ダンジョンにハジケを求めるのは間違ってるだろうか 作:お通しラー油
拝啓、故郷のお爺さん。お元気にしてるでしょうか?
僕ことベル・クラネルは元気にやっております。
早いもので故郷を起ち、オラリオに訪れてからもうすぐ一月が経とうとしています。
故郷の村であの魚雷に無理やりしごかれたのが遠い昔の思い出のように感じます。
僕は、今このオラリオの街で冒険者として生活をしております。
それほど裕福と言う訳ではないけど、美人で優しくて(おまけに胸も大きい)神様の下で日々頑張っております。
未だに新人の枠から抜け出せてませんがいずれはベテラン冒険者にこの名を連ねられる日が来るのを夢見てこれからも頑張っていくつもりです。
お爺さんも風邪などひかないよう健康には充分気をつけて下さい。
***
そして今、ベルは何故かオラリオでも1、2を争うであろう超有名なロキファミリアの囲むテーブルに加わっていた。
周りの冒険者達の疑惑の視線が滅茶苦茶痛かったとこの時のベルは語った。
また、その視線はテーブルを囲んでいたロキファミリアの団員達からも向けられており、皆が「誰?」と言いたそうな顔をしていた。
「紹介するね。今日から加入する事になったベルだよ」
「いや、しませんよ」
相変わらず我が道を行くアイズ。彼女をこのまま泳がせておいたら何をしでかすかわかったもんじゃない。
「何度も言ってますけど僕は既にヘスティアファミリアの団員なんですよ! だからロキファミリアには入りませんってば!」
「ならヘスティアファミリアから移籍するって事で」
「あってたまるか!!」
是が非にでもベルを団員に加えようとかなり強引になりだしてきてる。
正直言うとマジで帰りたい。
帰って明日の冒険に備えて早々に寝てしまいたい。
だが、今のこの空気ではとても帰れそうにないのは明らかな事だった。
「なぁアイズたん。この子が噂の超有能な新人なんか?」
「そうだよ、ロキ。今ベルを加入しなかったらきっと一生後悔する事になる。私のこのアレキサンダーさんJr.もそう言ってるから」
そう言って彼女がテーブルに置いたのはギザギザの歯を持つ奇妙な生き物どった。
「な、何これ?」
「アレキサンダーさんJr.。私の心の代弁者であり私の思った事をそのまま伝えてくれる魂のメッセンジャー」
かなり壮大な事をぶちまけてるが、側から見るとただの変な生き物でしかない。
こんなのが魂の代弁者なのだろうか?
「ふぅん、まぁええわ。そんで少年、名前は?」
「へ?」
「名前を聞いとんのや。まさか名無しの権兵衛やあるまいし。ちゃんと名前持っとるんやろ?」
「は、はい。ベル、ベル・クラネルです」
「ふむふむ、ええ名前やないか・・・って、ベルやとぉ!!」
ベルの名を聞いた途端ロキと呼ばれた女性は身を乗り出してベルの事を見始めた。
「へ? な、なんーーー」
「そうかそうか、オタクがあのベルかいな。あんたの事はあのギョラ公から聞かされとるわ」
「ギョラ公・・・先生の事をご存知なんですか?」
「うちだけやない。オラリオ中の神はみぃんな知っとるでぇ」
意外な事に魚雷ガールはここオラリオでは割と有名なようだったみたいだ。
まぁ、あんまり嬉しくないけど。
「ほほぅ、あの先生の教えを受けた生徒か。ならば俺の後輩に当たるんだな」
さっきまで沈黙を守っていたアフロ男が口を開いてきた。
「へ? 貴方もあの魚雷先生の教え子?」
「そうだ。俺の名はボボボーボ・ボーボボ。このロキファミリアの冒険者をしている。俺の事は気軽にボーボボさんとでも呼んでくれ」
「分かりました。ボーボボさん」
「気安く呼ぶなぁ!!」
「えぇぇっ!?」
急にキレられてしまった。
「俺はある目的の為にこうしてロキファミリアの団員となっているんだ」
「ある目的?」
「そう、それは今から遡る事3年前のことーーー」
今から3年前。
その日、ボーボボは近所の駄菓子屋でラムネを買って飲んでいた。
すると、中にあったビー玉を飲み込んでしまったのだった。
「ちっくしょーーー! また飲み込んじまったよぉーー!」
激怒し、その場に空き瓶を投げ捨てる。
だが、地面に落ちた空き瓶はそのまま身を翻してボーボボの顔面へとダイレクトアタック!!
「ぐばぁ!!」
『未熟者め、それでは永遠にわしには勝てぬぞ』
「はっ! し、師匠!!」
その日、ボーボボは師匠の言葉を思い出し、早速ロキファミリアへと入団を決意し、こうして今に至ると言うーーー
「これが、俺がロキファミリアに入ったきっかけだ。理解できたか?」
「何一つ理解できないんですが」
はっきり言って意味不明の連続だった。
なんで駄菓子屋で飲んだラムネを飲んだだけでそこまで行き着くのか全く理解出来なかった。
「ここまで丁寧に説明したのに分からないのか?!」
「どこが丁寧だよ!」
「それを話すにはめず今から2年前の暑い夏の時の事をーーー」
「良い! もう良い! 分かったからもう説明はいらないから!」
説明したがるボーボボを無理やり黙らせたベルは、一刻も早くこの店を出ようと考えた。
こいつらと関わってるとロクな目に合わないだころか頭がおかしくなりそうだ。
ちらりとテーブルの周りを見回すと、他の団員達がバツの悪そうな顔をして視線を逸らしていた。
多分絡まれたくない一心なのだと思われる。
勘違いしてるみたいだけどベル自身はハジケてなどいない。
ただ、何故か周りのハジケリスト連中が必要以上に絡んでくるだけなのだ。
「あ、あの・・・明日朝早くからダンジョンに潜りたいんでこの辺で失礼したいんですけど」
「まぁまぁ、そう言わずにゆっくりしていきなよ坊や。たっぷりサービスしてあげるよ。こっちの子達が」
そう言ってアイズがさっきまでダンマリを決め込んでた仲間達を指差してきた。
それに対してロキファミリアの団員達の顔が驚愕の顔になる。
「ちょっ! 何考えてるのアイズ!」
「サービスって何? 私達に何させる気なの?」
即座に周りから発せられるブーイング。されどそんな事を一切耳に入れずアイズはベルのことしか見てなかった。
これが好意とかそれに準ずる類ならばベル自身も満更じゃないんだろうが、生憎今のアイズの目はなんかヤバそうな感じが伝わって来て正直メッチャ怖い。
「い、いえ、サービスとか結構なんでお構いなく」
「遠慮しなくて良いよ。なんなら家のロキが一肌脱ぐから見てく?」
「うちを餌に釣ろうとすなぁ!」
それには流石のロキも憤慨していた。
しかし、それでも一向に止まる気配のないアイズの暴走にテーブル内はパニック寸前にまでなっていた。
(やばい、超帰りたい)
このまま騒ぎに乗じて支払い済ませて帰ろうかなと、そう思ったベルがふと壇上の方を見ると、その上では首領パッチと天の助の二人がまた何かやらかしていた。
「ほぉらほぉら、犬みたいにワンとお鳴き!」
「おやつにところてんを食わせてやるよ。かから一つ残すんじゃねぇぞ」
「ぐぼがぼごぼぼ!」
(なにやってんだあいつらぁぁーーー)
壇上の上では二人が犬耳の青年を縛り上げて無理やりところてんを流し込んでるまるで拷問じみた光景が行われていた。
「あ、ベートだ」
「知り合いなんですか?!」
「うん、同じ団員。でも最近影が薄いから存在忘れてた」
「あんた仮にも幹部だろ! 仲間忘れるってあんまりでしょうが!」
流石にこれにはベルも怒声をあげた。しかし、やっぱりアイズは聞く耳を持とうとしない。
そっぽを向いて口をへの字に曲げるだけだった。
「って、こんなことしてる場合じゃない!」
急いで彼を助けないと。そう思いベルは壇上に上がり首領パッチ達を蹴り飛ばし、青年の拘束を解いた。
「だ、大丈夫ですか?!」
「ゲホッ! ゲッホ! あのヒトデ野郎、ぶっ殺す!」
かなりご立腹のご様子だった。
そりゃそうだろう。何せいきなりあんな拷問紛いの事されたんだから。
「んで、てめぇは?」
「あぁ、えっと・・・僕はーーー」
「「ベルくぅぅぅーーーん!!」」
「げふぅっ!!」
名乗るよりも前にさっきぶっ飛ばした二人が猛タックルを掛けてきた。
その余りの勢いに踏ん張る事も出来ずにぶっ飛ばされるベル。
「ベル? てめぇがアイズの言ってた新人か?」
「えと、新人なのは確かですけど、アイズさんは何て?」
「見所のある新人ってだけ言ってたな。だがそんな事はこの際どうでも良い」
起き上がるなり腕をポキポキと鳴らし始めたベートにベルはなんとなく嫌な予感がして来た。
「てめぇ、この俺様にこんな真似してタダで済むと思ってないだろうなぁ?」
(ひぇぇーーー! 僕も仲間と思われてるぅぅぅーーー)
予感は的中した。ベートはどうやら首領パッチ達とベルが仲間だと思ってるみたいだ。
まぁ、事実ではあるのだが、今だけはこいつらと仲間関係を断ち切りたい気持ちだった。
「はぁ? モブキャラの癖に何でけぇツラしてんだよ?」
「あぁん?!」
すると何故か首領パッチがベートにメンチを切り出して来た。
ベートもベートでさっき酷い目にあわしてきた首領パッチに狙いを変えてメンチを切り出し始めた。
「てめぇ、マジで命要らねぇみてぇだな? ならこの場でぶっ殺されても文句は言わせねぇぞ」
「やれるもんならやってみろや。この小説の主人公たる俺様に勝てる自信があるんだったらな」
「上等だこのトゲ野郎! まずはてめぇからぶっ殺す!」
完全にプッツン行っちゃったベートが拳を堅く握りしめて思い切り首領パッチ目掛けて放って来た。
対して首領パッチは慌てた様子など見せずに余裕の笑みを浮かべていた。
何か秘策でも有るのだろうか。
「受けてみろ! 俺の秘奥義!!」
"ベルガード!!"
「「「はぁっ!?」」」
「あぁ?」
「ぐべぇっ!!」
唐突に放たれたその秘奥義にロキファミリアの面々は驚きベートは困惑し、そしてベルはもろにベートの拳を喰らう羽目になってしまった。
「て、てめぇ! 仲間を盾にするなんて何考えてやがる?!」
「ふっ、仲間を盾になどしてないさ」
「なに?!」
「仲間を盾にしてんじゃねぇ。俺は・・・仲間を身代わりにしたんだ!!」
「同じ意味だろうが! ってかそっちの方が寧ろひでぇよ!」
「馬鹿め、相手は首領パッチだけじゃないんだぜ!」
「なっ!」
しまった! そう思った時には既に遅く、ベートの目の前には天の助が陣取っていた。
「喰らえ! ぷるぷる真拳奥義ーーー」
「くっ!」
咄嗟に防御の構えを取る。そんなベートに向かい天の助の奥義が炸裂した。
「ゼラチンブレード!」
それは全てがゼラチン質で出来た剣と呼ぶのもおこがましい何かだった。
それを両手に構えて上から一気に振り下ろす。
ぷるんーーー
「・・・・・・」
まぁ、結果は見えたとは思うのだが、所詮ゼラチン質なので切れる事などなく、ただゼラチン質な肌触りがしただけに終わった。
「ば、馬鹿な! 俺のゼラチンブレードが効かないだと?! こいつ、まさか無敵なんじゃ?」
「んな訳ねぇだろ!」
今度は天の助に向かい拳を放つ。
今度は自分が狙われたと認識して慌て出す天の助。
だが、時間はない。あと少しでベートの拳は届く事になる。
「なんの! 協力奥義【ベルガード】」
「またかよ!?」
「はぶちぃっ!!」
またしても身代わりがわりにされるベル。
そして、またしてもうっかりベルの顔面にクリーンヒットをお見舞いしちゃったうっかりなベート。
「誰がうっかりじゃぁぁーー!」
月夜の照らす店内において、今宵は大地を血で染め上げる凄まじいまでの戦いが巻き起ころうとしていた。
(あ、あいつら・・・帰ったら・・・覚えてろよ・・・)
一方、ベートの拳を二発もまともに食らったベルは、ほんのちょっぴりほっぺたが痛かったのと、首領パッチ達に対して滅茶苦茶怒りの感情を募らせるのだった。
ベートに殴られても平気なのはベルが魚雷から拷問に近い授業を受けてた賜物なのではと専門家は分析したそうです。