ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE   作:フィアネン

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RE7:心の距離

来た荷物ってのはキーボードとヘッドホンだった。これで家でも静かにピアノの練習ができる。ありがたい贈り物だった。

 

それから数日後、俺はミサトさんが手引きした教官に放課後訓練をしてもらっている。スケジュールは何とか調整して、学校→対人訓練→エヴァ訓練になるようにした。当の教官は「子供に殺しを教えるなんて…」なんて溢していたが、正直テレビを見ていても情勢が不安定っていうことが伝わってくる。何が起こっても不思議ではない、そう思っていた。それに本音を言えば、こういう機会でもないと銃やナイフ術なんて教わらないという好奇心が大きなウェイトを占めていた。

割合としては好奇心8割、不安2割くらいだろう。訓練はつらいけど、平時では知る由もなかったものに触れることができて、とても楽しい。

 

んで今日。最近、屋上で筋トレをするのが日課になっている。ついでにレイもついてきて、終わったら二人で昼食。最近は教えを乞うのも減ってきたし、いいんじゃないかなァ。

立ち上がって飯にしようとすると、柵によっかかってぼーっとしている碇君に、後ろから声をかけるトウジとケンスケ。今度は何だ?

 

「また君たちか…。何か用?」

 

「ドアホ!誰がお前に用があるっちゅーねん!」

 

「へぇ、よほど暇してるんだね。」

 

碇君てやっぱ、いちいち人を煽る傾向があるな。これで酷い怪我させられたらしょうもないぞ?全く。

 

「用はあらへんけどなァ、ワシはなー、お前がど~~~しても気に入らへんのや!その偉そうな態度といいすっとぼけた態度といい~」

 

「僕の態度が気に入らないなら謝るよ。でも悪いけど、今はいちいち君のこと気に掛ける余裕なんてないんだ。じゃ。」

 

「おい、待てや!」

 

「なに?今度は僕を殴ろうとする気?それじゃ、本気でやってよ!殺す気で!」

 

「トウジも碇君もいい加減にしろ!」

 

「エイジ!?」

「おっしゃ、やってやろうやないか!後悔す アだぁ!!!!!」

 

トウジは歯止めが効かなそうだったから殴らせてもらった。悪く思うなよ。

ついでに碇君にも平手で頬をぶつ。不服そうな顔をしてるけど、流石に今までの動きが悪すぎるから、これくらいは受けてもらうからな。

 

「碇君、さっきからどういうつもりで言ってるんだ?」

「別に…」

「別にじゃないだろ?そんな『何となく』でパイロットやってるならやめた方がいい。助けられる人も助けられなくなるぞ。」

 

「そう言うのも、僕をずっと見てるのも、ミサトさんから言われた仕事なの?」

 

「いいや、前言った通り俺の『お節介』だ。俺はそういうのを命令されてやるクチじゃなくてね。」

 

「やっぱり、君も―」

 

「二人とも。」

 

外野からの声。その方向を向くと、レイが立っている。

 

「非常召集よ。行きましょう。」

 

「あいよ。行くぞ、碇君。」

「うん。」

 

俺らが走り去る中、トウジとケンスケはぼーっと突っ立ってるだけだった。

 

 

 

「目標を光学で捕捉!領海内に侵入しました!」

 

「総員、第一種戦闘用意!」

 

発令所は慌ただしくなっている。今回の使徒、前回の黒い奴と違って、体は赤いし、なんかカブトガニっぽいなァ。俺は発令所でもう一度日向さん、ミサトさんと作戦、配置を確認している。結局、俺は現場指揮の真似事をすることになった。大まかな作戦はミサトさん、現場の判断は俺って感じ。いつでも交代できるように、プラグスーツとインターフェースを装着している。

 

「碇君、用意はいいか?」

 

[……]

 

「はァ、まだ拗ねてんのか?アレは悪かったよほんと。終わったらちゃんと謝る。」

 

「え?エイジ君、シンジ君と学校で何かあったの?」

 

「失礼ミサトさん、その報告は終わったらで。んで、大丈夫?」

 

[そんな大きな声出さなくても、ちゃんと聞こえてるよ。]

 

「そいつはけっこう。碇君は別命あるまで待機。」

 

「にしても、碇指令の留守中に使徒の襲来…」

「それに、前回は15年前、今回は3週間ですか。」

「こっちの都合はお構いなし。女性に嫌われるタイプだわ。」

 

オペの面々のしょうもない愚痴を聞き流しながら、敵の動きを見る。外では国連の兵器が弾をばら撒いてるけど、ダメージ以前に足止めにすらなってねぇ。

 

「しょうもないですねこの光景。総火演の真似事以下じゃないですか?」

「税金の無駄遣いだとしても、世の中には弾を消費しないと困る人たちがいるのよ。」

 

「葛城一尉、日本政府からエヴァンゲリオンの出動要請が来ています。」

「うるさい奴らね。言われなくても出撃させるわよ。エイジ君、よろしく。」

 

「あい了解。…碇君、これからエヴァを出撃させる。作戦通り、拘束ワイヤの兵装ビル群付近に君を射出させる。出たらそこでガトリングを受領してほしい。そのあと、そこへ使徒をおびき寄せる。ルートはこちらで随時指定するから気にしないでいいよ。ワイヤに敵が引っかかったら攻撃開始。弾切れしたらガトリングを捨てて一時退避。指定ポイントでライフル受領。あとはアドリブかな。」

[多分、わかった。]

「オーケー、その場でも指示はするから、落ち着いて行動してね。それじゃ、発進!」

 

エヴァが射出される。ガトリングを受領し、敵に姿を晒す。さて、敵は喰いつくか…?

敵が初号機に気付き、体勢を変化させ、両腕のような場所から光る鞭を出す。モンテーロのジャベリンかな?いや、マスターガンダムのマスタークロスかな。そんなことを考えていると、敵はゆっくり初号機へと向かってくる。

 

「ミサトさん、あの鞭どう見ますか?」

「どこまでの攻撃力があるかわからない以上、無暗に近づくのは危ないわね。元の作戦通りにいきましょう。」

 

「俺も同意です。碇君聞こえる?」

[何?]

「作戦通りワイヤまで誘導して。絶対走らないように。」

[わかった。]

 

初号機は敵に銃口を向けたままゆっくり誘導している。第四使徒は鞭を動かして威嚇しながら初号機へ向かう。ポイントまで、あと少し…

 

「よし、兵装ビル起動!初号機、攻撃開始!」

 

俺の合図と共にビルからワイヤが射出され、敵が拘束される。次の瞬間、初号機はガトリングを敵に向けて射撃し、数十秒後に撃ち切った。

 

「よし、ガトリングを捨てて後退!」

 

その瞬間、着弾煙の中から敵の鞭が飛んできて、ガトリングと周囲のビルをなぎ倒す。

今の攻撃によって、初号機は倒れ込んでしまった。

 

「大丈夫か!?作戦通り後退!全力でポイントまで移動、ライフルを受領してくれ!」

 

初号機は引け腰になりながら初号機は逃げる。その後を敵の鞭が襲い、次々にビルがなぎ倒される。思った以上の破壊力だなこれ。呑気にみていると、初号機の背面ケーブルを切断される。ついでに来た攻撃で初号機はコケて尻餅をつく。

正直、こういうデカいのが人間っぽい行動するのって可愛いけどみっともなくも感じること、あるよね。あ、これはそもそも人造人間だったか。

 

「アンビリカルケーブル断線!エヴァ、内臓電源に切り替わりました!」

「何ですって!?」

「ルート221でB-05電源を使ってケーブル復帰だ!ルート転送!碇君、一回撤収!分が悪い!」

 

[わ、わか―うわぁ!!!]

 

「碇君!!」

「シンジ君!!」

 

初号機の足に鞭が絡み、投げ飛ばされる。落下地点は近くに神社がある山。まだ土地には明るくないから名前がわからないけど。敵の鞭が飛んでくるが、初号機は上体だけを起こし、それを掴むだけで他にアクションを起こさない。

 

「碇君、そいつを遠ざけてA-13電源、ポイント062の兵装ビルで戦線復帰!ルート転送!」

 

「シンジ君、残り時間3分50秒よ!早く倒さないと!」

「初号機、接触面融解!」

「ミサトさん急かすな!碇君、何で動かないんだ!」

 

「トウジと、ケンスケが…!」

 

「「は!?」」

 

この瞬間だけミサトさんとのシンクロ率が100%だったと思う。

ディスプレイにトウジとケンスケのIDが表示される。マジで近くにいるらしい。

 

「あっのバカ共が!シンジ君、プラグ内に二人を収容して離脱しろ!」

 

「バカ、私の指示無しに民間人をプラグに―」

「現場指揮は俺だ!碇君、絶対にその二人を殺すなよ!」

 

[わ、わかったよ!]

 

ここで見捨てたら一生後悔するハメになりそうだ。どんな違反であっても、絶対に殺させる訳にゃいかねぇ!

 

「神経系統に異常発生!2つも異物が入ったから、ノイズが混じってるんだわ!」

 

「エイジ君、何で勝手にそんなことを!」

 

口論の中、初号機はやっと動けると言わんばかりに足蹴りをし、敵を遠ざける。初号機の手は、人造人間の名の通り生身の手が露出している。

 

「この状況ならエヴァの中が一番安全だ!んな事くらいわかってんだろ!ルート162でジオフロントに撤収!最短距離だ、取りつかれるなよ!」

 

[……]

 

「碇君!?大丈夫か!?」

 

[……]

 

「碇君!!」

 

「初号機、プログレッシブナイフ装備!」

 

「な!?碇君!この状況での戦闘は危ない!自分の命を投げ捨てる気か!二人まで殺すことになるぞ!」

 

「シンジ君!?エイジ君の命令を聞きなさい!!」

 

[うわあああああああ!!!!!!!!]

 

初号機は絶叫する碇君と共に敵に突撃する。稚拙な突撃だったため、使徒の鞭で腹2ヶ所を突き刺される。

 

「どういうつもりなんだ全く…。」

「初号機、活動限界まであと60秒!」

[くそおおおおおおおおお!!!!!!!]

 

腹に鞭を刺されたまま、初号機は敵のコアにナイフを差し、更に押し込む。

 

「活動限界まであと30秒!」

 

「碇君…?」

 

[うおおおおおおお!!!!!!!]

「活動限界まで、あと10秒!」

「9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」

 

活動停止と共に、敵のコアに亀裂が走り、敵も活動を停止した。

 

「初号機、活動停止!目標、完全に沈黙しました!」

 

俺はというと、無い髭を触るように、右手を口付近にかざし、指を動かしていた。ミサトさんも隣で苦い顔をしていた。やっぱ一日夕食の時間開けた程度じゃしっかり考えられないよな。これは反省だ。

 

 

 

 

-葛城ミサト-

 

「どうしてエイジ君の命令を無視したの?もしあそこで使徒を倒せなかったらどうするつもりだったの?」

 

「すみません…。」

 

「『すみません』で済む問題じゃないわ!私はあなたの作戦責任者なのよ!それで、エイジ君は私との同意の上で作戦指揮をやってる。あなたは、私たちの命令をに従う”義務”があるの!わかる!?」

 

「わかります。ミサトさんたちにとって、僕はただの部下で、ただのパイロットですものね。」

 

「何ですって!?」

 

「最初はただ同情されてるだけだと思ってたけど…。」

 

「ちょっと、シンジ君!?」

「もういいじゃないですか!勝ったんですから!」

 

我慢ができなかった。彼の頬をぶつ。ただ惰性でパイロットをやっているのなら、ここにいる必要はない。

 

「あなた、自分の任務を何だと思って―」

 

ミサトさんは言葉を止める。

 

「もういいわ。家に帰って休みなさい。」

 

「はい。」

 

エイジ君の横を通り抜けていこうとするけど、彼は肩を掴んでシンジ君を引き留める。シンジ君は無視して振りほどこうとするが、エイジ君は強引に彼を振り向かせる。

 

「何だよ、エイジ君…。」

 

「碇君がどう思おうが、んなもん俺にはわからない。でもな、これだけは言っておくよ。

君は自分の命だけじゃなくて、トウジとケンスケの命まで投げ捨てようとしたんだ。結果こそよかったけど、あの行為は全員を危険に晒した。

君がどんな気持ちでパイロットをやっているかは俺には完璧に理解はできない。でも、自分の意思でパイロットをやろうと思っていないのなら、しばらくこれには乗らずにしっかり考えるべきだ。自分がこれからどうするべきかを。」

 

シンジ君は決してエイジ君と目を合わせようとしない。

 

「それなら君がやったほうが、みんなにとって都合がいいよ。それなのに何で僕を引き留めるの?」

 

「俺は引き留めようなんざ思っちゃないよ。ただ道具のように使われるだけじゃなくて、自分自身でこの先を考えて欲しいだけだ。昼間はごめん、シンジ君。」

 

言い終わると、シンジ君は肩に置かれた手を振り払い、部屋を出ていった。

それを見届けると、今度は私に向かう。いつになく怖い顔だ。

 

「こないだの話、真面目に受け取ってくれませんでしたね。」

 

「え?だってアレは方便じゃあ―」

 

「今のビンタだって、パイロットの有用性が無くなりそうだから、無理矢理をして引き留めようとしたんじゃないんですか?」

 

「え、エイジ君?どうしたのいきなり。」

 

エイジ君は私の胸ぐらを掴み、ロッカーに叩きつける。凄まじい力に、大人の私ですら一方的に押し付けられている。

 

「わからないんですか!!シンジ君は周りの人間が自分のことを道具にしか見ちゃいないって思ってるんですよ!周囲がそうしろって言うから、そうするしかないって!」

 

「え…」

 

思えば、シンジ君の気持ちを一度としてちゃんと考えたことがあっただろうか。ただ、パイロットが増えて、これで私の復讐が始まる―直接手を下せない私に代わって、手を下す存在のパイロットに、居なくなって欲しくなかった。

それは確かにある。でも、

 

「でも私は―」

 

「何で俺とは比較的いい関係だったか、葛城さんにはわかりますか?」

 

「え?」

 

「…俺が大人の付き合いってのを知ってるからですよ。互いに過干渉をしない、互いの『察し』によって言葉を止める、んでもちゃんと自分の言いたいことは相手にしっかり言える。

そんな絶妙な距離感を保つ、高度な駄弁りをしてるんですよ、俺ら。中学生の子供がそんな器用なこと、簡単にできると思いますか?」

 

「………」

 

何も言い返せない。パイロットのメンタルケアも自分の仕事なのに、何もできていなかった…。

 

「俺だってシンジ君とのコミュ不足でしたよ。でも、そもそもの話、保護者がそれをほっぽってどうするんですか!…彼は俺がどうにかします。何かあったら連絡を寄越してください。失礼。」

 

それだけ言うと彼はロッカールームから出ていった。…情けない。

手を振り上げ、自分の頬を自分でぶった。

 

 

 

 

-影嶋エイジ-

 

あそこまで言えば少しはわかるだろ。…俺自身もコミュ不足ってのは認めるが、シンジ君自身が最初からコミュを拒んじゃ話が進まない。ここはしばらく好きにさせておくべきだろう。彼だって、誰からも干渉されずに考える時間が必要だ。

んでもって、葛城さんにもしばらく考えてもらいたいから、赤木博士のところに来ている。

 

「というわけなんで、誰か信頼のできる諜報部の方をご存じないですか?」

 

「そういうのはミサトの領分なのだけれど…剣崎君を呼ぶわ。」

 

「ありがとうございます。葛城さんにもしばらく考えてもらわないといけませんからね。」

 

しばらくすると、黒服でサングラスをした人が現れる。あれ、この人って…

 

「あ、もしかしてこの間車を出してくれた方ですか?」

 

「はい。剣崎キョウヤといいます。今回は真面目な依頼と聞いたので、協力させてもらいます。」

 

「ありがとうございます、剣崎さん。それじゃ、2日後の18時くらいからサードの位置を15分おきくらいに自分の携帯に送ってください。あ、もちろんそれまでに電車なんかで都市外へと逃げるようなら、なるべく穏便に都市に閉じ込めてください。事故を装えば流石に怪しむことはないと思うんで。」

 

「わかりました。」

 

「よろしくお願いします。それじゃ、また決行の日に。」

 

「失礼します。」

 

剣崎さんは部屋から出ていった。

 

「用意周到ね。そういえば、この間あなたが言っていたことなんだけど、もしかしたらできるかもしれないわよ。」

 

「え、本当ですか?」

 

「ええ。今新しく研究しているモノがあるの。それを応用すれば、外部からのシンクロとサポートが期待できるわ。また伝えられるようになったら教えてあげる。」

 

「ありがとうございます。それでは、自分も失礼します。」

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