ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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大変お待たせしました。残り2話です。


RE54:祝 BLESSING 福

割と最初はノリで書けてた筈なのに、いつの間にかそんな感じで書けなくなってる自分がいる。もっと気楽に書きたい。

 

 

 

 

突如としてバトルフィールドを破壊し、参号機を守りながら降下してきたエヴァらしき機体。それは2体の執行者を両断しながらクロッシングを上書きし、各位に指示を飛ばし始める。

 

[クロッシング、クリア。作戦行動開始。]

 

「ちょっと、アンタは一体誰よ!それにそのエヴァっぽいのも…え?[EVANGELION Mark.Alles]?何これ…?」

「行動指示?このやり方、もしかして!?」

「そんなバカな、彼が復活するなんて事は…!」

「………違う。」

 

戦自の三人はネルフの四人の反応を理解できず、ただこの大きく変化した状況に困惑するままである。そんな戦闘部隊を他所に、リリスは攻撃指示を始めた。

12体いる執行者に対し、こちらの戦力は8体。数の上では不利だが、エイジの知識を持っているリリスにとっては苦の無いことであった。リリスはIFFをも上書きをしていき、ナンバーだけでなく使徒を人間(リリン)の言葉に翻訳した後の固有名詞をも追加していく。他のメンバー全員が困惑しながらも戦闘をする中、リリスは言葉を介さずにクロッシングにて指揮を続ける。

エイジの並列処理能力を駆使して矢継ぎ早に指揮をする中、リリスはアダム擬きと対面をしていた。リリスはクロッシングをしている中で理解はしていたが、改めて確認をすると確かにコア内に碇ゲンドウが取り込まれている。敵は私の存在に戸惑っているようで、未だに攻撃をしてこない。リリスとしては、ゲンドウを救出することに関しては消極的である。エイジの知識として彼が行ってきた所業を知っている為に余計にその感情が高まるが、何故かその感情は急速に落ち着いていった。

 

それを決めるのは私ではない。

 

ふとそんな感情が頭の中に浮かび上がる。根拠はわからないが、いつの間にか初号機の方を向いていたリリスは思考を切替え、改めて目の前の執行者に向き合う。両手の太刀を格納し、右手にハンドガン、左手にプログダガーを装備し、敵の無力化の為に交戦を始める。

その様子を戦闘をしながら見ていたアスカは、リリスの動きに確かな既視感を覚えていた。彼女にとっては何度も対エヴァ訓練の際に対応した、あの構え、立ち回りにナイフ捌き。間違いなくそれは「彼」の動きだった。

 

「嘘、エイジの動き…。どうして…?」

「この戦いが終わればわかるよ、アスカ。だから今は集中しよ!」

「…うん。そう、ねっ!」

 

シンジとアスカの二人は阿吽の呼吸でイスラフェルを倒し、次の執行者へと目標をシフトする。その状況を確認すると、リリスはシンジを呼び、トリプルドッグへと行動をシフトした。周囲の警戒を自身のアンカーケーブルとアスカに任せ、アダムから引き抜いたコアを両手の間に浮かべる。すると中からゲンドウがゆっくりと浮かび、コア内から剥離される。シンジは彼を受け止めるものの、このままでは戦闘が出来ないためにどうしようかと考えてしまう。

 

[問題ない。]

「え?」

[彼を一度後方へと保護しろ。フィールドは私が破壊する。]

 

リリスは有無を言わせないように狙撃ライフルを構え、フィールドに向けて撃つ。すると槍のレプリカを使い、4人掛りで突破したフィールドはあっけなく砕け散り、トライデントが守る指揮車への道が開けた。シンジは初号機の手でゲンドウを包んだままそこまで駆けて行く。そこまでの護衛は残った二人で行うが、その間にアスカはリリスへと訊ねたい事があった。

 

「アンタ、エイジなの?」

 

その質問に対し、この戦場で初めてリリスは言葉を介して話を始める。

 

「私は、影嶋エイジという存在ではない。」

 

クロッシングで伝わる、明らかな否定と彼とは全く違う声。その声を聴いた時、彼女は動揺した。期待していた声が聞こえなかっただけではない。その異常ともとれる落ち着いた声に、何も感情が感じ取れない事の方が重い事態だった。心を感じ取れないという事は、相手が人間かどうかすら怪しいのだ。リリスは自身へと向けられる猜疑心をもっともなものだと受け取るだけにし、更に周辺へのクロッシングでSEELEのアジトを発見する。腕部のビーム砲を付近の丘陵に向けて撃つと、吹き飛んだ表面から人工物が露出した。

 

 

エヴァに対抗する為にはエヴァを用いる他無い後方の大人たちは、バトルフィールド内で戦闘を続けている彼らを見守る他無かった。しかし、リリスが攻撃をした地点への最短侵攻ルート、地下構造や人員の情報が一斉に開示されていくのを目の当たりにし、彼らは目を見開く。凄まじい情報の奔流に、更にミサトの頭の中に響く声。

 

[表層は破壊した。後はトライデント級陸上巡洋艦でも問題ないだろう。]

「エイジ君!?…わかったわ。全トライデント及び対人部隊は指定ポイントへと速やかに急行、ゼーレのメンバーを拘束!」

 

『了解!!!』

 

大人たちの叫びが通信機越しに聞こえる。ミサトはあの濃紺の機体を希望の象徴のように見ていた。

 

「あの機体がどんなものかはわからないわ。でも、今彼が戦うのなら、それは利用させてもらうわよ、誰かさん…!」

 

 

舞台は戻って主戦場。リリスのカミングアウトという余りの事態に冷や汗をかくアスカだったが、そんな彼女を他所に他のメンバーは次々に執行者を撃破していく。カヲルが駆る四号機の強力なフィールドを起点に敵の攻撃を受け、後方からシンジが駆る初号機のインパクトボルトによる砲撃。更に戦自の三人によるコンビネーションアタックで次々と執行者は倒れていく。接触・浸食タイプの攻撃すらカヲルのATフィールドの前では防がれる為、オリジナルの使徒との戦闘よりも明らかに有利な戦闘が続いていった。最後の執行者、アルミサエルを倒した時、アダムの再生能力を失っていた執行者は全て倒れ、バトルフィールドも崩壊した。

集合するネルフの4人に対し、少し遅れて集合する戦自の3人。彼らは勝利に喜んでいたが、他の4人の感情が自分らのモノとは違う事をクロッシングで感じ取っていた。

 

「ムサシ、凄かったなあの黒いエヴァ!」

「どっちかっつーと青っぽくないか?でも、誰が乗ってたんだろうな。…マナ、どうした?」

「おかしい、みんなこの状況を喜んでない。折角倒したのに…。」

 

狙撃ライフルを背面にマウントするリリスの周囲に、ネルフの攻撃部隊全員が集合する。二人は希望を、もう二人は猜疑心を剥き出しにして。

 

「アンタ、本当に何者?あたしたちを助けてくれたのはわかるけど、それでもクロッシングでもわからないのよ。」

「カヲル君も綾波も、そんな警戒しないでよ。この人が警戒しちゃうよ?」

「…警戒しないといけないんだよ、『彼女』は。」

「え?カヲル君…?」

 

カヲルの発言にシンジとアスカは困惑をする。元とはいえ使徒の彼がそのような発言をするという事は、間違いなく何かある。それにレイが一言も喋らない事に違和感を覚えていた。彼が還ってきたのなら、レイは喜ぶはず。それどころか彼女すら警戒を強めていた。

 

「彼を同化して、その上エヴァンゲリオンすら創造して来るとはどういうつもりだい?『リリス』。」

 

カヲルの言葉にシンジとアスカは寒気がした。

そんな馬鹿な。リリスはドグマで磔にされていたはず。それなのに何故ここにいるのだろうか。カヲルの言葉から一つの仮説に辿り着いたアスカは、そんな事はあり得ないと思いながらも言葉を繋げる。

 

「まさか…あんた、エイジの心を乗っ取ったとでもいうの!?」

 

「…そうだ。」

 

リリスからの肯定の言葉に、二人の顔は青ざめていく。

 

「なんて事…!」

「まさか、それじゃあ目の前のエヴァは…!」

「そう。彼女が魂を持ち、あの磔にされていた肉体を再構成してできたのが、恐らくこのエヴァだ。彼女がどのような思いを持ってここに来たのかはわからない。でも…」

 

カヲルはインパクトボルトとレプリカの槍をリリスへと突きつける。

 

「君が滅びを選択するのなら、僕はそれに抗うつもりだよ、リリス。シンジ君の…いや、ここにいる全員の思いだからね。」

「タブリス、お前はリリンにはなれないぞ。」

「残念だったね。僕はもうタブリスじゃない、渚カヲルだ!」

 

カヲルはインパクトボルトを放ちながら槍をリリスへと突き出す。しかし、それのどれもがリリスへと届く前にATフィールドによって防がれた。レプリカとはいえロンギヌスの槍が阻まれた事にカヲルは驚く。

 

「そんなバカな!?こちらは槍まで使ってるんだぞ!?」

「模造品如きでは、私は止められない。」

 

リリスは左手を前に出し、少しずつ握り潰すかのように手を握っていく。するとフィールドが段々と槍を押し返していき、完全に握られた時に槍は粉々に砕け散った。カヲルは目を見開きながらも後退をしてフィールドの余波を回避する。彼の攻撃によって、この場にいるクロッシングで繋がった全員がリリスに対する警戒を始めた。ネルフの4人はリリスに対峙し、戦自の3人は指揮車を守るように展開する。

 

「クロッシングか。もう私にも、お前たちにも繋がりは必要ない。」

 

リリスは両腕を前に突き出す。巨大なフィールドに起因する波動を放つと、それを受けたネルフのエヴァが稼働を停止させた。その巨大な体躯は倒れ、膝をついていく。

 

「何だ!?」

 

「シンクロが途絶えたっていうの!?」

 

「シンクロだけじゃない。」

 

「僕らのクロッシング(繋がり)の全てを断ち切られた!この僕ですら戻せないなんて…!」

 

使徒であるカヲルですらクロッシングを戻せない中、指揮車や戦自のエヴァらは混乱をしていた。突然のエヴァの稼働停止に、目の前の謎の機体の処遇。明らかに敵対行為であるはずなのに、IFFは味方のままになっていた。ミサトは大きく変化する状況に焦りながらも対応していく。

 

「状況は!?」

「エヴァ初号機から四号機の四機が活動停止!001、002、003は活動を維持できています!」

「三人には彼ら4人を守るように伝えて!トライデント隊、攻撃用意!」

「しかし、相手のエヴァは…!」

「…!日向君、もしかしてあなたにも聞こえたの?」

「はい、僕にも聞こえました…彼の声が。」

「やっぱり。でもね、彼なら私たち人類に仇なす事はしないと思ってるの。勝手な予想だけどね。でも、あのエヴァからはそのようなものを感じ取れない。味方の指揮も機械的で、彼のようなやり方はしていても根本は違うものよ。」

 

ミサトはそのような考察をしていると、別のオペレータからの報告が来る。

 

「本部からのIFF更新です!これは…対象を第13使徒と認定するとのこと!」

「あのエヴァの事を調べるのは後よ!残った戦力で攻撃を始めるわ!エヴァ及びトライデント各機は戦闘用意!」

 

幸いにもゼーレの本拠地を叩いた部隊は、トライデントという過剰戦力を割いたのも相まって、被害は最小限に留まっていた。しかし、対エヴァ訓練を積んできたとは言えど相手の能力は未知数である。追加で入ってきた報告に対象は第二使徒リリスが変異したものという情報まで入ってきていた。誰の思惑も関わらない、言わば災害のような存在のリリスに対し、攻撃を受けた彼らは殲滅という手段を選ぶ。

 

今の彼らには、リリスと直接対峙できる相手がいなかった。

 

マナが動けなくなった一人一人を後方へと運びながら、ムサシとケイタはリリスに対してライフルの発砲を続ける。しかし、槍すら拒絶するリリスには幾ら対エヴァ、対ATフィールドを想定した武装であっても通用することはない。リリスは繋がりを絶ったというのに未だに攻撃をしてくる戦自のエヴァに疑問を抱いていた。

 

「何故、お前たちは繋がりを絶っても動ける。魂が無い分、一体化に力を入れたか。」

 

リリスは銃弾を弾き続けながらも武装をパージしながら空を仰ぎ、宇宙へと消えた槍を呼び寄せる。その反応を確認したオペレータは驚愕しながらも報告を続けた。

 

「大気圏外より高速接近中の物体あり!」

「まさか!」

 

沈黙をしていたネルフパイロットの中でいち早く機体を目覚めさせたレイは、その光景を見て驚いていた。自身が宇宙へと放った筈のものが、目の前へと凄まじい勢いで接近していたからだ。それは宙に浮いたリリスの胸元に衝撃波も何も発生させずに穂先を向ける。

 

「オリジナルの……ロンギヌスの、槍…!」

 

更に、その先の光景も誰も知る由の無いものだった。胸元に向かった穂先が、何の抵抗も無くリリスの体躯へと入り込んでいく。しかも突き抜けるのではなく、取り込むようにして。

生命の樹を創り出さず、ただ自身の一部として取り込んだリリスは両腕を横に広げる。するとその腕からは射撃ユニットを取り込むようにシールドが生成され、更にその先端から二本の槍状の武装を出現させた。更に翼から12本のアンカーを射出すると、周辺に転がっていた執行者の死骸からコアのみを抜き出していき、機体の周辺へと展開をする。それはリリス自身と共鳴しながらセフィロトの樹を青空へと映し出していく。リリスは右腕を上に、左手を下に向け、腕のシールドから突出した二本の穂先の間から緑色の眩い光を放ち始めた。

 

第13使徒(アレス)を中心に、強力なエネルギー反応を検出!」

「アレス周辺のS²機関、全て臨界に達します!」

「私は、私たちは、また何も出来ずに…!」

 

指揮車の中でミサトは右手を握り締める。もう打つ手はないと思った矢先、ふと考えが浮かんだ。今まで8号機というものがありながら、ヴィレは何故動かなかったのか?使徒殲滅、人類補完計画の阻止だけならば8号機を使えば楽に進んだ筈。それなのにこの滅亡の瀬戸際ですら後方支援のみにとどまっている。まさか…!

 

「8号機、マリ!行けるわね!?」

『合点承知!』

 

その掛け声と共にピンク色の巨人が後方で飛び起き、空へと跳んで行く。最早、今の大人たちには彼女に全てを賭けるしかなかった。

 

 

 

「やっと私の出番か~。マイナス宇宙の中で漂着した世界だったし、よくわからないまま大佐たちまで来ちゃってたけど、ここもなかなか面白かったにゃ。」

 

マイナス宇宙内でシンジを送り届けた後のマリは、唐突に発生した時空間の嵐に巻巻き込まれ、気付いたらこの世界に漂着をしていた。何故かエヴァと共に漂着していた司城夫妻と共にこの世界でのヴィレを再編し、着々と補完計画の阻止を水面下で進めていた。だが、マリと8号機の力で他の世界を覗いても、どの世界とも違う、この世界。何故ここへと流れ着いたのかは理解できていなかったマリだが、その疑念もたった今、理解することができた。

 

「イレギュラーに対応できるのは、イレギュラーだけ~ってね。この並行世界(物語)を、終わらせる!エヴァ8号機、起動!」

『8号機、マリ!行けるわね!?』

 

この直後にミサトから寄せられる通信。タイミングはばっちりだ。

 

「合点承知!」

 

マリは8号機を駆り、背中に2つの光輪を発生させて空へと翔ぶ。その道中でマゴロク・E・ソードと狙撃ライフルを拾い、ライフルに覚醒した8号機のフィールドを込めてコアの一つに射撃すると、当然それに対しリリスはフィールドで防御をする。しかし、弾はそれを突き破ってコアの一つを破壊した。十字の閃光に虹が発生したのを見て、リリスは8号機を見下ろす。

 

「リリンではない者が8番目の器…いや、幾つもの器を使っているのか?それに奴は…イスカリオテのマリア、だと?」

「悪いけどね、アンタをシバいて私ぁここから出てかなきゃならないんだ!大人しく倒れてくれると、嬉しいにゃ!!」

「戯言を。」

 

マリはライフルで次々とコアを破壊しながら接近し、太刀でリリスを切り刻もうとした。しかし、その刃は肉体に当たる直前でATフィールドによって阻まれてしまう。マリは一時離脱と突撃を繰り返して何度も攻撃をするが、それでもリリスのフィールドを破るには至らない。泥沼な攻防を続けている中、それを地上から見ている者が一人いた。

 

「また…何もできないんだ、私。」

 

レイはシンクロを復旧させたものの、それでもマリとリリスの攻防に参加する事はなかった。神に等しい力を持っている二体の中に割り込む事はできない。…いつも守られてばかりだった。最初から最後まで、ずっと。一度命を諦めてしまったのに、参号機は私を受け入れてくれた。まるで彼が私を守ってくれるかのように。ずっと強がって、一人でも戦えると思っていた。それでも、私は結局手を伸ばせない。

 

「エイ君に頼らないくらい強くなるなんて言って、それなのに私…。」

 

結局、自分の力が及ばない所に行けば、何も出来ずじまいだ。元はと言えは私の魂の器だった筈のものが勝手に動いて、しかも意思を持っている。最早クロッシングの力を行使することもできない。

 

「なんて…無力なんだろう。」

 

-そんな事はない。レイには力がある。-

 

「でも、私に何ができるの?」

 

-俺とレイならやれるさ。彼女はレイと同じだ。必ず、答えを見つけられる。-

 

「待って!それはどういう…」

 

彼の真意を聞く前に、レイをあすなろ抱きしていたエイジの幻影は消えてしまう。彼が言った、『レイとリリスは同じ』という言葉。確かに同質の存在ではあるだろうが、そんな簡単なことは彼は言わない。その意味を考えていると、彼女はふとあることに気付いた。

リリスは言葉を介してコミュニケーションを取ることを殆ど行っていない。それはまるで、昔の私のような―

 

「もしかして…!」

 

レイは空で戦闘をしているリリスを見上げる。

私の考えが正しいなら、確かに私の力を使えば彼女を止める事が出来る筈だ。

彼女は空を見つめ、インダクションレバーを握り締める。すると背面のスタビライザが青色の結晶に覆われ、それが砕け散ると形状が変化していた。槍と狙撃ライフルを拾った彼女は上空の二人の元へと向かおうとするが、それはマナに制止された。

 

「待って、何処に行くつもりなの?」

「『二人』の所へ行くの。お願い、通して。」

「ダメよ!あんな戦闘の所に行って、それで死んじゃったら…」

「大丈夫。私は死なないわ。」

 

レイはそれだけ言うと参号機の背面スタビライザを発光させ、上空へて翔んでゆく。それを止められる人は誰一人としていなかった。

 

 

 

「こいつ、なんて力!流石は絶望の槍を取り込んだだけはある!」

「貴様から消えろ、イスカリオテのマリア!」

 

空では激しい攻防が繰り広げられる。8号機が衝撃波を放てばリリスはそれを防ぎ、逆にリリスは両腕の槍を突き立てようと攻撃をする。互いに決定打が生まれない中、マリは徐々に焦っていった。このままでは自身も巻き添えになって消滅してしまう。約束がある彼女はそれだけは絶対に避けなければならなかった。それでも真正面からの突破が出来ずに歯噛みしていると、突如地上から同じ高度まで飛んでくる機体がある。機体コードを確認すると、それは参号機だった。

 

「先輩!?どうしてここに!」

「私が、彼女を止める!」

「そんな無茶な、その機体で何ができるってのよ!私があいつを倒すから―」

「違う、倒すんじゃない!」

「え…?」

 

レイは槍を左手に持ち、右手でリリスのATフィールドに触れる。すると、今まで何でも貫くことができなかったフィールドが徐々に侵食され、数秒経つと参号機を阻んでいたものは無くなっていた。

 

「な!?」

「あのフィールドを容易く破った!?」

 

レイはフィールドを破った直後に槍を捨て、両手でリリスの両頬を包む。

 

「私はあなた、あなたは私…」

「!?やめろ!!」

 

リリスは右腕のシールドランスを格納し、参号機の腹部へと突き立てる。そこから更に槍を突き出し、参号機を排除しようとした。だが、それにも関わらずレイは動かない。

 

「先輩!リリス、お前!!」

「やめて!」

「な!?でもこのままじゃ先輩が…!」

「絶対に、攻撃はしちゃダメ!」

 

レイは腹部の激痛に呻きながらも、リリスの額と自身の額を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選択を、ずっと後悔していた。

 

―だから、お前はヒトとの繋がりを恐れた。

 

また同じ間違いを犯すんじゃないかって、怖かった。

 

―だが、結果的にお前はまた助ける事はできなかった。

 

そうだ!でも俺は、それでも俺は…!

 

―お前は本当は彼女の後を追いたがった。だから、自身の命をまた諦めたのだろう。

 

違う!

 

―では何故、お前はこの世界に来た時にお前は自殺を選ぼうとした。

 

な!?リリス、お前は何を…っぐ!?そんな、まさか、本当に俺が…!

 

―思い出したか、司城光也。数多く存在する並行世界の中、アディショナルインパクトを発生させた世界によって一時的に世界間の平衡は揺らいだ。お前…いや、『司城ミツヤ』が零号機へのシンクロ実験を行ったのも丁度その時だ。お前の記憶が混線する中選んだものは…

 

機体越しに、プラグを叩き潰す事…。あの時に彼女の父親にしようとした事を、俺が自分に対して行おうとした。

 

 

(被験者、司城ミツヤ。21歳、男性。零号機とのシンクロ、開始します。)

(第一次接続、パルス送信。)

(グラフ正常位置、リスト1350までクリア。初期コンタクト問題なし。)

(フェーズ2ヘ移行、オールナーブリンク問題なし、リスト2550までクリア。絶対境界線突破。)

(零号機とのシンクロ率、17%。)

(だいぶ低いわね。やはり年齢が高いとシンクロには不具合が…あら、地震?)

(最大震度3です、実験に問題はありません。)

(そう、それならいいわ。引き続き精神汚染やシンクロ率のモニター、頼むわ。)

(了か…シンクロ率に異常発生!40,50、75…どんどん高まっていきます!)

(何が起きているの!?さっきまで低い値しか出ていなかったのに!エヴァからの精神汚染!?)

(いいえ、パルスの逆流は見られません!シンクロ率、200を超えます!)

(違う!こんな記憶は俺のじゃない!なのに何で俺の記憶としてあるんだ!)

(パイロットの状態は!?)

(錯乱状態です!エントリープラグの強制排出もできません!)

(なんてこと…!)

(完全に制御不能です!零号機、拘束を破壊、構造体を引きちぎりました!)

(まさか、やめなさい司城君!)

(あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああああっ!!!!!)

 

 

 

(零号機、活動…停止………エントリープラグ、モニター不能…。生命反応、ありません…。)

(こんなことが…。コアごと破壊したの?)

(いいえ、コアは健在です。プラグのみを狙って破壊した模様です。)

(エヴァの構造は教えていない筈なのに、まさかシンクロによってエヴァ自身を理解したとでも言うの?)

(回収班から報告、試製プラグスーツとヘッドセットが発見されたものの、遺体が見つからないとのことです!)

(遺体が?まさか、あの時と同じ事が―)

(コアから高エネルギー反応!これは…人が、コアから…。)

(しかも、居たはずのパイロットより若い?彼を医務室へ。その後尋問よ。)

(尋問と言っても、得られる情報はあるんでしょうか?)

(やってみないことにはわからないわ。彼が元の司城ミツヤと同じなのか、違う存在なのか…。それにしても胸に刺さった鉄骨…まるで十字架ね。)

 

 

 

―そのような悲しみしか産まないのならば、私はお前たちリリンの存在を否定する。

 

やめろ!人間はそれだけの生物じゃな…

 

 

 

 

彼の悲しみが伝わってくる。彼の、人としての最期の思考。彼の絶望だけが彼女に伝わって、彼女は歪んだ望みを持った。

でも、それは人の全てじゃない。

ずっと彼と、みんなと一緒に生きて…希望もあった。私は、ただそこにいるだけでは持ち得なかったであろう希望を持つことができた。だから私は…

 

「私は、あなたに伝えるの。希望を、人の強い心を!」

「やめろ…私に、お前の感情を…っ!う、ぐ…あああああああああああっ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

気が付けば、”私”は肩で息をしていた。再び自らの肉体を持っている事に違和感がある。綾波レイの感情や記憶を流された事により、再び私自身の肉体が構築されたようだ。その上、私自身が造り出した器に、リリンが扱うための道具が構築されている。

 

「何故、この肉体を…また…。」

「だって、あなたは…私達の事、何も知らないじゃない。」

「確かに、そうだ。だが…何、綾波レイ、何をして…!」

「だからって、悲しいからって諦めないで、最後まで『存在し続ける事』を選び続けるの。どんなに悲しいことがあっても、いつかは必ず、生きていてよかったって―」

「ダメだレイ、逝くな!!」

 

クロッシングで伝わってくる。

彼女の肉体が、次第に結晶に覆われていくのが。

私は器を駆り、彼女を…参号機を抱き締める。すると

 

「もう、誰にも争って欲しくない!」

 

私の叫びは器を通し、戦場へ、世界へと伝わっていく。眩い光が戦場を包む中―

 

私たちは確かに、そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

最初に目に入ったのは美しい蒼穹だった。12月の冷える空気の中、俺は蒼い空が蒼く見えること、自分の意識があること、自分の肉体があることに無意識に涙していた。

 

「何が…俺はもう……」

 

―ありがとう。―

 

「!?リリスの、声…?」

 

―お前たちに人間の心というものを教えて貰わなければ、私はただお前たちを消すだけだった。そうしなかったことを、少しだけ良かったと思っている。―

 

「まだそう思うのは早すぎる。これから生きていく中で、戦乱は恐らく避けられない。今の世界情勢は不安定だ。本当の戦いはこれからだよ、リリス。」

 

―わかっている。だから、私はこれからもお前たちを見守り続ける。世界と、その器と共に―

 

「リリス!?……繋がりが切れた。本当に身勝手な奴だよ、お前。それにさ、俺の名前は影嶋エイジだ。司城光也じゃないよ。」

 

それだけ言うと俺は立ち上がり、プラグから出ていく。周囲は透き通った青い結晶に覆われ、まるで繭か卵かのように俺たちを囲っている。どうやら俺が見ていたのは空ではなく、結晶の青色だったようだ。周囲を見回すと翼の生えた白い機体と参号機、そして参号機のプラグが目に入った。

 

「レイ…!」

 

俺は急いでレイの元へと駆けていく。プラグを操作して上面のハッチを解放すると、中には気絶しているらしいレイがいた。俺はまだ起きない彼女の傍に行き、彼女を抱き締める。

 

「っ!生きてる…!やっと、俺は…!」

 

彼女がちゃんと生きているのを確認して、俺は涙を止めることができなくなった。

 

体温、呼吸、そして心臓の音。

 

やっと掴んだ本当に生きている彼女を強く抱き締めていると、彼女が優しく抱き返してくる。

 

「ずっと待ってた…!あの時いなくなって、私の前に幻として現れてから、ずっと…!」

「賭けだった。一歩間違えれば世界は滅んでたかもしれない。でも、彼女はわかってくれたよ、レイ。」

 

レイは俺の肩を持って少し離れ、互いの目を合わせる。

 

「そこに、いるんだよね?」

「勿論だよ、レイ。」

「お帰り…。」

 

 

 

プラグの前では、アレスに抱き上げられる参号機が佇んでいる。彼らが口付けを交わしている間に結晶の殻は砕け散り、空には本当の蒼穹が広がっていた。彼らのプラグへと駆け寄っていくシンジとアスカ。彼らは佇んでいるアレスと参号機を見つめ、笑顔になる。コートを二着抱えながら走る二人。

使徒、そしてゼーレ。彼らはその二つから平和というものを勝ち取った。

 

 

 

「お帰り…エイジ…!」

 

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