ君、今まで君は、本当によくやってくれた。―愛していた。」

 

「ふ…嘘つき。」

 

指令は私に発砲する。しかし、それはミチヨちゃんのATフィールドによって阻まれる。

 

「何!?お前はアークのコア!?何故ここにいる!」

 

「それが、あなたたちの選択なのね。」

「必ず守ってくれると思っていたわ。身勝手な母親でごめんね。」

 

「っ…。レイ!」

 

指令は焦った表情でレイの腹部へと左腕を伸ばす。私は発砲して離そうとするけれど、全てをATフィールドに阻まれてしまう。

 

「く…こんな時ばっかり、みんな人間をやめちゃって!」

「レイ、お前のATフィールドを解き放て!身体を捨てて、欠けた心の補完をしてくれ!」

 

そう言いながら伸ばした腕は、他でもないレイの両手に阻まれる。

 

「レイ!?何故…。」

 

「違う…私が欲しいのは、この手じゃ、こんな手じゃない…!」

「何!?」

「私が欲しいのは、影嶋君の、エイ君の…!」

 

「レイ…?まさかあなた、心が…!」

 

「確立できたね、お姉ちゃん。さあエイジ、起きて。あなたはまだ、そこにいるのだから。」

 

その声の数秒後に、参号機が派手な水飛沫を上げてリリスの目前に降り立つ。プラグからは正常に見える肉体のエイジ君が出てきていた。

 

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

最近、俺はよく夢を見る。ファフナーみたいな人型兵器が出てきて、ジークフリードシステムのようなものに乗って、皆城総士の真似事をする夢を。

でも、夢にしては妙にリアリティがある。10日ほど前からだった。最初は肩が砕けたような激しい痛み。その次は全身を焼かれるような苦痛、胸を何度も鋭い物で殴られた痛み、重いものを支えたかのような全身の関節の痛み。肩を引きちぎられる痛み、首もとを何かで刺されたような痛み。

首の痛みを経験してから、不思議と前より痛みが和らいでいった。でも、痛みは続いた。脇腹、頭痛、胴体の内蔵が発しているかのような痛み。夢の中では感覚の喪失、逆に目は視力が復活した。こんな身体がおかしくても、病院に行っても何も異常はないし精神科に行っても薬を貰うだけだ。その薬を飲んだところで、この夢と症状は止まらなかった。

でも、今日は夢を見なかった。ベッドに横になったまま、掌を天井に向ける。眼鏡をかけていないから、指も、手もぼやけたままだ。起き上がると、少し頭がくらくらするが意識ははっきりしている。最近はおっかない夢ばっかり見ていたから、まだ俺がここにいる事に安堵する。

 

「おはよ、エイ君。今日はうなされてなかったよ?」

「そっか、忘れてる訳じゃないんだな。よかった…。」

「朝食、食べよ?」

「そうだな。」

 

一般的なマンションと比べると小さい部屋だけど、最低限のもの全てが揃っている簡素な部屋。着替えながら鏡を見ると、左の首筋にできていた痣は綺麗に消えていた。引き出しの上には二枚の写真が飾ってある。同級生の子の家で撮った、5人が揃った写真と、二人で旅行に行ったときのツーショット。それに見下ろされる形でテーブルに向き合い、床に座り込んで朝食を食べる。

 

「美味い。最近は悪いな、いつも俺が朝食を作ってたのにさ。」

「いいのよ、いつものお返し。」

「嬉しいな。ありがとな、レイ。」

「へへ。あれ、そういえば今日は何か課題あったっけ?」

「今日は特に何もなかったと思うけどな。」

 

いつも通りの、平和な日常。こんな会話をしながら朝食を摂っていると、チャイムが鳴る。

 

「こんな時間から誰だろ?」

「さあ?ちっと俺が見てくる。」

 

立ち上がって玄関に行き、ドアを開けろと―

 

「なん、で…お前が…。」

 

目の前には、もう一生見る筈の無かった、レイとほぼ変わらない顔の、『三人目』がいた。

 

「あなたは、ここにいてはいけないわ。」

 

その声と共に、周囲が青色の結晶に覆われていく。まさかと思って後ろを向いた時は最早遅く、レイごと巻き込んで部屋を覆い尽くしていく。

 

「レイ!?やめろ!俺の居場所を奪うな!!」

 

その叫び虚しく、砕け散った後には俺がよく知る部屋へと変貌する。写真の集合写真は6人に増え、写真の前には決してもう開かれることのない小箱が置いてある。

 

「な…何故だ!?どうしてお前らは俺の居場所を奪うんだ!もうこれ以上俺の居場所を奪わないでくれよ!!」

 

「あなたは…逃げる人ではなかったわ。」

 

「黙れ!もう俺には何も残っちゃない!もうこのままゆっくりいなくなりたかったのに、どうして邪魔するんだ!!!」

 

「そうやって、昔の僕みたいに逃げるの?」

 

シンジの幻影が俺の右側に出てきて言う。

 

「昔のあたしみたいに、自分を偽り続けるんだ。」

 

アスカの幻影が左側に出てきて言う。

 

「会ったばかりの頃の私みたいに、世界を見ようとしないのね。」

 

背後から、レイの無機質な声が聞こえてくる。

 

「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!!録に責任も果たせなかった俺が今更何をしろっていうんだ!!もう俺なんて居なくてもいいんだ!もう放っといてくれよ!!!」

 

「誰が、あなたを必要ないって言ったの?」

 

「俺の手を見てくれよ…もう、血の色で真っ赤だ。こんな奴を、誰が必要としてくれるんだ?教えてくれよ…。」

 

「自分の罪ばかり見て、決めつけてる。どうして自分自身を認めてあげないの?」

 

「認めてるさ!!」

 

「アンタはただ過去に引きずられているだけよ。」

 

「違う!二度も人を殺しかけておいて、その事を皆が知ってて、どうやって俺の事を理解してくれるんだ!!」

 

「あなたは碇くんやアスカの事を、理解しようとしたの?」

 

「勿論だ!同居人になってからも俺はあいつらをずっと友人として理解しようとしてたさ!それにアークシステムを通じて、あいつらの感情を何度も共有した!並みの人間よりは理解している!!」

 

「機械を使って人の心を覗いて、それで理解したことになるの?」

「クロッシングなんて馬鹿馬鹿しい。」

 

「「エイジ(君)はあたし/僕の何が分かっているの?あたし達/僕達にはシステムでも心を一切見せなかったのに。」」

 

「違う…俺はただ…。」

 

 

「もう、自分を傷つけて満足して、いなくなろうとするのはやめて。」

 

 

「………レイ?そこにいるのか!?」

 

「外を見て。」

「外を?」

「私が、視えなくなったエイ君の目の代わりになってあげる。」

 

差し出されたレイの手に触れると、外では量産機と3人の戦闘が映し出される。

 

 

『エイジ君は…僕らを、みんなを助けてくれた!だから、今度は僕が!』

『プラグを狙うの、こんなに難しいの!?…くっ、エイジだって、あたしらの痛みを今まで背負ってきてくれた!なら、あたしにだって!』

『エイジ君…どうか、無事に帰ってきて。私、あなたに謝らなきゃならないことがいっぱい…!』

『エイジ君、僕は君の苦しみはわからない。でも、僕の存在をもう一度認めてくれるのなら…また、前みたいに学校で色々話したりしよう。』

 

 

どうして、皆は互いに痛みを感じ合いながら戦っているんだ。

 

「それが、みんなの選択だから。」

 

気付けば、俺の両隣にいるシンジとアスカの幻影も、微笑んで俺の手を取っている。

 

「そんな、どうして皆が…。」

 

「わかった?みんな、エイ君の事を嫌いになってもいないし、いなくなって欲しいとも思ってないの。このまま逃げ切るなんて、サードインパクトで補完すら行われない滅びなんて、私が許さない。だから、エイ君はエイ君の責任を果たして。」

 

「俺の、責任?」

 

「そう。参号機のパイロットとして、指揮官として、皆を守る事。それ以上は言わなくてもわかるよね?」

 

 

 

自らが否定した、今までの思い出が溢れ出てくる。

 

 

 

そうだ。ただ俺は、彼らのこんな笑顔を、日常を、幸せを守るために……

 

 

 

「…ごめん。もう俺は大丈夫。」

 

「エイ君、私が見えているものが見える?私が感じているものを感じれる?」

 

「…ああ、全て受け取ってるよ、レイ。」

 

「行こう。みんなが待ってる。」

 

 

 

「そうだ。俺はまだ、ここにいる。ここにいるんだ!!」

 

 

 

 

 

 

目が醒めると、そこはエントリープラグの中だった。漂っている結晶が、アレはただの幻影ではないことを示唆している。もうすぐドグマ最下層、リリスの目前。

 

-さあエイジ、起きて。あなたはまだ、そこにいるのだから。-

 

ミッちゃんの声!同時に今まで受け取っていた情報を知った俺は居ても立ってもいられなくなり、ワイヤーから飛び降りて大胆なショートカットをする。目の前には赤木博士とミッちゃん、指令とレイがいた。

プラグを身体から出し、俺自身もプラグから出る。

 

「色々言いたい事はあるけどな、指令はさっさと大人しく拘束されろ!」

 

プラグから飛び降りで、俺は指令に対峙する。レイを庇おうとする俺を銃で排除しようとするが、俺もフィールドを張って弾を防ぐ。指令との掴み合いになるが、体術を身体で覚えていた俺は指令を投げ飛ばし、赤木博士に拘束を依頼する。

 

「赤木博士!コイツを頼みます!」

「本当はそうしたいのだけれど、保安部の人が…」

「お待たせしました!!」

 

声の方を向くと、武装した職員3人が走ってくる。

 

「みんな、無事だったのね!」

「何とか途中で、戦自の方でカタがついたようです。」

「あいつらは撤退を始めました。しかし、委員会のエヴァとの戦闘はまだのようです。」

「了解。それじゃあ、指令の拘束を頼むわよ。」

「了解!」

 

話が終わると、三人がかりで指令に掴みかかって拘束をして連行していった。

参号機の方へ戻ろうとすると、上着の背中をつまんで引き留める人がいる。振り返ると、レイが目に涙を溜めて待っていた。

 

「エイ君…今までごめんね。」

「レイが悪いんじゃないよ。……行ってくる。」

「絶対に帰ってきて!」

「ああ、絶対だ。」

 

参号機が下ろしてくれた手に乗り、プラグ内に入って一体化を完了させる。

クロッシングの前に、やるべき事がある。あんな約束はしたが、もう俺は長くはないのが自分でもわかる。既に身体からはまた結晶が生えてきており、いなくなるのも時間の問題だろう。だから、その場で言いきれないであろう言葉を、今―

 

 

 

全て記録が終わり、地上付近になったとき、俺は他のパイロットと接続をした。

 

「クロッシングスタート。みんな、俺がわかるか?」

 

[え…エイジ君!!]

[バカ、毎回来るのが遅いのよ!]

[待っていたよ。さあ、僕らの責任を果たそうじゃないか。]

 

「ああ!」

 

みんな、俺が帰ってきて安心してるようだ。そんな感情が伝わってくる。そうだ、俺はこんな心をして欲しくて…。

 

[クロスドッグはわかるわね!?それでプラグを一気に破壊するわよ!]

「オーライ!…待て!あいつら何を!?」

 

量産機全てが翼を展開して、ジオフロントの空へと飛び上がる。そいつらは俺ら全員に向かって剣を振りかぶり…いや、形状がロンギヌスの槍になった!?まさか!!

 

「させるかぁああああああああああ!!!!!!!」

 

守らなければと思う前に、身体が勝手に動いていた。槍はこちらを正確に狙い、俺ら全員をまとめて始末しようとしてくる。俺はフィールドを前面に張り、抵抗をする。槍から負の感情が流れてくるが、それら全てを振り払って、クロッシングも切って必死に守った。

 

だが、槍は俺の全身と両手に刺さる。俺自身にもフィードバックされる激しい痛み。吐血もしたが、今だけはその痛みすら有り難かった。量産機は俺を拘引しようと両手に刺さった槍を持つが、飛び上がった瞬間に俺は腕を動かして地面に叩きつける。

 

「何する気だよ…?これが、俺の…ぐっ、最後の仕事だ!!コントロールジャック!!!」

 

 

 

 

 

-綾波レイ-

 

あの後保安部に保護された私はまたシステムルームへ行き、エイジ君のサポートをしようとしていた。幾らS²機関を搭載したF型装備の初号機と弐号機、それに四号機もいるとはいえすぐに再生してしまう10体の量産型エヴァ相手に苦戦をしていた。相手は恐らく私の技術を使って製造したダミープラグを使用しているのに対して、こちらは人間が動かしているエヴァ3機、苦戦しない筈がない。

システムに接続をすると、発令所の声が伝わってくる。

 

[参号機、メインシャフトから上昇、戦線に加わります!]

[モニターに映像出します!]

 

エイジ君の乗ったそれは隊列に参加しようとするけれど、敵はそれに目もくれず全機が空へ飛び上がり、各々が持っている大剣を構え…いや、形状が変化して…まさか、これ…!

 

「ロンギヌスの槍……!?待って、ダメ!」

 

[させるかぁああああああああああ!!!!!!!]

 

『ダメ!エイ君!!』

 

その叫び声も虚しく、体を張って参号機が…エイジ君が今までに無いほどに強力なATフィールドを張って、全ての槍を受け止める。しかし、二又に変化したそれを防ぐことはできず、参号機は全身を槍に貫かれてしまう。

 

「あ…ああ……。」

 

その瞬間、私の中で未だに欠けていたモノが全て戻ってきたように感じた。

ヤシマ作戦のあの日、私ただ一人を庇う為に身代わりになってくれた彼を、その後貰ってきた様々な感情を…鮮明な思い出を。

 

「エイ君!!」

 

私はシステムから飛び出していた。

待ってて…今度は、今度こそは私がずっと傍にいるから!だから死なないで!

 

「ミチヨちゃん!クロッシングで外の状況を教えて!」

 

-接続完了。直接送るわ。-

 

[これが、俺の…ぐっ、最後の仕事だ!!コントロールジャック!!!]

 

そう叫び、彼は両腕を量産型の方向へ突き出してコントロールジャックをする。まさか、最後の仕事って!

 

「ダメ!そんなことしたらエイ君の身体は!!」

 

-もう、彼には届かないわ。全てのリソースを量産型へのジャックに回しているもの。-

 

「そんな…!」

 

彼は量産型をプラグを介さず直接制御し、機体からプラグを強制排出、それを2体ペアで同時に握り潰すことで無力化していった。それは次々に、速やかに行われてあっという間に最後の一本になった。

 

「もう、やめて…!」

 

私は泣きながらも、必死に走って戦場へ向かう。

 

地上に出るのと同時に、最後の機体のプラグが参号機によって潰され、量産型は全て殲滅された。それと同時に地面に倒れ込む参号機。私はロンギヌスの槍が全身に突き刺ささった参号機の元へと夢中で駆け出していた。

エイ君の無事を、どうしても確かめたかった。

死んでほしくない。

エイ君がいなくなるなんて嫌!

私を真っ向から受け止めてくれた唯一の人を、失いたくない!

絶対に帰ってきてくれるって、約束したのに!

 

「エイ君!!」

 

(ちょっと、機能不全なのはわかるけどさっさと救護班を呼んでちょうだい!このままじゃエイジが…!)

(エイジ君しっかりして!…え?まさか、聴こえないの…?)

 

既に初号機と弐号機によって介抱されていた参号機の近くに行くと、口を両手で覆ってしまった。プラグから出された彼の左半身が、青色の結晶に覆われてしまっている。前にも似たようなことがあったけど、今度は辛うじて意識があるようで、碇君が一生懸命名前を呼んでいる。

 

「そんな…エイ君!エイ君!!」

「綾波、下手に触っちゃあ…!」

「ねぇ!!返事してよ!!」

 

必死になって呼び掛けていると、目が僅かに動き、こちらを向いて―いるように見える。

 

「ああ………レイ、俺を迎え…に…?嬉しい…な………。」

 

その言葉と共にしていた、彼の…本当に心からしているような笑顔が、痛く心に刺さった。

 

「違う…違うよ!私はここにいるの!!」

 

「本………当?」

 

私は彼の右手を頬に当て、クロッシングして言う。

 

「ね?いるでしょ?私はここよ?」

 

ずっと、涙が止まらない。

 

「よかった…。ねぇ………レイ……?」

 

「何?」

 

「左手の、指輪………。失くさない内に、ね…?」

 

「嫌…嫌!!そんな事言わないでよ!もうすぐ救助が…!」

 

「お願い……。」

 

左腕の結晶が砕けると、無傷の左腕があらわになる。薬指にはスーツが内側から結晶で破られており、そこには指輪がはまっていた。

 

「っ………わかった。」

 

震える指で、彼の左手から指輪を引き抜く。抜き取ると、また結晶が左腕を覆っていった。………もっと早く思い出したかった。

 

「あり……が、とう。……ねぇ、レイ…。」

 

「今度は何?うむっ!?」

彼は、まだ僅かに動いた右腕を必死に動かし、私の頭を寄せて……長いキスをした。

彼を直接確かめられる喜び以上に、失う悲しみの方が圧倒的に勝っていた。

 

「ありがと……レイ。最後にさ、……空、見せて。」

「空?」

「うん。俺……もう、灰色の空しか見えな…い、んだ。」

 

彼と繋がったまま、ジオフロントの人工の空を一緒に見上げる。空は夕日で紅く染まっていた。

 

「ごめんね……最期がジオフロントの空で…。」

 

「ううん、これで……いい。もう、思い残す事…………ないよ。」

「そんな、そんな事言わないでよ!」

 

彼が結晶に包まれていく。そんな、私、まだ―

 

「レイ、俺が居なくても、幸せに……」

「エイ君!!」

 

「よかった、エイジ君、何とか間にあ―」

 

ミサトさんの駆けつけも虚しく、彼は私の腕の中で、結晶に包まれて砕け散った。次第に細かくなっていく、手に残った破片を握り締め、私は声を圧し殺して泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

RE49: 離別(はじまり)

 

 

 




これにて原典における全てのパートを消化し終えました。完結まであともう少しお付き合いください。



補足:エイジ君とレイの理解って意味と他の人の理解って意味は根本的に違う
レイとエイジ君の関係:互いを完全に理解し合うこと(互いにクロッシングできてしまったせいで完璧な相互理解ができてしまった)
その他の人:人間の範疇での理解(普通の人間が相手の心の中まで完全に理解できるはずがないだろ!!これはクロッシングを体験したことのないゲンドウ君も同じ)
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