ダンジョンにハジケを求めるのは間違ってるだろうか 作:お通しラー油
結局エイナさんを説き伏せる事は叶わず、ダンジョンの下層に潜って魔石やドロップアイテムをかき集めて大金を獲得すると言う僕達の計画は開始前から頓挫する羽目になってしまった。
まぁ、その代わりにとエイナさんがお金になりそうな仕事を率先して見つけてくれるそうなのでひとまずは安心出来るかと思えた。
そんな僕は今、モンスターの着ぐるみを着せられていた。
『ガオォォォォーーーン!!』
僕が両手を上げて威嚇のポーズを取るとどこからかモンスターの鳴き声にも似た音声が響き渡った。
それを目の当たりにした観客のちびっ子たちが大はしゃぎしたりびびって大泣きしたり恐怖を誤魔化して硬直したりと様々な反応をしていた。
此処はバベルの塔のとある階。
其処で行われているヒーローショーにて、僕は悪のモンスター役をしていた。
要するにアルバイトみたいなものだ。
まさか、オラリオの街に来てモンスターになるなんて夢にも思わなかった。
故郷にいる爺ちゃんや魚雷先生が見たらなんて言うだろうか?
「悪いモンスターめぇ! 僕がやっつけてやるぅ」
「僕も僕もぉ!」
「突っ込めぇ!」
僕が一人で演技をしながら物思いにふけっていると、突如観客席にいたちびっ子達の何人かが襲いかかって来た。
(げぇっ! なんてお盛んなちびっ子達なんだ!?)
正直、僕は焦った。
無闇に振り払おう物ならその際に転倒して怪我するかもしれないし、そうでなくても何かしらあったらこの子達の保護者とかに何言われるか分かった物じゃない。
仕方なくここは敢えてちびっ子達の好きなように痛ぶられる事にした。
きっと満足すれば客席に戻るだろう。
そう思っていると、そのちびっ子達の中に見慣れた奴らの姿があった。
「オラオラァ! くたばりやがれ腐れモンスターがぁ!」
「俺の魔剣で粉々にしてやんよぉ!」
(こ、こいつらぁぁ・・・)
どさくさに紛れてちびっ子達と一緒になってモンスターをボコりまくる首領パッチと天の助。
心なしか私怨が篭ってる気もしたけど多分気のせいだよねきっと。
本当だったら有無を言わさず殴り飛ばしたいとこなんだけど、今それをやると他のちびっ子達まで巻き込む事になるからなぁ。
そんな事したら減給間違いなしだから、ここは歯を食いしばって耐えるしかない。
後で覚えてろよこいつら。
そんなこんなでその後場の空気を読んだヒーローが乱入して来て、あれよあれよの間にモンスターが倒されてオラリオの平和は守られましたとさ。めでたしめでたしーーー
ってな事になってようやくその日のバイトを終えることができたんだよ。
「あれだけの激務でたったの1000ヴァリスかぁ・・・借金返済への道は遠いなぁ」
ちなみにバイトでこの額は結構破格だったんだけど借金の額が額なのでいまいち喜べない。
だって僕冒険者だよ一応。冒険者ならダンジョンで稼ぎたいじゃない!
だけど未だにエイナさんから許可はでないし、代わりに貰うバイトはヒーローショーの着ぐるみ役だったりバベルの塔の清掃だったり冒険者とはほぼ無縁の仕事ばかり。
これじゃ冒険者じゃなくてアルバイトが主流になっちゃうよ。
「早々にレベルアップしないとなぁ・・・だけどなぁ」
レベルアップと簡単に言うけど僕は知っている。
冒険者の殆どがそのレベルアップに相当苦労している事を。
大体の冒険者がレベル2に上がるのに最低でも半年から一年、長いともっと必要になってくる。
幾ら返済期限が多少融通が利くからと言ってそこまで待ってもらえるとは到底思えない。
最悪神様の
それだけはダメだ! そんな事したらきっと神様に幻滅される。
「君みたいな情けない眷属なんて要らないよ」なんて言われて捨てられるかもしれない。
それだけは嫌だ! それだけはなんとしても回避しないと!
その為にはこの借金を僕の独力で返済する必要がある。
「はぁ、手っ取り早く強くなる方法ってないのかなぁ?」
そんな方法などないと知りながらも僕はついつい口に出してしまった。
口に出すと余計に惨めに感じてくる。
すると余計に僕の肩は重く沈んだ。
両肩にズッシリと重石が乗っかったような感覚が更に僕の肩を落としてくる。
「でさ〜、最近彼氏がご無沙汰でさ〜。チョーマジムカつくってゆうか〜」
「ふむ、今年の主食事情は大荒れだな。これは今年こそ俺が主食の座につくまたとたない好機だな」
「・・・・・・」
感覚・・・じゃなくて、実際に重石が乗っかってた。
僕の肩の上で首領パッチがコギャル風な格好で携帯で喋っていて、天の助が新聞を広げながら何かを呟いている。
ハッキリ言ってうざいし邪魔だった。
「いい加減どけよお前ら!」
「「ぶっ!!」」
怒りとストレスに任せて二人を殴り飛ばして、僕は帰路についた。
「はぁ、こんなんじゃレベルアップなんて夢のまた夢だよ」
実はバイト後にほんの少しだけダンジョンに潜っていたんだけど、相変わらず中はカオスとハジケ一色に染まっててまともに戦闘も出来ない結果に終わった。
それでいてバイトよりも稼げるんだから泣きたくなる。
「バイトで1000ヴァリスで、今日のダンジョンで5000ヴァリス。合わせても一万いかないんじゃなぁ」
小銭入れに入れた僅かな小銭のぶつかり合って鳴る金属音が余計に物悲しさを上乗せしてくる。
そんな悲壮感のままホームへと帰ってきたベルだったが、何故かホームがそこにはなかった。
「あれ? 道を間違えたかな?」
「おぅい! ベル君こっちこっちぃ!」
「か、神様!?」
僕を呼ぶ神様の声に僕は即座に振り向いた。
そして、すぐさま僕の表情が氷のように固まってしまった。
そこにはとてつもなく巨大な要塞みたいなのが建造されてて、その足元あたりでは見慣れない冒険者らしき人たちが倒れていた。
「だ、大丈夫ですか?!」
「こ、これが・・・無敵要塞ザイガス」
「は?」
意味不明な事を呟いてその人は気を失ってしまった。
いったい何なんだ? その無敵要塞ザイガスってのは?
もう一度その巨大な要塞を見上げてみると、その天辺の辺りで神様が手を振ってるのが見えた。
「お帰り、ベル君!」
「かかかか、神様ぁぁぁぁ!?」
「ふふん、驚いたかい? 君が稼ぎに行ってる間に僕達のホームをリフォームしておいたのさ」
「リフォームってレベルじゃないですよ! これもう新築じゃないですか! って言うか、改造? 改築?」
「まぁまぁ、積もる話は後にしてさ、早く中に入ろうよ。きっと君も驚くよぉ」
「は、はぁ」
どうやら神様は相当僕にこの無敵要塞ザイガスの内装を見せたいみたいだ。
僕の手を握って子供っぽくはしゃぐ神様に思わずクラッときてしまう。
あぁ、こんなカオスでバイオレンスなオラリオの街で今でもやっていけてるのは神様の存在があってこそなんだなぁ。
しみじみそう思いながら中へと入る僕の目に飛び込んできたのは、それはそれは凄まじいと言える内装の数々だった。
「な、何ですかこの長テーブルは! 手触りがスベスベだし角の装飾とかやばっ! それに天井のステンドグラスなんてデカ過ぎ! あれだけでどんだけ掛かるんだ!? それに壁に飾ってある絵も意味不明なのばっかだけど凄い高そう!」
「ふふん、そうだろうそうだろう。喜んでもらえて僕も嬉しいよ」
僕に驚かれたのがよほど嬉しかったのか自信に満ちた笑みを浮かべて神様が胸を張った。
すみません、家具とかよりもその笑みや胸を張る神様に僕はイチコロです。
「それにしても、これだけの家具どうしたんですか? 結構値が張りそうなのばかりじゃないですか」
「なぁに、うちのアフロ欲しさに常連の客が代金がわりにって持ってきてくるんだよ」
「なるほど、物々交換って事か」
だとしてもアフロと交換でこんな豪華な家具が揃うなんて、一体誰が買っていってるんだろうか?
***
その頃、ロキファミリアではーーー
「アイズたぁん、ご要望通りアフロを持ってきたでぇ」
相変わらずやる気のないアイズを元気付ける為にロキはとりあえずアフロを用意しようとその場にいたベートをアフロにする事にした。
当然ベートはごねだした。って言うか滅茶苦茶抵抗した。
なので仕方なくフィンやガレスを招集して無理やり押さえ付けつつベートの髪を強引にアフロヘアーに仕立て上げたのであった。
「ひでぇ・・・こんなのアリかよ?」
「黙らっしゃい! これでアイズたんが元通りになれば万事解決やろうが!」
「俺が解決してねぇよ!」
「後で床屋にでも行ってきぃや」
「散髪代は?」
「自費で」
「鬼だ・・・」
泣きたくなるのをグッと堪えるベート。
頑張れベート・ローガ。君は男の子だ。
ベートのアフロヘアーをアイズに近付けると、アイズの目に輝きが戻った。
そして、キラキラ輝く目でベートのアフロヘアーを見つめていた。
その際にベートがちょっぴり赤面してたがそこは敢えてスルーさせてもらう。
しかし、少ししてからまたしてもアイズの目から光が消えた。
「・・・違う」
「へ?」
「これは、アフロじゃない」
「な、何言うとんのや? ちゃんと列記としたアフロやろ?」
「ロキは全然分かってない。これはアフロじゃなくて・・・」
ムンズっとベートのアフロを掴む。そしてーーー
「ただのナチュラルパーマじゃボケェェェェ!!」
ぶちぶち!! ばぶち!!
「ぎゅぼわぁっ!!」
いきなりベートのアフロヘアーを毛根からぶち抜くアイズのその所業にロキは勿論その場に居たフィンやガレスまでもが驚愕していた。
因みにベートは毛根から毛をぶち抜かれる痛みに耐えられずその場で泡を拭きながら倒れてしまった。
「アフロ〜〜、アフロは何処じゃ〜〜」
「あかん! あまりにアフロ不足が長過ぎたせいでアイズたんアフロ欠乏症になってしもうた!」
「何? そのアフロ欠乏症って!?」
「し、知らん! わしも初めて聞いたぞ!」
「アフロ依存症とは、長い期間アフロを摂取出来なかった者が陥る状態で、この状態になると見境なく何でもかんでもアフロ化してしまう恐ろしい症状なの」
「説明ご苦労さん」
何故か突然その場に現れたリヴェリアが説明してくれた。
しかしそれって、要するにこの場にいると滅茶苦茶やばいのでは?
「アフロ、アフロ、アフロ!アフロ!!アフロ!!!」
「ア、アイズ・・・たん?」
「アフロこそ正義、アフロこそジャスティス、アフロ・イズ・ゴッド! アフロ以外の髪型など、断じて認めん!!」
「「「「ふぁぁっ!!」」」」
「貴様ら全員アフロにしてやろうかぁぁぁぁ!!」
「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぉぁ」」」」
その後、暴走したアイズの手によりその場にいたロキ、フィン、ガレス、リヴェリアは勿論、ホーム内にいた眷属ほぼ全員がアイズの毒牙に掛かってしまい見事なアフロヘアーへと変えられてしまったそうな。
***
オラリオの街の中心辺りに建てられてるバベルの塔はむっちゃ高い。
どれくらい高いかと言うと限界まで背伸びしたキリンよりも高いと言うのだから驚きだ。
そんなバベルの塔のとある上層階に位置する部屋にて、一人の女神がため息をついていた。
「退屈だわ」
「如何なされましたか? フレイヤ様」
「最近退屈で死にそうだわ。地上に降りて来てこんな気持ちになったのなんて初めてのことだわ」
そんな事を呟く彼女はこのオラリオの街でロキファミリアと並ぶと言われてるらしいフレイヤファミリアの主神フレイヤ女史である。
彼女は今、あの手この手時々そんな手やとんな手などを駆使して地上の光景をこの場にいながら見れるように施した設備にて街を見ていた。
だが、それなのに彼女の口からは退屈の言葉しか出てこなかった。
「退屈でしたらダンジョンをご覧になられては? 冒険者達の戦いはフレイヤ様にとって刺激になるかと存じますが?」
「全然ダメね。寧ろダンジョンの方が退屈だったわ」
「なんと!?」
「ねぇ、オッタル。巷で冒険者達が身に付けてるスキルがあるでしょ?」
「ハジケリストとか言うスキルですか? あのスキルは画期的だと思います。あのスキルのお陰で死亡する眷属の数がほぼゼロになりましたからね」
「そう。それは喜ばしい事なのよ。でもね」
そう言ったフレイヤの声のトーンが更に落ちた。
「そのせいで最近退屈になったわ」
「死者が出ない事がご不満なのですか?」
「そうじゃないわ。眷属達が死ななくなったのは喜ばしい事よ。でもそのせいで眷属達の魂から輝きがなくなってしまった。それがダメなのよ」
「輝き、ですかーーー」
「死ななくなった眷属達は皆無謀なクエストにも果敢に挑めるようになった。でも、そこには命を賭した戦いなんてない。ギリギリの中で生を掴む時、その魂は強く輝くの。その輝きはとても美しいわ。でも、ハジケリストのスキルを得てからはその輝きが失われてしまった。それが退屈なのよ」
眷属が死ななくなったのは主神としては大変喜ばしい事と言える。
だが、その代償として眷属達の心の光が失われてしまっていた。
ダンジョンで死ぬことはない。ならば無謀で無茶な行為をしてもなんら問題はない。
そんな事を考えてる冒険者達の魂は皆一様にして黒く濁った色になっていた。
そんな光景にフレイヤは飽き飽きしていたのだった。
「ご安心くださいフレイヤ様。まだこの私がおります!」
「オッタル・・・」
彼の名はオッタル。フレイヤファミリアの団長であり「猛者」の二つ名を持つ強者。
そして、【フレイヤ様ファンクラブ】の会員でもある。(会員ナンバー1365番)
そんな彼が自分自身を推して来た。
「私はハジケリストなどと言うスキルなどに頼りません! 私ならば、フレイヤ様を退屈させる事は決してさせません!」
「オッタル。あなたーーー」
「ですから・・・私だけを見ていて下さい! 私が必ず、貴方様のご期待に応えてご覧にいれてーーー」
「邪魔するギョラーーー!!!」
どごぉぉっ!!
「ぶふぉぉっ!!」
一世一代の告白をしようとしていたオッタルを突如外からやって来た何かが跳ね飛ばした。
跳ね飛ばされたオッタルはそのまま壁に叩きつけられたと言う。可哀想なオッタル。
だが、無情な事にここはダンまちの世界にボーボボが加わったカオスが世界。
まともな奴は決まって碌な扱いを受けないのがこの世界の掟なのだ。
「あら、魚雷ガールじゃない!」
「久しぶりねフレイヤ。元気にしてたかしら?」
「最近退屈過ぎて死にそうだわ。貴方が来てくれて本当に良かったわ」
突如現れた魚雷ガールとそんな風に仲良く会話するフレイヤ。だが、事情を全く知らないオッタルはよろめきながらフレイヤと魚雷ガールの間に割って入って来た。
「ふ、フレイヤ様、お逃げください! この化け物は私が防ぎます!」
「あらオッタル。どうしたのそのケガは?」
「早くお逃げください! こんな恐ろしい化け物が街に出没するなんて考えられない事ですが、この命に変えてでも貴方のことはお守ーーー」
「誰が化け物じゃぁぁ!!」
「げふぅっ!」
散々化け物呼ばわりされて怒ったのか魚雷ガールの見事な右回し蹴りがオッタルの後頭部にクリーンヒット。
そのまま倒れ伏すオッタルの髪を掴むと窓の外へと放り投げた。
「先生の事を悪く言う悪い子にはおしおきが必要ね!
【極悪残血真拳奥義
魚雷の愛のOSHIOKI♡】」
それは、おしおきと言うにはあまりにも凄惨かつ残虐な光景だった。
空中に投げ出されて全く身動きの取れないオッタルに向かって四方八方からの魚雷の容赦のない突撃が行われていた。
それは最早、おしおきではなく蹂躙であった。
それは最早、教育ではなく殺戮であった。
「その辺にしてくれないかしらぁ。その子は私の大事な眷属なのよ」
「まぁそうだったの!? それなら安心ね」
フレイヤの制止を受けて魚雷ガールが窓から室内へと入って来た。
その際にボロ雑巾の如くズタボロにされたオッタルも同伴だったがーーー
「大丈夫? オッタル」
「も、申し訳・・・ありません・・・私の・・・力及ばす・・・」
「説明忘れてたけど、彼女は私の古い友人なのよ。だから安心してちょうだい」
「・・・・・・へ?」
あまりにも意外なその答えに思わずオッタルの目も点になってしまうのであった。
その後、どうにか気合で回復したオッタルはすぐさま魚雷ガールの前で深々と頭を下げた。
「も、申し訳ございませんでした! まさか、フレイヤ様の古いご友人とは梅雨知らず無礼な発言の数々、なんとお詫びすればよいかーーー」
「ふふふ、気にしなくて良いのよ。若い子は皆やんちゃだからね。元気で何よりだわ」
「な、何たる寛大なお言葉。このオッタル、感謝の極み」
「ギョラッ! ギョラッ! 先生は寛大な者なのよ。これからは私の事は先生と呼びなさい」
「はい! 魚雷先生」
「誰が先生じゃぁぁぁ!!」
「ごっふ!!」
再度魚雷ガールの突撃を喰らいながらオッタルは思った。
先生とは、正に偉大な存在なんだなぁ・・・と。
ここでのオッタルさんは多分ハジケてません。なので原作基準の強さです。そんな彼を一方的にぶっ飛ばす魚雷って、マジやばいですよねw